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アメリカが画策するグリーンランド取得作戦

北欧ニュース
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タイトルはやや煽り気味だが、軍事作戦をするという意味ではない。

コラム:グリーンランド防衛で結束問われる欧州 トランプ氏の併合発言で

2026年1月7日午後 12:25

デンマークのフレデリクセン首相はトップの座を冷たく、孤独に感じているに違いない。フレデリクセン氏はトランプ米大統領に対し、デンマークの自治領であるグリーンランドを米国が征服すべき領土の候補に挙がるべきでないと警告しようとしているものの、欧州から圧倒的な支持を得られているわけではないのだ。

ロイターより

ただ、欧州諸国の間でも「アメリカは本当に軍事的なオプションを考えているのではないか」という疑念が広がっているように見える。

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かなり勝手なアメリカのロジック

アメリカ国防にとって必要な土地

トランプ氏がグリーンランド取得に言及したのは今回が初めてではない。だが、昨年末に特使を任命したことで、この話が単なる思いつきではない可能性が浮上してきた。

トランプ氏、グリーンランド担当特使を任命 アメリカが「所有しなければならない」と

2025年12月23日

アメリカのドナルド・トランプ大統領は21日、デンマーク自治領グリーンランドを担当する特使を任命した。トランプ氏はかねて、グリーンランドをアメリカに併合したい考えを示しており、この北極圏の巨大な島を領有するデンマークとの間に新たな対立が生まれている。

BBC NEWSより

他国の領土を「くれ」というのは、如何にも傲慢な言い分ではある。

これまでは「ディールの一環だろう」「本気なわけがない」と思っていたが、ここまで具体的な動きを見せられると、「これは本気だな」と考えざるを得ない。

どうやら、その認識は欧州諸国も共有しているようだ。

トランプ氏「グリーンランドは絶対に必要」 ベネズエラ攻撃後に圧力

2026年1月5日 8:08

トランプ米大統領は4日、米誌アトランティックのインタビューで「(デンマーク自治領)グリーンランドは絶対に必要だ」と改めて領土獲得に意欲を示した。米軍による南米ベネズエラへの軍事攻撃を踏まえ、デンマークにも圧力をかける狙いがある。

日本経済新聞より

「絶対に必要」とは、また大きく出たものだ。

確かに、軍事的な価値は高そうだよね、地図を見て分かる通り。

安全保障的な観点

何故、アメリカがそこまで欲しがるのかについては、以下の記事が分かり易い。

アングル:トランプ大統領がグリーンランドを欲しがる理由

2025年12月24日午後 4:51

~~略~~

グリーンランドは戦略的位置と資源の両面で、米国に利益をもたらし得る。欧州と北米を結ぶ最短ルート上にあり、米国の弾道ミサイル警戒システムにとって重要な地点でもある。米国は北極圏の同島にある既存の軍事的プレゼンスを拡大し、同島とアイスランド、英国の間の海域を監視するレーダー配備などを検討してきた。周辺はロシア海軍の艦艇や核搭載潜水艦が通過する海域とされる。

トランプ氏は22日、フロリダ州パームビーチで記者団に「グリーンランドは鉱物資源のためではなく、国家安全保障のために必要だ。グリーンランドの海岸線を見渡せば、至る所にロシアと中国の船舶がいる。我々はそこを手に入れる必要がある」と主張した。

船舶データによると、北極海域における中国の船舶の大半は、ロシア近海の太平洋北極圏および北極海航路を航行している。一方、ロシアの船舶の大半はロシア沿岸を航行しているが、アナリストらはロシアの潜水艦がグリーンランド、アイスランド、英国間の海域を頻繁に航行しているとみている。

ロイターより

ロイターの地の文ではあまり重視されていないのが不思議だが、歴史的に見るとグリーンランドとオランダの関係は余り良好ではない。現状はグリーンランドはデンマークの領地という扱いにはなっているけれどね。

『ヴィンランド・サガ』を読んだ、あるいはアニメを見た人なら、その殺伐とした感じは分かっていただけると思う。

それ故に独立の話は、今なお燻っている。

仮にグリーンランドが独立しても、米国領にならずに米国と関係を結ぶ余地はある。いわゆる「自由連合」として米国と協定を結び、デンマークの補助金を米国の支援と保護に置き換える一方、軍事的権利を米国に認める枠組みが想定される。マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パラオに似た形だ。

ロイター「アングル:トランプ大統領がグリーンランドを欲しがる理由」より

そして、このグリーンランド独立に関連して、支那がちょっかいを出してきているんだよね。

中国外務省「中国の脅威を私利を得るための口実にしないよう」 トランプ氏のグリーンランド領有発言を批判

1/5(月) 20:28配信

アメリカのトランプ大統領が中国やロシアの脅威を念頭にデンマークの自治領グリーンランドの領有に改めて意欲を示したことについて、中国外務省の報道官はアメリカ側の私利を得るための口実にするなと批判しました。

