日本は対米投資に動き出している一方で、隣国の韓国は「言ってみただけ」を続けているようで。
「米国、投資を急がなければ関税引き上げ」報道…韓国大統領府「多様なチャンネルで議論」
2026.08.15 08:46
青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)は14日、米商務省が対米投資を加速させるよう韓国政府に圧力をかけてきたという一部の報道に対し、「韓米間の戦略的投資プロジェクトに関し、多様なチャンネルを通じて緊密な議論が進行中」と明らかにした。
中央日報より
相互関税の低減という果実を得ながら、未だに対価を支払わないので、アメリカから突かれている。正に自業自得なんだけど、そう簡単でもない。
対米投資のジレンマ
巨額の投資は予定だけ
何回かは記事にもしたのだけれど、この回である程度は説明したと思う。

韓国は対米投資の一環として、造船業の拡充を画策していて、1,500億ドル規模の融資をすることになっている。他にも、投資予定の案件は積み上がっている。簡単に造船業も含めて整理しておこう。
- 半導体・AI分野:サムスン電子、SKハイニックス
- サムスン電子
- 予定・進行中の投資: テキサス州オースティンおよびテーラーの半導体工場建設に計370億ドル。
- 企業のジレンマ: 米国から投資を急かされる一方、国内(平沢市)の最先端AI半導体ライン増設にも数千億ドル規模の巨額資金が必要。米韓双方への「二重投資」で手元のドルが枯渇しかねない。
- SKハイニックス
- 予定・進行中の投資: 生成AIに不可欠な次世代メモリ(HBM)などのサプライチェーン構築に向け、米国企業への戦略的M&AやAIインフラ投資への参加を迫られている
- サムスン電子
- 自動車・バッテリー分野:現代自動車、LGエナジーソリューション
- 現代自動車グループ
- 予定・進行中の投資: 米国内でのEV(電気自動車)およびSDV(ソフトウェア中心の車)の開発・生産基盤拡大として、210億ドルの新規投資を公式に約束
- LGエナジーソリューション
- 予定・進行中の投資: アリゾナ州などの車載バッテリー工場建設に約30兆ウォン(約200億〜230億ドル規模)を投じる計画。
- 現代自動車グループ
- 造船・防衛分野:ハンファグループ、HD現代
- ハンファオーシャン
- 予定・進行中の投資: 米国国内の造船所買収、修繕・保守(MRO)拠点の確保、および防衛関連船舶の共同開発に向けた投資案の具体化を求められる。
- ハンファオーシャン
- エネルギー分野:韓国電力公社(KEPCO)など
- 予定・進行中の投資: 米国が指定するクリーンエネルギー、重要鉱物、および次世代原子炉(SMR)や量子コンピューティング分野への投資。
何れも財閥系の企業であることは見て分かる通りだが、財閥系企業は韓国に対する忠誠を求められている格好だ。もちろん、韓国内での投資を免除されたというわけでもない。
ウォン高が影響
では、何故これが上手いこと進んでいないのか?といえば、その影響の1つがウォン高だ。

