近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。「注意して下さい」もお読み下さい。

食品消費税ゼロ%は悪手か、それとも改革の好機か

スポンサーリンク
政治
この記事は約6分で読めます。

偶には、政権批判的な記事も書いていくかな。

食品消費税ゼロ%は公約に記載、実現したい=高市首相

2026年6月4日午前 10:10

高市早苗首相は4日の衆院予算委員会で、食品消費税率ゼ‌ロ%は衆院選公約に掲げており「実現したい」と改めて強調した。実現に向け「でき⁠ない理由でなく、できる理由で知恵を絞るのを期待したい」と述べた。石橋林太郎委員(自民)への答弁。

ロイターより

食品消費税ゼロ%という話題になると、どうしても賛成か反対かという議論になりがちである。しかし、政策というものは本来、その是非だけではなく、どのような状況で、どのような効果を期待して行われるのかという視点から考える必要がある。

政策合理性と経済合理性の話

スポンサーリンク

経済政策として見れば筋の良い話ではない

今回の政策、実は経済政策としての筋は必ずしも良くはない。

日銀、今月軸に利上げ検討 政策金利1%へ、景気見極め最終判断―植田総裁「是非しっかりと議論」

2026年06月04日08時20分

日銀が今月15、16両日に開く次回の金融政策決定会合を軸に、政策金利を現在の0.75%から1%に引き上げる追加利上げを検討する方針であることが3日、明らかになった。中東情勢が一段と混乱するリスクは後退しているものの、原油価格が高止まりしてインフレが加速する懸念が根強いことが背景。サプライチェーン(供給網)の寸断などで、景気が悪化する恐れがないか見極めた上で最終判断する。

時事通信より

円安が進む経済状況にあって、アメリカのFRBも利上げを計画している。こうした状況にあって、日銀は経済状況を「インフレ圧力への警戒局面」と認識している。

だから、利上げ局面だとそのようにメッセージを出しているのだ。

つまり、日銀のロジックとしてはインフレ基調だから、少しブレーキをかける方向で調整するよという動きである。

この局面での消費税減税をやると、経済効果としてはインフレ圧力をかけることになる。つまり、ブレーキとアクセルを両方踏むことになりかねない。

そういう意味で、経済学者や市場関係者から消費税減税に対する批判の声が出るのは無理からぬ話。

政治には政治の合理性がある

しかし、高市政権誕生の際には、「消費税減税」を旗印に掲げて選挙戦を戦っている。

高市総理「スピード感持って進める」

2026年2月27日

「食料品の消費税率ゼロ」公約実現を

国民の受益と負担に深く関わる「給付付き税額控除」や「食料品の消費税率ゼロ」を含めた社会保障と税の一体改革を議論する社会保障国民会議の初会合が2月26日、総理官邸で開かれました。先の衆院総選挙で掲げた公約の実現に向け、高市早苗総理は「国民の多くの方々にも見える形で丁寧に、それでもスピード感を持って進めていきたい」と決意を示しました。

自民党のサイトより

重要なのは、公約として掲げた以上、実行しなければ政治的なコストが発生するという点で、これは賃金上昇が物価上昇に追いついていないという状況を考えると、そのような要望は今なお強く、公約実現はやっておくべき課題だ。

仮に経済学的な議論だけで実施を見送れば、「結局また約束を守らなかった」という不信感を招くことになる。

経済合理性と政治合理性は別物で、景気にも影響する話ではある。家計や企業は、必ずしも統計だけで行動しているわけではない。将来への期待や不安によって消費や投資を変化させる。その意味で、政治的メッセージもまた景気に影響を与える。

よって、経済政策として疑問があったとしても、政治的には実施する意味があるという状況は十分にあり得る。

本当に議論すべきは「やる」か「やらない」ではない

じゃあ、税率を動かす前提ならば、何を考えるべきか。

税率変更を行う以上、小売業界のPOSシステム改修は避けられない。ところが、コレに時間がかかるという。

非課税か0%か、異なる消費税「ゼロ化」 迫られる会計・POS改修

2026.04.22

企業の情報システム部門は今後数年間、国の制度に合わせた基幹系システムの更新や改修に追われそうだ。会計や税務、給与支払いなどで法改正や新制度が相次ぐからだ。毎年、情報システムを制度に合わせて更新・改修するほか、社内の業務も合わせて変更していく必要がある。

