「支那の嫌がらせ」に関する記事2連発になって申し訳ないのだけれど、重要なテーマであることに気が付いたので記事にした。
中国空母「遼寧」、艦載機発着260回 宮古海峡を北上し東シナ海へ
2025/12/13 18:49(最終更新 12/13 20:30)
防衛省は南西諸島沖の公海上で活動していた中国海軍の空母「遼寧」の動向について、12日に沖縄本島と宮古島の間の海域(宮古海峡)を東シナ海に向けて北上したと明らかにした。この海域を南下した後の6日以降、空母艦載機の発着艦を計約260回確認。航空自衛隊機が緊急発進(スクランブル)して警戒に当たり、領空侵犯は確認されていないという。
毎日新聞より
厄介な国だなぁ。
原子力空母とROE
嫌がらせを続ける空母の帰還
毎日新聞など引用したくはなかったが、分かりやすい図を作っていたので参考にさせていただいた。

完全に嫌がらせに来ているが、とりあえず空母「遼寧」は帰還の途についたということなのだろう。
軍事演習をしていなければ国際ルール上は問題ないものの、「日本の領海およびEEZを通過」ではなくて「EEZ内をうろうろした」という状況。加えて、軍事演習を行ったのは日本のEEZ内である。ここで軍事訓練をやった段階で、グレーである。明確な禁止規定はないものの、沿岸国の権利を無視している。
誤解している人も多そうだが、今回支那がやったことは空母での訓練も含めて、国際的に極めて非常識な日本への威嚇行為そのもので、全く合法性の欠片もない。
4隻目建造の噂
更にこんなニュースも。
中国、初の原子力空母を建造か 国基研入手の衛星写真で判明 「4隻目」配備へ基地拡張も
2025/12/15 20:12
中国が遼寧省大連市の造船所で、初の原子力空母建造を開始した可能性が高いことが、シンクタンク「国家基本問題研究所」(国基研、櫻井よしこ理事長)が入手した衛星写真の分析から明らかになった。山東省青島市の海軍基地では拡張工事が行われており、近郊には海軍飛行場が新設され、4隻目の空母就役に備えているとみられる。日本周辺での演習を行った空母「遼寧」と同じ青島を母港とすれば、東シナ海を経由した第1列島線から第2列島線にかけての活動が活発化することが予想され、日本の防衛体制のあり方にも影響を与えそうだ。
産経新聞より

