最近見つけた記事だったんだけど、日付は去年の5月か。見逃していたなぁ。
ロシアに修理依頼した韓国の40億ウォン山火事ヘリコプターエンジン、まるごと失う危機から回収
2025.05.12 14:08
韓国山林庁の山火事鎮火主力ヘリコプター、ロシア産カモフ(KA-32)ヘリコプターのエンジン3台が整備を任せたロシアで競売にかけられるところだったが、最近回収されたことが11日、把握された。3000リットル容量タンクを搭載したカモフヘリコプターは山林庁が保有する山火事鎮火ヘリコプター全体の58%(29機)を占める。
中央日報より
なかなか香ばしい話で、韓国らしさが出ている。
韓国が山火事鎮火用にカモフ(KA-32)というヘリコプターを運用していることは知られている。そして、これを韓国産の機動ヘリコプター「スリオン(KUH-1)」に更新しようとしている、という話もあった。
そもそもカモフの老朽化が問題になっていたんだよね。
山火事の消火どころか支払い問題で炎上
カモフの替わりにスリオン?!
調べたら、4月に関連記事があったよ。
韓国産山火事鎮火ヘリコプター「スリオン」導入が遅れる背景に関心
2025.04.11 09:02
嶺南(ヨンナム、慶尚道)の山火事鎮火過程でヘリコプター墜落事故が発生し、山火事鎮火ヘリに対する関心が高まっている。老朽化したロシア産ヘリの代わりに国産ヘリが代案に浮上しているが、関連予算不足など障害が少なくないという評価だ。
山林庁によると、山林庁が現在保有する山火事鎮火ヘリは計50機。タンク容量8000リットル級の米国S-64(シコルスキー)7機、3000リットル級のロシアKA-32(カモフ)29機、2000リットル級の国産KUH-1(スリオン)3機が主力だ。
中央日報より
この時点でもカモフは全体の58%を締める主力の防災ヘリで、山林庁が保有して山火事鎮火に使っているようだ。ただ、使っているカモフ29機のうち20機が21年経過したもの。
もちろん、年々老化するものは増えるので、更新する必要があって、その代替機として期待されているのがスリオンだって話。
ただ……、これって大丈夫なんですかな?
| 性能・項目 | ロシア製:カモフ(Ka-32) | 韓国産:スリオン(KUH-1) | 現場への影響・格差 |
|---|---|---|---|
| 消火水タンク容量 | 3,000リットル | 2,000リットル | スリオンはカモフの3分の2しか水を運べない。 |
| ローター(プロペラ)構造 | 二重反転ローター(テールローターなし) | 通常型(メイン+テールローター) | カモフは突風に異常に強く、山間部の乱気流でも安定する。 |
| 満載時の飛行速度 | 約148 km/h | 約241 km/h | スリオンの方が速度は早いため、ピストン輸送でカバーする計画。 |
| 悪天候・酷寒対応 | 氷結防止機能が極めて強力(南極運用可能) | 過去に氷結試験の不合格や不具合の歴史あり | 冬〜春の凍結する山間部での信頼性に差がある。 |
| 価格 | 50~100億ウォン | 200~250億ウォン | 機体の価格差は倍以上 |
機体の特性と消火水タンク容量の問題は、そう簡単には解決できそうにない。

