インパクトは強いが、これが今のアメリカと韓国との距離感なのだろうね。
駐韓米国大使「韓国はもはや米国が守るべき国ではない」
2026.10.22 06:41
ミシェル・スティール駐韓米国大使は21日、「韓国はもはや米国が保護してやらなくてはならない国ではない」とし、「今こそ米国と共にインド太平洋地域を主導すべき時だ」と述べた。経済・安全保障分野で韓国が米国の対中けん制戦略に積極的に参加すべきだという注文とみられる。
中央日報より
駐韓米国大使のミシェル・スティール氏によるこの発言は、なかなか示唆に富んでいる。
現在の韓国は、自由で開かれたインド太平洋(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)構想に積極的に賛同する立場にはない。日本の感覚からすると信じ難い話だが、韓国ではFOIPを支持することが支那に対抗することにつながる、という見方が根強く、シーレーンの維持についても消極的な姿勢が見られる。
スティール氏の発言には、こうした背景があるのだろう。
思惑の違い
戦時作戦統制権の返還
既に知られたことではあるが、韓国は随分とアメリカから距離を置かれている。
スティール大使はこの日、在韓米国商工会議所が主催した「変化する世界の中の米韓同盟」特別昼食会・対談で、「時に中国はインド太平洋地域で最大の脅威となる」とし、「(米韓が)共に協力することが最も重要な部分であり、進むべき方向」と強調した。今年7月に赴任したスティール大使が公の場で同盟の懸案について言及したのは初めてだ。スティール大使は「米韓は激動の時期にある」とし、「韓国戦争(朝鮮戦争)以降、多くの支援を受けてきた韓国が今こそリーダーシップを発揮すべき時だ」と述べた。
中央日報「駐韓米国大使「韓国はもはや~」より
要約すると、「いい加減、自国の防衛が可能なように自立しなさい」という意味になる。
その一方で、昨今では戦時作戦統制権の返還に拍車がかかりつつある。

何度も説明してきて今さらなのだが、改めて戦時作戦統制権に触れておくと、朝鮮戦争(1950年~1953年)を切っ掛けに、韓国政府は戦時における作戦統帥権を連合国軍に預けた。
つまり、作戦統帥権(特定の任務や課題の遂行のために設定された指揮関係)は平時しか韓国軍の手にはないのだ。
そして、現状、朝鮮戦争は停戦中であり、未だ終わっていない。また、戦時の判断は韓国軍がする構成にもなっていない。
このことは直ちに韓国軍の行動を縛る話には繋がらないが、常に何らかの制約を気にしなければならない立場であることも事実なのだ。そういう事情もあって、韓国政府は以前から戦時作戦統制権の返還を求めていた。
ちょっと待って欲しい
では、返還すれば良い話かというと、そう簡単でもないようだ。
- 1994年 平時作戦統制権が韓国軍に返還
- 2006年 盧武鉉政権が2012年までに戦時作戦統制権も返還で合意
- 2010年 李明博政権が北朝鮮情勢(天安艦事件)を理由に2015年へ延期
- 2014年 朴槿恵政権が「条件付き移管」に変更(期限未定)
- 2018年 文在寅政権が移管推進を加速。移管の前提となる「基本運用能力評価」を完了
- 2022年 尹錫悦政権では慎重姿勢に転換。進展なし
- 2025年 李在明政権が再び本格的な交渉を開始
何度も返還するという話が浮かんでは消えていて、未だに返還交渉は前に進んでいない。
構図的には韓国政府が進めて、韓国軍側が待ったをかけるということのようだが、現場の判断というのはバカにならない。
少なくとも、「現状で戦時作戦統制権を返還されても持て余す」という判断をその時々でしたのだろう。今回はどうか分からないが。
積み上がる懸案
今回の在韓米国商工会議所での対談では、安全保障以外にも、さまざまな懸案が取り上げられたようだ。
- 韓国による3500億ドル(約55兆円)規模の対米投資
- 国防費を国内総生産(GDP)比3.5%水準に増額するという約束
