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BYDの軽EVは日本で売れるのか?

科学技術
この記事は約10分で読めます。

ちょっと面白い記事があったので、紹介する。

BYDの軽EVは日本で売れるのか 苦戦が予想される“これだけの理由”

2025年06月20日 06時00分 公開

中国の自動車メーカーBYDが、日本の軽自動車の規格に合わせたEVを開発して日本市場に投入すると話題になっている。それも2年後、3年後の話ではなく、2026年中だというから相当なスピード感だ。

IT mediaより

BYD絡みのニュースは、幾つか書いてきたのだけれど、このコラムはなかなか面白い部分を突いている。

安ければ最初は売れるんじゃないの?とは思うけれど、苦戦はするかもね。

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安全性に対するスタンスの問題

軽EV開発には予兆があった

先ずは、軽EVを作って日本に売り込むという発想についてだ。

この時の記事では、軽EVを日本国内で売るのは厳しいんじゃないの?という話を、価格帯と安全性について触れながら書いた。

BYDの戦略については、冒頭の記事でもこのように「予兆があった」と説明しながら、開発はそれなりの時間をかけていた可能性について言及している。

「BYDが軽規格のEVを開発する」予兆は年初から現れていた。2025年2月に東京ビッグサイトで開催された展示会「スマートエネルギーウィーク」で、BYDブースの隣でライバルであるCATLが軽自動車用のバッテリーパックを展示していたからだ。これを事前に知らなかったとしたら、BYD側のショックは相当なものであり、自社でも開発を急がせただろう。

IT media「BYDの軽EVは日本で売れるのか」より

そして、その狙いだが……。

報道によると、BYDが開発しているのは、日本の軽規格に収まる車高が高めのEVで、いわゆるスーパーハイトワゴンと呼ばれるジャンルのクルマらしい。この点については、目の付け所が良い。

ホンダの「N-VAN e:」のように、軽貨物ジャンルに挑んでも、大きなメリットは見込めない。ある程度の価格を維持しながら、充実した装備と十分な航続距離を実現することで、ユーザーへの訴求力は高まるからだ。

IT media「BYDの軽EVは日本で売れるのか」より

なるほどねぇ。

致命的な問題

ただし、ホンダが売り上げを伸ばしているコンセプトに似せた方向のEVの開発に成功したとしても、それだけでは売れないという指摘をしている。

BYDが採用しているブレードバッテリーはリン酸鉄リチウムイオンだ。リン酸鉄リチウムバッテリーは、高性能な三元系と比べるとエネルギー密度は低いものの、材料コストが低く、安全性が高いといわれている。確かに電極や活物質の違いで熱暴走しにくい特性を獲得しており、サイクル充電回数も三元系の3~4倍はあるのは強みだ。

~~略~~

世界最大のバッテリーメーカー、CATLの会長が昨年中国で開催された「2024年世界動力電池大会」において、「2023年のEVは、1万台に対して0.96台は火災が発生する可能性を抱えている」と明言した。

IT media「BYDの軽EVは日本で売れるのか」より

先ずは、安全性だ。BYDが積極的に採用しているのはリン酸鉄リチウムイオンを利用したブレードバッテリーである。

ブレードバッテリーの特色として、フレームと一体化できるために軽量化ができるというような話になっている。

軽自動車にとって軽量化は至上命題といって良いほど大切なことで、それでもハイトワゴンだと重量が重くなりがちであるので、ブレードバッテリーの特性は有利に働く可能性はあるのだ。

だが、このブレードバッテリーの特性は、寧ろデメリットに繋がるという指摘もあって、必ずしも有利に働くとは言えない。

トヨタが開発を急いでいるギガキャストも、投入するとなると二の足を踏む部分はある。少なくともトヨタは、ギガキャスト技術を投入するのは先ずは高級車だと考えている。低コスト化、軽量化を狙えるギガキャスト技術だが、致命的な問題があるからだ。

それは、部品が変形してしまったら交換が前提になるという点だ。これも構造を工夫することで、ある程度解消の見込みは立っているようだし、似た技術を採用しているテスラですらこの点は結構手を焼いているようだが、試行錯誤して採用をしているらしい。

