今日は、図らずも防衛関係のニュースを取り上げる記事が多くなってしまった。
小泉防衛相、「拒否力」強化をヘグセス米国防長官に伝達…「我が国への侵攻起きても目的達成させない」
2026/10/28 22:30
小泉防衛相は28日、訪問先のフィリピン・セブで、米国のヘグセス国防長官と会談した。小泉氏は日米同盟の抑止力・対処力強化に向け、日本に攻撃をしかける国があっても作戦目的を達成させないようにする「拒否力」を強化していく考えを伝えた。
讀賣新聞より
A2AD(接近阻止・領域拒否)戦略にも通じる話なのだけれど、「拒否力」の強化を目指すというのが、防衛大臣の小泉氏の説明である。
これがどういうことなのか、軽く説明していこう。
拒否する防衛力
攻撃されにくさを目指す
硬すぎるのもアレなので、47NEWSはこんなタイトルの記事を流していたことを、最初に紹介しておく。
【速報】小泉氏、拒否する防衛力強化を米側に伝達
2026年10月28日 12時02分
小泉防衛相は28日、日米防衛相会談で、安保関連3文書の改定を巡り、十分な防衛力によって相手の攻撃を思いとどまらせる「拒否する防衛力」の強化に取り組む方針だと伝えた。
47NEWSより
実にお粗末な速報である。
拒否する防衛力強化……。いわゆる釣りタイトルというか、煽りタイトルの類だろう。防衛力強化をやめるのか?とか、誤解させる目的が感じられる。意図的にそうしているのでなければ、言葉の選び方が下手なタイトルという記者としては恥ずかしい状態だ。
なお、本文を読んでも意味が分かりにくい構図になっている。
一方、冒頭に紹介した讀賣新聞は、タイトルも練ったものと思われる。
この「拒否する防衛力強化」とか、「拒否力」強化はどんな意味かというと、「相手が攻撃してきても、こちらの防衛力で阻止・排除し、「コストばかりかかって目的を達成できない」と思わせること」である。
コスト負荷戦略と表現され概念やA2ADという概念に重なる部分も多いが、もうちょっと広い意味だね。英語の「Deterrence by Denial」を直訳したから、こんなことになったのだろう。
その意味では、確かに「拒否力」を高めるという表現は言い得て妙だ。
目的を達成させない
記事の中で小泉氏がしっかりと説明している部分があったので、こちらも引用しておこう。
小泉氏は会談で、「我が国への侵攻が起きたとしても、これを阻止・排除する能力を持つことにより相手に目的を達成させない、拒否する防衛力を強化していく」と強調した。政府は年内に改定する安全保障3文書で拒否力の考え方を防衛力整備の柱に位置づける方向で調整している。
讀賣新聞「小泉防衛相、「拒否力」強化をヘグセス米国防長官に伝達~」より
これ、具体的にはどういうことかというと、先に触れたA2ADなどの考え方と関連してくる。
例えば、第1列島線での防衛体制強化の一環として、フィリピンに対する兵器供与や技術供与。或いは、共同訓練の実施など連携を深めること。
更に、先日のAMRAAMの最終組立施設を日本国内に設置することも、その一環だといえる。SM-3ブロック2Aの製造もこれに関係すると言えるだろう。
よく言われる戦車の国内配備も、同じような考え方に基づいている。
かつては、戦車に対抗し得るのは戦車を含む機械化された重装備が必要だという時代が長かった。
日本に侵攻しようとする側は、戦車を持ち込むために多数の揚陸艦や輸送船を用意しなければならず、それだけ侵攻作戦の難易度も上がる。
ある意味これも、拒否力を高めたと言えるだろう。
もっとも、ここ最近は対戦車ミサイルによるトップアタックやドローン攻撃など、戦車を撃破する手段が大きく変化し、戦場の景色もかなり変わってしまった。もちろん戦車が不要になったわけではないが、従来の戦車を中心とした戦闘の考え方も見直しを迫られている。
要は、結構前から継続的に日本が続けてきた話ではあるのだ。

空対空ミサイルの製造をすることで、在庫管理を容易にする。また、近隣諸国への提供も視野に入れているのだろう。AMRAAMは優れたミサイルだからね。
このような防衛力強化・連携強化によって、容易に手出しできなくすること、継戦能力を高めることこが、重要だという位置づけなのだ。
こういう備えは、外交だけではなんともならないのである。
「安保関連3文書」改定
ところで、この「拒否力」を高めるという考え方は、上に説明したように「考え方としては目新しいものではない」のだ。では、このタイミングで伝えた理由は?というと、恐らくは、「安保関連3文書」改定が近いからだと思われる。
簡単に言えば、これの進捗状況を「拒否力」の強化方針として伝えたということだ。
安保3文書で「拒否力」を防衛の柱に、相手国に「作戦遂行できない」と認識させ抑止力向上…政府調整
2026/10/28 05:00
政府は、年内に改定する国家安全保障戦略など安保3文書で、日本への攻撃をしかける国があっても作戦目的を達成させないようにする「拒否力」の考え方を防衛力整備の柱に位置づける方向で調整に入った。侵攻作戦を阻む継戦能力の向上や、長射程ミサイルの配備強化などを通じ、相手国に「作戦を遂行できない」と認識させ、侵攻を未然に防ぐ抑止力を高める構想だ。
讀賣新聞より
……讀賣新聞がしっかり解説してくれているので、こちらを最初に引用した方が良かったかもしれない。
複数の政府関係者が明らかにした。拒否力を掲げることで、日本が目指す防衛力強化の方向性と優先順位を明確にする。装備体系では、侵攻を企てる相手国の艦艇を遠方から攻撃できる長射程ミサイルや、無人機の開発・配備を拡充し、日本周辺での軍事作戦を困難にさせる。防衛産業基盤を強化し、弾薬・ミサイルを持続的に生産できる体制を確立し、長期にわたり抗戦できる能力を整える。
讀賣新聞より
これまでの方針をさらに加速させていくのだという意図を伝えることで、更に同盟関係を強化したいという狙いがあるのだろう。
日米同盟の強化に向け、米国と足並みをそろえる狙いもある。米国は今年1月に公表した国家防衛戦略で、中国への対抗を念頭に、同盟国・同志国と連携して「拒否による抑止力強化」を図ると掲げた。インド太平洋地域における拒否力を確立するために、米軍と自衛隊の連携を深める展開が見込める。
讀賣新聞より
書いてある通り、日米同盟の強化こそが「拒否力」の強化につながるし、支那に対抗することを念頭にして、抑止力を強化していきたいというメッセージを出したわけだ。

韓国とは方向性が真逆だが、アメリカに対して韓国のような懸念はないという風に伝えるような狙いもあった可能性は高い。
また、会場が「日ASEAN防衛担当大臣会合」の場だったことも意義深い。
国際会議の場で、日米が完全に一致している姿を見せる、ということが重要視されたのではないだろうか。
まさに外向的な配慮ということになる。
まとめ
左派を中心に、「戦争にならないように外交力を高めろ!」「外交をしっかりやっていれば、人を殺す兵器は必要ないんだ」といった主張が聞かれることがある。
もちろん外交は大切だ。しかし、現実は外交だけで済むような甘い世界でないことは、ウクライナ戦争以降、再び白日のもとに晒されてしまった。
それどころかドローンが主流となって、戦場の常識が大きく変革し続けている。
小泉氏の発言はこういった事実も踏まえて、「拒否力」を高めるという意思を明確に打ち出したと考えられる。
では、具体的にどうすべきなのか。
それは継続的に議論していかなければならない。そして、そのための議論はタブーを設けずに行うべきなのだ。


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