~~略~~

実際にはベンダーによって開発期間の見通しは大きく異なる。1年という期間は、大手から中小事業者向けまで、幅広い製品やサービスを抱える大手POSベンダーなどから出たようだ。一方で、「ユーザーの設定で即日に可能」(クラウド型POSなどを提供するスマレジ)、会計システムでは「3〜4カ月」(会計パッケージのベンダー)という意見もある。ただし長い準備期間を要するベンダーの意見を踏まえれば、2027年度の早い時期に税率ゼロを実現するために残された時間は少ない。

日経XTECHより

これをプログラマー的な立ち位置で見ると、「変数を変えるだけじゃないの」という批判がでて、コレも一定の合理性はある。つまり、「そんな時間かかるなんて嘘だろう」という話になるのだ。

ただし、複数のレジシステムが乱立しているし、古いシステムを使っているところもあるので、ある程度の時間を要する可能性というのは織り込んでおく必要があるというのが、僕の立場だ。

特に「ゼロ」との相性の悪さは理解出来るところがあるので、「1%に」という妥協は分かるし、それでトラブルを抑えられるのならその方が良かろう。

また、改修そのものに時間がかかるかは怪しいけれど、そこから波及して会計ソフトや在庫管理、電子帳簿保存との連携にも影響がある可能性は考慮しておくべきだ。

とはいえ、あらかじめ予定しておいてシステム改修を急げという話は必要で、「できません」というのは違うだろう。

政策的整合性を高める

そして、どうせ食品消費税減税をやる為に、POSシステムを弄るのであれば、インボイス制度との連携も見直させるべきだろう。

インボイス制度は、複数税率を維持する上では必須なので、政治的コストを支払って導入した。だが、複雑な税制になってそのコストが小売りにかかってくるという意味で非常に評判が悪い。

特に、中小企業にとっては事務コストが膨大になるところがあるので、「やってられない」というのが本音だろう。

しかし、消費税減税を契機にPOSなどの会計システムと電子帳簿との連携するように設計しておけば、事務効率化やデジタル化に繋がる。

更にいえば、電子レシートの普及や税務処理の自動化、さらにはマイナンバーと金融口座を活用した給付・還付システムの整備なども盛り込んでおくべきだ。

給付付き控除 財源の議論を後回しにするな

2026/06/03 05:00

社会保障と税の一体改革で、高市首相が「改革の本丸」として位置づける「給付付き税額控除」の具体的な制度設計が進んでいる。

讀賣新聞より

折しも給付付き税額控除の話も出ているのだから、逃げずにそこまで織り込んで調整していった方が良い。

まとめ

公約として掲げた以上、政治にはそれを実現する責任がある。ただし、今の経済状況との噛み合いが悪いのは事実だ。

ならば、消費税減税を梃子にシステム改修をし、将来性を見越した設計を持ち込むことで、経済への遡及効果を狙った方が建設的である。

政策とは、本来未来への投資であるべきだ。

約束したから仕方なく実施するという消極的な発想だけでは、国は前に進まない。だから、減税を行うのであれば、その機会を利用して行政や税務、流通システムの近代化まで進めるべきなのだ。

転んでもただでは起きない、その姿勢こそが、これからの政策運営に求められている。批判するとか言いつつ余り政権批判にはなっていないが、批判は出来なかったときにすれば良い話だと思う。

コメント

  1. 山童 より:

    うんうん納得。

    インボイス制度はもっと合理化してあげないと中小がコケちゃうので、
    兼ね合わせて整理するシステム構築には賛成!

    1%は仕方ないすね。
    0の方が実行命令する政治家たちには
    「聞こえ良い売り」なるのに、そこで
    話を進めないのは、テクノロジー的に問題あるという事で。
    そもそもデジタルって0か1かの世界すから、0%が事務処理的に難あるのは想像できます。
    20◯◯年問題…みたいなのになっても困るし。今は経済も実体経済の何倍ものお金が電子的に動いてる時代なわけで、一つの穴が決壊をもたらす可能性を考えると、紙媒体の時代とは別なリスクがあると想うんです。

    なにより、木霊様が並みの理系と違う面が出てましたが、

    政治的リスクと経済的リスクは違う!