- テキサス州のガス複合火力発電所や原発への投資
- アラスカ液化天然ガス(LNG)事業への参加
- クーパン(Coupang)事態など韓国のデジタル市場規制について
- 北朝鮮の非核化は非常に重要
韓国にとっては耳の痛い話ばかりだな。
更に、在韓米軍司令官からも注文がついている。
一方、在韓米軍のエグザビエル・ブランソン司令官は「在韓米軍の訓練方式は変わることになり、あらゆる脅威から韓国を守る」と明らかにした。北朝鮮の脅威だけでなく、中国など域内の脅威まで念頭に置いた発言と解釈される。ブランソン司令官は来年上半期の「フリーダムシールド(自由の盾・FS)」演習に関連し、陳永承合同参謀議長に「年2回の演習に即応態勢を依存することはできない。年間を通じて訓練しなければならない」と伝えたと明らかにした。
ブランソン司令官は韓国の造船業などの製造能力を活用し、域内の米軍装備の整備を拡大する「地域持続支援拠点」構想も強調した。ブランソン司令官は2024年9月にハンファオーシャンが米海軍の補給艦「ウォリー・シラー」の保守・修理・整備(MRO)を行った事例を挙げ、「海洋だけでなく、あらゆる領域で協力が可能だ」と述べた。
中央日報「駐韓米国大使「韓国はもはや~」より
司令官のブランソン氏は、「訓練をしろ」「間に合わなくなっても知らないぞ」という印象だね。
少なくとも、現状の訓練頻度では、十分な即応態勢を維持できない。
近年、韓国はアメリカとの合同軍事訓練を縮小していて、これに対してアメリカ側からの不満が呈されていたが、その辺りを踏まえた指摘なのだろう。
合意形成
一方の韓国側は、というと、こんな報道があった。
韓国国防部長官「戦時作戦統制権移管の目標年『X年』設定で共通認識」…米国「付け加えることはない」
2026.10.27 09:55
韓国国防部の姜信哲長官が、戦時作戦統制権(戦作権)の移管に向けた目標年(X年)の設定について韓米間で共通認識が形成されたと明らかにしたことに対し、米国防総省(戦争省)は付け加えることはないとの趣旨で回答し、従来の立場を改めて確認するにとどまった。
中央日報より
記事を読むと、合意形成はなされていないように聞こえるんだが。
これに先立ち、在韓米軍のザビエル・ブランソン司令官は14日(現地時間)、ワシントンDCのゴールド国際戦略研究所が主催した行事で、条件に基づく戦作権の移管を強調し、「状況が変わり、われわれが計画を変更したため、守るべき新たな基準が生まれた」と述べた。これに対し、韓国国防部のチョン・ビンナ報道官は、個人的な見解と断ったうえで、「ゴールポストを動かし続けるなら、戦作権の移管は永遠に実現できないと思う」と述べた。
中央日報「韓国国防部長官「戦時作戦統制権移管の~」より
この記事では、韓国側が前のめりで、アメリカ側は余り積極的ではないように感じるね。
ただし、冒頭のニュースとも併せて考えると、どうにもアメリカ側だけの問題には思えないんだよね。
アメリカの事情で、戦時作戦統制権の返還が進まないということかも知れないのだが、ゴールポストは「返還」なのか「独自の防衛力の獲得」なのかで、かなり意味合いが違うと思う。
韓国にとって今一番必要なのは、コミュニケーションなのではないだろうか。
まとめ
朝鮮半島情勢は、アメリカの同盟国である日本が朝鮮半島で作戦行動をする想定では、どうあっても支援する必要がある前提で見るに、無視出来ない話だといえる。
当然、スムーズな戦時作戦統制権の返還は望ましいのだが、中途半端な状態で返還した場合には、アメリカ軍がどのように撤退するのか?という話がかなり難しくなる。未だに、多くのアメリカ人が韓国に駐留し、それに帯同している状況だからね。
両国の目指す方向が一致しているように見えても、その具体的な道筋まで一致しているとは限らないのだ。


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