ブレードバッテリーも同様の問題があり、構造材として組み込める強度はあっても、ぶつけて変形したら全交換が前提となるし、更に安全性という面にも不安がある。二次電池は物理的衝撃に弱いのである。

安全性への取り組みの違い

更に、そもそも支那の物づくりというのは、日本のソレとは決定的に違う部分がある。

ならば品質の差はどこで生まれるのか。あるメーカーの説明員は「中国のメーカーは不良品率が10%であれば、100個の製品を送る際に、あらかじめ10個の代替品を追加して納品する」のだという。

日本メーカーであれば、不良品率を1%以下にするよう努力し続けるが、中国のメーカーはそうした努力よりも代替品をサービスして、開発のリソースを次世代製品に注ぎ込もうという考えなのだろう。

IT media「BYDの軽EVは日本で売れるのか」より

この話は、僕自身が体験したことがあるというような話を書いたことがあるけれど、良品率を上げるより、不良品を交換した方が良いという考え方があって、1000個の部品を納入して欲しいとお願いしたら1500個の部品を納入してきてビックリしたが、検品したら500個くらいしか良品がなくてもっとビックリした。それに文句を言ったら、今度は3000個納品してきたから更にビックリ。そういう文化なのである。

支那の製品で良品率が9割なら寧ろ良心的である。個人的な感想ではあるが。

なお、日本の工場で頑張って良品検査をやっても1/10000くらいの確率で不良品がすり抜ける感じなので、そういう意味で二次電池の不良率というのは、なかなかシンドイ。

それをどこまでBYDが追求してくるかは、結構興味がある。日本のそれは流石に過剰品質なんだよね。

ブレードバッテリー火災?!

ブレードバッテリーが登場した時、「絶対に発火しない」と自信をもって発表され、日本のメディアもかなり持て囃した。

バッテリーの釘刺しテスト、BYDのEV向け新製品が合格

2020年04月02日

BYDは3月29日、EV向けに開発した新世代バッテリーの「ブレードバッテリー」を発表した。

~~略~~

BYDは、釘刺しテストに合格したブレードバッテリーの映像を公開した。BYDによると、このテストは、バッテリーの過熱を確認する最も厳密な方法という。釘刺しテスト中、ブレードバッテリーは発煙も発火もせず、表面温度は30~60度にしか達しなかった。

kakakucomニュース

釘を刺しても燃えない!

また、ブレードバッテリーは、押しつぶす、曲げる、300度に加熱する、260%過充電するなど、過酷なテストにも合格した。これらのテストでも、火災や爆発を起こしていないという。

kakakucomニュース

どんな過酷な条件でも火災や爆発を起こさない!

そんなニュースが駆け巡ったのである。

だが、支那各地のBYDディーラーで火災が発生していて、1件や2件ではない。

BYDディーラーで大規模火災、自動車はほぼ全焼―中国

2024年5月17日(金) 11時0分

2024年5月16日、香港メディア・香港01は、福建省福州市にある中国の電気自動車(EV)大手BYDのディーラーで大規模な火災が発生したと報じた。

記事によると、同市閩侯県にあるBYDディーラー店舗で現地時間16日午前0時半ごろに火災が発生。消防車7台、消防隊員29人が出動して消火活動が行われた結果、火は約50分後の同1時18分に鎮火した。

レコードチャイナより

このニュースでは火災発生の原因は不明で、バッテリーが発火したという情報は今のところ見かけていない。他のディーラー火災でも、ブレードバッテリーが原因であると報じられたニュースはない。

これは「燃えない」というわけではなく、正常な状態であれば発火の原因になりにくいという話なのであって、欠陥品が燃えた可能性を排除できない。

多くの現場がこんな感じになってしまって、初期消火に失敗して長時間燃えたケースが多い。そうすると、バッテリーによる燃焼の可能性は排除しにくい。

BYDはもうおしまい

さて、こうしたトラブルは、BYDの車がダメという話を象徴しているのではなく、支那の車作りが未だ未熟であるということを意味しているのだと思う。思想的にブレードバッテリーのような作り方は革新的な部分があると思うのだが、しかしやってはいけないタブーを気軽に踏み越えているところが問題なのである。

