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政府・与党、弾薬生産で軍需工場の国有化を検討

安全保障
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仕事するなぁ、高市政権は。

政府・与党、弾薬生産で軍需工場の国有化を検討 防衛産業再編も視野

2026年1月21日 18時30分

政府・与党は、有事に自衛隊が長期間戦い続けるために必要な弾薬の安定供給を図るため、軍需工場を国有化して民間企業に委託し、弾薬を生産することを検討していることがわかった。防衛省はすでに関連企業との協議を始めており、防衛産業の再編も視野に入れる。年内に改定する安全保障関連3文書や新たに策定する防衛産業戦略にこうした方針を反映させる考えだ。

朝日新聞より

検討しているだけじゃなくて、是非とも実現して欲しい。

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工廠(こうしょう)を作ろう

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利益の出る体質ではない

この話は、実は過去にも触れている。

工廠とは、軍需品を開発・製造・修理・貯蔵・支給する国営の施設である。

複数の政府・与党関係者が明らかにした。国が軍需工場などの設備を取得し、民間に運営を委託する「GOCO」(Government Owned, Contractor Operated)という方式の採用が検討されている。

朝日新聞「政府・与党、弾薬生産で軍需工場の国有化を検討~」より

この記事だけだと、何がなんだかわからないよね。

イメージとしては水道民営化でコンセッション方式を採用する感じに近いだろうか。ベクトルは違って、基盤維持と安定供給を図るために民間に作り続けてもらう感じなんだけどね。

そもそも兵器産業って儲からない産業で、特に日本企業の作る兵器は儲からない。多くの映画や小説などでは「悪の軍需産業」が大儲けをして戦争を引き起こすなどというストーリーを描きがち。だが、事実は逆で、一部の特殊な国家以外は儲けられない構図になっている。

だが、どちらかというと宇宙開発に似た話で、軍事グレードに耐えられるための品質を追求することで、民生品に転用できる。インターネットやペニシリンなど有名な話は色々転がっているが、そういった方向で多少は利益還元できる可能性はでる。

が、少量の特殊生産品は、とにかく手間ばかりかかって儲からない。アメリカのように世界中に武器を販売できる体制になっていれば別だけど、日本みたいに「ダメ、絶対!兵器輸出」などと言っているところは儲けられるわけがないのである。

ようやく動き出す

で、儲からない産業なら止めれば良いかというと、兵器製造に関してはそう単純ではない。

特に弾薬の製造などという分野は、「輸入すれば良い」という話にはならないのである。多数備蓄するにせよ、火薬の使用期限の制約があるので常に更新していかねばならない。どこかでスケジュールが狂って弾薬不足になれば、それだけで防衛力は低下してしまうのだ。

戦前、戦中の軍隊直轄の国営軍需工場は「工廠」と呼ばれ、今回の検討されているGOCO方式は現代版「工廠」とも言える。昨年6月の自民党安保調査会は政府への政策提言で「国営工廠導入」を明記。10月の自民と日本維新の会の連立合意書でも「国営工廠及びGOCOに関する施策の推進」が盛り込まれた。

朝日新聞「政府・与党、弾薬生産で軍需工場の国有化を検討~」より

だからこそ、工廠を作って必要量を安定的に確保しようということなんだね。

で、岸田政権の時にようやくこの話が動き出して、今に至る。公明党がいなくなったら途端に話が動き出すのは、ある意味ヤバいね。

自民党が国営軍需工場「工廠」の復活を目指す…その意味とは 識者は「戦争ができる国」づくりを危ぶむ:東京新聞デジタル
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東京新聞はしつこく牽制球を投げていたみたいだけれど、余り読む価値はない。

一応、左派の主張しがちな論点を並べて、潰しておこう。

  1. 安全保障のジレンマ:現実の時系列を無視した因果逆転。
  2. 死の商人:グローバル市場の構造を無視した自己満足的倫理。
  3. 目の前の生活優先:国家存立という前提を欠いた砂上の楼閣。
  4. 戦時体制への回帰:実体験に基づかない、空想上の恐怖。

だいたいこれの類型で主張してくるのだけれど、大体論理破綻している。残念ながら、今の世界情勢では軍事力の強化は避けて通れない。

まとめ

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というわけで、久しぶりに工廠の話に触れたが、方向性としては実現せざるを得ないところに来ている。

