イギリスで大規模な反移民デモが行われたらしい。大量の移民を抱える国家の悩みが、そこには集約されている。
英ロンドンで大規模デモ、反移民訴え 11万人参加
2025年9月14日午後 1:53 GMT+92025年9月14日更新
英ロンドンで13日、移民に反対する大規模デモがあり、警察によると約11万人が参加した。これに対抗して人種差別反対を掲げるデモも開かれ、約5000人が参加した。
ロイターより
取り扱いが遅れた理由は、参加人数にかなりの開きがあって、情報が出るのを待っていたからである。待ったからと言って正確な情報が得られたわけではないんだけどね。
- ロンドンで大規模な反移民デモが行われた。
- 主導したのは極右活動家とされる元受刑者のトミー・ロビンソン氏だが、政府の移民政策に不満を持った人々が多く集まった。
移民排斥に繋がる動き
極右デモ?!
引用ニュースは11万人参加ということだったが、ニュースによっては15万人参加としているものや、300万人集結というデマ情報まで出回っていた。大規模である事は疑いようがないが、流石に300万人はちょっと無理がある。

ただまあ、警察発表があった11万人という数字で、話を進めていこうと思う。
極右の反移民デモ、警官隊と衝突 英首都ロンドン
2025.09.14 Sun posted at 11:15 JST
英国の首都ロンドンで13日、極右勢力による反移民デモ「ユナイト・ザ・キングダム」が行われ、警官隊と衝突した。警察によると、参加者が物を投げつけるなどして、少なくとも26人の警察官が負傷したほか、25人が逮捕された。
CNNより
CNNを始め、日本の一部メディアなどは「極右勢力によるデモ」ってことにしたいらしいが、デモの規模が11万人に達していたのだから、ロンドンには極右だらけってことになってしまう。ロンドンの人口が約880万人なので、なかなか洒落にならない規模感である。
なお、同時期に企画されたカウンターデモは5,000人規模だったとのこと。
これだけ人が集められては、極右扱いと言うよりもはや反移民という民意が示されたと言って良いかもしれない。
デモの切っ掛け
カウンターデモは、反移民デモの呼び掛けに呼応してSNSで呼びかけが行われて企画されたデモのようだ。ただ、カウンターデモ側の方に秩序がなかった印象である。
今回のデモは極右活動家トミー・ロビンソン氏が呼び掛けた。反移民デモに対抗する市民団体や反ファシスト団体も集結した。警察は、双方の衝突を避けるため設けられた「隔離区域」にデモ隊が侵入したと説明している。
警察はSNSへの投稿で、立ち入り禁止の区域への侵入やバリケードの突破、反対派への接近を試みるデモ参加者を阻止するために複数の場所で介入を余儀なくされているとし、警察官が暴行を受けていると明らかにした。
CNN「極右の反移民デモ、警官隊と衝突」より
CNNは完全にカウンターデモ側の擁護をしてはいるが、「立ち入り禁止の区域への侵入やバリケードの突破、反対派への接近を試みるデモ参加者」と伝えられ、カウンターデモ側におかしな動きが見られたことは確かなようだ。自らの主張を正当化するために警察の制止を振り切るのはどうかと思う。
このデモの切っ掛けになったのは、難民申請者のホテル収容問題である。
スターマー英政権、移民対策が急務 抗議続く難民申請者のホテル収容は廃止前倒しへ
2025年9月2日
難民資格申請者がイギリス各地のホテルに滞在していることに、国内で抗議が相次ぐなか、キア・スターマー首相は対策の前倒しを表明した。
政府はこれまで、難民資格申請者をホテルに収容する措置を2029年までに終了させると約束してきたが、スターマー首相は1日、BBCに対し「それを前倒ししたい」と述べた。さらに、国民の懸念を自分はもちろん理解していると強調した。
BBCより
難民申請者のホテル収容により、エチオピア出身男性が地元少女に対する性的暴行する事件を誘発。犯人は有罪となったがイギリス社会では「地元少女が犠牲になるリスクを許容するなら移民は要らない」という感情論が多数派になったのだ。
