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スターリンクの「速度制限」がもたらす戦局への影響

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ウクライナニュース
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先週は、スターリンク騒ぎでウクライナとアメリカとの関係が悪化していた。

ゼレンスキー氏、スターリンク速度制限続き「計画的な動きだ」と米側に不信感…ロシア軍の高速無人機を迎撃できず

2026/10/18 17:33

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は17日、自軍が使う米宇宙企業スペースXの衛星通信網「スターリンク」の速度制限が続いていると記者団に明らかした。高速で飛来するロシア軍のジェット推進式無人機を迎撃できず、米側と協議を続けていると説明した。

讀賣新聞より

なかなか訳の分からない話になっているが、ウクライナにとってはかなり深刻な問題だと言える。

この記事では、どちらが嘘をついているかなどについて追求するつもりはなく、この話が一体何を意味するのか?について、少し整理しておきたい。

脱アメリカ依存が加速

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アメリカ側は否定

先ずは、ウクライナ大統領のゼレンスキー氏の発言を冒頭で紹介した。

この発言についてもう少し説明を加えておきたい。

スペースX社の衛星通信網「スターリンク」に対する「速度制限」という言葉は、一般的に言う、契約で定められた通信容量の上限を超えた際に発生する通信速度の制限とは異なる。

新幹線の車内で携帯電話の通信が不安定になるという現象は、かつて珍しくなかった。これは、高速で移動する端末が基地局との接続を維持しにくくなったり、基地局の切り替えがうまくいかなかったりすることで発生する。

ただし、こうした問題は通信方式や設備の進歩によって改善されており、高速移動そのものが通信の切断を意味するわけではない。

これは、端末である携帯電話(スマホ)が基地局との通信に失敗することで起こる現象である。

衛星通信の場合も同様で、端末が高速で移動すれば必ず通信が切れるというわけではない。衛星の追尾や切り替え、端末側の通信制御など、さまざまな技術によって通信が維持されている。

では、今回の速度制限はなぜ発生したのか。

報道されている情報によれば、端末の移動速度が一定の基準を超えた際に通信を制限する技術がプログラムされていた可能性がある。

仮にそうであれば、通信容量の問題ではなく、端末の移動速度を基準とした制御ということになる。軍事用ドローンの運用に影響するのも、こうした仕組みが関係しているためだと考えられる。

それについてのアメリカ側の反応について言及しておく。

トランプ氏、スターリンク巡る責任否定  ゼレンスキー氏との関係「良好

2026年10月17日午前 4:57

トランプ米大統領は16日、ウクライナ軍が使う米スペースXの衛星通信サービス「スターリンク」の利用制限が伝えらら‌れたことについて、自身と同社を率いるイーロン・マスク氏のいずれにも責任はないとの認識を示した。

ロイターより

ウクライナ軍のスターリンク通信制限、ルビオ米国務長官が関与否定

2026年10月18日 13:26

ルビオ米国務長官は17日、ウクライナ軍が使用する米衛星通信網「スターリンク」の利用制限について「われわれは一切関与していない」と記者団に語った。トランプ大統領も16日、同様に関与を否定したが、一部の欧米メディアは米政権が指示したと報じ、ウクライナ側が反発を強めている。

日本経済新聞より

最近は良く誤報を飛ばすことで有名になった日本経済新聞を引用することには少し抵抗があるが、アメリカのメディアもアメリカ国務長官のルビオ氏の関与否定を報じていたので、これに関しては問題なさそうだ。

ともあれ、アメリカのこの件に関する命令系統にいると思われる大半が、本件への関与を否定。

また、マスク氏自身も関与を否定している。

技術的トラブル?

では、原因は一体何なのか?というと、技術的なトラブルであるとの見解が伝えられてはいる。

米側からは「技術的な問題がある」との説明を受けたが、ゼレンスキー氏は「計画的な動きだ」として米側への不信感をにじませた。

讀賣新聞「ゼレンスキー氏、スターリンク速度制限続き~」より

ゼレンスキー氏は、その説明が本当なのかという疑念を示している。報道された状況を聞く限り、確かに疑問が残る部分はある。

速度制限は13日夜に始まり、15日に復旧したと報じられていた。ゼレンスキー氏によると、無人機が時速約160キロ・メートルを超えると通信が途絶える。欧州連合(EU)域内に端末を持ち込んで確認すると、正常に作動したという。タス通信によると、ジェットエンジンを搭載した露軍の無人機は時速350~450キロ・メートルで飛行する。

