防災の日ということで、ちょっと変わりネタを扱ってみたい。
富士山大規模噴火のCG公開 火山灰の影響など表現 内閣府
2025年8月26日 17時26分
内閣府は、富士山で大規模な噴火が発生した場合に、火山灰によってどのような影響が出るのかシミュレーションした動画を公開しました。
NHKニュースより
あまりニュースになった印象もなかったのだが、8月26日のニュースで、内閣府が動画を公開したのだとか。
首都圏の避難は割と絶望的
噴火の影響を想定
結構、リアルなCGを作ったみたいだね。10分程度の動画なのでご覧戴きたい。

僕はあまり認識していなかったのだが、この手の検討は5年おきに行われていて、公表もされているようだ。
ただ、過去の情報の取り扱いをみても、広報活動に力を入れている感じはしない。せめて小学校や中学校の教材として扱うとか、もうちょっとキチンとした取り扱いをしたら良いと思う。
動画は、1707年の「宝永噴火」と同程度の噴火が発生して首都圏などに火山灰が集中して積もった場合を想定して内閣府が作成し、8月26日の「火山防災の日」にあわせて、ホームページなどで公開しました。
NHKニュース「富士山大規模噴火のCG公開~」より
記事に出ている「宝永噴火」は、富士山噴火の記録としては最も新しいものである。

富士山から100km離れた新宿の様子らしい。10cm程度の火山灰が積もるシナリオを採用しているようだ。
このシナリオでは、水道・ガス・電気・通信が麻痺して、首都機能が低下すると見積もられている。
首都からの避難
いつ噴火するか分からない状況の富士山なのだが、シナリオ次第ではまあまあ悲惨なことになる。
場所によっては建物が壊れたり、物流が滞って食料や水などが不足したりするおそれがあることも表現されていて、内閣府は「富士山が噴火した場合の生活への影響を具体的にイメージして、物資の備蓄などの対策につなげてもらいたい」としています。
NHKニュース「富士山大規模噴火のCG公開~」より
ただ、イメージの共有は良いけれど、実際にどうするのかは決めかねている状況らしい。
これは東京都の出しているペーパーだが、「国からの具体的な指示がない」と零している。

これはその一部なんだけど、随分と矛盾しているなぁ……。
この想定だと、在宅避難が基本で、都内に降り積もる火山灰の除去が終わってから支援物資を運ぶという話になるのだけれど、火山灰は最悪のシナリオだと15日間は降り続けるということなので、どう考えても備蓄3日程度では足りない。
じゃあ、避難させるのが正しいのかといえば、むしろ困難を助長するのでそれも否定的。最悪の事態に至らないことを祈るしかないという状況のようだ。
宝永大噴火
政府が、災害モデルに想定している「宝永大噴火(宝永4年:1707年12月16日)」は、記録にある10回の中で最も被害の大きいものだとされていて、噴出した火山灰の総量は1.7km^3と見積もられていて、関東一円の農作物に多大な影響をもたらしたとされている。小田原藩の米の収量が元に戻るまで90年程を要したというから、その影響は深刻だ。
この宝永大噴火は宝永地震(宝永4年:1707年10月28日)と連動したものであり、その被害は東海道、紀伊半島、四国に及び、死者2万人以上、倒壊家屋6万戸、津波による流失家屋2万戸に達したとされている。
江戸の町で2寸~4寸 (5~10cm:実際にはこれより少なかったと推定されているが、地層から2㎝以上の火山灰層が確認されたことから火山灰が降り積もったことは確実だと見られている)だと言われているので、最悪のシナリオでは関東一円で2㎝の火山灰が降り積もるというシナリオになっている。
現在の交通事情を鑑みると、こんな感じの交通・ライフライン分野への影響が想定されている。
指標 | 影響の出始め | 機能停止に近づく目安 |
---|---|---|
道路(視程) | ~1mm(細粒なら0.5mm)で速度大幅低下 | ~1cmで徐行、10cmで走行困難(実測・実験ベース) |
道路(湿灰×駆動) | – | 湿灰3cmで二輪駆動通行不能 |
鉄道(地上区間) | 微量でも停止し得る | 広域化で長期停止・点検長期化 |
電力(送配電) | – | 雨×灰3mmで碍子絶縁低下→停電 |
水道(緩速ろ過) | 2mm域で運転停止想定 | 1cm事例で全戸給水停止(過去例) |
物流(東京都方針) | 優先除灰道路で供給継続を狙う | 10cm超区域では運用困難、域外/未満域に依存 |
宝永大噴火クラスの災害が発生すれば、首都圏は壊滅だろう。

そうすると、この被災区域から外に避難させる必要があるのだが……、東京都の機能が麻痺して他の地域で機能代替可能なのか?も想定した方が良いだろう。

これだと、日本の国家の機能が麻痺する可能性が高そうだ。え?避難?
うーん、避難は現実的ではないかも。
代替地を早急に
通信機能が麻痺し、避難もままならないとすると、もはや関東一円の避難などを真面目に考えるのと並行して、国家の機能を代替する拠点を構えるしかあるまい。
現状、東京都の機能が代替できる可能性のあるのは、大都市である大阪市、名古屋市で、更にもうちょっと拡大すると横浜市、京都市、神戸市ということになる(日本の六大都市)んだけど、残念ながら宝永地震がセットになってきた実績を考えると、どの都市もかなり厳しい。
などと、ChatGPTの意見を聞いていたら、松代大本営を提案されてしまった。誰だ!そんな入れ知恵をした奴は。
ただ、某アニメのような架空の話の中だけでなく、東京都の機能が麻痺した場合を想定して、大東亜戦争の際には松代大本営と呼ばれる設備を実際に作っていた。
現代の技術を想定すれば、特に松代市が適当ということではないと思うのだけれど、この辺りはそれなりの地盤が期待できるので、候補地の1つとなるのは事実だろう。もう少し日本海側に寄せた方が都合が良い気もするが、何れにせよ、これで問題になるのが電源と通信である。
そうすると、先ずはSMRのような内陸部でも発電可能な小型原発の開発を急ぐべきではないか。
方針としては既にある原子炉を電源と想定することも良いとは思うが、各地の原子炉は老朽化して継続性に疑問がある。そういうわけで、通信設備の分散ともっと確実性の高い電源開発は、日本の将来を想定しても必須なのではないかと思う。そうした場合、SMR或いはより小型のマイクロ炉の開発によって、日本の冗長性を高めるというのは、防災計画にも資するのではないだろうか。安全性は優先されるべきだけれどね。

マイクロ炉の開発は、日本こそ急がねばならないような気がする。
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