リアルタイムのニュースでなくて申し訳ないのだが、支那について少し言及しておこう。
習近平指導部が経済情勢を議論 エネルギー安全保障強化する方針示す 中東情勢の混乱が背景に
2026年4月29日(水) 15:30
中国の習近平指導部は現在の経済情勢について議論する会議を開き、エネルギー安全保障を強化する方針を示しました。原油の輸入先の多角化などが念頭にあるとみられます。
TBS NEWS DIGより
今更、「エネルギー安全保障」ねぇ。随分とノンビリとした印象を受ける。
そういえば、一帯一路構想は何処に行っちゃったんだっけ?あれも本来は、資源確保と物流支配を含めた安全保障戦略の一環だったはずだが。
打つ手のない支那
原油の輸入が困難
過去にも、エネルギー問題については触れてきた。

この記事では、石化企業がアメリカの制裁で窮地に陥っていることを取り上げた。支那経済は、イラン産の安価な原油にかなり依存してきたため、その脆さが露呈した形である。
そしてついに、指導部レベルで「原油不足がヤバそうだけど」という話を議論し始めたらしいのだが、その混乱ぶりを見ると逆に唖然とする。
中東情勢の混乱を受け、中国にとってロシアに次ぐ原油の輸入先であるサウジアラビアからの先月の原油の輸入量が去年の同じ月から30.6%減少していることが背景にあるとみられます。
TBS NEWS DIG「習近平指導部が経済情勢を議論~」より
既に紹介したように、ロシアやブラジルからの輸入量を増やす努力をしているのだが、これが上手くいかない。
ロシア産原油は、制裁回避のため幽霊船団に頼る部分が大きい。しかしその運用も厳しくなり、輸送能力には限界がある。陸上パイプラインも十分ではなく、大幅増は難しい。
ブラジルからの輸入量を増やす話は、スエズ運河通過がネックになっていて、じゃあ、南アフリカの喜望峰周りで輸送するのか?というと、これもコスト高になるので望ましくない。吠える40°は、伊達ではないのだ。マゼラン海峡の通過も、かなりリスクがあるしね。
もちろん、こうした悩みは支那だけではないのだが、支那にとっては致命傷になりかねない問題なのだ。
今さら基礎研究強化?!
そして、驚くべき「重要談話」が発表された。
習近平氏、基礎研究の強化を強調
2026-04-30 16:15:00
中国の習近平共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は30日、上海で開かれた基礎研究強化に関する座談会に出席し、重要演説を行った。習氏は、基礎研究は全ての科学体系の源、あらゆる技術問題の根幹であると指摘。より強い取り組みとより着実な措置で基礎研究を強化し、オリジナルイノベーション能力を高め、科学技術強国建設の基盤を一層強固にしなければならないと強調した。
新華社より
もちろん、基礎研究は大切である。
だが、今から強化?
誰でも知っている一般論を語るだけでは、政策とは呼べない。いま必要なのは、「どの分野に集中投資し、どう産業再建へ繋げるのか」という具体策だ。
広く浅く「基礎研究をやれ」と号令をかけても、現場からすれば困惑するだけではないか。
だって、これまでは「成果の出る開発をやれ」が至上命題だった。それに掌を返すような「基礎研究の推奨」で、多くの人は驚いただろうと思う。そもそも、支那には「自由に研究する」という下地がないのだから。
寝そべり族の取り締まり
もっとも、基礎研究だけでは現実は変わらないので、各方面で手は打っているのだろう。だが、その方向がどうにもズレている。
近年増え始めたとされる「寝そべり族」や「ネズミ人間」だが、若者達の無気力が問題になりつつあって、これを取り締まることを始めているようだ。
中国の若者に「寝そべり洗脳」を仕掛けている 世論工作と注意喚起―中国国家安全省
2026年04月28日15時43分
中国でスパイ摘発などを担う国家安全省は28日、外部の敵対勢力がインターネット上で中国の若者に組織的な「寝そべり洗脳」の世論工作を仕掛けているとして、公式SNSで注意を呼び掛けた。「寝そべり」は、中国で過酷な競争社会に勝ち抜くことを諦めた若者を指す言葉。「(外部勢力は)われわれが発展の恩恵や民族の未来を逃すのが望みだ」と、危機感を示した。
時事通信より
それどころか、「この思想を広めているのは敵方の「工作」だ」と認定してしまったのだ。
実際に、この手の言論をSNSから排除する動きが出ているし、「寝そべりグッズ」などと言うモノまで販売されたが、それも取り締まっているらしい。にもかかわらず、効果が出ていないので、「敵側の工作」などと言い出したのである。
これ程皮肉な話もないのだが、寝そべっている若者にとっては、若年失業率が高くまともな職にありつけないという切実な現実があって、これを解決出来ていない指導部に、せめてもの抵抗が「寝そべり」なのである。
五カ年計画の足を引っ張る
これらの話は、先に発表された第15次5カ年規画に反する。
AI産業が2030年までに10兆元規模へ、新技術で成長加速
2026年03月19日
中国で3月6日に開催された第14期全国人民代表大会(全人代)第4回会議の経済分野の記者会見において、国家発展改革委員会の鄭柵潔主任は、第15次5カ年(2026~2030年)規画の終了までに、人工知能(AI)関連産業の規模が10兆元(約230兆円、1元=約23円)以上に成長するとの見通しを明らかにした。中国政府は、「人工知能+(AIプラス)」行動を重要な国家戦略に位置づけており、2024年の政府活動報告で初めて提唱し、2025年8月には「AIプラス行動の実施徹底に関する意見」を発表して積極的な推進の方針を示している。
JETROより
基本方針としては、「支那製造2025」とちょっと似てはいるが、「製造強国戦略、デジタル経済、自立自強」というキーワードを掲げた時代よりも、更に一歩先に進めて、「新質生産力、高水準の自立自強、質の高い発展」をキーワードとしている。
つまり、簡単に言えば量より質を重視するという話だ。
ザックリまとめると、以下のような方針である。
- AI・量子・バイオなど先端産業への集中投資
- 半導体装置・素材などの国産化推進
- 2035年の中等先進国化への布石
こうした計画の根幹を揺るがすのが昨今のニュースである。
それは、イラン戦争の影響による原油不足であり、製造コストと物流コストを押し上げる事態に繋がった。また、労働力の確保を揺るがす若者の寝そべりで、更にスタグフレーションを加速させている。
皮肉なことに、これを解消するために「基礎研究の推奨」を訴えたのだが、量より質を求める方針に沿っているようで、全く逆である。先進分野を掌握しようというのに、何故か基礎研究を推奨してしまっているのだ。
如何に習近平指導部が混乱し、打つ手を失っているかを示す話である。
まとめ
効率の良い応用技術を追い求めてきたのが、近年の支那の実態であり、経済成長を最大の目標に掲げてきた。
だが、ここに来てそれが空回りしつつあり、安さを支えてきたイラン産原油ですら手に入らなくなってしまった為に、輸出製品の製造にも赤信号が灯っている。質への転換以前に、量を維持することすら怪しくなってきたのだ。
経済の活性化の目処は立たない。習近平氏にとっても、イラン戦争は弱り目に祟り目の事態なのだ。
「基礎研究をしっかりやれ」というのは、このどうしようもない支那の閉塞感を示しているようで、苦笑いするしかない。


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