讀賣新聞「ゼレンスキー氏、スターリンク速度制限続き~」より

もし、端末の移動速度が一定の基準を超えると通信が途絶え、地域を変えると正常に動作するのであれば、単純な故障だけでは説明しにくいようにも思える。

状況から考えれば、ジェットエンジン搭載型ドローンの運用を妨げるために、何らかの制限が加えられたのではないかという疑いが生じるのも理解できる。

尤も、そのことを証明することは困難であり、アメリカが否定する以上はウクライナが証拠を揃えることも難しい。

また、別の要因も想定しておかねばならない。

リトアニアのスターリンク施設で放火未遂、ロシア関与の破壊工作疑い | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
Andrius Sytas – リトアニアで18日、米スペースXの衛星通信網「スターリンク」基地局への放火未遂事件が発生し、同国の国家危機管理センター(NCMC)はウ

ロシア側もかなりスターリンクの存在は危険視しており、各地で工作が行われている節がある。技術的に可能かは不明だが、妨害する手段があったとしても不思議はあるまい。

ただ、原因が何であれ、通信インフラの制御ひとつで軍事作戦に影響が及ぶという事実は重い。

ジェットドローンの脅威

今回のトラブルで利用しにくくなったジェットドローンだが、ロシア軍はかなり脅威に感じたようだ。

ロシアが放つ「ジェットドローン」、なぜ脅威か…10キロ先から1分で飛来、対応時間「たった数秒」の恐怖

2026.10.10(土)

~~略~~

「ジェットドローンシャヘドに対応するための時間は、たった数秒しかないんだ」

ウクライナの防空部隊に所属する兵士はこの9月、ロイター通信の取材に「たった数秒」を強調しました。迫ってくる無人機をどう迎え撃つか。その判断に数秒の猶予しかない、というのです。従来型のプロペラ式ドローンは時速180km程度で、10キロの距離を飛んでくるのに3分余りの時間がありました。

ところが、最新のジェット式は時速600km。同じ10キロの距離をたった1分で飛来してきます。ロイターの取材に答えた兵士は、その恐怖を語ったのです。

JB Pressより

こちらの記事にもあるが、ジェット推進型のドローン技術に関してはロシア軍も利用しており、ウクライナとしては非常に手を焼いていたようだ。

当然、ウクライナとしても手を拱いていたわけではなく、迎撃態勢を整えて、それを用いた攻撃を行っていた。

ウクライナはドローンやミサイルの製造だけに注力しているのではなく、内部のジェットエンジンの開発にも力を入れている

2026年10月14日午前2時59分

小型ターボジェットエンジンは、ウクライナの防衛産業にとってますます重要な位置を占めるようになっている。同国は、次世代の高速迎撃ドローンや長距離攻撃兵器の動力源として、これらのエンジンに依存しているからだ。

~~略~~

ウクライナのイェヴヘニー・フマラ国防相は週末、記者団に対し、キエフはジェットエンジンの生産を国内防衛産業にとって「極めて重要な分野」と位置付けていると述べた。同氏によると、ある特定のエンジンモデルについては、月間需要が1万基に達する可能性があるという。

Business Insiderより

また、テラドローン社の「テラA1」やスカイフォール社の「P1-SUN ジェットキラー」によって迎撃する手段も手に入れつつある。

戦局を大きく変化させかねない兵器として、ジェットドローンの投入が急がれている状況なのだ。

スターリンク依存

ただし、この技術にとってスターリンクの存在はかなり大きい。

【解説】 衛星通信「スターリンク」、なぜウクライナの戦場で非常に重要なのか

2026年10月15日

米富豪イーロン・マスク氏の宇宙企業スペースXが運営する衛星通信サービス「スターリンク」は、高速インターネット接続を提供している。現代の戦争は、こうした通信網に大きく依存している。

~~略~~

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」(ISW)によると、スターリンクのネットワークに接続されたドローンの通信速度が比較的低速に制限されると、ロシアのジェット推進型ドローンを迎撃しようとするウクライナ側の取り組みは無に帰してしまうという。

