キター!韓国の誇り「高尺スカイドーム」ネタである。
ソウル・高尺スカイドーム屋根に重大欠陥…来年3月まで補修、照明・スピーカーは半減
2025年9月16日 8:00
ソウル市九老区の高尺スカイドームで屋根構造物に重大な欠陥が確認され、補強工事が進められることになった。市民の安全確保のため、文化イベント時に使用できる照明やスピーカーの重量を現行の半分に制限し、一部区域の使用も禁止される。
AFPより
そういえばこのブログのカテゴリー的に最適なネタなんだけど、扱ってなかったね、これ。
というわけで、本日は「高尺スカイドーム」である。
設計時点からの誤り
高尺スカイドームって?
先ずは、どんなドームかという話を説明する。

なかなか独特な形状のドームだ。
現時点で韓国唯一のドーム施設であり、総工費は1948億ウォン。韓国のKBOリーグ所属の某チームのホームスタジアムであり、ソウル特別市に作られた多目的施設として野球だけでなくコンサートなど各種イベントに使えるとして、建設直後までは韓国の中から評価は高かった。
スタートから不味い
しかしこのドーム球場、調べて見ると出発点から既に怪しい。
2007年に閉鎖された東大門野球場の代替として、当初は「ハーフドーム型の一般的な野球場」として建設計画が作られた。アマチュア野球用の施設だったらしいのである。
ところが、北京五輪での金メダルやWBC準優勝で野球人気が盛り上がりまくった結果、変更を繰り返して「完全ドーム」計画へと変貌。なんと八度も設計変更を繰り返したそうだ。
その結果、床面積81,018㎡、地上4階・地下2階、固定観客席18,092席という立派な施設にはなったが、敷地が狭い(東京ドームの半分)ため、駐車場は492台分しか確保できなかった。周囲を合わせても700台弱。
このため、計画当初はドーム球場ではなく、2万席規模のアマチュア野球用一般球場だった。その後、7年間で8回という設計変更を経て、現在の完全ドーム形態のプロ野球本拠地球場として使用が開始された。しかし、ドーム球場としては敷地が狭く、観客がさまざまな不便を強いられているほか、交通面での配慮や駐車場も不十分だ。建設過程で野球界や専門家の意見を十分に反映しなかったとの指摘もある。
朝鮮日報の魚拓より
どうして収容人数1万8,000人で、駐車場が492台しか停められないのか。周囲の駐車場を確保してもせいぜい200台分くらいしか増えないようだ。まあ、ドーム球場に限らず、多くの球場が駐車場不足。東京ドームだって、350台しか駐車できないのだから、都市に建設される球場の宿命ではあるんだけどね。
交通の便は良いので、駐車場不足は特に問題ないにしても、無理矢理狭いところにドーム球場を作ったお陰で、収容人数が少ないというのはガッカリポイントである(東京ドームは55,000人)。
現代の迷宮
そして設計をいじりすぎた結果、構造は複雑化。
野球:高尺スカイドームは「21世紀最悪のドーム球場」
記事入力 : 2015/11/26 09:53
ソウル・永登浦駅から京畿道富川方面へ5キロメートルの場所にある高尺スカイドーム(ソウル市九老区)は銀色の宇宙船のような形をした建物だ。1万8076人を収容できるように建設された。
華麗な外観とは違い、屋内は「迷路」のような構造なので「動線を把握するのが難しい」という声もある。地下駐車場から地上階につながるエレベーターは1台だけ。それすら大人7-8人が乗るのがやっとという大きさだ。
朝鮮日報より
これは完成(2015年10月)直後のニュースのようで、「21世紀最悪のドーム球場」というのはなかなか辛辣だ。内容を箇条書きに纏めていこう。
- 迷路のような構造
- 駐車場から地上階に繋がるはエレベーター1台しかない
- 内野席と外野席との連絡通路が存在しないので、避難が必要なときなどに不都合
- 4階の観客席は傾斜35度と急斜面
- 席が31席連なっているので、出るのも入るのも大変(一般球場は15席前後)
- 前の座席との間隔が狭く、成人男性は前の座席と膝が届く(つまり成人男性が座っている前を通過して出られない)
- 控え選手の練習場所が地下1階に設定されている
ヤバいな。
要するに「狭い敷地に無理やりドームを建てた」ことが、すべての問題の元凶なのである。
