近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。「注意して下さい」もお読み下さい。
スポンサーリンク

「九州電力が川内原子力発電所の敷地内を念頭に次世代革新炉の開発・設置を検討」は誤報

科学技術
この記事は約5分で読めます。

誤報かよ……。

九州電力が原発新設を検討、次世代革新炉の開発・設置目指す…川内原発の敷地が有力か

2025/05/19 22:19

九州電力は19日、新たな原子力発電所の建設を検討すると発表した。従来より安全性や発電効率を高めた次世代革新炉の開発と設置を目指す。建設地は示していないが、鹿児島県の川内原発の敷地内が有力とみられる。

讀賣新聞より

やろうよ、次世代革新炉の開発。おっと、この引用している讀賣新聞の記事は、恐らく修正後の記事であるだろうことを明記しておく。

スポンサーリンク

どうして九州電力に確認て報道しないのか

誤報の内容

今のところ、訂正や謝罪を出してきたマスコミはないな。

九電グループ経営ビジョン2035に関する報道について

2025年5月19日

2025年5月19日(月曜日)、読売新聞オンライン、共同通信配信記事、朝日新聞電子版、時事通信配信記事において、当社が川内原子力発電所の敷地内を念頭に次世代革新炉の開発・設置を検討している旨の報道がありました。

当社は、次世代革新炉について、将来の需給状況や電源構成の見通しも踏まえつつ、様々な選択肢を検討することが必要であると考えており、革新軽水炉をはじめ、SMR、高温ガス炉等の情報収集をおこなっているところですが、現時点で具体的地点を念頭に置いたものはありません。

なお、川内3号機を含む原子力発電所の新増設やリプレースについては、エネルギー基本計画や、2050年カーボンニュートラルを踏まえた国のエネルギー政策、原子力事業環境整備の動向、電力システム改革による競争進展の状況、将来の電力需給の状況等、様々な要素を勘案し検討していくこととしており、現時点で決まったものは何もありません。

このため、川内原子力発電所の敷地内を念頭に次世代革新炉の開発・設置を検討している旨の報道は誤りであり、各社に記事の訂正を求めております。

九州電力のサイトより

誤報かよ!

6月に社長に就く西山勝取締役は、福岡市で開いた記者会見で「原子力は環境問題や料金面でも大事な電源だ。まだ全く具体的ではないが、(原発建設を)検討していくのはエネルギー事業者として必要だ」と説明した。

讀賣新聞「九州電力が原発新設を検討」より

今のところ、讀賣新聞を始めとした報道各社は記事の訂正を行うようなことはやっていない。

まあ、公開されたビジョンには「次世代革新炉の開発・設置の検討」という文字は見える。

なるほど、誤報として指摘したのは「川内原発の敷地内」という部分で、今のところ何も決まっていないけど、検討は絶対必要だねという話に過ぎない。

そもそもロードマップ的には2035年以降に考えようぜってな話だから、「そんな先のこと言われましても」という意味では適切ではないのだろう。

未だ決まったことは無いのに。

次世代革新炉とは

そもそも、原子力発電の炉において「次世代革新炉」とは何を指すか?というところなんだよね。

実際、ニュースを見かけてからソレが知りたくて色々探したんだから。

「ほえー」と思って探してみたら、何も決まってないんかい。

とはいえ、ヒントがないわけでもない。

日本で一般的にいわれる「次世代革新炉」の意味するところは、政府が検討していて、以下のようなものがある。

  • 革新軽水炉
  • 小型モジュール炉
  • 高速炉
  • 高温ガス炉
  • 核融合炉

とまあ、これくらいだ。

いまのところ、具体性のあるのは高温ガス炉くらいなもので、他は未だ構想段階というか試験炉にすら至っていない段階というか。いわゆる第4世代原子炉に相当する原子炉と、核融合炉まで含んでいる。

一応こんな感じらしい。

                                                                                                                                                                                                                             

なお、高速炉は実証炉と書いてあるけれど、金属ナトリウムを使うので、ダメだろうと個人的には思っている。だって、ふげんやもんじゅは実験したけど廃炉にしちゃったよね。失敗を反省して次の実験炉を作るというのも大変だけれど、もんじゅはナトリウム漏れ事故まで起こしちゃったからね。

いや、計画通りであれば三菱重工が「ナトリウム冷却タンク型高速炉」を提唱していて、概念設計の段階にあるようだ。もんじゅの失敗を活かしているみたいなことが書かれているけれども、概念設計は2020年代後半までかかる見込みなので、それが固まった後でないと判断は難しい。

開発スケジュール

ところで、日本における次世代革新炉の開発スケジュールはこんな感じになっている。

おや、「次世代革新炉の開発・建設」が2035年になっている。

このスケジュールに乗ることが出来るのは高温ガス炉だけなんだけど、おそらくはここに参加できれば良いかなー、くらいの意識なんだろうね、九州電力は。

ただし、安定的な電力供給を必須項目として考えている九州電力にとっては、原子力発電が安定だと考えている節はある。

一方で、国際情勢の不安定化、半導体工場やデータセンターの新設による電力需要の増加、生成AIをはじめとしたデジタル技術の飛躍的な進展など、九電グループを取り巻く経営環境は大きな転換期を迎えています。

九州電力のサイトより

半導体工場やデータセンターを多く抱える地域性を考えても、電力需要は爆発的に増える。しかし一方で、太陽光発電や風力発電では賄えないことは確実なのだから原子炉のリプレイスは喫緊の課題であるはず。

安全面から考えると、現行タイプの原子炉建設は絶望的である事は全国的に共通事項(安全では無いという意味ではなく、足枷が多すぎて建設コストが見合わないのだ)なのだから、そりゃ、九州電力としては次世代革新炉の建設に手を挙げたいのは本音だろうと思う。

ただ、何か決まったように報じられるのは迷惑と、それだけの話っぽいね。

大体、ビジョンは「2035」と銘打っていて、それ以降のスケジュールとしているのだから、そりゃ「決まっていないよ」って言うに決まっている。少なくとも、場所が決まったような報道は迷惑だろう。

コメント