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国交省の発表する酷い省エネ目標

政治
この記事は約7分で読めます。

酷い話をしているな。国交省の役人って洗脳でもされているのかな?そんな疑いすら持つほどであった。目標設定を高くするというのは分かるけど、せめて現場の運用まで考えた実現可能性のあるものにしようよ。

道路の維持管理、再エネ電力で6割まかなう目標 国交省、パトカーはEV転換へ

2025/9/28 15:59

国土交通省は、国が管理する道路で、省エネ性能に優れる発光ダイオード(LED)の照明灯の割合を2030年度までに100%にする方針を決めた。

産経新聞より

相変わらず再エネ利用方向に全振りしているんだけど、それは一体何の意味があるのよ……。

  • 街灯を100%LED化する目標を掲げているけど、かなり予算が必要になる史次官も足りないね
  • 道路の維持管理に使う電力の再エネ利比率を6割にというとんでもない目標は現状に即していない
  • パトロールカーのEV化はメリットが薄い
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本当に100%交換は必要なのか

街灯のLED化

案外、BYDにお金を献上するために国交省が頑張っちゃったなんて話なのかもしれないが、陰謀論全振りで記事を書いても仕方がないので、技術的な側面からの突っ込みをしていこう。

まず、前半部分の街灯照明にLEDを採用しようという話。これは既に多くの自治体が積極的に進めている。

ただ、課題も少なくない。

  • 光の指向性:LEDは直進性が強く、従来のナトリウム灯や水銀灯のように拡散光を出しにくいため、照射範囲にムラが生じやすい。従来のポールの位置でLED照明に換装すると、安全面での懸念も出る
  • 耐候性・寿命の実効性:LEDは「長寿命」とされるが、点滅制御・高温多湿・塩害地域では寿命が縮む。電源ユニット(安定器代わりのドライバー)の故障が先に発生するケースも多い
  • 初期投資コスト:従来灯具に比べて高額。地方自治体にとって一斉更新は財政負担が重い
  • 維持管理コストの見積もり不確実性:LEDは長寿命なので長期的に見ると安価になるはずだが、ユニット交換となるため修理費が割高になる可能性がある
  • 一部地域で適さない可能性:LEDは発熱すると寿命が短くなることが知られるが、低発熱の構成を採用すると着雪などの問題を起こす地域もあって、LED化が適さないケースも想定される

他にも幾つも課題はあるんだけど、大きな問題はこの5点だと思う。

その予算は何処から出すの?

そして、これらの問題の解決方法はそれなりに目処はついているようだが、まだ解決方法が完全に方向性が決まったわけではない。

国交省の資料によると、国道の直轄道路の道路照明(トンネル部+明かり部)だけで約59万灯が設置されていて、管轄外の道路照明器具まで合わせると300万基以上に上るといわれている。

うち、国交省の管轄内でのLED街灯換装率は令和2年のデータで2割程度。産経新聞に寄れば令和7年1月の段階で48%がLED化済みだという。5年で3割更新できた計算になる。だから、残り5年で5割程度の街灯は交換が必要だという認識で良いだろう。

4.LED照明の導入

既存設備を含めたLED照明のストックでの導入割合を、既存の設備環境では困難 な場合を除き、2030 年度までに 100%とする。

令和4年内閣府の決定より

閣議決定で決めた方針に従っているのだけれど、せめて実現可能な目標を立てようよ。

そして、その予算は幾らなのさ。

交換が必要な街灯が少なめに見積もって100万基であると仮定して、それにかかる予算は幾らくらいかというと……、安く見積もっても最低3,000億円程度の予算が必要(全てレトロフィットの場合)で、ポールの交換などが必要であるケースを3割くらいと想定すると概算1.4兆円くらいのコストは必要となる。