首相は、「難民資格申請者をホテルに収容する措置」を約束の2029年より前倒しする約束をしたようだが、「それまで犠牲者発生リスクを許容しろというのか」とかえって怒りを買った。実際に被害者は出てしまったのだから、根本的な解決を求めるのは当然である。
こうした背景があったため、極右活動家とされる元受刑者のトミー・ロビンソン氏の呼び掛けに応じて多くの人が集まった次第である。
移民政策の限界
そもそもイギリスがEU離脱した背景にも移民問題があり、現スターマー政権の舵取りも非常に難しい状況であった。
イギリス、フランスに不法移民を送還する枠組みを発表、数週間以内に試験実施
2025年7月11日
イギリス政府は10日、英仏海峡を渡って小型ボートで到着した移民をフランスに送還する新たな試験的枠組みを、数週間以内に開始する方針を明らかにした。キア・スターマー首相が発表した。
BBCより
幾つか象徴的な政策を掲げているが、実際には不法移民が大量にイギリスに押し寄せている実態がある。
多すぎて実態把握はできていないが、恐らくは少なくとも60万人程度は不法移民がいると言われていて、難民申請者のホテル収容制度では約32,000人が利用しているとされている。この他にも民間の賃貸物件に約66,000人が収容されていて、その全てに税金が投入されている。
これでも収容者はピークの半分程度にまでは減少しているものの、概算で800万ポンド(約15億円)程度は使われているとされているが、イギリス政府は正確な数字を公表していない。
その税金で賄われた移民政策に問題が出た、という構図になっている。
問題を簡単にまとめておこう。
- 移民問題で国民の怒りが。不法移民60万人、総人口約6900万人のうち移民・難民認定されたのは約650万人。
- 難民申請者にはホテルや賃貸物件が確保されて一定期間だが32,000人+66,000人の滞在が。
- 難民申請者の滞在に使われる税金は概算で1日800万ポンドにも及ぶとされる。
- 難民申請者滞在のホテルで性犯罪事件発生。周辺での治安も悪化。
- イギリスのGDP1割を支える観光業にも、ホテルが借りられることでの悪影響が出そうだが(今のところは問題ない)、今のところは住宅の供給不足などの影響が出る程度
- 重い税負担が労働者にのしかかる(平均年収に対する税負担は3割程度(間接税含まず))
逮捕者多数
現時点で、今回のデモに関わって逮捕されたと明らかにされているのは24人。どちらの側なのかは不明である。
ロンドン警視庁によると、騎馬警官たちがデモ隊を押し戻すために警棒を使い、警察官が蹴られたり殴られたりした。
逮捕された24人のうち3人は女性で、残りは男性だった。最年少は19歳、最年長は58歳だったという。複数の容疑で逮捕された人もいた。
ツイスト副総監は、負傷した警官たちは歯が折れたり、脳震盪(のうしんとう)を起こしたりしたと話した。椎間板を痛めた警官や、頭部に負傷した警官もいるという。
副総監は、これまでの逮捕は「始まりに過ぎない」として、騒乱に参加した人々の身元特定を進めていると強調した。
BBCより
ただし、身元特定が進めば更に逮捕者は増えるだろうと予想されている。警官達にも被害が出ているだけに、徹底的に行われるだろう。
「トミー・ロビンソンのように、社会のコミュニティーに広がる不安感や不満に乗じることができる存在がいる」と、カイル氏は指摘した。
デモに参加して暴力行為を働いた「ごく少数」の者たちは、法的責任を問われることになるとも、カイル氏は述べた。
BBCより
政権側のカイル氏は、法的責任を問うと明言していて、国民の不安に乗じた騒ぎだと批判している。だが、背景を考えると根深いものを感じるんだよね。
日本政府も「ホームタウン政策」とか無邪気に喜んでいる場合じゃないよ?
コメント
こんにちは。
移民政策で成功した国って、そもそもありましたっけ?
こんにちは。
探しても無いんですよね。
ChatGPTに相談しても「カナダ」や「オーストラリア」とか言いやがりまして。「それは侵略の成功例では?アメリカもそうでしょ?」と聞いたら、「そうですね」(約意)としれっと言われてしまいました。
移民政策は、鬼門ですよね。