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日本とフィリピンが海の境界を決める――猛反発する支那

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外交
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あまり話題になっていない気がするが、注目のニュースがこちら。

フィリピン大統領、日本との海洋境界交渉「年内に妥結」

2026年8月14日 17:18

フィリピンのマルコス大統領は14日、マニラで記者会見し、日本との海洋境界画定交渉に関し年内の妥結に意欲を示した。日比両政府は5月末の首脳会談で交渉開始に合意していた。

日本経済新聞より

調べてみると、それなりには報じている感じかな。イマイチ、話題になっていない気はするんだけど。まあ、構図が分かりにくい話だから、仕方がないのかな?

役割分担の決定

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EEZの境界

日本経済新聞は、過去にも何度かこの話題を取り上げている。

中国「波風立てれば必ず報い」 境界交渉入りの日本・フィリピンに警告

2026年6月25日 9:04

中国でスパイ摘発を担う国家安全省は25日、排他的経済水域(EEZ)などの境界画定交渉入りで合意した日本とフィリピンに警告した。SNSの公式アカウントに「波風を立てれば必ず報いを受ける」と投稿した。

日本経済新聞より

SNSで反論するだけでなく、行動も起こしている。

中国が台湾東側で海上取り締まり 日フィリピンの境界交渉に「対抗」

2026年6月7日 1時30分

中国の交通運輸省は6日、台湾東側の海域で海事局などによる海上交通の取り締まり活動を行った。国営新華社通信が報じた。具体的な活動内容は伝えていないが、日本とフィリピンの海洋境界画定に向けた動きを牽制する狙いとみられる。

朝日新聞より

なかなか、気にしているようだね、支那は。

説明をする前に、プレイヤーを確認しておこう。日本、フィリピン、台湾、そして支那だ。問題になっている場所は、台湾島付近。日本とフィリピンのEEZが重なる海域の話である。

img

一般的に領海の限界線は陸地から12海里ということになっている。

領海の基線等の模式図

そして排他的経済水域は200海里。

領海・排他的経済水域等模式図

この辺りが基本知識で、200海里と言うと、概ね370km程度ということになる。で、台湾島付近は複雑な状況になっているんだよね。

日本とフィリピンの境界の意味

先ずは、フィリピンのバタン島の周辺の島々と、石垣島付近の島からの距離が重なる部分について解決する必要がある。

こちらが、それぞれの島を起点として200海里の距離を示す円なのだが、日本が主張するEEZは上に紹介したように台湾島から伸びる中間線だと定義はしている。つまりこの緑の円と水色の円の中間である。一方のフィリピン側も特にこれ異議があるわけではないようだが、日本とフィリピンとの間で話をつけるためには、台湾を登場させなければならないので、決定できていない。

現状はそんな感じなのである。

決めなければ揉めないのだが、決められないように支那が暗躍しているというのが現状である。

記事は、取り締まりについて「遠洋における巡視と重点水域の交通管理能力を強化し、国家の権益を守る」ことが目的だとした上で、「(日本とフィリピンが)一方的に交渉の開始を宣言し、中国の領土主権と海洋権益を著しく侵害した」と批判した。

朝日新聞「中国が台湾東側で海上取り~」より

これに関して台湾は、というと……。

日本とフィリピンの海洋境界交渉 外交部「協議から台湾を排除すべきでない」

2026/06/02 18:12

日本とフィリピンが海洋境界画定の交渉開始で合意したことを巡り、台湾の権益に影響が及ぶのではとの懸念が生じている。外交部(外務省)の蕭光偉(しょうこうい)報道官は2日の記者会見で、関係の代表機関に対し、日比両政府に詳細の説明を求めるとともに、台湾側と協議することを申し入れるよう指示したと明らかにした。

5月28日に行われた日比首脳会談の共同声明で、両国間の排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の海洋境界画定の交渉開始が明記された。外交部は31日、「国際法の規範に基づき、平和的対話を通じて海洋問題の解決を図ろうとする日本とフィリピンの姿勢は、わが国の一貫した立場と一致する」として評価する姿勢を見せていた。

フォーカス台湾より

「台湾と協議すべき」でも「わが国の一貫した立場と一致する」って、カマッテちゃんかっ!

