短縮版でも扱っていたのだが、これに関しては「どういうことなのか」と言うことを中心に、この記事で考えていきたいと思っている。
韓国、ウクライナ代理大使を呼び出し 北朝鮮兵捕虜の移送公表に「深刻な懸念」
2026年9月28日 19:30
韓国外務省は28日、駐韓国ウクライナ代理大使を呼び出し、北朝鮮兵士の捕虜2人が韓国に移送されたことをウクライナ側が公表したことをめぐり「深刻な懸念」を伝えた。
AFPより
端的に言えば、ウクライナと韓国との国益のすれ違いが起こした騒ぎ、ということになる。
単に外交交渉の一環
朝鮮人民軍はウクライナ戦線で戦う
まず、ロシアによるウクライナ侵略戦争において、北朝鮮兵がロシア側に派遣されていた事実がある。
今回の問題は、そこでウクライナ軍が捕虜にした北朝鮮兵の扱いを巡る騒ぎだという点を整理しておきたい。
北朝鮮兵捕虜の韓国移送公表は秘密保持契約違反 李大統領、ゼレンスキー氏への不満表明
2026年9月25日 11:18
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が国連総会の一般討論演説で、同国の捕虜になった北朝鮮兵2人を韓国に引き渡したと明らかにしたことについて、韓国の李在明大統領は24日、ゼレンスキー氏が秘密保持契約を破ったとして遺憾の意を表明した。
AFPより
この話には、ロシアと北朝鮮との軍事協力が前提としてある。
北朝鮮からロシアへ兵士が派遣され、実際にウクライナとの戦闘に投入されているのだ。
北朝鮮、ロシアに1万人の追加派兵準備 ゼレンスキー氏指摘
2026年9月29日午前 8:55
ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、ロシア領内には8000人を超える北朝鮮兵が展開しており、さらに1万人の派兵に向けた準備が進んでいると述べた。
~~略~~
ウクライナと韓国の推計によると、北朝鮮は2024年以降、ロシアのウクライナ侵攻を支援するため1万4000─1万5000人の兵士を派遣。その大半はウクライナ軍の越境攻撃を撃退するためロシア西部クルスク州に展開している。
ロイターより
これから更に追加で1万人を送る予定があるとかいう話があるので、ロシアと北朝鮮との蜜月ぶりは疑う余地は無い。
またこうした関係は、北朝鮮にとっても外貨や経済的利益を得る手段になっていると指摘されている。
何故韓国に?
では、なぜ捕虜が韓国へ移送されたのか。
本来であれば、ジュネーブ条約に定められた通り、「戦闘終結後、捕虜を遅滞なく釈放し、本国に送還すること」が義務づけられているので、ウクライナが捕虜を送還すべき相手は北朝鮮なのだ。
だが、同じ条約で、「捕虜を本人の意思に反して、迫害や処刑の恐れがある国(北朝鮮)へ強制送還することは禁じられ」ている。
ウクライナから韓国に移送された北朝鮮兵士たちの今後はどうなるのか?
2026年9月28日午後4時01分
ロシア側としてウクライナと戦っていた際に捕虜となった北朝鮮兵士2人が韓国に身柄を移送された。これにより、彼らの捜査、保護、再定住の方法、そして移送の法的根拠について疑問が投げかけられている。
~~略~~
2人はメディアのインタビューやユ氏との会談中など、韓国に行きたいという願望を繰り返し表明した。
ロイターより
記事にあるように、捕虜本人達は韓国への亡命を希望していた。
そのため、今回は単純に北朝鮮へ送還するのではなく、本人たちの希望を踏まえて韓国へ移送された、というのが経緯である。
ここは今回の問題を考える上で結構重要なところだと思う。
ただし、これについても色々な思惑があったようなので、素直に「原則に従った」という感じではなさそうだけど。

こちらの記事では、捕虜となった北朝鮮兵士が本国送還を望んでいたが、韓国政府の働きかけでその意思を変えたと説明されている。
ウクライナの決定にしても、捕虜交換という選択肢を敢えて捨てて韓国送還を選択したということである場合、随分と解釈が変わりそうだ。
密約があったのかなかったのか
で、これをウクライナ大統領のゼレンスキー氏が明らかにしてしまったことが、冒頭のようなトラブルに繋がったのだが。
韓国は、ゼレンスキー大統領が先週の国連総会でこの移送について明らかにした後、ウクライナが秘密保持の合意に違反したとして、ウクライナに謝罪を要求した。
ソウルは、北朝鮮にいる兵士とその家族を守るためには機密保持が必要だと述べた。
キエフは、秘密保持協定は存在しなかったと述べている。
ロイター「ウクライナから韓国に移送された~」より
ウクライナと韓国との間で、揉め事が起きた理由が「秘密保持の合意」があったということらしい。
そのあたりは短縮版でも突っ込んだ。

