こんな記事が取り上げられていて、何かと思ったんだが、割と碌でもない話だった。
なんとすでに7か国が電力のほぼ100%を再生可能エネルギーで賄っている、化石燃料の段階的廃止につながる「不可逆的な転換点」に到達か
2026年04月14日 15時18分
国際エネルギー機関(IEA)と国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が公開したデータによると、2026年時点で7か国が国内で消費する電力のほぼすべてを再生可能エネルギー源から供給していることがわかりました。再生可能エネルギーが従来の化石燃料による火力エネルギーに置き換わる「不可逆的な転換点」に到達したと主張する科学者もいます。
Gigazinより
Gigazinはこういうネタ好きよね。ただ、「不可逆的な転換点」って、学術的に存在するのと、現実的に実行可能なのかには随分と差があると思う。
再エネ100%ってのは、先進国では難しいよ。
条件の厳しい再エネ発電100%
水資源によって発電
さて、どんな話かを見ていこう。
データによると、アルバニア、ブータン、ネパール、パラグアイ、アイスランド、エチオピア、コンゴ民主共和国は、消費する電力の99.7%以上を地熱、水力、太陽光、風力発電によって賄っているとのこと。
Gigazin「なんとすでに7か国が電力の~」より
はい、解散。
アルバニア、ブータン、ネパールって、これまた随分と極端なところを引っ張ってきたな。多くが雪解け水などを利用した水力発電が主流な国家だ。南米パラグアイもそうなんだけど、隣接する国家が多くの人口を抱えていて、かつ水資源が豊富だという条件に適合しないと、水力発電100%で賄うというのは現実的ではない。
あとは、エチオピアはナイル川、コンゴはコンゴ川という、水資源の豊富な国家で、支那に多額の借金をして、ダム建造技術も協力して貰って、初めて実現した話。
アイスランドはちょっと特殊なんだけど、氷と火山の島国だから、豊富な電力を生み出せるんだよね。
水力発電の落とし穴
こういったアイスランド以外の「100%水力発電」という国家にとって厄介なのは、水利権の話。
巨大なダムを造って発電をし、その豊富な電力を輸出して外貨を得る。エチオピアとコンゴは、完全に支那の海外戦略に嵌まった国家で、ブータンとネパールはインドの影響が強い。ネパールは確か支那からも多額の支援を受けたんじゃなかったかな。
そして、周辺国との調整が疎かになっていて、水利権の問題が火種になっている。エチオピアは、エジプトやスーダンと激しい対立をしているようだし、ブータンはインドとの共同開発をやった結果、インドに随分と美味しいところを持って行かれてしまった。
ネパールはインドとの対立が目立ってきているし、パラグアイも平和な状況とは言い難い。結局、ブラジルに原価に近い格安価格で販売することで決着したらしいけれど、その後も、事ある毎に揉めてはいるようだ。
そして、支那の作ったダムが色々とトラブルの素になるという話も。
中国企業がパキスタンのニールム・ジェラム水力発電プロジェクトを断念
2022年9月12日午後12時09分
中国側は、発電所建設に対する地元住民の抗議活動や、パキスタン警察が十分な警備を提供できなかったことを言い訳に挙げているが、中国による突然の計画撤回は、パキスタンと中国の間で共同水力発電プロジェクトをめぐる大きな亀裂を生み出した。
Energy worldより
建設して4年のダムでトラブルが発生。2022年に導水トンネル内で崩落発生で、1年の運転停止。修復後、2024年5月には再び別の箇所でトンネルが損傷して再び運転停止で今に至るとか。
そんな話は……、そういえばラオスでもあったな。アレは韓国企業だったが。

近年では、雨不足や豪雨の影響でダムで狙ったような発電ができないということもあって、苦戦しているところもあるようで。
アルバニアは、発電量不足で巨額の費用を投じて、隣国から電力を買っているようで。
EUの特殊事情
それでもアルバニアが詰まない理由は、ヨーロッパの電力ネットワークに接続しているからである。

