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ドイツ経済の不調が一段と鮮明に

北欧ニュース
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ドイツ経済が不調であるとのこと。

ドイツIfo企業景況感指数、5カ月ぶり悪化-現状指数も悪化

2025年9月24日 17:41 JST

ドイツ企業の景況感は予想外に悪化した。ドイツ経済の回復に取り組むメルツ首相だが、回復の芽が弱いことを浮き彫りにした。

Bloombergより

需要がなさそうな内容なので、サクッと説明して終わる積もりだが、時にはヨーロッパのことも触れねばならないと思う。

EUの中核国であるドイツの経済不調は、ヨーロッパ全体にも影響を及ぼす可能性があるからね。

  • ドイツ経済が低迷しており、雇用の悪化が数字で示されている
  • 特に自動車業界の苦境が伝えられている
  • 短期的には回復するという観測もあるが、構造的な問題を抱えているので本格的な回復には時間がかかりそう
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先行き昏いドイツ経済

経済指数の分析

S&Pグローバルが発表したHCOB総合購買担当者指数(PMI)は一見悪くないものの、Ifo経済研究所の9月の期待指数は89.7と低下。景気回復は容易ではないことが示されています。

……まあ、「良くない」って事が分かって貰えれば良いと思う。

ドイツ政府は2年間続いたマイナス成長の脱却しようと、防衛強化やインフラ近代化を目的とした大規模な支出計画に合意した。だが、企業側からは官僚主義の抑制など他の施策も進展させるよう求める声が上がっている。

Bloomberg「ドイツIfo企業景況感指数~」より

経済的に良い結果が出たのは、防衛強化方針やインフラ近代化方針を出したからという話。まあ、兵器に関しては引き合いは多いのは事実なんだけれども。

雇用喪失

工業部門の低迷も深刻である。

ドイツ工業部門、低迷加速 雇用25万人喪失=調査

2025年8月26日午後 7:02 GMT+92025年8月26日更新

26日発表されたEYの調査によると、ドイツの工業部門の低迷が加速しており、2019年以降、同部門で25万人近くの雇用が失われた。

EYは公式統計を基に、2025年第2・四半期のドイツの工業部門の売上高が前年同期比2.1%減の約5330億ユーロ(6239億8000万ドル)だったと指摘。第1・四半期は0.2%の減収だった。

ロイターより

さらに、失業者数は10年ぶりに300万人を突破している。

ドイツ失業者、10年ぶりに300万人突破 景気低迷響く

2025年8月29日午後 6:08

ドイツの失業者数が10年ぶりに300万人を超えたことが、29日発表された連邦雇用庁の統計で明らかになった。同国では2年連続のマイナス成長で労働市場が圧迫されている。

8月の失業者数は季節調整前で前月比4万6000人増加し、300万人の大台に乗せた。

ロイターより

自動車部門の不調や製造業全般の停滞が、雇用悪化の大きな要因となっているようだ。

輸出依存と中国市場の影響

そもそもドイツは輸出依存型の経済で、EU域内でユーロが共通であるという点を強みにして、高級路線で輸出を拡大してきた。その重要な販売先が支那であった。

しかし、支那国内で販売を拡大するために工場を作ったコトが裏目に出て、その生産技術が奪われ、その技術でEVを作ってEUに販売網を広げた支那にドイツ勢がやられる結果に。

悪いことに、環境配慮という毒薬を飲んだEUが、EVに対する優遇政策を行い補助金を付けたことが、支那製EVの安さに拍車をかけることになったのだ。

これがドイツ国内での雇用を失った原因の一端になったのである。

支那製部品を多数採用が悪手に

ドイツ車メーカーは挙って支那製の部品を採用し、価格を下げることで対応しようとしたのだが、これが更に裏目に。

ドイツ自動車部品業界の悲哀

2024.11.20

フォルクスワーゲンの苦境についてはこの欄ですでにお伝えしたが、電気自動車(EV)導入による市場変化と不況の影響で、ドイツの自動車部品業界も危機に陥っていた。大手メーカーが次々にリストラや人員削減を発表している。

保険毎日新聞社のサイトより

ただでさえEVシフトによって部品生産産業は打撃を受けたのに、支那製の安い部品の採用でEVに使う部品ですら売れなくなってしまったのである。

エネルギー政策も足を引っ張る

今や、未曾有の事態を迎えているのがドイツの産業界なのだ。これは、ドイツのコスト意識の低さが問題であると共に、燃料費の高騰などが更に拍車をかけている。

ドイツでかつては亜炭などを採掘してエネルギー源として使っていたのだが、近年それも出来なくなり、原子力発電も廃止してしまったので、輸入化石燃料に頼らざるを得なくなった。ところがこれがロシアのウクライナ侵略で高騰。

