触れるかどうか迷った話題だけれど、軽く触れておく。
膠着状態のウクライナ戦線だが、戦争のやり方は随分と変容しているようだという点には注目している。
ロシア通販大手の倉庫でまた火災、ウクライナがドローン攻撃
2026年8月3日
ロシアのオンライン小売大手ワイルドベリーズは3日、西部ウラジーミル州にある同社倉庫の1つがウクライナのドローン(無人機)攻撃を受けて火災が発生し、従業員が避難したと発表した。
ロイターより
ロシアのオンライン小売り大手ワイルドベリーズだが、次々と倉庫が狙われているというニュースが流れるようになった。
軍事的攻撃目標
ロシアンAmazon
ロシアのAmazonというと分かりやすいだろう。ワイルドベリーズはロシアのオンライン通販(EC)サイトとして約50%のシェアを誇る組織である。
ロシア国民の生活にも密着している企業であるが、ロシア最大級の納税企業であるということもあって、実質的にロシアの国家財政を支えている。そして、企業の利害関係者には、プーチン政権の高官や大統領に近いオリガルヒが名を連ねている。
そして、ロシアの国営銀行(VTB銀行など)から巨額の融資を受けている国内最大級の企業債務者でもある。
ワイルドベリーへの攻撃:ウクライナのドローンはいかにしてロシアの金融セクターの脆弱性を発見したか
2026年7月30日午後6時49分
ウクライナによる長期制裁は、これまで主に石油精製産業を標的としてきたが、ここ数週間で新たな標的、すなわちロシア最大のオンラインマーケットプレイスであるワイルドベリーズの物流センターを攻撃対象とし始めた。UNNは、この戦略はワイルドベリーズ社自身とその販売業者への明らかな影響に加え、ロシア経済にさらに重大な影響を及ぼす可能性があると報じている。
~~略~~
シュティラーマン氏によると、ワイルドベリーズはロシア最大の企業向け融資先の一つであり、ロシアの国営銀行VTBはこの市場の発展に賭けているという。
UNNより
当然ながら、ワイルドベリーズの損益はロシアの銀行を直撃することになる。ワイルドベリーズがロシア最大の企業向け融資先であり、これが文字通り焦げ付くことになるのだから。

不思議なほど、攻撃をされると派手な煙を上げて炎上するワイルドベリーズの倉庫の様子。ここまで炎上すると、武器弾薬を輸送する兵站を担っていると言われても「そうかも」とは思ってしまうね。
尤も、似たようなECサイト倉庫の炎上は韓国でもあって(こちらは火事のようだが)派手に燃えていたので、ECサイト倉庫は燃えやすいのかもしれないのだけれど。
オゾンも狙われる
ワイルドベリーズと同様に狙われているのがオゾンである。オゾンも、ワイルドベリーズと似たようなECサイトで、ロシアのトップ2がワイルドベリーズとオゾンである。この2社でロシア国内の約77%に達するというから、この2社で寡占状態にあるようだね。
で、ワイルドベリーズ同様に、オゾンも流通網を利用してロシア軍の前線への物資(無線機や暗視スコープ、防弾チョッキなどの調達品)の輸送をしているとされている。
ロシアの電子商取引大手オゾンは、ウクライナのドローン警戒によりタタルスタン共和国の倉庫から避難を余儀なくされたと発表した
2026年7月31日午後5時21分
ロシア第2位の電子商取引会社であるオゾンは金曜日、ウクライナのドローン警戒のため、タタルスタン共和国のゼレノドルスクにある倉庫からの避難を余儀なくされたと発表した。
避難はわずか数分で完了し、死傷者は出なかった。物流センターは無傷で、その後操業を再開したと同社は発表した。
~~略~~
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ワイルドベリーズの標的はロシア軍にドローン部品やその他の装備を供給する物流拠点だと述べた。クレムリンは、ワイルドベリーズが軍事物資を取り扱っていることを否定している。
ロイターより
クレムリンは、ECサイトの流通網を利用した軍事物資の移送を否定しているが、ロシア以外でソレを証明する方法はないし、ロシアにしてみれば利用しない理由もない。
一方、ウクライナ側にとって狙いやすいデカイ的であり、かつ攻撃を鈍らせる為の有効な攻撃として都合が良いということになる。
国際法に反するか
ここで、ウクライナが攻撃目標としてこういったECサイトの倉庫を攻撃することが、国際法上許されるのか?という点について軽く触れておく。
国連憲章第51条が認める「自衛権」に基づき、攻撃を受けている国は、攻撃の元を絶つために敵国領内を叩く権利がある。
国際社会の共通認識として、「一方的に侵略されている側が、相手の補給路や兵站(物流)を叩くのは当然の防衛行為である」という理解となっているのだが、それが民間企業の場合は許されるのかどうかは議論の余地が出てきてしまう。
ターゲットが「純粋な民間施設」か、それとも「軍事流用された施設」かで切り分けられるのだが、ロシア軍が民間インフラをドローンや兵器の流通網に組み込んでいる以上、それは「合法的な軍事目標(デュアルユース)」であるという理論は成立する。
既に、ロシアによる発電所や病院といった民間インフラへの無差別攻撃が常態化し、マンションのような集団住宅地も攻撃目標となっている実情を考えると、今回のようなワイルドベリーズなどを攻撃目標とすることは、国際的な理解の下に行われたといっても、言い過ぎではあるまい。
まとめ
ワイルドベリーズのような民間企業の工場を狙うことは、本来的には国際的な批判の的になりやすいのだが、長期化する侵略戦争が続いていることもあって、兵站の攻撃という風に整理されるようになったことは、興味深い。
ロシアの厭戦ムードを狙うという側面も、ウクライナ側にはあるのだろう。ロシア国民の生活を直撃するような攻撃に繋がるからね。ただ、こう言う手段も、良いか悪いかを議論する段階では、既にないと言うことだろう。


コメント
まず悪い手段かというと、ぜんぜんと想うすよ。目標物が民間だろうと。
それ言ったら戦時の通商破壊任務は全て悪だし、東京大空襲もバドルオブブリテンも、ベルリン空襲もすべて国際法違反になってしまう。
それに我が国でも戦時中に大本営発表があったでないすか!
その国の国民に「考え直さないと知らないよ!」と知らしめるには、市民生活にダイレクトな痛みを与えるべきなんですよね。
その点でウクライナはしごく真っ当な事をしてると。
東京大空襲や広島長崎とかと違って、
そんなに流血の悲惨さもない!
さらに、痛みを背負うた人の怨嗟が向かうのはプーチン大統領であります。
非常にスマートなやり口と想うす!