もちろん、ブレイクスルーは、コレまでのやり方を踏襲していては起こらない。だからといって、安全性をどこまで犠牲にするのか?ということは、注意深くやる必要がある。

「また漏電?」 EV車内のあちこちで「ビリビリ」=中国BYD

2024/05/25 更新: 2024/06/28

中国が国を挙げて支援する自動車メーカー大手のBYD(比亜迪)のEVの安全性に関わる問題がこれまでになく明らかになっている。

ショールーム展示中や運送中に起きた「自然発火」など、安全性に関わる事故が頻発するなか、BYD車内で漏電している様子を捉えた動画がネットに拡散された。

大紀元より

大紀元の記事で申し訳ないのだが、EV車内で漏電が確認されるというのはとんでもない話。嘘か本当か、こんな話もあった。

BYD車の漏電が原因で運転手がICUに?BYDは否定「運転手が誤認した可能性」―中国
中国電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)は、車の漏電が原因で運転手が集中治療室(ICU)に入ることになったとする投稿について、発病が漏電によるものという可能性を否定した。

この手の噂が出てくるのは、本当にダメな構造だったパターンと、トラブルはあるが流石に大げさというパターンがあるが、いずれにせよ何の問題もないという話ではない。

他にも、塗装の問題だったり、鋼板の厚みが薄い問題だったり、足回りの構造の問題だったり、随分と手抜きを疑われる構造的な問題が指摘されている。

株価急落のBYD「大規模値下げ」は失敗だった?「中国産EVは終わりだ」と大喜びする人が知らない事実
中国EVの雄・BYDが5月に打ち出した大幅な「一律値下げ」が波紋を呼んでいます。株価は急落、業界全体に不穏な空気が広がっています。しかし、これを機に「中国産EVは終わった」と考えるのは早計かもしれません。背景には、中国経済の減速やアメリカの...

支那大好きな方は、こんな不思議なコラムを書いているが、BYDの凋落を前に「次のBYDが登場するのかも」というちょっと意味不明な論理展開になっていて面白い。だがそんなコラムでも流石にBYDがこのままの勢いを維持出来るとは予想してはいない。コラムの著者はBYDの車を所有するほどのファンで、国産車ではBYDの足下にも及ばない性能だと豪語する人物のようだが。

BYDは今までの商売のやり方を続けることは恐らく困難で、体質を変えるしかない。軽EV投入である程度は売れる可能性は秘めているが、メンテナンスを考えると街の自動車屋では対応出来ないし、請け負うようなディーラーもない。長期的には無理筋だろう。

趣味で乗る程度の車であれば良いが、街乗りの足代わりに使う用途だと、故障した時に対応出来ないようなポンコツでは困る。件のコラムの著者はその点について、スバルに業務委託しろと意味不明な主張をしているが、バカも休み休み言えよ。スバルも流石に提携する軽自動車メーカーを選ぶわ。トヨタ系列であればダイハツ、そうでなければ実績のあるスズキを選ぶだろう。

そもそも、日本の軽自動車業界はガラパゴス的な位置づけなので、こんなところに適合するようにお金をかけているようでは商売としては成立しない。マーケット規模はそこそこあるけれども、残念ながら小商いできるような市場ではない。

ニヤニヤしながら見ていても良いが、結局のところ日本の市場を荒らすことになるとすると、ちょっと黙っていられない部分ではある。早いとこ計画段階で撤退してくれると助かるのだが。

追記

あらあら、いよいよかな。

中国BYD、国内工場で生産能力削減 ライン増設も延期=関係筋

2025年6月25日午後 6:16 

中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD)がここ数カ月、国内の一部工場でシフトを削減し、新たな生産ラインの増設計画を延期するなど、生産と事業拡大のペースを鈍化させていることが関係者の話で明らかになった。

BYDはここ数年販売台数を大きく伸ばし、米テスラを抜いて世界最大のEVメーカーに成長した。しかし、激しい競争が続く中国市場で大幅な値下げを行っているにもかかわらず、在庫の増加に苦しんでいる。

