あれ?K9自走砲のエンジンやトランスミッションって、未だ国産じゃなかったんだ。
South Korea rolls out locally developed K9 engine
2024-09-27
South Korea’s Defense Acquisition Program Administration (DAPA) has announced the rollout of the first locally developed engine for the Hanwha K9 155 mm/52 calibre tracked self-propelled howitzer.
~~対訳~~
韓国が国産K9エンジンを発表
韓国の国防調達計画庁(DAPA)は、ハンファK9 155mm/52口径追跡型自走榴弾砲用の初の国産エンジンのロールアウトを発表した。
Janesより
K2戦車で散々パワーパック開発で苦戦していたから、K9自走砲用とはいえ開発に成功したことは喜ばしい。
K9自走砲の外国への輸出が有利に
外国製を採用していたからイイと思うんだけど
ええと、とっくに国産化に成功していたと思っていたK9自走砲だが。
- エンジン:韓国STX社がライセンス生産する独MTU社製MT881KA-500
- トランスミッション:統一重工がライセンス生産する米GM社製のATDX1100-5A3
- サスペンション:英HDS/Air-Log社製 油気圧懸垂装置のライセンス生産品をベースに、韓国斗山社が開発した改良型油気圧懸垂装置
駆動系は概ね外国製を採用していたんだよね。僕自身は、コレについて、「信頼性が高く、調達が容易な外国製品を組み合わせた」という評価をしていた。
ただ、外国販売にあたっては国産化率を高めていたんだろうと思っていたんだけど……。
何しろ、輸出するときに色々と外国から横槍入れられるからね。そういう意味では、国産化したアイテムを持っていることは強みとなるだろう。
イギリスから技術供与を受けて開発
で、ニュース自体はスルーしていたのだけれど、2021年にはエンジン国産化の話が出ていた模様。
Ricardo nets contract from STX Engine for South Korean project
26th November 2021 – 14:15
Ricardo has won a contract from South Korean company STX Engine to help develop a clean-sheet engine for the military market that will help enable more exports of the Hanwha K9 self-propelled howitzer.
~~対訳~~
リカルド、STXエンジンから韓国プロジェクトを受注
リカルドは、韓国のSTXエンジンから、ハンファK9自走榴弾砲のさらなる輸出を可能にする軍事市場向けクリーンシート・エンジンの開発を支援する契約を獲得した。
shephardmediaより
韓国はこの手の努力は欠かさないよね。
Under the contract, STX Engine engineers will embed with Ricardo’s engineering development team to facilitate knowledge transfer and accelerate development.
~~対訳~~
この契約により、STXエンジンのエンジニアはリカルドのエンジニアリング開発チームと連携し、知識の移転と開発の促進を図る。
shephardmediaより
そしてその努力が実を結んだというのが今回の冒頭のニュースだろう。ただ、これが「国産化ができた」というには少々早計のように思える。
何故かと言えば、以前、フランスのヘリコプター技術を教えて貰い、国産化しようとしたが失敗しちゃった事例があったのだ。そう、スリオンの話である。
開発にあたって、エアバス・ヘリコプターズ社から技術移転の話があったが、結局完全国産化に至らず。核心部品はフランスから輸入する形で製造している状況である。
確か、今年辺りはLAHの戦力化も予定されていたはずだ。
当然、LAHの技術移転の話もあったのだが、コレもどうなったかは定かではない。
詳細は不明ながら性能向上
で、冒頭のニュースでは、ドイツ製のエンジンよりも性能の向上が図れたとの報道である。
DAPA said a roll-out ceremony for the new engine, which delivers 1,000 hp, was held on 27 September at STX Engine’s manufacturing facility in the southern city of Changwon. DAPA claimed the engine has improved performance and efficiency compared with the MTU version but provided no details.
