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ロシア人はお金を求めて質屋に殺到

ロシアニュース
この記事は約8分で読めます。

ロシア経済、いよいよだなというニュースを1つ。

銀行やマイクロファイナンス機関への要件が厳しくなった後、ロシア人はお金を求めて質屋に殺到した

2025年9月29日

ロシア中央銀行による過剰債務対策は、多くのロシア人を質屋に頼らざるを得なくさせた。中央銀行の半期決算によると、1~6月期の個人向け融資は前年同期比42%増の1900億ルーブル、融資件数は16%増の930万件、ポートフォリオは28%増の940億ルーブルとなった。

モスクワタイムスより

ロシア中央銀行の経済政策は、金利を高く維持してインフレ抑制というオペレーションのようなのだが。それでも融資は増えているとよいう話。だが、それに耐えられない人々もいるようで。

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ロシア経済の疲弊

ロシアの金利施策が影響

先ずは先日の記事から。

この記事ではロシアの人々が物々交換を始めているという話を紹介した。ロシア政府が消費税を引き上げるような政策を選び、インフレ抑制に向かうという都合の良いストーリーが語られていた。

が、実態はなかなか厳しい。

ウクライナ侵攻以降、通貨防衛のために政策金利を引き上げ、その結果、銀行自身の調達コストが上昇して貸出金利が上がる結果に。お金を借りる人には当然負担になるのだけれど、お金がない人はそれでも借りざるを得ないし、金利が上昇したことで既に借りている人のローンも返済が困難に。

マイクロファイナンスからの借り入れ

マイクロファイナンス(MFO)は、日本でいう消費者金融と呼ばれる組織に近く、銀行から融資を受けられない人が利用する。当然、高金利設定なのだが今や政策金利は20%と高金利に設定されていて、市中金利は更に高い。MFOともなれば年利100%なんてところもあるらしい。

が、スマホアプリやSMS認証でお手軽に借りられるという利点はあるらしい。とはいえ、一度に少額を借りる程度のところが多いようだが。

中央銀行によると、今年上半期の質屋の借り手1人当たりの平均融資件数は2件だったが、2024年には1.7~1.8件に増加した。さらに、質屋の3分の1が新規顧客の獲得により顧客基盤が拡大したと報告しており、そのうち41%は新規借り手が以前に銀行やマイクロファイナンス機関から借り入れを行っていたと述べている。

モスクワタイムス「銀行やマイクロファイナンス機関への~」より

で、ここのところ金融機関やMFOの利用者が増えることで、かなり社会問題にも発展しているようだ。

ロシアでは、融資条件の厳格化に伴い違法融資が増加する見込み ― 報告書

2025年8月1日

国営世論調査機関VtSIOMの新しい報告書によると、ロシア全土で借入条件が厳しくなるにつれ、増大する負債を管理するために違法な貸金業者に頼る消費者が増える可能性がある。

報告書によると、
ロシア人は現在、銀行やマイクロファイナンス機関に対して37兆ルーブル(4,620億ドル)以上の債務を抱えている。延滞債務は1兆5,000億ルーブル(187億ドル)を超え、信用再編の要請は月50万件を超えている。5月末時点で、不良債権は個人向け融資ポートフォリオの5.7%を占め、前月比で増加した。

モスクワタイムスより

融資が増えていることで、返済できなくなっている人も増えているようで、ロシア政府は借入条件を厳格化して、無理な借り入れをしないように働きかけていたようなのだ。

質屋の利用促進

だが、これが冒頭のニュースのように人々に質屋に走る結果に。

質屋は流動性のある担保があれば、事実上融資が保証されています。中央銀行によると、今年上半期の融資申請者のうち、融資を受けられなかったのはわずか0.4%でした。中央銀行は、これが潜在的な顧客を引き付けていると指摘しています。中央銀行のデータによると、6月30日時点で、質屋の融資希望者は235万人、契約件数は470万件に達しており、これは年初より25万人、82万件増加しています。需要の高まりを受け、質屋は新規出店を進めており、6月30日時点で1万300店を超えています。

モスクワタイムス「銀行やマイクロファイナンス機関への~」より

この話は、物々交換と本質は同じである。

流動性の問題があって政策的に抑えようとした結果、物々交換で欲しいものを手に入れるような人が増えているという話。

当然、質屋でお金を手に入れるというのも、そう長いことは続かない。ロシア経済もこの状態を維持できない。

「彼らは一つのライフスタイルに慣れてしまっているが、もはやそれは持続可能ではない」と彼は言った。「借金できるうちは借金をするだろうが、合法的な貸し手から締め出されると、闇に潜るだろう」

モスクワタイムス「ロシアでは、融資条件の厳格化に伴い~」より

モスクワタイムスもなかなか辛辣である。もう、闇市経済状態に移行しつつある。質屋の利用拡大・物々交換の増加はその入口なのだから。

統制下にある

ガソリン供給不安

既に、ガソリン不足の話もコラムで紹介した。

本日のタス通信では「コントロール下にある」と強がっていたが、なかなか説得力はない。

ロシアのガソリン事情は完全にコントロールされている – ノヴァク

10月2日 1時40分

ロシアのアレクサンドル・ノヴァク副首相は、ヴァルダイ国際討論クラブの年次総会の傍らで記者団に対し、ロシア各地域におけるガソリン事情は引き続きコントロールされており、全国の需給バランスは確保されていると述べた。

