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南鳥島沖の試掘開始で、レアアース資源国になれるのか

科学技術
この記事は約3分で読めます。

レアアースの試掘が始まるというニュースなんだけど、残念ながらこれはおそらく採算がとれるレベルにはならない。

レアアースの脱中国依存、官民で「地道な取り組み」 南鳥島沖で試掘、日米で開発協力も

2025/11/17 18:34

先端技術品に欠かせないレアアース(希土類)を巡り、官民で中国に依存しないサプライチェーン(供給網)の構築を急いでいる。

産経新聞より

ただ、やらないという選択肢もないんだよね。

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国産資源開発と裏事情

レアアースの試掘始まる

記事によると、2027年には大規模掘削システムの実証に移行する計画らしい。

順調に進めば、27年2月に1日当たり350トンに上る大規模掘削システムの実証に移行し、埋蔵量や経済性を評価したい考え。埋蔵量は「世界需要の数百年分」との見方もあるが、SIPは「産業的規模の開発が可能な量」との表現にとどめている。より希少な「重希土類」が豊富に分布しているという。

産経新聞「レアアースの脱中国依存、官民で~」より

大量に採掘できるのであれば、ある程度コストを下げられる可能性はある。あるんだけど、安くはならんよね。

img

ここまで離れていると、搬送するだけでコストがかかる。

狙いは国産化

では何故やるのか?といえば、割と簡単な理由である。

探査船で水深約6千メートルからレアアースを含む泥を引き上げるという世界初の試みだ。使用機器は勝手が違う海外製で、生産技術を独占する中国の協力も得られない。「一発成功は難しいかもしれない」と不安も見せる。

引き上げた泥は別途、レアアースと分離した上で精製実験を行う。

産経新聞「レアアースの脱中国依存、官民で~」より

要は自前でレアアースの確保を狙っている、それだけの話である。

とはいえ、日本は需要の約6割をなお中国に依存する。政府関係者によると、供給網構築に対する中国の妨害が予想されるほか、中国からレアアースを輸入している国内企業も供給停止を恐れ、協力に尻込みする可能性があり、「自力確保は簡単ではない」と漏らす。

産経新聞「レアアースの脱中国依存、官民で~」より

陸上の露天掘りで環境度外視でレアアース生産をやっているのだから、勝てるわけがない。ただし、支那の都合に振り回されて供給を止められた場合に、高くても細々と生産できるか出来ないかでは、随分と違う。

そういう意味で、自国生産出来るチャレンジをする意味はあるのだ。ただ、深海6000mの海底から引き上げるというのは、そう簡単な話じゃないんだよね。

南鳥島を防衛せよ

じゃあ、何故、海洋資源開発をやるのか?といえば、単純に国防において意味のある話となるからだ。

日本最東端の島「南鳥島」=東京・南鳥島

こんな絶海の孤島周辺は、「何もない」のが現状である。

だから、開発拠点を構築してそこを防衛する必要があるってことになる。こちら方面には真っ当な日本の研究拠点はないし、防衛拠点すら乏しい。

  • 硫黄島(航空自衛隊:硫黄島航空基地)
  • 父島(海上保安庁:小笠原海上保安署)
  • 母島(小規模な行政機能のみ)
  • 南鳥島(実質無人、気象庁のみ)

この程度しかないのである。

脱中国を目指す高市早苗首相は今年10月、米国とレアアースなどの供給確保に向けた協力に関する文書に署名。共同投資などを進めるための閣僚級協議を設置する。南鳥島沖の開発でも米国との協力方針を示し、具体策を検討するという。

産経新聞「レアアースの脱中国依存、官民で~」より

アメリカを巻き込めたことで、防衛拠点の構築というところにも意味が出てくる可能性が。もちろん、それなりの規模の港湾施設や宿泊可能な設備は必須。

こちら方面の防衛は実は手薄状態なのが実情なので、そういう意味でも今回のこの決定は「経済活動を行っている」と主張し得る根拠を作る上では大切な決定となる。

利益確保が出来れば御の字ではあるけれど、今後はこの辺りの開発というのがそもそも安全保障上、重要になってくる。そういう風にニュースを読むとその開発の必要性というのは理解しやすいのではないだろうか。

コメント

  1. 軍事オタクより より:

    レアアース泥が採集出来たら画期的な事になるですね
    中国のレアアースは環境汚染が凄いしウランとトリチウムも含んでるしどうせ少数民族を安い賃金で採掘してるだろうし
    中国の言いなりになるのはしゃくにさわるし
    何とかレアアース泥の採掘を可能にしてほしいですね
    ただ6000mの深海なのでいつになることやらですね

    • 木霊 木霊 より:

      確かに、採取できて採算ベースに乗せられればスゴイと思います。
      ただ、それは現時点では夢物語でなかなか。

      どれくらいのコストまで許容できるのか?という議論を始める「前」なので、まあ、あくまで国防の意味が強いよと言う話で整理しています。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    今すぐ採算が取れるとは思っていない。
    将来的に取れるかも知れない。
    だから、今、場所と技術を確保する。
    場所と技術を奪われてはならない。
    これに尽きますね。

    ※採算性が疑問であったとしても、代替え案があるとないとでは天と地ほども違う。
     その意味でも、支那にプレッシャーを与える上で、開発している姿勢は止めてはならない。

    • 軍事オタクより より:

      七面鳥さんのおっしゃる通り
      手札は一杯有った方がいいですよね

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。

      素直に採算性が怪しいけど、国防的には必要だという切り口で「将来的には採算とれるかもしれないけど今は難しい」「何事もチャレンジ」で予算が通ればそれで良いですし、もしくは国防の話はせずに「とにかく開発にチャレンジ」で予算を付けられれば、それでも良いかもしれませんね。
      開発を始めることに価値があるし、アメリカが気にかけてくれているだけで防衛もやりやすいですから。