~~対訳~~
DAPAによると、1,000馬力を発揮する新型エンジンのロールアウト式典が9月27日、南部の昌原市にあるSTXエンジンの製造施設で開催された。DAPAは、このエンジンはMTUバージョンと比較して性能と効率が向上していると主張したが、詳細は明らかにしていない。
Janesより
ええと、航空万能論さんのところでは、手放しに賞賛しているようだが、本当かなぁ。

韓国人の「できた」はあまり信用出来ないんだが。
K9自走砲の話序でにK2戦車のパワーパックについてもちょっと触れておくが、K2戦車のエンジン及びギヤボックスは形になっていて、国産化こそ成功していないことにはなっている。
実際に、性能テストには漕ぎ着けている。曰く、軍部の要求仕様が高すぎて、性能が未達なんだとか。
……ドイツのMTU製パワーパックに実現できない性能を設定したとしたら大問題ではあるが、恐らくはそうではない。ただ、特許を回避するためには同じ構造を採用することは得策ではないから、苦戦しているのだと思う。
とはいえ、パテントの保護期間はせいぜい20年である。K2戦車の計画開始から20年以上経過しているのだから、ライセンスで保護される部分はないと思うんだけどねぇ。国家間のパワーバランスの話があるのかもしれない。
ともかく、K2戦車のパワーパック開発のフィードバックがあれば、あちらは1500馬力だったのだから、K9自走砲用の1000馬力のエンジンの開発も可能だっただろう。報道に寄れば、MTUのMT881KA-500と入れ替えることの出来るエンジンであるらしいので、既に販売しているK9自走砲とも無関係ではないだろうね。
乗用車でも出力の異なる共通エンジンを使うケースはあるんだよね。設計次第だと思うんだけど、何故、別の国から技術供与して貰う必要があったのかは、ちょっと良く分からない。
まあ、成功したというのであれば、「それはヨカッタネ」と言うべきだろう。
そして同時に日本としては羨ましくもある。外国に売れるアイテムを持っていることは、技術レベルの向上にも寄与するからね。
コメント
日産のGr.CのV8エンジンブロックも英国リカルド製だったな
結局の所、ライセンス料の支払先が独逸から英国に変わり
輸出制限が少し緩くなっただけ?
現代の初期自社製エンジンもリカルドが開発、SOHC3バルブだったので日産・ベンツ同様にフォードに特許料を支払うのだが、当時フォードと提携していた起亜が特許料を取り立てていたのかな?
アジア通貨危機の時に現代が起亜に出資して影響下に収めたのは根の文化?
エンジン開発には莫大な費用がかかりますからねぇ。
日本国内でも1からエンジンの図面引けるメーカーはそう多くないでしょう。……いや、数えたら意外と多かったですね。
だから、外国から枯れた技術を教えてもらって、改良してくのはありでしょうし、おそらくは技術料は払っても、特許自体は切れているでしょうから、お金は払っていないんじゃないですかね。
払っています、現代よりも後にSOHC3バルブエンジンを出したダイムラーベンツ(当時)が特許料を払っていました。
ええと、言葉が足りなかったようです。
おそらくご指摘の特許の話は、ヒュンダイ・アルファエンジンの話で、1991年発売のヒュンダイ・アクセントなどに搭載されたエンジン関連技術特許なのだと理解していました。SOHC3絡みであれば、古い技術でしょうから。そして、過去の報道資料を調べてもライセンス料を支払っていたかどうかは不明(ヒュンダイ自社開発だと言い張っていましたし、報道には出なかった可能性はあります)。
で、「支払ってはいない」という点は、特許の特性に絡む話なんですが、特許は韓国でも概ね出願から20年で切れてしまいます。故に、リカルド社の該当特許があったにせよ、現時点では期限切れだと、そのように認識していました。が、そもそもイギリスのリカルド社が、果たして韓国に出願していたかどうか……。
と、思って日本特許庁の検索を掛けてみたのですが、リカルド ユーケー リミテッドの特許、ありますね。おそらく、日本と韓国には同様に出願していて、登録になっていなくてもライセンス料を支払わせている可能性はありますから、近年出願した案件でも支払わせている可能性はありですね。
先の発言は、撤回させて頂きます。
イギリスはイギリスで、結構なライセンス料を要求しそうだけれども。
ドイツみたいに、兵器が競合しないことが多いので、邪魔されないという読みなのでは。
こんにちは。
蓋を開けたら、違法コピーの山で一悶着、といういつもの光景が目に浮かぶのは何故でしょう?
あの国は、「国内で製造した=国産化」ですからね、確かにドイツの紐付きは避けたいのでしょうけれど。FA-50やKF-21のアビオやエンジンでもいろいろ辛酸なめてそうですし。
あとはいつもの「テストは通したけど、量産品はグダグダ」が起こらないといいのですが。
本当に、そのあたりは信用ないですからね、あの国。
こんばんは。
韓国の場合、「技術がある」とか、ないとかそういうところだけじゃないんですよね。
何故、技術に真摯に向き合わないのかという。
なんか、文化が違うんですよね。