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リヒテンシュタイン公国のルールが長子承継に変更

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北欧ニュース
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既存メディアが一斉に大喜びで記事を書いたこの件、かなり中身が酷いのですこし突っ込みを入れておこう。

リヒテンシュタイン、女性も君主継承へ 4世紀続いた男子限定を変更

2026年8月16日 9時00分

欧州の小国リヒテンシュタインで代々君主を務める侯爵家は15日、これまで男性に限っていた君主の継承資格を性別にかかわらず第1子優先に改めると発表した。アロイス皇太子が演説で明らかにした。1606年から続いてきた原則が変更され、今後生まれる世代に適用される。

朝日新聞より

新聞のお約束か知らないけれど、酷いね。もう少し、背景事情から説明できないものだろうか?過去に、朝日新聞はリヒテンシュタイン公国の話を幾つか報じていたので、やろうと思えばできると思うんだけど。

それそれの事情がある

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ミニ国家リヒテンシュタイン

先ず、リヒテンシュタインという国について、少し解説していこう。ニュースでは「欧州の小国」と書いているけれど、こんな説明では足りない。

スイスに隣接する場所に位置する「リヒテンシュタイン公国」は、人口は41,398人、面積は160.5平方kmで、面積的には山形県南陽市、愛知県豊川市と同じくらいの面積、人口でいえば鹿児島県奄美市くらいの規模だ。

……比較対象がマイナーなので比較になっていないのはどうかと思うんだけど、日本の中規模都市程度以下の人口と面積くらいしかないとイメージしていただければ良いだろう。

国名であるリヒテンシュタイン公国の由来となったのは、巨大な富を持つリヒテンシュタイン公爵家による支配地域であること。色々な国家の傘下に入った歴史があるが、1806年に神聖ローマ帝国より独立して以降は独立国家として存在している。

なお、メディアによっては「リヒテンシュタイン侯爵家」と表記されるが、リヒテンシュタイン政府自身が英語でこの国を constitutional hereditary monarchy(立憲君主制)、君主を Prince と整理している。日本政府は「リヒテンシュタイン公国」が正式な国号としており、元首は「公爵」としているので、本ブログではこれに倣うことにした。

なお、日本の公爵の英訳はDuke。英語のPrinceには、日本語でいう「王子」だけではなく、独立した君主としての「公」に相当する用法もあるため、ここはかなりややこしい。日本の公爵をDukeと訳すことも、このあたりの混乱の原因になっている。皮肉な話ではあるが。

国家元首は代々リヒテンシュタイン公爵家より輩出されていて、元首はリヒテンシュタイン公爵家の当主が務める。ただし、政治は議会制民主主義で首相は議会の第一党党首が元首によって任命される形で、選ばれている。

摂政はアロイス公世子

現在のリヒテンシュタイン公国の元首はハンス・アダムス2世で、その長男のアロイス公世子が摂政として統治権を握っている。

記事では「アロイス皇太子」と書かれているが、誤記だ(メディア的にはこの様に書くお約束になっているらしい)。

本来、「欧州の小国リヒテンシュタインで代々君主を務める侯爵家」と書いたのであれば、その継嗣は「侯世子」と表記しなければならない(諄いようだが、メディア的には「皇太子」が正しいらしい)。

このブログでは公爵家と表記しているので、公世子としている。リヒテンシュタインには皇帝も国王もいない。したがって、「皇太子」という称号はかなりおかしいのだ。

その上で、今回のこのルールがハウスルール(家法:Hausgesetz)であるということにも、注意が必要である。

リヒテンシュタインでは侯爵家の当主が君主を務める。継承権は、侯爵家が自ら定める家法で規定されている。今回の改正は、侯爵家内で数十年にわたって議論され、2025年末に具体的な作業が始まった。今月12日、議決権を持つメンバーの3分の2以上の賛成を得て可決されたという。

朝日新聞「リヒテンシュタイン、女性も君主継承へ~」より

この様に書かれているが、要は公爵家内部で家族会議をやって、長子承継方式にしようと決定されたというだけの話である。

民主主義的な手続き出決まったような印象を受けるが、「議決権を持つメンバー」って、リヒテンシュタイン公爵家の一族のことを指していて、リヒテンシュタイン議会は無関係である。

リヒテンシュタイン憲法32条は、そもそも王位、正確には公位の継承について、公家が家法によって定めることを明記しているので、この改正は憲法に則ったものではあるのだけれどね。

色々と酷い。

皇室典範改正とはそもそも次元の違う話

なお、アロイス公世子が継承権第1位でその長子は男児なので、女性の君主が登場する予定は当面ないことも伝えなければならないだろう。

こういった、リヒテンシュタイン公爵家の家族会議の内容がリヒテンシュタイン公国のルールになる理由は、憲法にしっかりと定められていることだけではなく、リヒテンシュタイン公爵家の資産規模が大きいことも影響している。

現在の元首であるハンス・アダムス2世の資産は、ヨーロッパの君主のなかで所有資産が最大で、2026年時点で約146億ドル程度あるとされている。公費の一部がハンス・アダムス2世の私費から支払われているというから、リヒテンシュタイン公国内における影響力も計り知れない。

