本日は軽めの記事に。
先日取り上げた韓国の対アメリカ関税交渉がかなり難航しているようだ、というお話。
韓米関税交渉の膠着状態、核心の理由は…米国「現金で3500億ドル投資するべき」
2025.09.13 10:11
韓米関税交渉が膠着状態に陥った核心の理由は「韓国の3500億ドル(約51兆円)対米投資は現金で投資し、その収益は元金回収後の時点から米国側が90%を持っていく」という条件のためであることが12日、確認された。
中央日報より
アメリカから随分と吹っ掛けられているようだね。
決まった話だったのでは?
合意とその後の状況
対アメリカ関税交渉の話題はこのブログでも結構触れている。
過去、合意のことに言及した時には、「そこそこ上手に纏めたぜ」的な宣伝がなされていたと伝えた。造船業を差し出した韓国の「不安」はその後にも触れてはいるんだけど、この不安は更にその後助長されることに。
ただ、今回はこうした「合意はそこそこ成功だった」という話を根底から覆す可能性が出てきたというニュースである。
合意の中身、本当はなんですか?
要点をまとめてみよう。
- 米国側は、韓国に対して「3,500億ドルを現金で米国に投資すべき」と要求
- 投資収益の分配方式についても、非常に厳しい条件を提示(回収前は韓国が90%、米国が10%、回収後は逆に米国が90%、韓国10%という構造)
- 日本と似たような条件だが、日本と韓国とでは経済体力、外貨準備、為替市場の条件などが異なっており、韓国政府として受け入れ困難
- 農畜産物市場の受け入れ、非関税障壁の除去、検疫などの衛生・植物検疫(SPS: sanitary and phytosanitary)基準の改善など、関税以外の分野でも譲歩が求められる
他の記事からの引用もあるが、概ねアメリカが韓国に求めているのは、以上のような話である。
ざっと眺めてみるとかな厳しい話ばかりである。3,500億ドルの投資方式や投資配分の話は、アメリカの投資ルールにも抵触する可能性が高いので、政治的な話のように思われる。
ただ、8月合意の内容は本当にこんな内容だったのかは気になるところ。
先月、ホワイトハウスで開かれた韓米首脳会談を通じても、これを大きな枠組みで確認したが、交渉の具体的な内容に対する協議はまだ終わっていない状態だ。
これと関連して8日、米国ワシントンDCで産業部·企画財政部合同実務代表団と米国貿易代表部(USTR)間の実務協議を進行したが、対米投資関連争点に対して異見を狭めることができなかったと伝えられた。
毎日経済より
これに関しては毎日経済がもう少し詳しく報じていた。
どうやら8月に妥結した話は本当にふわっとした枠組み部分だけで、その詳細が決められなかったので現在実務者レベルで詰めている段階だということのようだ。
日米協議のように投資金回収前までは収益は半分に分けるが、投資金回収後には収益の90%を米国が持っていく方式を前面に出しているが、韓国はこのような方案が合理的ではなく受け入れ難いという立場だと伝えられた。
これと共に米国は農産物、デジタルなどの分野でも非関税障壁の解消を要求しており、韓国は造船などの産業協力計画を立てて有利な条件を主張しているという。
毎日経済より
つまり8月初めの合意は、実現可能性の検証もできていなかったということになる。どうして実現不能な内容を約束してしまうのか。
今後の展開
現状では、韓国側は為替(ドル‐ウォン相場など)や外貨準備のリスクを懸念しており、投資の方法(現金 vs 保証・貸出形式など)についても隔たりがある。
結局、アメリカが譲歩しない限り韓国側に実行可能な手段がないのが実情なのである。
おそらくアメリカ側もある程度は韓国の実情を理解しているはずなので、韓国側に求められているのは、非関税障壁の解消という部分であり、特に農産物の分野での規制などは大きいのではないだろうか。
ただ、表向きは3,500億ドル投資を飲むしかないと思う。そうすると、こんな感じが将来的な予測が出来る。
- 「8月合意」は枠組みであって、詳細の実現可能性は極めて低い
- よって、米国が現在のラインを維持する限り、破綻の未来が濃厚
- 韓国は新しいカードを切る余地がなく、国内世論・国民感情との折り合いも難しい
- 妥協する場合も、形式的な合意に留まる可能性が高い
割と絶望的である。
追記
本文中ではちょっと言葉を濁した部分もあるので、軽く解説をしておこう。
3,500億ドルの現金投資って無理じゃね?