    経済学的にはインフレ圧がかかる!
    しかしここで公約を反故にして、
    「また破った」にすると、政治不信を促進した上に、それでまた消費を冷え込ませ経済停滞させる怖れある!

    だから経済学的に間違いでも、政治的判断を優先する事が、経済的な効果を生み出す可能性を否定しない!

    ここのね、判断って「データー馬鹿」には出せない結論と想うす!

    あたしが木霊様が「違いの解る理系男」とする所以で、そのへんは音楽大好き様とか、BOOK様とかの方々と
    共通してるかな。

    • 木霊 木霊 より:

      インボイス制度は非常に評判が悪いのですよ。必要性は認める、でも、運用面は最悪です。その当たりは個人事業主に色々ヒアリングして嫌と言うほど思い知りました。
      アレを止めるのであれば、消費税を一律にするしかないと思っています。
      そうでないなら、インボイス前提で利用しやすい制度に変えるしかありません。

      消費税減税の餌をぶら下げて歓迎されるのであれば、せめてそちらの整備をしっかりして欲しいものだと、そのように願っております。

  2. 人工知能の中の人 より:

     私もレジの対応に時間がかかるというのは承服できていなかったのですが税制改正などは通常8月に税制改正要望があつまり、9月〜11月税制調査会で調整され、12月に税制改正大綱が閣議決定、1月〜3月通常国会の可決をもって3月31日公示4月1日施工
     このスケジュールを横目に企業も同時並行で検証作業を進めていると推測するとレジ開発企業や会計および流通のシステム開発会社、税務署のシステムエンジニア部署からしたら今言われても責任持てないと反発が高いかもしれません
     ただ数字書き換えるだけではなく切替後も齟齬無いか検証するのは絶対です
     各党が消費税減税を選挙公約に掲げましたけど高市政権発足が10月21日でしたし閣議決定も通常国会可決も無いままでは企業も動くに動けずでタイミングが悪かったですかね

    • 木霊 木霊 より:

      税制の時期というのは大切なのかもしれませんね。
      オンスケで乗せていくなら、来年度からというのは分かりやすい。

      ならばより一層、しっかりした設計のシステム改修込みでやる方が筋が良いのだと思います。

  3. 匿名 より:

    消費税下げる等の賛否は一旦横において。

    3%から始まってだいぶ経って、8%10%と物品事に違いがある今でも、
    レジの改修が・・・とか、レジのメーカーはアホなんじゃないかと。

    電卓でもユーザーが変更できるのに、一体どんなシステムなんだと。
    (もちろんユーザーの誤設定の危険はあるので、それ相応のものは必要だとしても)

    この話が出てきてからずいぶんと経つような気がしてますが、メーカーのアホ具合のほうが気になります。

    多分、
    「ちょこっと変更」でも改修です!
    と称して、メンテナンス費用で儲けるシステムが跋扈してるんじゃないかと勘ぐってます。

    • 木霊 木霊 より:

      レジメーカーがアホと言うよりは、全体システム改修という話をすると、バッファを設けておく必要があるというのは、その通りなのではと。
      実際、プログラム弄るだけなら、数分で終了なんでしょうけどね。

  4. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    七面鳥も、POS機の税率変更に時間がかかる話は疑問だったのですが、0→1にすると聞いて「あ、ゼロ割りがらみの話か」と納得がいきました(それまでその発想が無かった、つかマスコミが説明するのでは……しないか)。そりゃ面倒ですわな。

    経済学的に難のある政策とはいえ、ここらで一度財務省の役人共をぶん殴って「主従関係」をはっきりさせておかなければいけない、というのもあると思っています。
    ※同じ事は各省庁で大なり小なり行われているorこれから行われると思ってます。

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。

      ゼロ割絡みの話からすると、0.01%というのも筋は悪いんですよね。
      1.01%とかになるなら別なんですが、データ渡す時に端数を丸める処理をして0になると、結局、同じトラブルがついて回る。
      だから1%ならというのは、一定の合理性はあるような気はするんですよ。