おや、一時期受注が危ぶまれていたチェコ原発、「無事」に受注できたニュースは知っていたけど。
韓電技術、斗山エネルギーなど軒並み下落
入力 : 2025-08-19 09:53:35 修正 : 2025-08-19 10:10:55
韓国水力原子力がチェコ原子力発電所2基を受注する過程で、米国の原発企業ウェスティングハウスに原発1基当たり1兆ウォン以上を確保できるようにする内容に合意したニュースが伝わり、関連株が劣勢を見せている。
毎日経済より
もしかして「無事」ではなかった?
- チェコ原発受注にあたって、韓水原(KHNP)はウェスチングハウス社に1基当たり8億2500万ドル支払い、かつ50年のロイヤリティーを支払う話が明らかに
- 事実発覚後、関連企業の株価が値下がり
- UAE原発受注と構図がソックリ
何処かで見た輸出体験
受注に成功したチェコ原発
このブログでは過去にこのような記事を書いている。
かなりお安く原子力発電所の建設を請け負う話を出していた韓国(競合した仏EDFより1割以上安値で入札)、この後、無事に受注に成功している。
韓国政府系企業、チェコで原発2基受注 総額2兆6000億円規模
2025年6月5日 18:57
韓国政府系企業の韓国水力原子力(韓水原)は5日、チェコ政府が進める原子力発電所の建設事業で軽水炉2基の建設を受注したと発表した。韓国が欧州で原発事業を受注するのは初めて。受注総額は4000億チェココルナ(約2兆6000億円)にのぼり、韓国が受注した海外原発事業としては最大規模になる。
日本経済新聞より
「なんだ、無事に受注できたのか」と関心していたのだが、そんな単純な話でもなかったようだというのが冒頭のニュースである。
ちょっと事実関係を整理しておこう。
- KHNP(韓国水力原子力)が優先交渉権を獲得 → チェコ・ドコバニ原発の新設プロジェクトで、2024年に有力候補になった。
- WE(米ウェスティングハウス)やEDF(仏エネルギー大手)が横槍 → 「入札手続きに不備がある」と異議を出したり、WEが知財権問題で訴訟を起こすなど、受注を妨害する動きがあった。
- 一時的に契約が保留される → チェコ競争保護局がWEらの訴えを受理し、仮処分で契約が止まった。
- 訴訟や仮処分が解消 → WEとの訴訟は和解で終了。さらに、チェコの最高行政裁判所が仮処分を取り消したことで、法的障害がなくなった。
- 受注に成功(契約締結へ) → 結果的に、KHNPが妨害を回避し、最終的にチェコ原発を受注する流れに。
KHNP(韓国水力原子力)がWE(米ウェスティングハウス)やEDF(仏エネルギー大手)の嫌がらせで受注失敗しそうになったんだけど、WE社と和解したことで何とか回避したってことだよね。
前大統領のユンユンが大変だった時に進んでいた話だけに、新しくミョンミョンが大統領になって話をひっくり返す可能性もあったから、受注成功そのものは評価すべき点だとは思う。
和解した内容が明らかに
ところが、今回問題になったのは「和解内容」が結構衝撃的だったことだ。
韓国、原発輸出時ウェスチングハウスに「1基当たり8億ドル」提供契約
2025.08.19 06:54
今年初めに韓国水力原子力と韓国電力が米ウェスチングハウスと結んだ知的財産権紛争終結合意文に韓国の原発輸出時1基当たり8億2500万ドル(約1219億円)規模の設備購入契約とロイヤルティーを今後50年間提供する条項が盛り込まれたことがわかった。
中央日報より
割と衝撃的な内容だが、考えてみれば当たり前の話でもある。
前の記事でも突っ込みを入れたけれども、そもそも、「韓国標準型軽水炉(KSNP)」は、System80+というウエスティングハウスの開発した原子炉をベースに作っている。
で、その特許はヨーロッパ特許庁にも漏れなく出願され、多分権利化されていたってことだね。流石WE社、自社で原発が建設できずとも、この手の権利を利用して生き残っているだけのことはある。
原発業界によると、1月に韓国水力原子力・韓国電力とウェスチングハウスが締結した合意文に、韓国水力原子力・韓国電力が原発を輸出する際に1基当たり6億5000万ドル規模の設備購入契約をウェスチングハウスと結び、1基当たり1億7500万ドルの技術使用料を支払う条項が盛り込まれたという。
また、韓国企業が小型モジュール原発(SMR)など次世代原発を独自開発して輸出する場合、ウェスチングハウスの技術自立検証を通過しなければならないという条件も含まれた。韓国企業が開発するSMRがウェスチングハウスの基本技術を基に設計した既存の大型原発を縮小する方向で開発されているだけに、これもやはり自社技術に該当するのか確かめるという趣旨だ。
中央日報「韓国、原発輸出時ウェスチングハウスに~」より
中央日報は肝心なことが書いていないんだけど、結局、韓国が原子炉を建設しようとすると、他国の技術を流用するしかないのが現状ってことで、当然そのためには技術料(使用許諾)を支払う必要があるわけだ。
原発業界関係者は「トランプ大統領が米国内の原発を4倍水準に増やすという計画を明らかにしただけに韓国企業の米国市場進出にも役立つだろう」と話した。ある原子力工学科教授は「50年の契約は状況変化によって調整できる問題」と話した。
中央日報「韓国、原発輸出時ウェスチングハウスに~」より
当然、アメリカの原子炉を受注すれば、別途WE社にお金を支払う必要が。
株価値下がり
で、これを受けて冒頭のニュースでは株価が下がったよという話。
18日午前9時21分基準の韓電技術は、前取引日対比8.15%下がった9万200ウォンで取り引きされている。
韓電技術は同日、取引中に8万9100ウォンまで値下がりした。
韓電KPSは7.88ポイント下がった5万300ウォンで、斗山エネルギーは5.84%下落した6万1300ウォンで締結された。
韓電KPSと斗山エナビリティの取引中の低価格はそれぞれ4万9400ウォン、6万700ウォンだ。
現代建設も前取引日対比3.76%下がった6万1500ウォンで取り引き中だ。
毎日経済より
まあ、これって今後も有り得る話なので、投資家の心理を冷やすのも無理はないね。特に韓国市場の投資家は熱しやすく冷めやすい傾向にあるから。
そして、ガッカリもしたのだろうね。何しろUAE原発受注の構図とソックリだからだ。これも退避させると分かり易いかな。
UAE原発のケース(2009年 受注)
- 韓国がバラク原発(4基)を受注したときも「韓国の独自技術で西側に初進出!」と大々的に喧伝。
- ところが実際は、原子炉設計(APR1400)に 米ウェスティングハウスの知財が関与。
- 結果、運転や燃料供給の一部において 米国の承認なしでは動かせない という構造が残った。
- UAE政府としても「運転管理は韓国に丸投げできない」と判断し、米仏の技術者を多数受け入れざるを得なかった。
チェコ原発のケース(2024〜2025年)
- KHNPが優先交渉権を得たが、再び WE社が知財権を持ち出して妨害。
- 裁判・仮処分で契約を止める圧力をかけ、最終的に 「技術料1基あたり1兆ウォン以上」 の上納を勝ち取る。
- 外見上は「韓国が欧州に原発を輸出した快挙」だが、内実は 米国を経由せざるを得ない依存関係。
歴史は繰り返すというわけだ。
でもこれ、それでも韓国的にはメリットがあるんだろうか。韓国大統領個人としては実績として「チェコに原発を輸出した」という話はできるかもしれないけれど、でもこれはユンユンの実績なんだよね。ミョンミョンには何のメリットが……?
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