天井がグレーでボールが視認しにくいこととか、照明が暗くてボールがロストしやすいとか、野球場としての機能にも疑問があるようなのだが、まあその辺りは経験不足だと言うことで。
それと、朝鮮日報が挙げた項目は例えば日本の球場の設計などにはチラホラ見られる問題なので、そこまで珍しいことではないようだ。そこは公平を期すために記しておこう。珍しいのは1つの施設にこれだけの要素全てが詰め込まれたってことだけで。
そしてトラブル発生
雨漏り発生
だが、ドーム球場としては擁護できない点もある。それは雨漏りだ。
2016年には早くも「ドームなのに雨漏り」という笑えないトラブルが発生。観客が傘を差して試合を観戦する羽目になった。
韓国初のドーム球場で雨漏り、傘差して野球観戦のデタラメ「税金を無駄に使ってばかり」の悲鳴
2016/7/10 09:00
韓国初のドーム球場の杜撰ぶりが波紋を呼んでいる。
~~略~~
朝鮮日報(電子版)は7月2日付で、高尺スカイドームで1日、天井から雨漏りが発生し、水が観客席に落ちていたと報じた。観客は「ドーム球場で傘を差すようになるとは思ってもみなかった」と皮肉った声を紹介していた。
産経新聞より
ドームで雨漏りって、原因は一体何だったんだ。だって、補修工事をした後だよね、このニュース。
高尺スカイドームの改修作業が完了
Write: 2016-03-15 11:32:15/Update: 2016-03-16 14:56:34
韓国初のドーム球場、ソウル高尺スカイドームが、プロ野球開幕を前に、施設の大幅な改修作業を終えました。
ソウル市とソウル施設公団が15日明らかにしました。
KBS WORLDより
ええと、何々。
- 31の座席がすき間なく並んでいて移動が不便と指摘されていた、内野スタンドについて、中央の3座席を撤去し、通路を設けた
- 急勾配な4階観客席は、階段の端にある手すりの高さを1.2mから1.5mに、階段の左右に高さ90cmの手摺り追加
- 内野席の防護ネットの高さを、3.5mから8mに変更
安全対策を強化したわけね。あれ?雨漏り工事は?やらなかったの?
別の記事で、監査で判明した雨漏りは2015~2017年に58か所、2018年に34か所あって、そのたびに補修工事をしていることが言及されている。かなりの税金を投入して、継ぎ接ぎ工事をしている模様。
新たな問題発覚
それでもトラブルが絶えなくて、冒頭の記事のように再び問題があることが発覚。
ソウル施設公団によると、精密安全診断の結果、屋根の鉄骨構造接合部23カ所で変形が見つかり、高所点検路(キャットウォーク)の床板支えの長さ不足も確認された。いずれも「施設物安全法」上の重大な欠陥に該当する。
公団は今月初めに緊急安全措置を終えており、競技場の基本運営は可能な状態にある。ただし補強工事が終わるまでは、イベント時に天井から吊り下げる舞台装置や音響設備の重量を45トンから22.5トンに制限する。
AFP「ソウル・高尺スカイドーム屋根に重大欠陥~」より
あらー、屋根の鉄骨構造が問題なんだ。
問題項目を見る限り、結構深刻な欠陥のようで。流石に大掛かりな補修工事をやることになっているようだ。
いやちょっと待って、そもそもこの高尺スカイドームって、確か建設に当たって東京ドームの構造を参考にしたんじゃなかったっけ?同じ構造を採用すれば良かったじゃない。
まとめ ― 見直すべきは「外観」より「基本構造」
何か、「最新の音響設備を備え」「近代的なLED照明を用意」するなど、様々なイベントに対応する近代的なドーム施設だという売り込みだったはずだけど、2015年完成直後から不具合のオンパレード。
東京ドームを参考にしたはずが、出来上がったのは「21世紀最悪のドーム」と揶揄される施設だった。
ソウル施設公団のハン・グギョン理事長は「施工会社と緊密に協力し、補強工事を着実に進める。2026年までにAIとIoTを活用した屋根構造物の安全監視システムを導入し、市民が安心して公演や試合を楽しめる環境を整えたい」と述べた。
AFP「ソウル・高尺スカイドーム屋根に重大欠陥~」より
近代化よりも基本的な構造の見直しをすべきだと思うんだ。
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