ロイターより

「勢いが衰えてきた」程度であれば良いんだけど、散々値下げしたあとでの生産調整だからどうかな。結構、投資家からの印象は悪くなりそうだ。

コメント

  1. 山童  より:

    木霊様ども。1000個の注文に「不良品おおいから」と3000個発送してくる話に爆笑しました。
    シナ人の良い部分は「大雑把に話を要約してつかむ事」すが、
    それは「万事に大雑把で乱暴である」も意味する。
    日本人は細か過ぎ、シナ人は雑に過ぎる……これシナ人留学生が言ってました。
    しかし走る火炎瓶というか燃える棺桶というか、そうなる近未来が視える。
    まぁシナ車など乗る奴が悪いので大いに燃えてもらって警告板になってもらいましょうね😁

    • 木霊 木霊 より:

      ええ、個数はちょっと正確ではありませんが、比率は同じ。本当にあったオモロイ話です、が、当事者としては怒りを通り越して呆れますわ。
      日本人は1000個納入してくれといったら、「1000個の良品」が来るという認識なんですが、彼らには「1000個の良品が含まれていれば良い」という理解になるんですよね、不思議なことに。
      同じ意味じゃないハズなのに、彼らにとっては同じことのようで。

      でも、二次電池で同じことやられたら、発火するんですよね。そりゃ、当然の帰結というか何というか。
      彼らは非常に優秀なんですが、認識の差を埋めるのは結構大変です。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >支那大好きな方

    御存知と思いますが、

    https://diamond.jp/articles/-/363880
    「残念ですが、国産車では足元にも及びません…BYDの「軽EV」と国産首位・日産サクラの圧倒的な性能差」

    https://diamond.jp/articles/-/363888
    「BYD「軽EV」の普及はギリギリ阻止できるけど…2027年に日本の軽自動車市場を破壊するかもしれない「黒船」の正体」

    あたりが、刺激的なタイトルの割には記事はそんなに煽って無くてまあ読めます。
    完膚なきまでに国産をこき下ろしたいけど、エビデンスベースでそこまで出来ない、的な。

    それと、先日横浜で開催された「人と車のテクノロジー展」で、スズキが軽トラEVの試作車出してたんでちょっとだけ話聞きましたが、
    「軽トラ需要は一日の走行距離が基本短い。ので、バッテリは小さくて良いんじゃ無いかと思ってる」
    だそうです。

    補助金大量投入のゲロ安EV持ってくるならともかく、価格で度肝を抜けない程度のものを持って来ても、舶来品、特に中華製では……というのが正直な感想です。
    かといって、補助金ドバドバ投入して輸出する体力はそろそろ尽きてきてるわけですから。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      そうそう、その辺りを一通り読んで、タイトルで随分煽っている割にエビデンスがないし、そこまで煽り切れていないというか。

      そして、軽トラの話。そこは僕も完全同意で、小さなバッテリー積んでメンテナンスの手間を減らしてくれるとメリットが!とか思っています。
      EVはもっと割り切りが必要だと思うんですよね。

  3. 砂漠の男 より:

    日本の軽自動車市場は成熟しており、市場の要求スペックに加えて、
    コスパが重視されるので、各社とも研究熱心です。
    軽自動車は、安かろう悪かろうでないことを誤認識すると”負け”ます。

    BYDは、日本でも政府補助金をアテにして販売価格を設定していそうですが、
    それにしても≒200万円/台ではさすがに売れないでしょう。
    https://shorturl.at/Hbr6Z
    ひょっとして、在日支那人たちの購入を期待している?
    すぐゴミ化しそうで、むしろ環境汚染が心配です。

    余談ですが、支那製のタイヤは危険で使えない、というレポート多いです。

    • 木霊 木霊 より:

      軽自動車業界は中々の魔境ですから、中途半端に切り込んだところでBYDが利益を得られるのかは疑問です。
      BYDの計算では、日本政府が補助金を出すところまで想定していると思うのですが、そうはならないだろうというのが僕の予想です。
      そうすると、自爆上等の値下げ攻勢をしてきて、短期的に売れる可能性はどうしても排除できないんですが……。

      韓国製のタイヤも酷いものでしたが、支那製もなかなかですね。一部では「良くなった」という評価もある様ですが……。