先ずは、3,500億ドル投資の話で、韓国側は「保証や貸出形式の投資」にしてくれ、と言っているのだが、アメリカは特殊目的法人(SPC)を設立して現金を突っ込めと突っぱねている件だ。
最新のデータだと、韓国の外貨準備は4,113億3,000万ドルあるそうな。
韓国の外貨準備高、4113億3000万ドル
2025.08.06
韓国の外貨準備高が2カ月連続で増加し、4100億ドルを上回った。
韓国銀行が5日に発表した統計「7月末の外貨準備高」によると、韓国の外貨準備高は、6月末より11億3000万ドル増の4113億3000万ドルを記録した。外貨準備高は5月末の時点で、5年ぶりの最低値を記録したが、現在、2カ月連続で増加傾向にある。
KOREA.netより
ここから引き出すというのが現実的な話になると思うのだけれど、しかしこの外貨準備の内訳で、直ぐに動かせる現金の率は低い。
おそらくは現金は1割以下で、大半が証券類であろうと言われている。
色々と手を尽くして証券を現金に替えられたとしても、外貨準備から3,500億ドルも投入してしまうと、本来の機能である通貨防衛手段を失うことを意味して、その結果、韓国が通貨危機に陥る可能性すらある。
投資ルールはどうなっているの?
しかし、万が一3,500億ドル調達可能であったとしても、アメリカが9割の利益を持っていくというのは投資ルール的にどうなのよ?という話も。
簡単にまとめてみよう。
アメリカ投資ルールとの齟齬
- アメリカでは投資契約はリスクとリターンの均衡が大前提。
- 投資家が3,500億ドルという巨額資金を拠出するなら、その投資に応じた収益配分を受け取るのは当然。
- 「元本回収後は配分比率をひっくり返す(90:10)」というのは、米国の証券法・投資信託法・ファンド規制の枠組みからして極めて不自然。
→ 実際に市場に出せば、投資家保護ルールに抵触する可能性が高い。
「政治的な数字」としての90%
このため、90:10という数字は、経済合理性に基づいた投資契約ではなく、むしろ 政治的要求 に近いと考えられる。
- 米国側からの「日本にもこのくらい飲ませたんだから、お前らも飲め」という政治的プレッシャー。
- 交渉戦術として「最大限の要求」を突きつけ、そこから譲歩を引き出す狙い。
- 実際に契約に落とし込むときは、形式的に米国側9割を守りつつ、裏で調整するスキームを仕込む可能性が高い。
アメリカの恫喝
つまり、この話は表向きに見えている話通りには、どうあっても進まない話である。
最終的にどういう形になるかは不明だが、ミョンミョンはアメリカによるカツアゲを強調しておいて、合意を蹴る道を選ぶ可能性は結構ありそう。
追記2
さて、恐らくコレに関係しているのだと思うのだが。
ろうそく行動、アメリカ大使館の前で集会…大使館に向かって「ヤンキーゴーホーム」
2025. 9. 13. 20:13
ろうそく行動が13日午後6時、ソウル光化門駅近くの京保ビル前の道路で「157次ろうそく大行進」を開いた。集会場所は米国大使館からわずか100m離れた場所だった。
彼らは最近、米国当局が韓国人労働者を逮捕・拘禁した事件を取り上げ、「私たち国民を人質にしたのと変わらない」と声を高めた。
朝鮮日報より
だから遵法精神は?

随分と乱痴気騒ぎをやっている様だが、これは条約に照らしてもかなり問題のある行動である。
関税交渉などが不調であるため、大量拘束事件を持ち出して騒がせているという側面もあると思うが、それもどうかと思うぞ。
こういう話を聞くと、ますます対米関税交渉は妥結が難しいのかなと。
コメント
こんばんは。よくコメントする者です。
今回の投資スキームについて韓国がゴネるのも理解は出来ます。通常の投資なら出資した側が出資比率に応じて利益配分を受け取るのですが日米合意文書を見るとそうはなっていません。問題なのは、この「利益」というのが何に対する利益なのかが明示されていないことです。日本が想定しているのは、おそらく出資するために日本の事業団が金利をつけて貸出すると思うのですがその利息の配分ということだと思います。それで日米が10対90ということであればそこまで金額は大きくなく、大した問題にはならないと思います。
日米合意には、そういった裏の取引みたいな文書には書けない合意は間違いなくあると思うのですが韓国はそういった事情を知らないのでしょう。
日米合同文書をそのまま書面通り受け取ると、かなりヤバい内容ではあります。
そして韓国ですがブログでもおっしゃられている通り、農産品などの市場開放が最大のネックになっているのな間違いないと思います。しかし、それでは交渉中に米国に足元を見られてしまう。だから投資云々に話題をすり替えてゴネているのでは、と推測しています。
ありがとうございます。ハンドルネーム付けてくださると嬉しいです。
さて、追記にも書いたのですが今回の話は、韓国凡そ鵜呑みに出来ないもの。
