近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。「注意して下さい」もお読み下さい。

欧州スーパーを襲う冷凍設備へのサイバー攻撃

スポンサーリンク
安全保障
この記事は約6分で読めます。

ここのところ、時々見かけるようになったのが、冷蔵・冷凍設備へのサイバー攻撃に関するニュースである。

欧州各地で冷蔵設備にサイバー攻撃 ベルギーのスーパー40店で温度上昇 

2026/11/2 21:58

ベルギーの大手スーパー、デレーズが1~2日にかけてサイバー攻撃を受け、約40店舗の冷蔵・冷凍設備の温度が上昇した。ベルギー第2の都市アントワープの食肉チェーン店も攻撃を受け、店員らが手動で設備を操作し温度を下げるなどの対応に追われた。地元メディアが報じた。

産経新聞より

今回のニュースでは、ベルギーとルクセンブルクのスーパーなどで発生したサイバー攻撃によって、約40店舗の冷蔵・冷凍設備の温度が上昇し、食品に被害が出たことが伝えられている。

単なるシステム障害ではなく、遠隔操作によって食品を保管する設備そのものが攻撃されたという点が重要だ。

欧米各国で冷凍設備が狙われる

スポンサーリンク

フランスでも同じ手口で

記事にも紹介されているが、同様の手口でフランスの大手スーパー数百社に対しても攻撃が行われている。

仏スーパーの冷蔵庫にサイバー攻撃、設定温度が上昇 数億円相当の食品を廃棄か

2026年10月13日

フランスでこのほど、スーパーマーケット数百店舗がサイバー攻撃を受け、冷蔵・冷凍設備の設定温度が上昇する被害を受けた。数百万ユーロ(数億円)相当の生鮮食品や冷凍食品が傷み、廃棄されたという。

BBCより

これがなかなか卑劣な手口のようで、更に困ったことに犯人は今も判明していない状態のようだ。

スーパーマーケットの冷凍庫は通常、夜間に短時間の霜取り運転を行う。その間は庫内温度がわずかに上昇する。

ハッカーは庫内を加熱させ、高温状態を維持するよう指示した。ダンフォスは、霜取り運転の過程で冷蔵・冷凍設備の温度が実際にどこまで上昇し得るのかについて、報道されている内容が正しいのか明らかにしていない。

ダンフォスによると、影響を受けた冷蔵・冷凍設備は旧型で、同社が特定したリスクを回避するためのセキュリティーソフトウエアを更新できない型だったという。

BBC「仏スーパーの冷蔵庫にサイバー攻撃~」より

犯人の手口は巧妙で、老朽化したネットワークに接続された冷蔵・冷凍設備の霜取り機能を利用したやり口であった。

標的となったDanfoss社製などの冷凍・冷蔵制御システム(AK-SMシリーズなど)は、スーパーの店舗や軍の施設で何年も前から広く使われている信頼性の高い設備だったが、脆弱性も割と有名だった。

そして、この手の設備というのは意外に脆弱性が見つかっても、直ぐにはアップデートされないのである。

おそらく犯人は、ターゲットの洗い出しを事前に済ませており、自動化スクリプトを組んでいたはずだ。

ベルギーなどでの事案

フランスでの事案に比べてベルギーでの事案は比較的規模が小さかったようだ。

デレーズの被害は、ベルギーと隣国ルクセンブルクにある小型店舗を中心に発生。ロイター通信によると、スウェーデンのスーパー数店舗でも1~2日にかけ、同様のサイバー攻撃があった。アイルランドでも約10店舗が被害に遭った。

産経新聞「欧州各地で冷蔵設備にサイバー攻撃~」より

ただし、こちらも複数の異なる店舗に対して2日程度にわたって攻撃を仕掛けた模様。

同様の被害がアイルランドでもスウェーデンでも発生したとされている。

恐らくは似たような脆弱性があったのだろう。

狙われた国家は、報道によれば、フランス、ベルギー、アイルランド、スウェーデン、オランダ、フィンランド、エストニアやルクセンブルグなどが狙われたようだ。この様に狙われたのが欧州諸国で、デンマークのダンフォス社の特定の冷却制御システムが使われていたという共通点があるようだ。

また、第1波のフランスでの被害が明らかになった後、10月末には修正プログラムが配布された。

だが、第2波の被害はそのアップデートが間に合わなかった国で被害が広がったとのこと。

そして、今回の事件に付随して、ドイツなどでも被害が確認されていたとのこと。

1件の事例が明らかになった。ノルトライン=ヴェストファーレン州フォルマーシュタインのCAP-Marktでは、月曜日の朝、冷蔵室の温度が10℃を記録し、従業員はチーズ、牛乳、ヨーグルト、肉を廃棄した。運営者である福祉団体AWOは、ハッキングされたと報じられている遠隔保守会社と連絡を取っていると述べている。

nacionale.comより

他にもイタリアでも。

Openが引用した業界筋によると、パレルモ、カターニア、ラグーザの少なくとも12店舗が被害を受け、ラデンツァ・グループは傘下のスーパーマーケット少なくとも4店舗が被害を受けたと確認した。

nacionale.comより

イギリスは被害はなかったが、アクセスの痕跡は確認したようだ。

しかし、英国サイバー防衛局の研究者らは、英国の小売業者にリンクされた800以上の冷蔵設備およびビル制御インターフェースが公共インターネットからアクセス可能であることを発見した。

nacionale.comより

つまり、同時多発的に計画された犯行であったことが伺える。ただし、フランスの事例を見て、ドイツやイタリアでは事前にネットから切り離していたところが多かったようで、それで被害を抑えられたという実態が見える。