国道だけに絞って59万灯のうち、残り30万灯を交換しようって計画であったとしても、概算で1,000億円~5,000億円程度の予算が必要になる計算だ。

そりゃあ、安全面を踏まえて街灯の交換が必要だってのは分かるけれど、2030年までに100%LED化って無理だろう。

あれだけ減税を嫌がっているのに、こういう環境に使う金に糸目を付けないのは良くないと思うよ。

老朽化して、緊急性の高いものから順次交換していく、課題を抱えているところは様子見をしつつ交換していく、それで何が問題になるのさ。目標ありきの課題設定は止めた方が良い。

再エネ比率の目標は現実的か

道路維持管理に使う電力

他にもこんな目標が。

基本方針ではこのほか、道路の維持管理に使う電力のうち、再生可能エネルギーの比率を22年度の約15%から約60%に高める目標も盛り込んだ。

産経新聞「道路の維持管理、再エネ電力で~」より

うーん、正気か?というのも「道路の維持管理に使う電力」って、大雑把に整理すると以下のようなものがあるんだよね。

  1. 街灯・道路照明
    • 一般的な道路照明、交差点や歩道の照明も含む
    • トンネル内の照明も対象
    • 点滅灯・案内標識の照明なども含まれる場合あり
  2. 信号機・交通制御設備
    • 信号機のランプ・制御装置
    • 交通監視カメラ・センサーや表示板(電光掲示板)
  3. 道路関連施設の電力
    • トンネル換気装置や排煙設備
    • 道路維持用ポンプ・排水設備(雨水・地下水管理)
    • 道路管理用建物の照明・暖房・空調
  4. 管理用通信・監視設備
    • 道路管制センターや情報システムで使用するサーバ・通信機器
    • 道路状況の監視カメラ・気象観測装置

利用の実例

もちろん、既に幾つも利用例はある。

SA/PA名
道の駅なるさわ

こんな感じで中央分離帯への設置や料金所の屋根への設置など、太陽光パネルを設置する余地はまだあるのだとは思うのだけれど、それでもごく僅かである。

現在、15%程は再エネ発電で給電を賄っているといわれているが、それだって随分努力した数字である。でも、それ以上となると電力安定性の観点から推奨できない。

そもそも信号や電光掲示板など安全に関わるインフラは、停電時であってもなんとか運用したい部類の設備である。まさか、「夜間や天候の悪い日は電力がないから一時的に使えません」なんてバカバカしいことを言うわけにもいくまい。

そうすると、あっちこっちに充電施設を作る必要があり、それの管理が必要になる。莫大な予算が必要になるよね。

パトロールカーのEV化

ため息しか出ない

そして、これが一番バカバカしい。

パトロールカーの電気自動車(EV)への転換も進める。EV普及に向け、サービスエリアや道の駅の充電器拡充や、走行中の車両に給電する新技術の開発にも取り組む。

産経新聞「道路の維持管理、再エネ電力で~」より

いや、「道路の維持管理に使う電力のうち、再生可能エネルギーの比率を6割に!」という崇高な目標はどこ行っちゃったのさ。

産経新聞も、同じ記事内で矛盾する話を並べるのは止めようよ……。

パトロールカーをEVに限定すると、運用的な話も問題にはなるんだろう。けれど、一番の問題は日本国内で流通しているEVが少ないので、車種が限定されてしまって、場合によっては外国産を購入せざるを得なくなる。

環境に配慮してBYD製のEVを導入しました!税金で!って、どんだけ国民を馬鹿にすれば済むのだろうか。

充電器拡充などの愚策

日本各地にあるサービスエリアや道の駅というのは、割と狭い場所が多い。これは広いサービスエリアを作るには、山間部を切り開かねばならず結構お金がかかるという事情があるからだ。

そんな狭いサービスエリアに充電器を配置すれば、設置エリアの占有時間が長くなってしまうので、結果、混雑を招く可能性が高い。

当然、今まで道路の維持管理に使っていた電力と比べてもかなり大きな電力を確保する必要があるし、安定的な電力供給のための設備も必要になる。

余裕のある場所ならば良いが、充電器の利用率を考えながら適宜拡充していくのが望ましく、国家の政策として進めていく必要があるのかどうか。

「走行中の車両に給電する新技術の開発」って、そりゃ需要はあるし有用なんだろうけれど、これも高速道路だけに特化する運用だとどうしても無駄が多い。高速道路のためだけに専用車両を作るわけにはいかないでしょう。