投資比率の話もアメリカの無茶振りで、日本と同じ条件でというのもかなり無理がある、と、そう思っています。
日米合意に裏があるのは、多分ご指摘通りでしょうね。ただ、合意文書の書面通りであればおそらく問題ありません。
翻って韓国ですが、鵜呑みにしないのであれば何処かで妥協する必要がある。でも、どんなカードを出せば満足してくれるのか?はさっぱりです。造船業だけでは駄目っぽいですから。どうなるんでしょうね。
韓国に関して言うとGDPは日本の3分の1ほどしかないのに対米貿易黒字額は日本とほぼ同じくらいあります。自国輸出で稼ぐことしか考えておらず、米国での現地生産は全然進んでいませんね。さらにサムスンは中国ベッタリですから、米国としてはさぞかしストレスが溜まっているでしょうね。
このような状況にも関わらず日本と同じ条件というだけでもかなり優遇されており、そこに注文を付けるとは韓国は何ともワガママな話ですね。3,500億ドルの現金を準備出来ず、米国内への現地生産が進んでいない以上は韓国は高関税を受け入れるしかないでしょう。
韓国が現地生産を選ぶのはハードルが高いと思います。
何しろ、国内の税制優遇や環境などの基準などあらゆる面で優遇しまくって、安い製品を生産していますから、海外に持ち込むと技術的優位性の無い製品は、淘汰されちゃう。
例えば、日本でスマホを選ぶ時に技術的にギャラクシーはXperiaよりも優れていると評価されていますが、コストの割に性能が優秀という位置づけですから、日本国内で生産するとアドバンテージが無くなってしまう。アメリカに持ち込んだ場合も、低機能商品では利益が上がらないし高機能商品だとiPhoneなどと競合することになると思いますが、それがギャラクシーの方が遙かに高いなんてことになると、売れなくなってしまう。
韓国製の製品でなければ、という訴求力は、未だに獲得できていませんから、そういう意味で苦慮している訳ですね。案外、腰を据えて生産したら戦える可能性はありますが、今よりは利益を見込める目算も立ちません。そういう意味でも、高関税を受け入れても戦える商品を作っていくしかありませんね。
米国は「25%関税か、3500億ドル直接投資か」の2択しか提示しておらず、南鮮は25%関税はムリなので、”投資”条件で米国の譲歩が欲しいけど、恐らく”投資”もムリです。
9/9に金容範大統領府政策室長が、「3500億ドルの(投資)資金交渉は行き詰まった…現状のまま署名などできない」と吐露しています。
https://www.dogdrip.net/657311165
3500億ドルの直接投資といえど、南鮮にはそんな余剰資金は無いので、当初南鮮は投資ファンドの立ち上げを計画しましたが、それは米国から拒絶されました。
南鮮は「ウチで商売したければ、みかじめ料払えや」と恐喝されているから、払うしか無いんですが、この交渉に失敗すると財政破綻するかもしれず、容易には前に進めないでしょう。
そうなんですよ、投資は難しいので「投資するフリしますね~」というのが見透かされちゃいました。
そして、投資しても韓国経済が危ないのが危ないというのが厄介ですね。
こんにちは。
・チョッパリが話まとめたニダ!ウリナラも同条件以上でまとめないと悔しいニダ!
・細かいところはよく分からないけど、とにかくウリナラ同等っぽい話には出来たニダ!
・……え?そんな話聞いてないニダ……
こうですねわかります。
多分、次は、
・チョッパリ!話があるニダ!
でしょうね。
という三段オチ四段オチはともかく、ある意味最悪のタイミングで就労問題による逮捕劇が発生、というかアメリカ側はタイミングを計ってたとしか思えませんね。
それでも国内右派を叩くことしか頭にないミョンミョン政権の明日はどっちだ?
こんにちは。
オチに日本を引き合いにするのは避けて欲しいんですがねぇ。
まあ、アメリカにはアメリカの事情がありますから、韓国がその事情を汲めるかどうかがポイントになると思います。ミョンミョンはどうするのかなぁ?反米感情を煽って、合意を蹴る方向に行きそうな気はしていますよ。
韓国政府が投資の条件に無制限のドルスワップ協定を要求!!!
PS
現代・起亜は対米出荷価格を25%下げてました
ハイブリッド車を現地生産しているトヨタよりも安くしないと売れないから
横合いから失礼。
反動で、国産車が値上げするのですね<韓国
いつか見た光景、いつか来た道……
価格維持を続けるらしいのですが、25%吸収すると流石に赤字になってしまうようで。
2025年4~6月期で、
・売上高:48兆2,867億ウォン(前年同期比7%増)
・営業利益:3兆6,016億ウォン(前年同期比16%減)
売り上げは増えたのですが、利益はそれ以上にへこんでいます。これ、関税の話が出る前なので、さらに減るんでしょうな。
厚顔無恥にもほどがありますね。