Yahoo!ニュースより

分かり易いことに、支那の報道官が早速噛み付いている。やましいんだろうねぇ。

グリーンランドは、アメリカの国防において以下の点で要衝だと言える。

  • 欧州と北米を結ぶ戦略的位置
  • 弾道ミサイル警戒網の要衝
  • ロシア潜水艦の行動海域に近い

ここをロシアや支那に盗られるとかなりリスクが高くなってしまう。

氷上シルクロード

実際にこの話は、日本経済新聞が取り上げているこの記事が参考になるだろう。

中国、ロシアと「氷上シルクロード」 欧州向け貨物で初の北極海航路

2025年10月2日 11:00(2025年10月2日 12:32更新)

中国が北極海の航路による欧州への貨物輸送を始めた。中東・紅海を経由する従来ルートに比べて所要日数を半分以下に抑え、中東地域などの紛争リスクの回避にもつなげる。沿岸国であるロシアと連携し「氷上シルクロード」構想の実現を急ぐ。

日本経済新聞より

「紛争リスクを回避」というよりは、密輸を促進させたいってことなんだろうね。

この航路、見て分かるようにほぼロシアの沿岸を通るだけのルートであり、アラスカの鼻先をかすめていくことになるのだけれど、一カ所だけでは監視するのは難しい。が、グリーンランドに監視基地を置くことが出来れば、監視しやすくなる。

当然、ロシアや支那にグリーンランドが抑えられてしまうと、それも難しくなる。

侵略抑止

本日のニュースでは、ついに「侵略抑止」という言葉が正面から出てきた。

米、グリーンランド買収提案検討「ロ中の侵略抑止」

2026年1月8日 8:29 

米ホワイトハウスは7日、ドナルド・トランプ大統領がデンマーク自治領グリーンランドの買収提案を検討していると発表した。住民とデンマークは、グリーンランドは売り物ではないと明言している。

~~略~~

「大統領は、北極圏にけるロシアと中国の侵略を抑止することが米国にとって最善の利益だと考えている。だからこそ、彼のチームは現在、買収の可能性について検討している」と付け加えた。

AFPより

要するに、「先に押さえておかないと、ロシアや支那に使われかねない」という話だ。 ミサイル基地でも置かれれば、アメリカにとっては悪夢である。

この点については、アメリカの危機感自体は理解できる。

デンマークは反対するが

当然ながら、デンマークは拒否している。

デンマーク、トランプ氏のグリーンランド構想一蹴 NATO加盟国攻撃をけん制

2026年1月6日午前 7:33

デンマークのフレデリクセン首相は5日、トランプ米大統領はデンマーク自治領グリーンランドの「取得」を真剣に考えているとの見方を示し、デンマークとグリーンランドはこうした意向を明確に拒否していると改めて表明した。

ロイターより

もっとも、冷酷な話をすれば、金銭面だけを見ればデンマークにとって「全く損」とも言い切れない。毎年の補助金負担はなくなり、買収資金も入る。

ただ、日本に置き換えてみると分かりやすいが、「支那と対峙するために沖縄を売れ」「ロシアを封じ込めるために北海道を売れ」とアメリカに言われても、「バカも休み休み言え」と言うしかないわけで。

欧州各国も、デンマークの考えを支持するとのこと。

欧州各国は5日、この問題を巡りデンマークとグリーンランドを支持する立場を強調。スターマー英首相は記者団に「グリーンランドの将来はグリーンランドとデンマークが決定すべきだ。他の誰でもない」と指摘した。ドイツのワーデフール外相は5日、グリーンランドはデンマークに属するとし、必要な場合はNATOがグリーンランドの保護強化を協議する可能性を示唆した。欧州連合(EU)欧州委員会の報道官は、EUは国家主権の原則を堅持すると述べた。フランスも連帯を表明したほか、北欧やバルト諸国もデンマークとグリーンランドへの支持を表明した。

ロイター「デンマーク、トランプ氏のグリーンランド構想一蹴~」より

そりゃまあ、ねぇ。

ただし、留意しなければならないのは、アメリカのディールがNATO諸国を巻き込むモノだった場合に、共同で出資して基地を建設などと言うオプションは考え得る。おそらくは、「アメリカのモノになる」という点が危惧されているのであって、グリーンランドに防衛拠点が作られることには余り忌避感はない可能性があるのだ。

「必要な場合はNATOがグリーンランドの保護強化」というのは、そういう文脈を含むのではないか。

まとめ

トランプ氏の突飛な発言は珍しくないが、今回のグリーンランド取得構想は、ベネズエラ電撃作戦と相まって、もはや冗談として扱えない段階に入っている。

アメリカの国防という観点から見れば、その重要性は理解できる。その実現性や善悪はさておき、「それを本気で言う時代になった」という事実こそが重要だ。

私たちが「比較的平和で安定的だ」と思っていた世界線は、遅くとも2025年で終焉したのだ。

危険は以前から存在していたが、もはや目を背けられない段階に入った――その象徴が、このグリーンランド騒動なのだろう。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    理屈は分かるが、やり方が悪すぎる……

    むしろ札びらでデンマークと自治政府の横っ面叩いて『軍隊駐留させろ、金は出す』って言った方がまだマシだったのでは。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      これも報道の仕方の問題や、トランプ氏の発言の仕方そのものに問題があるんですが、問題意識は間違っていないという。
      デンマークとしてはアメリカに出資して貰って駐留基地を作るあたりが落としどころのような気はしますが、グリーンランドは独立したいらしいので扱いは難しいですね。