韓国でスパイ事件ですか。
韓国で戦闘機の盗聴・機密の不正取得を行っていた中国人、人民解放軍出身だった
2026.08.12 06:54
韓国の軍空港で戦闘機の管制通信を盗聴し、米軍基地で軍事訓練資料を収集した中国人が警察に逮捕され、拘束された。いずれも中国人民解放軍に勤務した後に退役した元軍人であることが分かった。
中央日報より
何気なく、「支那人スパイは困ったね」と思って記事を読んでいたのだが、意外に面白いことが分かったので、少し解説のための記事を書いた。
韓国にある「一般利敵罪」「通信秘密保護法」「軍事基地法」は、なかなか面白い法律構成になっているという話だ。
スパイ防止法に問うのは難しい
何の罪に問われたのか
ちょっと丁寧に見ていこう。
京畿南部警察庁は11日、全北特別自治道・群山空港の軍飛行場で管制塔と戦闘機パイロット間の交信内容などを不法に収集した60代の中国人男性Aを一般利敵罪および通信秘密保護法違反の容疑で逮捕し、10日に拘束したと明らかにした。Aは4月、空港から約1キロ離れたホテルにソフトウェア無線(SDR)受信装置を設置した後、戦闘機の通信内容を盗聴した容疑が持たれている。SDRは一般の無線機とは異なり、ラジオのように一方向の受信だけが可能なため、交信相手が気づきにくいという。
スパイの疑いをかけられている支那人は元人民解放軍の所属で、戦闘機の通信内容を傍受したことが罪に問われたらしい。
盗聴……、情報を取得するだけなら「傍受」ではないのだろうか??
記事によると、スパイ容疑で逮捕された支那人は、「一般利敵罪」と「通信秘密保護法違反」の2つの罪に問われているとのこと。
一般利敵罪というのは耳馴染みのない言葉だが、韓国刑法第99条に「大韓民国の軍事上の利益を害し、または敵国に軍事上の利益を提供した者は、死刑、無期、または3年以上の懲役に処する」という罰則規定が設けられている。
一方、通信秘密保護法違反の方は、第3条に「何人も、この法律(令状など)に基づかない限り、無線通信の検閲や、公開されていない他人の会話を録音・聴取してはならない」としている。
両方ともなかなか厳しく、日本では見ない類型の法律構成である。
言い逃れは通用するか
罪に問われた支那人だが、こんな主張をしているようだ。
警察は、過去に韓国へ入国した記録がなかったAが2024年1月以降、韓米空軍の軍事訓練が行われた時期に数回入国していた事実を確認した。Aは警察の調べに対し「民間航空機の交信内容を聞く趣味があり、戦闘機パイロットの交信内容を聞きたかった」と主張したという。
残念ながら、韓国の通信秘密保護法は、第三者による電気通信の不法な傍受そのものを処罰対象としているので、この主張はかなり厳しい。
報道では「盗聴」としているところだが、どうやら報道の内容を見る限りは平文で通信をしていた内容を傍受していたという状況である。
日本との違いが出ていて興味深いが、日本の場合、第三者が無線通信を受信する行為そのものを広く処罰する構造にはなっていない。
これが韓国では、通信秘密保護法によって、「単純傍受」の行為そのものを処罰する構成を取っている。一応、令状を取得すれば例外扱いで罪には問われないが。
「暗号化されていないから聞ける」「聞いただけだから問題ない」という日本とは、異なる法体系を採用しているんだよね。
他の事例も
このニュースでは別の事例も紹介している。
同日、警察は在韓米軍司令部がある京畿道平沢のキャンプ・ハンフリーズで米軍の訓練状況などの情報を収集した40代の中国人Bも、一般利敵罪および軍事基地法違反の容疑で10日に拘束したと明らかにした。Bは2021年11月から今年5月まで米軍基地正門付近で軍用品店を経営しながら、軍事機密を収集した容疑が持たれている。
ここで出てくるのがまた耳馴染みのない法律である。
軍事基地法違反だ。
この法律では「許可なく基地の統制区域に入ること」や「基地や軍事施設を撮影すること、描写・録音すること、または外から観察すること」を禁じている。
更に、法律の適用は、「大韓民国に駐留する外国の軍隊(在韓米軍)の軍事基地および軍事施設にも適用する」とあるので、今回の米軍基地での情報収集行為が、罪に問われたということになる。
特にBは、米軍基地に勤務する韓国人女性Cに金品などを提供して軍事機密を入手したことが分かった。Bは米軍司令部の勤務場所や米軍指揮官の就任式の写真などを収集し、兵器の移動状況などを観察していたという。Bに情報を提供したCは警察の調べで「Bは2021年から軍用品店を経営し、米軍を相手に取引していたため、特に疑わなかった」とし、「(被疑者が)事業に必要な情報だというので、要求された情報のうちいくつかを提供した」と供述した。
十分にスパイ行為のようなムーブをしているので、逮捕されたことに不思議はないのだが、適用した条文は「結構便利な法律があるな」という印象ではある。
逆に言えば、ここまで厳しく罰する構成にしないと、スパイを罪に問えないという意味でもある。
スパイ罪に適用できない
記事でもその点については指摘がある。
警察が2人に一般利敵罪を適用したのは、現行法上、外国のために軍事機密を流出させるなどの行為はスパイ罪で処罰できないためだ。現行のスパイ罪が適用されるためには、2人の行為が「敵国」である北朝鮮のためのものだったという事実が立証されなければならない。国会は2月の本会議で、スパイ罪の適用対象を「敵国」から「外国またはこれに準ずる団体」に拡大する内容の刑法改正案を可決したが、施行は来月13日からだ。法定刑が無期または3年以上の懲役である一般利敵罪は、死刑・無期または7年以上の懲役に処することができるスパイ罪に比べ、刑罰の水準が低い。
韓国の場合、スパイ罪を適用させるためには「敵国」であることを立証する必要がある。つまり、北朝鮮のスパイしか逮捕できないのだ。
この点、支那人である時点でスパイ罪の適用は韓国では厳しいという話になる。一応、既に改正法は成立しており、9月13日から施行される見込みだが、現時点では無理という話ね。
裁判所は最近、外国人によるスパイ行為に対して一般利敵罪を積極的に適用する傾向を見せている。5月、水原地方法院(地裁)は韓米の主要軍事施設や国際空港などを偵察した20代の中国人に懲役2年を、中国人高校生には懲役長期2年・短期1年6月の懲役を言い渡した。
なので、一般利敵罪を便利に使っているということらしい。
まとめ
韓国での事例を紹介したわけだが、今回問いたかったのは、日本にスパイ防止法を実装する場合、色々と考えねばならないことは多そう。
どの段階で何を罪に問うてスパイ行為を認定するのか、というのは、個人の利益との調整という意味でも慎重な設計が必要ではあるが……、必要性はあるんだよね。
今回の事件では、
- 戦闘機の無線通信を傍受する
- 米軍基地周辺で軍事情報を収集する
- 基地や軍事施設を撮影・観察する
- 軍事機密を入手する
- 韓国人に金品を渡して情報を得る
といった行為を、それぞれ別の法律によって拾い上げている。そして、国益と個人の権利のバランスを考えても、これらの行為には網をかけていく必要があると思う。韓国の法体系が必ずしも良いとは思わないが、日本のように網をかけていない状態を長く続けるのは、国益を守る観点から極めて問題が多い状態と言えよう。


コメント