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なぜ今、日本なのか――カーニー訪日に透ける資源と安全保障

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北米ニュース
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「カナダの鳩山由紀夫」と揶揄されたトルドー氏から政権を引き継いだカーニー氏だが、このタイミングで訪日である。

カナダのカーニー首相、初来日し高市首相とエネルギーや重要鉱物など意見交換へ…来月6・7日

2026/02/24 17:09

政府は24日、カナダのカーニー首相が3月6~7日に来日し、高市首相と会談すると発表した。カーニー氏は昨年3月の就任以来、初の来日となる。

讀賣新聞より

讀賣新聞のニュースは割とあっさりとした内容だが、今回はこのニュースを軸に深掘りしてみよう。

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カナダの国際上の立ち位置

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マーク・カーニー首相の「実力」

最初にお断りしておくが、今回の話は妄想成分というか予測ベースの成分が多めである。その辺りには注意して読んで欲しい。

先ず、カーニー氏について。

  • 2025年3月14日にカナダの首相に就任。前任のトルドー氏が同年1月に辞任したため、その後継として党首選挙に勝って首相となっている。
  • 同年5月6日に、アメリカ大統領のトランプ氏と会談。この後、関税交渉で揉める。
  • 第120代イングランド銀行総裁を7年務めた人物で、数字と論理に極めて強く、グローバルな資金流動や資源価値を冷徹に分析できるのが強み
  • 一方で、閣僚や議員などの政治経験がないため、政治的交渉は不安視される面も

経済・数字に強く超一流のリアリストである一方で、政治的な立ち回りに懸念のある人物というのが一般的な評価のようだ。

少なくとも、「友愛」を掲げる(比喩である)トルドー氏よりは話が出来るタイプなのだと思う。

このタイミングでの訪日

カーニー氏の訪日について、讀賣新聞はこのように伝えている。

カナダ首相府によると、会談ではエネルギー、重要鉱物、食料安全保障での協力拡大が議題となり、安全保障面での連携も意見交換する。

讀賣新聞「カナダのカーニー首相~」より

ここで言う「エネルギー」は、カナダが世界有数のエネルギー資源国であることを指していると理解できる。実際、石油、天然ガス、石炭、ウランなどのエネルギーを産出できる資源国である。だが、カナダはこの豊富な天然資源を保有できている点を活かしきれていない。

つまり、日本の資本・技術に対する期待があると見るのが自然だろう。JOGMECも既に関与している関係もあって、ここを何とかしたいという期待があるのは容易に想像できる。

カナダ連邦政府、Trans Mountainパイプライン拡張プロジェクトへの追加資金投資を行わないと表明、プロジェクトの進行は事実上停止
JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト

次に「重要鉱物」は、エネルギー関連資源の他に、レアアースやリチウム、銅、タングステン、ガリウム、ゲルマニウム、ニッケルなどの地下資源だと考えられる。既に、ドイツと協力拡大の約束をしているのだが、ドイツは経済的に微妙な立ち位置にある。味方を増やしたいのが本音だろう。

ドイツ、カナダと重要鉱物で協力拡大、供給網強化と脱中国依存を目指す(カナダ、ドイツ) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

次に「食料安全保障」だが、カナダは極めて高い自給率と品質を誇る農業国ではあるが、ブランド力はイマイチ弱い。ここの改善を図るべく、支那に近づいたが、おもちゃにされてしまった経緯があるので、支那との距離を置きたいという狙いもあるだろう。

中国、カナダ農産品に関税発動

2025年3月20日 15:47

カナダ産の菜種油や豚肉を含む製品に対する中国の関税が20日、発動された。業界団体は、新たな課税が農家に「壊滅的な影響」を与えると懸念を表明している。

今回の関税措置は、昨年カナダ政府が中国製品に課した関税への対抗措置として、今月発表された。

菜種油、油かす、エンドウ豆には100%、水産物と豚肉には25%の追加関税が課される。

AFPより

この菜種油の話は今年初めに和解したという報道が出ているが、支那の都合で関税をころころ変えられても困るというのがカナダの本音だろう。これはアメリカに対しても思うところだろうが。

戦略的な関係を強化

カーニー氏がリアリストであるということを踏まえれば、選挙で大勝した高市氏との会談も長期的な安定を目指したものであると理解した方が良いと思う。

ACSAとは 自衛隊と他国で協定、安保の連携緊密に

2018年10月30日 2:00

自衛隊と他国との間で物資や役務を融通しあうための協定。

~~略~~

カナダ、フランスとは署名した。署名まで進めばインドが6カ国目となる。安全保障面で連携が深まり「準同盟国」のオーストラリアに近い位置付けになる。

日本経済新聞より

日本とのACSA協定は署名から発効までに時間がかかって、2025年に入ってようやくスタートした。

日本との準同盟化を目論んだオーストラリアとの関係も、ACSA協定が前提にあった話。ACSA発効によって、後方支援や補給の法的基盤が整う。これは単なる友好関係を一段押し上げる装置だといえる。つまり、カナダは準備を終えているのだ。