各国で連携して電力融通できるのは、ある意味理想的とは言えるが……。
また、2022年時点でEU諸国11カ国を含む40カ国が、国内消費電力の少なくとも50%を再生可能エネルギー技術で発電していることが明らかになりました。2026年1月には、EU圏内において風力と太陽光によって供給された電力が化石燃料による分を上回ったことが報告されています。
Gigazin「なんとすでに7か国が電力の~」より
ただ、これもバランスがなかなか難しいらしい。
やっぱり無茶な目標だった…原発をやめたドイツ、風力を猛プッシュしたEUが目を背ける”脱炭素の末路”
2025/01/17 7:00
ヨーロッパで風力発電の普及が足踏みしている。風力発電の業界団体ウインドヨーロッパが1月10日にリリースした資料によると、欧州連合(EU)域内で2024年に新設された風力発電の設備容量は約13ギガワットと、目標となる30ギガワットを大きく下回った。うち陸上風力が11.4ギガワットであり、洋上風力が1.4ギガワットという。
Presidentより
風力発電のメッカだったEU諸国にとって、風力発電設備の自給は不可欠な話だが、現状は支那製の風車が浸食しているらしく。
今や支那製の風車は全世界のシェアが広がり始めていて、Goldwind(金風科技)が16%~19%前後のシェアで1位となり、支那企業が3割程度を占めるまでになってきているようだ。
このままだと、メンテナンスが自国で出来ないという問題を抱えかねないので、EUでも苦慮しているのだとか。太陽光パネルの方はもう手遅れだしね。
つまりEUとしては再エネ発電を推進したいという意向なのだけれど、全体のバランスを整えるためには、調整型の発電方法を確保しなければならず、あまり再エネ発電を推進出来ないというジレンマがある。
例外的なアイスランド
さて一方で、上に取り上げた国家とは一線を画すのが、アイスランドである。
簡単に電力事情をまとめるとこんな感じ。
- 再生可能エネルギー100%: 国内の電力供給の約7割を水力、残り約3割を地熱で賄っており、化石燃料による発電はほぼゼロ。
- 自国完結・独立型: 孤立した島国であるため、エチオピアやパラグアイのように「他国と川を共有する」ことによる水利権トラブルが物理的に発生しない。
- 「電力の輸出」の形がスマート: 送電線で電気を送るのではなく、安価な電力を求めてやってくるアルミニウム精錬工場やデータセンターを国内に誘致することで、電力を「製品やサービス」に変えて輸出している。
豊富な電力を背景に、産業を発達させているという面でも、ちょっと特殊な立ち位置にあると言える。
水力発電への依存度は7割と高いが、氷河などを抱えているので水が枯渇する心配がないことや、3割を地熱発電で賄っていて、こちらも安定的な発電が可能。電力に限って言えば、非常に安定的なのである。
ただ、そんなアイスランドにも悩みはあって、電力を生み出せば金になるけれど、自然破壊を進めると観光資源を失うという状況だということ。
まあ、他の国に比べたら、随分と贅沢な悩みなのではあるが。
安定するには条件がある
で、再エネ発電100%国家の共通点は、概ね水力発電が優勢であることと、他国との調整でなんとかバランスが保てているってことだ。
とはいえ、人口の少ないアイスランド、ブータンは発電量が少なくても割と何とかなっているが、ネパール位になってくると、自国の産業が育たないので労働力流出が課題になってくる。
エチオピアとコンゴは、人口が爆増中で1億人を突破して尚増えているところだが、電化率は低く(コンゴ20%、エチオピア55%)再エネ発電100%と言われても、という状態。
まあ、電化率が低い理由は発電量の問題ではなくて、送電インフラが充実していないからってことなんだけれども。
そして、安定した水源確保は必須なので、「何処の国でも適用できる」という話ではないのだ。そういう意味で、アイスランドは例外中の例外といえるだろう。
まとめ
Gigazinの記事は、「再エネ100%国家が増えており、それが世界の潮流だ」と紹介している。だが、中身を見れば、水資源に恵まれた国や、人口規模の小さな国、あるいは周辺国との電力融通に依存する国が並んでいるだけだ。
つまり、何処の国でも再現できる普遍モデルではない。
実際の電力政策で必要なのは、耳触りの良い比率ではなく、安定供給できるか、価格を抑えられるか、有事でも止まらないか である。
その点、日本のように資源制約が大きく、災害も多い国は、単一電源に夢を見るより、現実的な電源構成を積み上げるしかない。再エネ100%という話は、少なくとも日本にとっては、少々縁遠い理想論だろう。


コメント
あらま、投稿したら新記事が。
でGIGAZINEは面白いサイトですが、
まぁ「ロマンを求めて月刊ムー」みたいなもんですからね。
そもそも引用記事にあげられた国々が、
最後のコンゴ民主共和国に至るまで
データセンターが無いし(アイスランドは除く)、必要もない国でしょ。
警備会社と関わってた時に、好奇心で会社にお願いして、千葉のデータセンター警備に行かせてもらったんです。
凄いすよ排熱。下手な温泉など相手にもならないですよ。排熱でタービンをガンガン回してたもの。
衛星写真で夜を観ると「真っ暗な国」ばかり。それを参考例に言われましてもねぇ。まぁこちらもGIGAZINEさんはエンタメ半分に見てるから、目くじらは立てませんけど。これじゃ都市伝説と変わらんす。