なんと、噂では囁かれていたがとうとう原子力空母が形となって現れ始めたのである。様々な準備が始められていて、「今の経済状態でそんなことやっている場合か!」と説教をしたい気分ではあるが、現実的にはこれが空母として形になる前に、日本として対処を考えねばならない。
空母「遼寧」との根本的な違いは、文字通り推進機関がディーゼルエンジンから原子力機関になることで、活動時間が劇的に延びることである。
また、恐らくではあるが速力も上がる。
過去にこんな話があったが、本当に原子力潜水艦の建造を検討しなければならない段階に来ているのである。
原子力潜水艦のポイント
過去紹介した記事でも、少し勘違いされている方がいたようなので、原子力潜水艦について少し言及しておきたい。
- 対核抑止力 かつての日本の潜水艦運用のドクトリンは待ち伏せ攻撃だったが、シーレーン防衛のために、原子炉で駆動するというメリットの高速航行・長時間潜航の必要性が高まっている。
- 建造費について 最新型のたいげい型潜水艦6番艦「そうげい」で736億円の建造費がかかったとされていて、建造計画中の10番艦は1,200億円に値上がりするとされている。一方で、例えばフランスの原子力潜水艦である「シュフラン」は1,300億円相当のコストがかかったとされているので、現在の物価高騰を加味し、建造施設の確保などを考えると3,000億円程度の建造費はかかりそうだ。参考までにバージニア級潜水艦のブロックVの建造費が4,000億円程度だとされている。
- 維持費について 良く指摘される原子力潜水艦の維持費に関しては、実際に高額ではある。だが、その高額になる理由が燃料交換の際の作業代が大きなウェイトを占めていることを考えると、アメリカで行われるように退役の時期まで燃料交換不要な濃縮した燃料を積んで作戦が行えるようにするのであれば、相対的に維持費高騰ということにはならないだろう。
- 騒音について 静粛性に関しては、今の原子力潜水艦は飛躍的に向上している。機関停止できるディーゼルエンジンタイプと比べられないものの、作戦遂行上差し障りのあるような騒音を出すという話はもはや過去の常識らしい。
原子力空母についていくだけの速力を出す前提である場合、原子力潜水艦の建造を視野に入れても良いのではないか?と、思えるだけの材料は揃っていると、僕は考えている。少なくとも運用の検討は今すぐ着手すべきである。
交戦規定の見直しは必須
しかし、今回の事態で一番大きく懸念をしたところは、支那軍機のJ-15が30分間にわたって断続的に自衛隊機F-15に対してレーダー照射を続けたという点だ。
この行為はロックオンに相当すると考えられ、ロックオンされたと言うことはすなわち、相手側からの攻撃意思に晒されたということに他ならない。
結果的に、自衛隊のF-15戦闘機はその嫌がらせに耐え続けたわけだが、パイロットは極度の緊張感に晒されたことは想像に難くない。
これの意味するところが、どういう話に帰結するのかを理解されていない方が多いので少し整理しておこう。
ロックオンされたということは、相手側から空対空ミサイルを発射される可能性があったと言うことである。「そんなことはない」と思われる方は此処でブラウザを閉じられるのが良かろうと思う。
ここからは思考実験の意味合いが強いがちょっとだけお付き合い願いたい。
先ず、ロックオンされJ-15から空対空ミサイルが発射された場合に自衛隊機が取り得る行動。
- 回避行動の前にチャフ・フレアをばらまき、回避行動に移る
- 次弾に備えて現場を離脱
これだけなのだ。では空対空ミサイルを幸運にも避けられた場合に取り得る行動。
- 相手側の戦闘機および空母に対して行動に対する抗議
- 現場からの離脱
これだけである。
不幸にもミサイルの破片があたって、飛行は可能だけれども能力が低下してしまった場合。
- 相手側の動きを見極め、現場からの離脱と応援要請
- 次弾発射の予兆としてロックオンされた場合に反撃。
最後のケースで次弾発射の予兆が確認された場合のみ、反撃が許される。が、反撃をして相手側に損傷を与えてしまうと、パイロットは刑事事件を想定した裁判を起こされる可能性があるのだ。なお、相手側のパイロットは不起訴相当であるが。
司法リスク増大
自衛隊機は、恐ろしいことに国家防衛の任務に就きながら、このケースにおいては「正当防衛が成立するか」について裁かれることになる。
検察は、自衛隊員が世界のどこにいて職務遂行したとしても、刑法適用の検討をすることになる。正当な職務執行であるか?或いは正当防衛に当たるか、緊急避難的措置であったかという用件を、民間の裁判官が行うのだ。
一般の刑法における正当防衛は、「急迫不正の侵害」に対し、「やむを得ずにした行為」である必要があるため、空対空ミサイルで迎撃する必要があったか?という話になる。
そういう意味で、今回ロックオンされてその後の事態に発展しなかったことは、極めて不当な前例を作ったことになる。「ロックオンされても空対空ミサイルによって撃墜されるとは限らない」=「急迫不正の侵害にあたらない」というロジックが成立するのだ。
諸外国の場合、交戦規定(ROE)に沿った行為かを判断され、ネガティブリストに抵触しない行為(ロックオンされて即時反撃するケースは抵触しない。これはロックオンされた時点で生還率が著しく低下するためである)かを見られて、刑事訴訟は成立しないが、日本の場合はこの期に及んで反撃ができない。次弾が発射されて運動性能が低下しているといった状態で初めて、迎撃ができる条件が整うのである。何故なら「必要最小限」でなければならないと定義されているのだから。
これは、空自のパイロットに類似任務に就いた段階で死ねと言っているのと同義である。
まとめ
支那が狙ったのか、或いは偶然そうなったか。そんなことは現時点ではもはや問題にはならない。「ロックオンをされたが、ミサイルを発射されなかった」という前例を作ることが目的であったとすれば、実に狡猾である。
日本の構造的な欠陥を突いた戦略であるとも言えよう。
もはや一刻の猶予もないので、可及的速やかに憲法改正を視野に入れた法改正、つまりネガティブリストからポジティブリストに切り替えるような法整備をすべきである。人命を守るためにはどうしても必要なことだ。
よく考えたら、韓国海軍にP1哨戒機がロックオンされた時点で、この想定はしなければならなかったんだよね。支那はその時にそのことを検証したのだろう。日本は、胡座をかいていたんだねぇ。




コメント
第二列島線の考慮しているでしょうね
原子力空母が出来たらあのボロボロの空母の改善点を多分?考慮するでしょうね
ロックオンについては自衛隊の方の心労をお察しします
自衛隊は攻撃されてから反撃が(多分司令部と防衛大臣の許可がいるでしょね)で余計に大変です