まとめ

全体的に見て、今回報じられた国交省の方針は、理想と現実のギャップが大きく、運用面を考慮していない目標設定が目立つ。LED化や再エネ利用、EV導入の方向性自体は世界的に見てもその方向に進む可能性は高いんだけど、数字として掲げられた目標の達成可能性は極めて疑問である。

達成が極めて困難な二酸化炭素排出量削減目標掲げて税金無駄に使うのは、本当に止めて欲しいのだけれど。

おわび

ええと、コメントを戴くまで気がつかなかったのだけれども、産経新聞の見出しに「パトカー」と略していたので、てっきりEV化するのは警察車両なのか?と考えていたんだけれど、よく考えたら警察庁は国交省管轄ではなく、国家公安委員会の下部組織。つまり、内閣府管轄である。

というわけで、本文中に出てくる「パトロールカー」というのは、おそらくこちらのことだ。

はっはっは、これがBYD製になったらトヨタと一緒に怒りを国交省にぶつけたいと思う。え?パトロールカーはトヨタ製だけじゃない?そりゃ失礼。

コメント

  1. 匿名 より:

    少年が「将来野球選手になりたい!」などとの夢は、大きくもったほうがいいけど・・・。

    国交省、ましてや閣議決定とか、そういうのはもっと現実路線でいかなきゃいけないと思うんですよね。

    製品、設置、人件費、交換サイクルによる環境負荷、運用費。
    予算は無限じゃないので「もうちょっと考えろや」とは言いたい。

    国会で日本の財政はギリシア以下なんて言っちゃって、
    そのくせ意味もないところにじゃんじゃんお金は使う。

    食事もお菓子もたらふく、でもダイエットっていうアホじゃないんだから。

    頭に虫が湧いちゃってんのかなと思います。

    閑話休題。

    上記に書いてある街路灯については壊れた(あるいは壊れそうな)ところから、
    維持管理の一環で、その時点での最適なものに変えれば良いし、実際そうしていると思う。
    (まあ低圧ナトリウムランプは、省エネでもモノクロの世界になっちゃうから街路灯としては交換というのはあるかもしれない)

    信号機も同じで、風雪による影響はカバーや車のリアウインドにあるようなヒーターで落とすなんてのもあるし、軽量化のメリット(台風とかの倒壊を減らす)もあると思います。

    いずれにせよ長寿命による交換サイクルのメリットは大きいわけで(特に信号機ヒーター場合、消費電力はそんなに削減できなくても)、交換時期や新設で必要になったらやればいい話。

    EVは定期配送(郵便局とか牛乳屋さんとか…郵便局でのホンダのEVバイクの火災は残念でしたが)は向いてても、緊急用途にも使うパトロールカーには向いていない。
    おっしゃられているように車種も台数も充電設備も少ない。

    だらだら書きましたけども、何が言いたいかといえば、
    国交省が出すべきは「再生可能エネルギーだ!」とかを全面に出す政策や目標ではなく、
    もっと運用とか考えて、できるところからやるってこと。
    それが省エネ方向ってのが大切ということ。

    私もやはり目標がズレまくっている思います。

    関係ないですけど、
    国交省そんなことしてるんだったら、高速道路の緊急電話撤去とかJRの駅構内時刻表撤去とかやめさせてほしいんですがね。
    いくら携帯電話・スマホがあっても、あるのと無いのじゃ大違いだと思うんですがね。
    特にJRなんか自社の同じポスター貼るくらいだったら一箇所ぐらい時刻表貼っとけと思うんですが。

    • 木霊 木霊 より:

      官僚が政策レベルで夢見がちって、もはや国民にとっては悪夢です。

      さておき、この目標って国が管理する道路の街灯に限定するのか、地方管理の街灯まで含めるのかで随分と話が違ってくるんですが、その辺りも判然としないんですよね。
      だから、多分掛け声だけかけて「がんばって」という積もりなんでしょうけれど、恐らくは逆効果なんだと思いますよ。
      この手の設備の製造をしているところって、安全係数を多くとる特殊な設計に対応出来るところが多いので、受注したら直ぐ発注できるような企業じゃないわけで。
      今までの予定通りの発注を熟す程度の処理能力はあるんですが、さて、これが国からの指令で例えば、発注が1.5倍になったら果たして対応出来るのでしょうかね?

      とまあ、色々考えちゃいまして、調べてからの号令なのか、という点も含めて疑わしいんですよね。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ……パトカーのEV化なぁ……
    基本的には、走行距離がそんなに出ない(1回の出動あたり、トータルでは凄い距離走る)パトカーの運用なら、電池持つ……のか?
    ダッシュが決め手のネズミ取りとかには向いてる……のかな?
    ただ、北海道とかでずっと待ち運用としたら、ヒーター使ったらイザって時電欠とかありそうではあります。
    ※そもそも、災害発生時に多分運用出来ない。化石燃料なら、なんなら洗面器で持って来て給油出来るけど……

    で、街灯のLED化。
    これ、演色性まで考慮してるのかな?
    LEDは明るいけど、波長の関係で演色性は劣る(ちゃんとしたのは高い)し、ナトリウムランプはあれはあれで波長が長いから霧や雪に強いというメリットも。
    ※同じ理由で、最近は七面鳥は車のヘッドライトは「爆光!高輝度!高色温度!」ではなく可能な限り色温度の低いバルブ使うようにしてます。あ、ウチのJB64は安いハロゲン球仕様なので。

    クマ撃ちの要領書みたいなのが発表されて、そっち界隈でプチ盛り上がりしてましたが、ホタル族の役人に机上検討だけで書類書かせると、ろくなもの出てきませんよね……
    ※「2mから下向けて撃て」とか、アホなことばかり書いてあります、クマ撃ち仕様書。
    https://x.com/JA14WP/status/1972460598593208495

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      EVは加速度に優れるので、違反者を追いかけ回すという用途であればダメってコトはないんですけどね。
      ただ、電欠時に十分対応出来るだけのインフラがあるのか?とか、通常運用時にコストメリットがあるのか?(そもそもEVは巡航速度の領域的な視点で見ると、高速道路での運用に向いていない)とか、色々考えちゃいますね。
      これが雪国だともう大変なのはご指摘通りですね。

      LEDは……。最近はあまり見かけなくなりましたけど、外からコンビニの中を見たらやたらと暗い店舗があって、店の中に入ったらLED照明だったってなことがありました、指向性が高いせいか、ライトの並びによっては外から店舗内を見た時にやたらと暗く見えるわけです。というわけで、指向性の問題はそれなりにありまして、それも結構問題ではあるんですよね。

      なお、クマ撃ちの話は……、あれネタだと思ったら本気なんですね。
      素人目にも「絶対ダメだろう」と分かる話なのに、どうしてああなってしまったのか理解不能です。

  3. 砂漠の男 より:

    警察車両をEVに転換ーしかもBYDとな!?ーした後で、警官たちが死傷しないといいですけど。
    政治家や官僚は、自分たちが自傷しないと、目が覚めないもんですが、警官たちに何かあってからでな遅いんですけどね。
    いつまで支那に貢ぎ続けるのか..(キックバックは何割なんでしょうね?)

    • 木霊 木霊 より:

      パトカーのEV化というから、高速道路交通警察隊(高速隊)の車両を電化する話かと思っていたのですが、よく考えたら国交省管轄なので交通管理隊のパトロールカーのコトですね、これ。
      すみません、「パトカー」と略してしまうと誤解を生じるような。

      いずれにせよ、EV化の強制は碌な事になりませんけど。