今回の「弾薬生産における軍需工場の国有化(GOCO方式)」の検討は、思想やイデオロギーの話ではない。 日本の防衛を、現実に維持できるかどうかという、極めて実務的な問題だからだ。

工廠は、戦争をしたいから作るのではないんだよね。戦争にならないために、平時から用意しておく最低限のインフラなのである。

追記

書こうと思って忘れていた話について、追記で少し触れておきたい。コメントでも示唆頂いて、落としていたことを思い出したのである。

防衛省、日本製鉄・呉跡地の取得向け基本合意 拠点整備へ

2025年7月31日 17:00(2025年7月31日 17:30更新)

防衛省は31日、日本製鉄の瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)跡地に計画する複合防衛拠点を巡り、同社と売買契約の締結に向けた基本的事項で合意した。内容の詳細は明かしていない。合意をもとに不動産の鑑定評価を進める。購入金額などの交渉を加速させる。

日本経済新聞より

過去にも触れた気はするが、ここが工廠の一番有力な候補地であると噂されている。

立地条件も悪くないので、国家が後押しする造船所という可能性もあるが……。根回しも進んでいたし、当時の防衛大臣であった中谷元氏が積極的に動いていて、地元も基本合意している。

日本製鉄跡地に防衛拠点整備、広島・呉市長が容認表明

2025年5月16日 19:30

日本製鉄の瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)跡地に「多機能な複合防衛拠点」を整備する防衛省の計画を巡り、呉市の新原芳明市長は16日の市議会全員協議会で、計画を容認する考えを表明した。雇用や交流人口の拡大に触れ「呉市の活性化に結び付く。早期整備が図られるよう防衛省に要望したい」と述べた。

日本経済新聞より

もちろん、反対派もいることはいる。

クローズアップ/広島 日鉄呉跡地の軍事拠点計画/詳細知らせぬ防衛省に怒り/市民守られず捨てごま

ただ、いつものメンバーなので、余り参考にはならないのも事実。敢えていえば、日本共産党辺りはロジカルな反論をしてくることがあるため、その反論を参考に方針を修正するのはありだろう。

……なんだけど、今回の動きに関しては余りロジカルな反論じゃないんだよね。

「軍事基地を作ったら、ミサイルの攻撃対象になる!」って、そりゃそうなんだけど、その理屈は日本の何処にでも適用可能だ。そうすると、何処にもそうした施設を作ることが出来ないという結論になる。流石にそこに迎合するのは難しい。

意見を丁寧に拾っていく必要はあるが、公共の利益とのバランスをとるしかないというのが、こういった施設を作るときの鉄則なので。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    採算性が怪しいけど無くすわけには行かない、という事業については、最低でも半官半民、出来れば国有化が望ましいのですよね、経営的には。
    まあそれで、公金ジャブジャブ&左派の巣窟になった国鉄とかの二の舞はゴメンですが。
    ※鉄道含むインフラ・ライフラインは維持という意味では公的な方が良い、が自論です。
    ※郵政民営化は最悪の政策だと今でも思ってます。小泉絶許。

    その意味で、防衛産業はその際右翼みたいなもの。
    受け手の企業からすれば利益も出ないし(実は、73式トラックを毎年一定数受注してるいすゞも利益はほぼ出てないそうです)、たまにしか作らないもののラインと治具と工員を確保しておくだけでもコストがかかる。
    そういうところを、もっと国民にアピールするべきなんですが……
    「だったらそんなもの要らないじゃん」ってするのがマスコミの仕事ですからねぇ……

    ※近々、呉というか大和ミュージアム行く予定があります。改装中しか見れない『ウォーターライン状態の零観』が目当てです。製鉄所跡地もチラ見くらい出来るかな?

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      「採算性が怪しい」というのは、仕方のない面はありますが、採算がとれるように外国に輸出すると「死の商人」だと大騒ぎする。どうしろというのか。
      まあ、国鉄にも良い側面はありましたが、時代に合わなくなったから解体されたわけで。
      郵便局も、中の人に聞くと、「良い面」も「悪い面」もあったようですね。

      ともあれ、工廠への着手は、必要不可欠だと思っていますから、頑張って欲しいと思っています。