台湾を加えるのは難しい

とは言え、この件で台湾を交渉に加えるのは難しい。何故なら、日本もフィリピンも台湾を国として認めてはいない。日本と同様に境界の設定交渉に呼べる立場にはないのである。

正確を期するのであれば、台湾という「地域」であっても海洋境界確定の交渉は可能なのだが、台湾を交える決定をしてしまうと、ワン・チャイナ・ポリシーを了解している立場から、支那の口出しを防ぐことができなくなる。だから、あくまでも二国間協定で確定できる範囲を決めるというスタンスである必要があるのだ。

そこで、日本とフィリピンとが境界交渉をしておくことで、既成事実を作っちゃおうというわけだ。無論、水面下では台湾との情報交換が行われていると見られ、先に引用したように、台湾は日本とフィリピンの方針を基本的に支持している。

ボンボン・マルコス氏は、大統領就任前はここまで期待されてはいなかった人物だが、この判断をして日本と手を組むカードが切れるとは思っていなかった。失礼ながら。

マルコス氏、台湾を巡って米中全面戦争が勃発した場合、フィリピンは「介入せざるを得なくなるだろう」と発言

2025年8月8日午前6時28分

フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、台湾侵攻をめぐって米国と中国の間で全面戦争が勃発した場合、フィリピンは「関与せざるを得なくなるだろう」と述べた。

マルコス・ジュニア大統領の国賓訪問の傍ら、インドのメディア「ファーストポスト」のインタビューに応じた大統領は、フィリピンは台湾に近接しているため、フィリピン領土を守るために何らかの行動を起こすことは避けられないと述べた。

「現実的に言えば、中国と米国の間で台湾を巡る対立が生じた場合、フィリピンは地理的な位置関係から、その争いから逃れることは不可能だ」と、彼は8月6日水曜日に述べた。

ABS CBN より

この発言からも分かるのだが、なかなかのリアリストである。

フィリピン、「一つの中国」政策確認 大統領の台湾次期総統祝福受け

2024年1月16日午後 2:10

フィリピン外務省は16日、マルコス大統領が前日に台湾総統選で勝利した頼清徳氏に祝意を表明したことを受け、「一つの中国」政策を再確認した。

ロイターより

原則的に、「一つの中国」路線を踏襲しならも、ちゃんと対応するための対策を模索するという、かなり瀬戸際外交的な立ち回りをしているのがフィリピンで、完全に支那と手を切る訳ではないにせよ、対立した時には最低限対応できるような手を打とうとしている。

おそらく、この件に関しては日比が組むことでアメリカも一枚噛ませようとしていて、それに成功すれば、支那の膨張路線に一石を投じる結果になるだろう。

今回のこの海洋境界の決定は、日本とフィリピンとの軍事的な役割分担を明確にする意図がある。

日本は海上自衛隊とフィリピン海軍との連携を、日本の警戒管制レーダー、護衛艦などを移転しすることで強化する事になっている。当然、自身が使っていた兵器との連携であるので、防衛戦略を練りやすいという部分もあるし、同じ理由でアメリカ軍もやりやすいだろう。

アメリカの了解

なお、「アメリカも一枚噛ませようとしている」という話、実際には水面下で動いている可能性は高い。

日本、フィリピン、米国の部隊が多国間海上協力活動を実施

2026年7月25日

フィリピン排他的経済水域 ― フィリピン軍、海上自衛隊、および米国海軍は、2026年7月21日から25日にかけて、フィリピン排他的経済水域内で多国間海上協力活動(MMCA)を実施した。この活動は、自由で開かれたインド太平洋を支援するための地域および国際協力の強化に対する共通のコミットメントを示すものであった。

アメリカ政府のサイトより

直近でMMCA訓練を行っていて、日本、フィリピン、アメリカでの訓練をしているのだが、この内容が戦術的な相互運用性に重点を置いたものであった。

MMCA(海洋管理区域)は、国際法に準拠し、すべての国の安全、航行権、および自由を十分に尊重する形で実施される。

アメリカ政府のサイト「日本、フィリピン、米国の部隊が~」より

そのえうで、国際法に準拠してということを強調している通り、支那が射程圏内になっている。支那が国際法を無視した海洋侵出をやっっているのは、皆さんご存知通り。

まとめ

目立たないニュースではあるが、海の上に線を一本引くだけの話ではない。

日本とフィリピンが自分たちの海洋権益を国際法に基づいて整理し、台湾がその影響を注視し、支那がそれに反発する。そしてその一方で、日本・フィリピン・アメリカの海上協力も進んでいる。

そう考えると、8月14日の「年内妥結」という一言は、単なる外交ニュースではない。台湾東方の海で、誰がどの海域にどんな権利を持つのかを、少しずつ固定していく動きの一つなのである。

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    支那は本気で国際法(海洋法条約など)を知らないのかもしれませんねw
    多少穿った見方をすれば、本件は米国から差し込まれた話かもしれませんし。
    現役の米軍佐官が執筆した”日比海洋境界線交渉”についての論文を読むと、
    交渉の「合法性」が詳しく解説されているわけです。
    日比が海洋境界線画定に乗り出す;支那は威圧と法戦術で対抗 (IPDF 7/27)
    https://ipdefenseforum.com/2026/07/japan-philippines-move-to-delimit-maritime-boundary-china-responds-with-coercion-lawfare/