だが正直、密約があったかどうかなどは、水掛け論なのでどうでも宜しいのである。第三者からは分からないのだから。
しかも、今回のような外交上の取り決めが、「密約」という形で文書化されている可能性は低い。
韓国側は「非公開とする合意があった」と主張し、ウクライナ側は「そのような合意はなかった」と主張している。が、それを確認する手段はないのだ。
そうすると、この話は韓国の狙いは何で、ウクライナの狙いは何だという話を考えねばならないだろう。
「韓国がパトリオットをくれなかったから」…ゼレンスキー氏、北朝鮮軍捕虜の送還公開で報復
2026.09.29 08:47
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が最近、国連の舞台で北朝鮮軍捕虜の韓国送還の事実を公開した背景には、韓国からパトリオット防空ミサイルシステムの支援を受けられなかったことへの不満が作用したというロシア人コラムニストの主張が出てきた。
中央日報より
で、中央日報はこんな記事を、ロシア人コラムニストの主張を引用した形で公開している。
パトリオットミサイル
ロシア人コラムニストの主張を引っ張ってきたことが、韓国メディアが「何を狙っているのか」を示しているようで、なかなか興味深い。
だが、ここの話が全て嘘かというと、そんなこともないのだ。
続けて、ウクライナがパトリオットミサイルを要請できる国は今や現実的にギリシャとドイツの2カ国しか残っていないと付け加えた。
中央日報「「韓国がパトリオットをくれなかったから~」より
パトリオットミサイルの下りは、実際に防空防衛に不安のあるウクライナにとってのリアルで、喉から手が出るほどパトリオットミサイルの在庫の確保がしたいというのは、ゼレンスキー氏の本音だろうと思う。
トランプ氏が「最終決定」、ウクライナにパトリオット用ミサイルの生産認める ゼレンスキー氏発言
2026.09.26 Sat posted at 09:05 JST
ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、トランプ米大統領がウクライナに地対空システム「パトリオット」用のミサイルの製造を認める意向だと明らかにした。ウクライナはロシアの執拗(しつよう)な空からの攻撃をしのいでいる状況で、パトリオットの自国生産を強く求めている。
~~略~~
パトリオット用ミサイルが枯渇したウクライナは、ロシアの猛攻を防ぐのに苦戦しており、民間人の死者が大幅に増えている状況だ。
CNNより
別途、ウクライナ国内での生産の目処を付けることができたという報道が出ているが、これが本当にせよ嘘にせよ、ウクライナの要求リストの高い場所にパトリオットミサイルがあることは間違い無い。
そして、韓国はこれの生産が可能であり、ウクライナへの輸出を渋っているのは事実なのである。
一方、ロシア外務省は、韓国がウクライナに武器を提供すれば、ロシアは「報復せざるを得ない」と警告している。具体的な内容は明言していない。
BBCより
韓国からすれば、支那やロシアとの関係を考えると、ウクライナへの直接的な武器支援には慎重にならざるを得ない。
そうすると、ウクライナ側の揺さぶりという説は、実はかなり確度の高い推論だと言えよう。
一方で、韓国としてはロシアや支那との関係を悪化させたくないということと、北朝鮮との関係でも立場がある。加えて、今の韓国大統領の李在明氏(ミョンミョン)にしてみれば、北朝鮮との関係を大切にしたいわけで、波風が立つことは望ましくないのだ。
まとめ
ウクライナと韓国との揉め事ではあるが、これは秘密の合意があったかなかったかを考えても仕方が無い。実際にあったにせよなかったにせよ、表に出てこない類いの話だし、両国の間で解決すべき事案でもある。
そんなことは分かっていて、韓国は揉めて見せているのだ。
恐らくはウクライナに対して武器輸出はしたくないというのが本音で、それはウクライナ側が悪いから武器の輸出を止めたという実績にしたいのだ。



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