BBCより

スターリンクは、ウクライナ国内における重要な通信インフラとして利用されている。それだけではなく、ドローンの操縦や目標の追跡など、軍事作戦を支える通信手段としても重要な役割を果たしている。

そのため、通信に制限が加われば、単にインターネットが使いにくくなるという話では済まない。ドローンの運用そのものに支障を来す可能性がある。

BBCの記事では、次のようにも説明されている。

スターリンクはロシア国内では利用できないが、ウクライナのドローンはロシアへの攻撃を仕掛ける間、スターリンクを通じて操縦者と通信できる。現時点では、この通信網に代わる、即戦力となる手段は存在しない。

バロス氏によると、スターリンクに接続された迎撃システムは、ロシア軍のジェット推進型ドローン「シャヘド」に対抗するうえで、ウクライナが保有する最も有効な手段の一つでもある。

シャヘドは時速約320キロを超える速度で飛行する。スペースXによる速度制限によって、ウクライナがこれを追跡することはほぼ不可能になる。

BBC「衛星通信「スターリンク」~」より

代替手段がすぐには見つからないほど重要な通信インフラになっているからこそ、スターリンクの制限はウクライナの戦局に大きな影響を及ぼしかねない。

これに関しては、去年も揉めていたんだよね。

ウクライナ利用の「スターリンク」めぐり論争 マスク氏とルビオ氏対ポーランド外相 – BBCニュース
アメリカのマルコ・ルビオ国務長官とテクノロジー界の大富豪イーロン・マスク氏が9日、ポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相と、Xで激しいやりとりを繰り広げた。問題となったのは、マスク氏の衛星システム「スターリンク」のウクライナでの利用だった。

この記事ではポーランド外相のシコルスキ氏と、イーロン・マスク氏との応酬で、マスク氏がスターリンクのウクライナ国内での利用を制限する旨の言及をしたことで、口論に勃発。

この結果、「他のサービスを探す」とシコルスキ氏に言及されている。

現時点で、スターリンクと同等の機能を得られるような通信手段は存在しないが、欧州では2026年1月に開始した政府機関向けの安全な衛星通信プログラム「Govsatcom」をウクライナに提供させるかについての協議が始まったほか、アイリス・スクエアという代替大規模衛星通信網の打ち上げ(ただし、2029年が最初の打ち上げ予定)が予定されている。

もちろん、これらの手段が本当にスターリンクを代替できるのか?は別の話ではあるのだが、模索が始まっているのは間違いないのだ。

F-35戦闘機でも似たような話があったが、アメリカに過度に依存することで、いざとなったら政治的圧力に変えられるという恐怖を、今回のこの件でも西側諸国に植え付ける結果になった。

日本だと、準天頂衛星「みちびき」の導入を急いでいるが、これも結局は、アメリカのGPSに過度に依存する体質を何とかしたいという思惑も絡んでいるのである。

結局、通信インフラを他国に依存するというのは、戦時においては極めて危険なことだと言えるだろう。

まとめ

仕方がないこととは言え、ウクライナ軍は良くも悪くも西側諸国の善意によって戦線が支えられている。

このため、スターリンクの意図的がどうかは不明な「不具合」によっても、容易に戦局が変化しかねない。

そのことを、西側諸国は重く受け止めたと共に、スペースX社はその信頼を大きく自ら毀損してしまった。

今後は、高高度で通信を確保するHAPSなどの技術も、導入を検討されるようになるかも知れない。現状だとデカイまとなんだけれどね。

それでも、特定の企業や国が提供する通信インフラに過度に依存することの危険性が明らかになった以上、代替手段を確保する動きは今後も加速するのではないだろうか。

コメント

  1. 山童 より:

    残念だけど、フランスが財政破綻は目に見えてる。食糧自給率100%越えの国だから飢餓はない想うけど、
    このままヨーロッパの片田舎としてポルトガル化するをあの国は認めない。
    けど歳入に対して健全化する政治家などいないし、国民も痛みを拒否する。
    近く、ウクライナ支援どころでなくなる想うす。下手するとEU脱退?
    その時点で、ロシアの粘り勝ちになる可能性は高く、
    両方に貼っておく必要ありと……。
    フランスの財政がにっちもいかなくなれば、ウクライナ支援は終わり。
    残念だが、そこで詰みでしょう。
    現実論として、ロシアと仲直りする為のチャンネルは残しとくしか無さそうかと。