もちろん、単純にタンク容量だけで消火能力を比較することはできないし、飛行速度や運用コストなども考慮する必要がある。ただ、少なくともカモフをスリオンに置き換えれば、そのまま従来と同じ運用ができるという話ではなさそうだ。
カモフも随分な経緯で導入して、トラブルが多かったことで知られる機体ではあるが、スリオンとの代替が可能化はまた別に検討が必要だと思うぞ。
修理にあたってトラブル
さて、スリオンへの更新計画にも不安はあるが、現在運用している機体については、故障したものを修理しなければならない。
ところが、その修理でもトラブルが発生していた。
共に民主党の姜由楨議員室が山林航空本部(以下、航空本部)から受けた資料によると、本部は3月28日にカモフのエンジン3台をロシアから国内に入庫した。このエンジンは「オーバーホール」(完全分解修理)のためにロシアに搬出されたが、昨年、競売にかけられるところだった。エンジン3台の鑑定評価額は計39億3000万ウォン(約4億円)。
中央日報「ロシアに修理依頼した韓国の40億ウォン~」より
ロシア製のヘリコプターなので、エンジン部分などはどうしても修理を依頼しなければならないという事情があった。
その反省もあって国産化を進めている、という建前なのだろうが、その更新計画も進捗が怪しい。結局、既存機の修理が必要になったわけだ。
ところが、オーバーホールに出したら、今度はエンジンを売られそうになってしまった。
ただ、この経緯が韓国「らしい」んだよね。
- 2020年12月:カモフエンジンオーバーホール契約をロシア企業A社と締結
- 2021年5月:A社は制作会社クリモフに依頼する約ぞくだったのに、ロシア修理会社ATSに修理依頼
- 2022年8月:エンジン3台の修理完了
- 同年同月:対ロシア金融制裁の対象になりA社が「エンジンの韓国入庫が許可されない」と連絡
- 2023年半ば:A社がATSから修理代金支払い未納で訴えられる
- 2024年9月:A社はATSに最終敗訴し、ATSのエンジン占有権が認められて競売処分可能となる
- 2024年11月:交渉に成功してATSからエンジン買い戻しに成功
このように話が拗れた理由なんだが……。
A社は航空本部が契約延長要請に適時に応じなかったため、エンジンが公開競売に渡ったという立場だ。A社代表のカン氏は中央日報に「2022年8月から契約延長を要請したが、政府は輸出許可満了期間(2022年12月)が過ぎた後に延長の措置を取った」とし「担当公務員の怠慢によりエンジンを出庫できなくなった」と主張した。
中央日報「ロシアに修理依頼した韓国の40億ウォン~」より
金の支払いかよ!
イランの原油代金未払事件
この話で思い出したのが、韓国がイランに対して原油代金を支払わなかった事件である。


アメリカのイランに対する経済制裁に乗じ、韓国政府はイランに原油代金を支払うのを渋り、これが国家間のトラブルに発展するに至ったという事件だ。
韓国がイラン凍結資産を送金 イランは額をめぐり韓国を提訴へ
2023-09-19 11:03:04
アメリカのイランに対する経済制裁の一環で韓国に残ったままになっていたイランの資産は、アメリカとイランの合意により凍結が解除され、スイスを経てカタールに送金されました。イランは、凍結されていた間にウォンの価値が下がり損害を受けたとして、韓国を相手取って訴訟を起こす方針だと明らかにしました。
KBS WORLDより
この時の話は全く韓国を擁護できない。
日本もイランと原油の取引をしており、同様にアメリカの経済制裁という問題に直面していたが、原油代金については支払いを行っていた。
アメリカも代金の支払いについて一定の猶予を認めるような対応を取っていたのだから、支払えなかったという説明自体に疑問が残る。韓国は経済制裁を理由に、原油代金の支払いを滞らせていたわけだ。
今回のロシアのエンジン整備の件も、構図としてはよく似ている。
結局、修理代金の支払いをめぐってトラブルになり、エンジンが売られそうになってしまった。
そして、この代金支払いだが、イランの時はたしかカタールを経由して支払いをしていたはずだ。では今回は?というと、ラオスなど第三国を経由しての支払いをしたと聞いている。
韓国の山林庁は、エンジンの国内入庫を条件に代金を支払う約束をしていたようだが、なぜか支払いをめぐって揉める結果になっている。まあ、ロシア側も大概不誠実な雰囲気はあるんだけどね。
A社と航空本部は訴訟戦をしている。これに先立ち2022年6月に修理を終えて国内に入庫されたエンジン2台の検収過程でも紛争が生じたからだ。A社は航空本部の品質保証検収要求などで修理代金の支払いなどが遅れ、ロシア当局から数億ウォン台の罰金を受けたと主張し、昨年9月にソウル中央地裁に損害賠償訴訟を起こした。これに対し航空本部はA社の帰責により発生したエンジン3台確保費用を賠償するべきだとして反訴する予定だ。A社はATSに修理の下請けを任せたなどの理由で、3月に調達庁を通した航空本部との契約が解約された。
中央日報「ロシアに修理依頼した韓国の40億ウォン~」より
結局、エンジンを取り戻すことに成功したとのことなのだが……、代金の支払で揉めているらしい。
そもそも、韓国山林庁はA社という実績や信用に疑問のある仲介業者に依頼したこと自体が失敗だったのではないか。
まとめ
最後の引用部分では、ロシア当局からの罰金という、何とも理解しにくい展開まで出てきており、訴訟も含めてまだまだ泥沼の様相である。
それよりも気になるのは、肝心のカモフのエンジンが、きちんと整備されて運用に戻れるのかという点だ。
お金を支払って解決するにしても、如何にも相手がロシアではタイミングも悪いし素性も悪い。ロシアが約束を守るような国家だと思ったのが間違いである。少なくとも、日本の商社であればそう言うだろうね。
スリオンに代替の目処も立っておらず、カモフ現役の状況がまだ続きそうだが……、さて、この話はどう転ぶのだろうか?



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