既に、AUKUSへの色気を見せているカナダである。安全保障的な導線は色々な意味で敷かれていると見た方が良いだろう。

これらの目標の達成に向け、マーク・カーニー首相は、2026年2月26日から3月7日までの日程でインド、オーストラリア、日本を歴訪し、貿易、エネルギー、技術、防衛の分野でカナダの労働者と企業のために新たな機会を開拓すると発表しました。首相は、カナダにとってインド太平洋地域の最も強力なパートナーであるこの3カ国を訪問することで、カナダの安全保障と繁栄に不可欠な地域的連携を深化させるとしています。

カナダ政府のサイトより

インド、オーストラリア、日本の順に歴訪したということと、木原氏のこの発言。

木原官房長官は24日の記者会見で、「日本とカナダは先進7か国(G7)や環太平洋経済連携協定(TPP)などのメンバーで、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向けて連携する重要な戦略的パートナーだ」と述べた。

讀賣新聞「カナダのカーニー首相~」より

カナダが目論む安全保障政策として、支那との関係を深めるというよりも、ある程度距離はとっておきたいという思惑が見え隠れする。

当然、日本との関係を深めると支那との斥力を産むことになるが、それは折り込み済みなのかもしれない。

海洋安全保障という側面

もう1つ関係してくると思われるのが、AUKUSとオーストラリアに輸出することになっているもがみ型改護衛艦の話。

AUKUSへの参画、日本以外の国も 「候補国と年内協議」と米高官 カナダやNZが名乗り

2024/4/24 08:51

米国務省で軍備管理・国際安全保障を担当するジェンキンス次官は、米英豪の安全保障枠組みAUKUS(オーカス)の第2の柱である先進能力分野のパートナー国として、第1弾となる日本以外の国とも協力を検討していると明らかにした。22日のオンライン記者会見で「候補国と年内に協議する」と述べた。

産経新聞より

既に、AUKUSへの参加打診はアメリカからカナダへというルートで行われているが、案外この件、カナダは乗り気なのかもしれない。

カナダは、現在リバー級駆逐艦15隻を取得する計画を進めていて、ベースとなるのはイギリスの26型がベースになっているらしいのだが、これが大艦巨砲主義であるとの熱い風評被害を受けている。それに、2040年までに9隻、2050年までに残る6隻納入という、実に気の長い計画になっている。

CSC – カナダ水上戦闘艦/RCD – リバー級駆逐艦

カナダの防衛政策「強固で、安全で、関与する」(SSE)は、カナダ水上戦闘艦(CSC)15隻(現在はリバー級駆逐艦(RCD)として知られています)への投資を約束しました。

CDRより

しかし、現状運用しているハリファックス級フリゲート艦の老朽化が進み、2000年代より性能向上改修が進められたが、流石に旗艦のハリファックスは1988年4月進水の艦である。早めに更新したいのが本音だろう。

そうすると、オーストラリアが導入する予定のもがみ型改は実はかなり羨ましい性能になっているのである。流石に現段階で欲しがっているという話は聞かない。

だがもし、カナダが短期的な戦力補完を必要とするなら、日本製艦は選択肢から外せない。表に出ていないだけで、水面下の検討材料になっていても不思議ではない。

カナダはファイブアイズ加盟国なので、オーストラリアとの関係を考えると、今年、国家情報局を整備する予定の日本のことを、この枠組みに誘うことで安全保障上の関係強化を狙うという話も、俎上に上げる材料とはなるだろう。

まとめ

カナダのカーニー氏は「ミドルパワーとの連携」を掲げている。だから、超大国を避けて今回歴訪するインド、オーストラリア、日本との連携を模索しているという話にはそれなりの整合性がある。

だから、今回の訪日は、

  • 資源・重要鉱物の多角化
  • 対中距離の再調整
  • AUKUSを含む安全保障ネットワーク拡張

という三つの文脈で見ると理解しやすい。

そして最大のポイントは、対米交渉を前に日本との関係を固める意味だ。

既に、対米1号投資案件の話には言及した。

もしかしたら、アメリカ日本に持ちかけたアラスカ案件は、地政学的にカナダが絡むのは寧ろ自然である。こうした話の地ならしをするのが、今回のカーニー氏の仕事なのではないだろうか。

日本との連携は、ワシントンに対する交渉力を高めるカードにもなるからだ。ちょっと妄想多めの記事ではあったが、一応の整合性はとれる説である。カナダのこれまでの対支那政策をちょっと改めてくれたとしたら、嬉しいのだけれど。

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    米国の小判鮫と揶揄されるカナダが、これから米国依存を脱却するために独自策を打ち出すにはかなり骨が折れそうです。
    日本とカナダは共にCPTPP原加盟国で、通商分野では有利な相互関係にあるはずですが、昨年の日加貿易総額はわずか3.6兆円程度でした(日越が約8兆円、日台が約13兆円、日韓が約12.5兆円)。
    カナダが日本と交易を増やすには、日本側に5500億ドルの対米投資が控えている最中で、カナダ側が魅力ある具体的な提案を出せるかどうかに懸かっているでしょう。