アメリカでも同類の被害

恐るべきことにアメリカでも似たような被害が確認されている。

6カ所以上のアメリカ軍基地で食品を腐敗させた「謎の冷凍庫の故障」にサイバー攻撃の疑いあり、国防総省がフランス当局と協力して捜査中

2026年10月30日 12時45分

アメリカ国防総省(ペンダゴン)が、2026年8月にアメリカの軍事基地で相次いで発生した謎の冷蔵庫の不具合について、サイバー攻撃の疑いがあるとして調査を行っていることが明らかになりました。

Gigazineより

アメリカでの事例は、8月に行われたモノで、当初は「故障」だと認識されていたようだ。

だが、ペンタゴンはサイバー攻撃を疑って捜査を進めている。

なお、フランスでの事案とアメリカの軍事基地で起きた事案の両方が、冷凍庫および冷蔵庫を一元管理するための制御装置コントローラーに、ダンフォス製のものを利用しているという共通点があります。

フランスの事例では、ダンフォスの制御装置コントローラー「AK-SM 800A」で利用できるウェブ管理インターフェースに複数の脆弱(ぜいじゃく)性があることが報告されており、脆弱性のひとつは「パスワードが毎日自動更新され本日の日付になる」というものであったことが報告されています。

Gigazineより

こちらも、ダンフォス社製の制御装置コントローラーが使われていたようだ。

つまり、脆弱性の明らかになった旧式のシステムが狙われたという点は共通であり、犯行声明が出されていないという点も共通している。尤も、犯行声明は表に出されていないだけの可能性もあるので、現時点で出ていないということにさせていただこう。

いずれにせよ、愉快犯というには規模が大きいし、身代金目的というわけでもなさそうなのが厄介である。政治的な主張も今のところ聞かれないわけで、大規模テロとも言えない部分がある。

そういう意味では犯人像は掴みにくいのだが、こんなことをして誰が得をするのか?を考えると、犯人は絞られてくる。

この手の揺さぶりを得意とする組織があるのだ。

そう、スーパーの食料や生活インフラといった「一般民衆の日常」を狙って同時多発的に混乱を起こし、社会の底辺から不安と現体制への不信感を沸き上がらせる手法。それは、コミンテルンが労働組合や大衆の生活不安を利用して革命の機運を醸成したアプローチと似ているのである。

そして、今、欧州が「他国のことには構っていられない」と資金提供を絞って困るのは、ウクライナである。犯人は誰とは特定できないが、怪しいところはお分かり頂けると思う。

まとめ

一連の事件では、攻撃の目的は厄介なことにハッキリしていない。

例えば、身代金を要求するランサムウェア攻撃であれば、各地を一斉に攻撃することにメリットはあまりない。

しかし、今回の事件では、少なくとも公表されている範囲では明確な身代金要求や犯行声明が確認されていない。

そうすると、別の目的があってのことではないのか?ということも考えなければならない。ロシアが犯人だとは断定できないモノの、手口の類似性といい、作戦が成功したときに得られる利益といい、怪しさ満点である。

今後は、国家規模のサイバー作戦に繋がっていく可能性があることを視野に入れていく必要があるかも知れない。

コメント

  1. 山童 より:

    クロですな。
    消去法からいって、他に実行して得をする奴がいない。
    その巧妙さからも。
    ロシアはハイブリッド戦、複合戦を得意とする。
    ウクライナで大軍で押し寄せる印象になってますけど。こういう手口を混ぜてくる事を研究者は警鐘してた。
    ただ、この手を入れてくるのは、ロシアもウクライナ相手に相当に苦しい。

    2次大戦中の秘密工作を観ていると、
    OSS(CIAの前身)とかが破壊工作(映画「ナバロンの要塞」みたいな)
    に手を出してくるのは、膠着して苦しくなってからなんですね。
    その前は工作より諜報が主になる。
    破壊工作はそれだけては決定打になりにくい。だから煮詰まってから実施。
    それ以前は情報の方が大事なのすね。
    しかしロシアてのは、ホントに何でもありな国だなぁ。
    ある意味において感心してしまう。

    • 山童 より:

      はよスパイ防止法を実施!
      んで、防諜を公安拡大してやらせえ!
      このままではいかんぞなもし。

  2. 匿名 より:

    スマート家電なんてありますがこれらがクラックされまくられたら極論かと思いますがリモートで同時多発テロ、しかも全世界で、なんてシナリオもありそうですよね

    一元管理が悪、とは言いません…がセキュリティを含めたキャパを考えた運用がこれからの課題ですかねぇ…個人でも企業・延いては国家でも

  3. BOOKSEN より:

    やり口が愉快犯っぽいがスクリプトキディが自己満足を得るネタからはズレてる気が、、、もしかして下手人は野良AI(管理の悪いローカルLLM)だったらヤだな。

     (ローカルLLM:高高スペックPCで走らせられるようなAI、そこそこ前世代チャッピー並みすよ)