もはや、どうしようもない状況なのである。

ドイツ経済の回復は見込めるか

予測では回復と出ているが

では、回復の見込みがありそうかといえば、これもまたキビシイ。

独経済、向こう2年間で勢い回復へ 主要研究所が予測

2025年9月25日午後 6:59

ドイツの主要5経済研究所は25日、ドイツ経済が底入れしつつあり、向こう2年間で勢いを取り戻すとの見通しを示した。

研究所は2025年の成長率予想を0.2%に小幅に上方修正。前回4月時点では、今年の成長率を0.1%、来年を1.3%と予測していた。

26年の成長率予測は1.3%に据え置いた。政府支出が支援要因となる見通し。27年の予測は1.4%。

ロイターより

この好転予想そのものが理解できないのだが、その楽天的に見える予想ですら、「構造的な弱点の存在」と「長続きしない」という悲観的な要素を織り込んでいる。

長期的には産業構造の変化が必須

そして、長期的な視野で見ると、移民問題解決や産業構造の解決、エネルギー政策の転換などを図らないと、経済的な成長は見込めないと思われる。

軍需産業は顧客が限定されるために、たいして儲けが出ない構造になっているし、EV路線はそもそも見直しが必要な事態に陥っている。

ドイツの強みである車作りを続けていくのであれば、高価で品質の高い路線を選ばざるを得ない。これは、かつて日本がスイスに腕時計戦争を仕掛けた時の構図に似ていて、セイコーの安い時計がスイスの高級時計路線を駆逐してしまったが、結果的には今も一部のスイスのハイブランドは生き残っている。一方、セイコーも高級時計路線にスイッチせざるを得なくなった。今や腕時計を持たない人の方が多数派になってしまったからね。

そして、ドイツの一部の車メーカーは高級路線を選ぶとしても、大多数のメーカーは次の産業を模索せざるを得ないのである。

ドイツが景気回復するには、山積みになっている課題が多すぎる。ある程度、低空飛行を続けながら粘り強く変えて行くしかないのだ。

先ずはエンジン車を見直したら?

そういう意味で、「環境」を言い訳にエンジン車を作るのをやめる選択は間違いだと思う。

2035年にエンジン車禁止撤廃を ドイツのメルツ首相「EUに働きかけ」

2025/9/27 06:55

ドイツのメルツ首相は26日、ベルリンでの経済界の会合で、エンジン車の新車販売を2035年に原則禁止すると掲げる欧州連合(EU)の政策を撤廃するよう求めた。来月1日にデンマークの首都コペンハーゲンで開かれるEU非公式首脳会議で議題にする考えを示した。DPA通信が伝えた。

産経新聞より

声を上げるつもりらしいけど、そもそもEVで冬季のヨーロッパを乗り切るのはあまり現実的じゃないと思う。

EVの寒冷地仕様車は二次電池にヒーターを装備しているらしいけど、二次電池の電圧を上げるためにヒーターをつけるって本当にバカバカしい話。

エンジンの開発にはお金がかかるし、燃費の向上も頭打ち。

それでもエンジン開発止めたのは、頭の悪い選択だったんじゃないのかな?

コメント

  1. 匿名 より:

    いつもどうも。
    フォルクスワーゲンはドイツ地方政府が株主になっていてリストラや生産拠点の閉鎖、移転が容易に出来ないようになっています。労働組合も非常に強く、従業員の給与は他メーカーの2倍です。
    これでは柔軟な経営判断は出来ないしも国際競争力も保てるはずありませんね。

    • 木霊 木霊 より:

      ドイツ企業は官僚的だって噂は聞きますけど、そんな事になっているんですね。
      確か以前調べた時に、労働者もかなり強いという話があったような。

      そうですか、競争力低下は避けられませんか。
      結局、市場の硬直が衰退の原因の一端なのかも知れませんね。

      • 匿名 より:

        フォルクスワーゲンは昨年、ドイツ国内の工場を数カ所閉鎖しようとしましたが、出来ませんでした。しかし、経営がヤバすぎて流石にリストラと賃金カットは断行しました。まだ一応は民間としてのマインドは残っています。
        仮にアメリカや中国市場でシェアを失ったとしてもEUという巨大市場にダイレクトにアクセス出来ますので日本の自動車メーカーほどの危機感はありませんね。そういった慢心がEV政策の見誤りや成長の停滞を招いていますね。

        • 木霊 木霊 より:

          そう言えばそんなニュース見かけました。
          この期に及んで危機感が薄いのは、EU域内で商売すれば生きていけると思っているのでしょうね。

  2. 砂漠の男 より:

    ドイツ自動車産業は、終わったのかもしれないですね。
    “強いドイツ”の残る遺産は化学工業(薬品含む)くらいですか?

    まぁ、ドイツのことは放っておきましょう。日本にとってクリティカルでもないし。
    ドイツは、メルケル元首相にすべての失敗の責任を押し付ければ無問題です。

    そんな中、いいニュースも。
    ドイツ陸軍が、メルケル政権に封印された”Panzerlied”行進曲を復活させました。
    Panzerlied – Bundeswehr- Ausmarsch Paradeaufstellung 1. Panzerdivision (2:50〜)
    https://www.youtube.com/watch?v=U0k7P9xy82Q&t

    • 木霊 木霊 より:

      まあ、ドイツ自動車産業が終わろうがあまり日本には影響は大きくないのですが、でもあの技術力が廃れてしまうのはもったいない話ですね。

      そしてメルケル氏が戦犯であることもまあ間違いではないと思いますから、歴史家はその後、勝手に評価するでしょう。