「状況は完全に制御下にあります。エネルギー省は、通常通り、すべての地域と積極的に連携しています。全体として、現在、全国的に安定した需給バランスが保たれています。一部地域における特定の供給問題は、エネルギー省が地方自治体と協力して手作業で解決しており、必要な石油製品の供給と供給を確保しています」とノヴァク氏は述べた。

タス通信より

恐らくは、ロシア国民がいま一番関心のある事柄が、ガソリン問題なのだろう。不安を打ち消すようなメッセージを出したと、そんなところだろう。

実際に供給不安が出ていて、メッセージとしては輸出しないということを表明することで落ち着かせる積りみたいだけど。

クリミアのスタンドに給油待ちの行列、ロシアでガソリン不足続く ウクライナの攻撃影響(字幕・27日)

September 29, 2025

ロシアが支配するクリミア半島セバストポリのガソリンスタンドで26日、給油を待つ長い車列が撮影された。ウクライナがロシアの製油所や輸出施設へのドローン攻撃を強化する中、ドライバーたちは影響を実感している。

ロイターより

ガソリン価格が上がり、入手しにくくなっているのはロシア国民にも実感としてある。一部地域では、配給制になっているようだが、それもいつまで続けられるのやら。ウクライナのドローン攻撃は、思いの外効果があるようだ。

それなりには。

コメルサント紙が、製油能力の4割が失われたという報道をしているようで。この情報、複数の筋から出ているので恐らくは間違いなかろう。

物資が滞る

そして、一時的な事態のようだが、インフレを加速する要因の1つとしてこんな話も。

まるで渋滞に消えたかのように

2025年10月2日午前2時41分

カザフスタンとロシアの国境は中継拠点であり、国境封鎖に伴う中国からの輸入貨物の状況は、10月1日から8日までの中国の祝日期間中、中国の国境検問所が閉鎖されることで、まもなく悪化する可能性があります。数千台のトラックが停止しているのは、違法輸入スキームに対する大規模な検査によるものです。運送業者は、これをカザフスタンが西側諸国の制裁をより厳格に遵守する政策へと転換した兆候と捉えており、一部の貨物が中国・ロシア間、または中国・モンゴル・ロシア間の国境検問所に迂回されることを予想しています。これにより、輸送量も減少するでしょう。

コメルサントより

既に支那の長期休暇「国慶節」の期間に入っているので、トラック輸送の列が割を食っているというニュースである。

10月中旬くらいまでには、この状況も解消しそうだ。だが、インフレは加速しそうな雰囲気である。市中の金融引き締めをしたところで供給がこの通りなので、まあなんというか、ね。

特別軍事作戦ではない

プーチンは、まだ「特別軍事作戦」を強調しているようだ。

ロシア、軍事作戦継続を明言 「張り子の虎」発言を一蹴

2025年9月24日 18:47

ロシア大統領府は24日、ロシア経済の弱体化を指摘し「まるで張り子の虎」としたドナルド・トランプ米大統領の主張を一蹴し、ウクライナでの軍事作戦は継続以外に選択肢がないと述べた。

この発言は、トランプ氏がウクライナはロシアから全領土を取り戻せるとした発言を受けたもの。トランプ氏は、戦争の長期化で経済が弱まっているロシアを「まるで張り子の虎」と評し、「今こそウクライナが行動する時だ」と述べていた。

AFPより

さて、この主張はいつまで続けられるんだろうね。

コラムの時と同じ結びで申し訳ないが、これが1990年代のロシアと似たように「ルーブルの暴落」「配給の遅配」「シャドーエコノミーの拡大」という経緯を辿って、ソ連崩壊後のロシアと似た構図に陥るわけだ。

で、世界原油価格の高騰によってロシア経済は息を吹き返す流れになったのだけれど、今は世界中から締め出しを喰らっている。だから、無理だろうね。そうすると、この先は再び何処かに戦端を開く展開は有り得る。実際、バルト海は随分ときな臭い。そして、日本は結構危ない位置にあるんだぜ?

バルト海が火薬庫化している今、ロシアは欧州に粉をかけるのか、それとも日本に目を向けるのか迷っている。だが、対関税交渉でヨーロッパに先んじてアメリカの注意を日本に向けられたことは、日本にとって思わぬ「行幸」だったのかもしれないね。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    トカレフ、マカロフ、「純正の」AK47/M/74/12なら買い取りまっせ。

    ※マジで軍からの横流しは無いのかな?前線はともかく、補給廠や後方だとやってそう。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      さすが!
      でもそんなもの買ったら、警察が「こんにちは」してきますから、モデルガンくらいで我慢しておいて下さい。

  2. 砂漠の男 より:

    質屋で融資を受けるというのは、日本で見かける「車でローン」とか「お家でローン」とかそういう類の話ですかね。

    ロシアは戦時不況の真只中で、ロシア人の実質平均所得は減っていますから、会社の運転資金だの個人の生活費だので資金需要は高いんでしょう。

    さらに、懐のカネ回りが悪いから犯罪や事件も増えているでしょう。ロシアメディアによれば、メタノールを飲んで大量死するおそロシア事件も起きているそうですよ。

    • 木霊 木霊 より:

      質屋がロシア人に利用される背景に、物価の高騰があるんじゃないかなと。
      詳細報道がないので実態は分かりませんが、マイクロファイナンスのほうが「クルマでローン」とかの類で、質屋は本当に質草入れてお金を借りるタイプなのではと。

      随分とロシア国民も疲弊していると思いますが、どうなるんでしょうね。