ドイツ首相のメルツ氏が来日したが、いきなり爆弾を持ち込んだな。

前々から噂にはなっていたけど、やっぱりか、という印象。
ご存じ、次期戦闘機の共同開発計画「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」は、日本、イギリス、イタリアの三カ国で共同開発を進めている次期戦闘機開発計画である。
一方、ドイツもフランスなどと組んで進めていた次期戦闘機の共同開発計画FCASは事実上頓挫してしまった。だからドイツが次の相手を探しているというのが現状なのだ。
ドイツとは組めない
漂流したFCAS
ご存じの方も多いとは思うが、戦闘機の共同開発をするにあたって、組んではいけない相手というのはいる。
技術力を持っていない韓国?
いやいや、韓国はそれでもKF-21戦闘機を立派に飛べるところまで作り上げたし、インドネシアと組んで?開発を続けている。馬鹿にしたモノではない。ただ、日本はご遠慮申し上げたい相手だというだけで。
では、自分の意のままに開発しようとするアメリカ?
いやいや、アメリカは確かに開発の方向性という意味で相性の良くない相手ではあるんだけど、技術力はあるし組むべき相手だ。F2戦闘機は実際に共同開発をやったしね。ただ、今回のパートナーには適していなかっただけである。
ではどこか?答えはフランスとドイツだ。
独仏、次世代戦闘機の共同開発中止 「両首脳が困難と結論」
2026年6月9日 4:33
フランスとドイツが次世代戦闘機の共同開発計画を中止する。ドイツ政府高官が8日、日本経済新聞の取材に対し、「マクロン仏大統領とメルツ独首相が開発に関わる企業間の合意形成が困難であるという共通認識に至った」と明らかにした。
日本経済新聞より
フランスとドイツが戦闘機を次期戦闘機の共同開発計画を模索していたのは有名だし、先日それが頓挫したことも知られることとなった。
開発で高い技術力を持つ仏ダッソー・アビアシオンが設計仕様やサプライヤー選定の強い権限を求めたのに対し、独側の欧州エアバスは対等なパートナーシップを要求し、折り合いがつかなかったのだ。
ドイツもフランスも、自国で高い開発力と技術を保有していることが、皮肉にも足を引っ張った格好である。
前科あり
そもそも、ドイツにしてもフランスにしても前科があるのだ。
ドイツは歴史的に武器輸出に対して非常に厳格な基準(人権配慮や紛争当事国への禁輸)を設けており、これが共同開発相手を何度も困惑させてきた。
- ユーロファイターの輸出ブロック: イギリスやイタリアがユーロファイター戦闘機をサウジアラビアへ輸出しようとした際、共同開発国であるドイツが人権問題やイエメン内戦への介入を理由に拒否権を発動し、長年にわたり輸出が凍結された。
- 政権交代によるブレ: ドイツは政権を握る政党(特に緑の党など)によって防衛政策や輸出管理の方針が180度変わるリスクが常にある。GCAP(日英伊計画)は将来的な第三国への輸出による量産効果(コスト削減)を前提としているため、ドイツの参画によって輸出戦略が縛られることを日本側は最も恐れている。
このブログでは韓国のK2戦車の話をよく持ち出すが、あれも、ユーロパックと呼ばれるエンジンユニットを使っているが故に、色々と輸出する国に制限がつく結果になっている。主にドイツが主犯なのだ。
フランスはもっと質が悪い。フランスは自国産業・主導権への異常なこだわりがある。
防衛産業の自立(戦略的自律)を国是としており、共同開発であっても「自国が主導権を握れないなら離脱する」という歴史を繰り返しているのだ。
- ユーロファイターからの離脱(ラファール単独開発へ): 1980年代、現在のユーロファイターとなる欧州共同戦闘機開発計画にフランスも参加していたが、自国の要件(空母艦載機の仕様)や、ダッソー社を主導権とした開発を強く主張し、他国と決裂して離脱。結果、自国単独で「ラファール」を開発した過去がある。今回のFCASの頓挫も、まさにこの歴史の再現と言える。
過去の事情を考えれば、日本としてはフランスもドイツも、戦闘機の共同開発においては出来るだけお付き合いしたくないタイプの国家だと言える。
困惑を隠せない日本政府
というわけで、ドイツの主張に対して、「なにいいよるん」と困惑を隠せないのが日本政府だ。
ただ、日本政府は次期戦闘機をF2の後継機と位置付けており、同機の退役が始まる35年に配備を開始するのが最優先課題。官邸関係者は「ドイツが入れば役割分担をやり直すことになり、計画が10年遅れる」と懸念を隠さない。
ドイツはGCAPに加え、スウェーデンとの協力も検討しているとされる。日本としては開発計画へのドイツの関与を一定程度にとどめつつ、次期戦闘機の売り込み競争では「スウェーデンに負けたくない」(政府関係者)のが本音だ。GCAPではカナダがオブザーバー参加を決めた経緯もあり、関係者は「着地点を探るしかない」と語った。
時事通信より
F2戦闘機の退役やF-15J戦闘機の更新問題なども抱えている航空自衛隊の窮状を鑑みれば、流石に、これ以上の遅れを許容することは出来ないのが日本政府の立場である。
ただでさえ、イギリスが開発費を出さないのではないかという懸念がある状況なので、開発費の協力は欲しいが、余計な口出しは困る。
ドイツが戦闘機を買ってくれるのであれば、それは歓迎したいところだが……。
まとめ
ドイツ首相が来日したら、トラブルしか持ち込んでいない状況でため息しか出ないのが日本政府側の本音かも知れない。
現状、メルツ氏の立場はかなり微妙で、支持率が低迷して、ほぼ「死に体」と呼ばれる状況にある。AfDの台頭などの話もこのブログで説明しているので、ご存じの方も多いだろう。

先日は、おかしな高市批判を繰り広げていた日刊ゲンダイが、今回のニュースをどのような気持ちで見ているか聞いてみたいところだが。

GCAPにドイツ参加など論外だし、今のメルツ氏と何かを約束したところで、次の政権がどのような判断をするのかも良く分からない。軽々な約束は出来ないだろう。


コメント
過去の例で船頭多くして船山に登る状況だったユーロファイターのゴタゴタを見てると本当にお断りしたいですな。
現代兵器の開発費用及び時間、調達数を考えたらコンソーシアム化するのはしょうがないけどある程度参加国を厳選して風通しよくしないと開発時間の長期化まっしぐらですし、特にフランス•ドイツは英伊に比べたらルールを捻じ曲げる天才ですからねぇ。
「手土産」もないなら無視してよいかと。