実は現在、ウォンはウォン安傾向にある。「影響の1つがウォン高だ」と胸を張って言った割には、「違うじゃん」という話ではあるのだが。

5年スパンで見るとグッとウォン安の傾向が続いていると言える。
つまり、現在の水準で言えば7月頃に比べてウォン高傾向になっているが、実際はずっとウォン安の方向に突き進んでいて、企業経営的にもかなり苦しい。
韓国は素材を輸入して、完成品を輸出する国だ。輸入した時よりも輸出するときのほうがウォン安であることはとてもありがたいのだが、商売を継続的に続けるには変動してくれると計画そのものが成り立たないので困ることになる。
更に、通貨の動きだけで言えば、対米投資をした結果、ウォン売り・ドル買いの効果を得る。つまり、ウォン安を招く結果となる。
今のところ、韓国政府が市場介入をして、せっせとウォン高方向に誘導しているのに、ここで逆の効果を生じさせるのは宜しくないのである。
更に、韓国企業はウォンで資産を形成しているので、ドルに換金する時に巨額のウォンを用意する必要がある。同額を国内投資に回せば効率の良い投資効果が得られるのに、どうしてインフラコストが高いアメリカに投資しなければならないのか、という話になる。
最初からできない約束
というわけで、この話、韓国にとっては引き伸ばしに過ぎない話なのだ。
「韓国投資は前払い」…米国の度を越えた「ゴールポストずらし」
Posted September. 27, 2025 08:53, Updated September. 27, 2025 08:53
トランプ米大統領が韓国の対米投資額3500億ドル(約495兆ウォン)を改めて強調し、「それは前払い(It’s up front)」と発言した。7月に合意した投資額を、米国が作るファンドに一括して「現金」で先に入れろという要求だ。韓米関税交渉の後続協議が妥結に至らない中で出た発言だ。韓国が外貨準備高の84%に相当する金額を短期間で米国に投資するのは不可能であり、交渉が長期化する可能性が高まっている。
東亜日報より
東亜日報などはガス抜きのためにアメリカのせいにしているが、実際のところアメリカ側がゴールポストを動かしたという事実はない。
韓国政府は、米国側の要求が7月末の交渉合意時とは変わり、困惑しているという。韓国交渉団が作成した備忘録には、投資ファンドの大半を融資と保証で充当し、一部のみ直接投資とすると記載されていたが、米国側が後日送付してきたMOU草案には、直接投資を大幅に強調する内容が盛り込まれていた。
東亜日報「韓国投資は前払い~」より
アメリカ側が送付してきたMOU草案はおかしかった!などという書き方だが、MOU草案が問題であれば、締結前に話を整理し直せば良いのである。
そもそも、韓国交渉団側の備忘録の内容が必ずしも正しいとは限らない。
結局のところ、文章として固定されたもの、つまり双方が合意した契約や文書の内容が、交渉の結果として最も重い意味を持つ。
トランプ政権は、他国に一方的に高関税を課し、その引き下げを条件に無理な要求を押し通し、必要とあればいつでも発言を覆す姿勢を取り続けている。
東亜日報「韓国投資は前払い~」より
アメリカと商売をやっている以上は、高関税を課されたならば、アメリカでの商売から撤退すれば良いのである。それを無理に続けようとするから無理が生じるのだ。
もちろん、そんな単純な話ではなく、巨大なアメリカ市場を諦めるという選択肢は韓国にはない。既に支那市場をほぼ失ってしまった韓国にとって、アメリカ市場を失うと、企業経営が一気に怪しくなる。
クーパン問題
なお、ここに登場していない話として、米韓摩擦となっているのが、クーパン問題だ。



アメリカの親会社(Coupang, Inc.)が100%株式を持っているクーパン(Coupang)は、韓国で市場を席巻しているECサービスで、物流も握っている。
このクーパンに対して、韓国政府が過度な制裁を行っているというのが、アメリカ側の主張である。実際、過剰な制裁金の設定はどうかと思うよ。
韓国がクーパンに制裁金4億ドル、国内過去最大 情報流出巡り
2026年6月11日午後 1:06
韓国当局は、昨年発生した大規模な顧客情報流出と違法な個人情報収集を巡り、電子商取引(EC)大手クーパンに6250億ウォン(4億0930万ドル)の制裁金を科すと明らかにした。情報漏えいを巡る企業への制裁金としては同国で過去最大となる。
個人情報保護委員会によると、クーパンは3300万人超の顧客の個人情報を流出させた上、法律で定められた72時間以内に漏えいを検知できなかった。
ロイターより
過去の韓国内の事例と照らしてもこの4億ドル相当の制裁金は過剰である。

こちらでまとめているが、過去のカカオトークの事案では、151億ウォン程度であったが、今回は6,246億ウォン相当と破格だ。
まとめ
この件、実際のところアメリカは韓国が対米投資可能であるとは思っていないのかもしれない。
ただ、少しでも投資を引き出せるのであればそれでOKという温度感である可能性もある。しかし、そうだとしても韓国側の不誠実な態度を放置するのも問題なので、アメリカとしても手を焼いている部分はあるようだ。
一方、韓国側としては、対米投資を大規模に実行すれば、それだけで経済危機のトリガーを引きかねない。そのため、とにかく時間を稼ぎたい。
けれども、アメリカを怒らせないように立ち回らなければ、経済においても、安全保障においても難しいことになってしまう。
じゃあ、最初から守れない約束をしなければいいのにと言えば、その通りなのだが……、アメリカ国内での韓国企業の競争力が低下するのは、それはそれで困るのである。なかなか、行くも地獄行かぬも地獄という厄介な状況である。


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