そうやって考えていくと、今回のニュースの根幹であるリヒテンシュタイン公爵家の家法のルール改定を、日本の皇室典範改正と同一視するのはおかしな話ではある。

なにしろ、リヒテンシュタイン公国では家法について議会が口出しする権利はないのだから。

よって、ニュースの本質は、民主主義国家なのに、君主の権限がかなり強いリヒテンシュタイン公国におけるお家事情だということになる。

朝日新聞の記事では、皇室典範改正との温度差を見せるために意図的に文言を調整した部分もあるのだろうけれど、背景をしっかり説明すれば別の光景が見えてくるはずだ。

外国人が多い国家

さて、こういった事情の他に、もう1つ加味しなければならない因子がある。それが、リヒテンシュタイン公国の人口構成だ。

実は、リヒテンシュタイン公国の人口構成の人口の35%ほどを外国人が占めている。外国人の人口が多いのは、その政策が影響しているとみられる。

小国リヒテンシュタインに富裕層が注目の理由 節税スキームに歯止め

2024年10月4日 17時00分

欧州の小国リヒテンシュタインを舞台にした「節税スキーム」に、日本の国税当局が「待った」をかけていた。国税の課税処分からは、人口4万人足らずのこの国に、日本を含む各国の富裕層が注目してきた理由が浮かぶ。

朝日新聞より

モナコなども有名だが、リヒテンシュタインも租税回避地としてそこそこ有名だ。

この朝日新聞の記事では、リヒテンシュタイン公国の財団制度を利用すると、方法的に節税が可能となった話が紹介されていて、現在は法的にこの穴は塞がれてはいる。

ただ、リヒテンシュタイン公国が基本的に外国富裕層を誘致するような政策を行っていることが、この時の問題の発端となっているのは事実。

そしてこのような国家の情勢であり、かつ小国故に、結構な外圧に晒される環境にある。

実は既にイギリス、ベルギー、オランダ、北欧諸国など、欧州の主要な君主国は、「男女を問わない長子先着順」への法改正を完了しており、リヒテンシュタイン公国に対し、女子を差別するなとの圧力が高まっているのだ。

もちろん、内政干渉にあたることから、直ちに国家のルールを変える理由にはならないのだが、リヒテンシュタイン公爵家の配偶者捜しには影響する。

長子承継方式を選んだ理由

一方で、「時代の要請に合わせた長子承継方式」に見えて、今回のルール変更には「直近2代までは現行方式適用」という留保条件がつけられている。なので、当面は変更されない。

リヒテンシュタインの現在の元首はハンス・アダム2世公だが、2004年にアロイス皇太子に実権を委譲した。今回の改正はアロイス皇太子夫妻の子どもたちから今後生まれる子孫に適用するとしている。

毎日新聞より

将来的には、例えば長男ヨーゼフ氏が結婚した時に、子供が生まれなかった、或いは長子として男子が生まれなかった場合には影響してくる可能性はある。だがそれは、数十年先の話となる。

現状、リヒテンシュタイン公爵家のアロイス公世子の長男ヨーゼフ、長女マリー、次男ゲオルグ、三男ニコラウスのうち、長男ヨーゼフは現状未婚で、詳細情報は殆ど出てこないが、次男ゲオルグ、三男ニコラウスもおそらくは未婚である。

だが、長女のマリー・カロリーネ氏は2025年、ベネズエラ出身のレオポルド・マデュロ・フォルマー氏と結婚している。レオポルド氏は、リヒテンシュタイン公爵家の公式発表によれば、フランシスコ・マデュロ・フォルマー氏の長男で、投資銀行業務を経て、現在はロンドンで投資運用に携わっている。

また、海外メディアでは、マデュロ・フォルマー家をベネズエラの有力な富裕層一族として紹介している。現在はもちろん問題になるような話ではないが、数十年という単位で考えれば、公爵家とは別の人的・経済的基盤を持つ一族が公爵家内部に入ることは、決して無視できる問題ではない。

ましてリヒテンシュタインでは、公位の継承を含む家法を公爵家自身が定めることができる。将来、こうした家族間の資金力や影響力に大きな差が生じた場合、その人物やその子孫の発言を公爵家が無視し続けることができるとは限らない。

そう考えると、現在の継承順位には手を付けず、二世代先から新しい長子承継方式を適用するという今回の改正には、単なる男女平等だけでは説明できない、公爵家自身の長期的なリスク管理という側面もあるように思える。

加えて言えば、憶測ではあるが、この変更はリヒテンシュタイン公爵家の男子の結婚相手探しにも影響してくる可能性はある。男系男子承継よりは長子承継方式の方が、他国には理解が得られやすいという意味で。

まとめ

過去にもリヒテンシュタイン公国では、アロイス公世子に対して実権を縮小しろという突き上げが多くあって、「公爵の実権が制限されるなら、我々一族は全財産を引き揚げてウィーンに移住し、この国(リヒテンシュタイン)を買い取る」とまで言って議会と対立。国民投票で圧倒的な支持を勝ち取った実績がある。

今回のアロイス公世子の「最も準備ができている人物によって率いられるようにしたい」という発言は、リヒテンシュタイン公爵家がこの公国を率いていくという宣言をしたと見て良いだろう。

つまり、今回のニュースは単純な人権配慮型の選択ではなくって、リヒテンシュタイン公爵家の生存戦略の一環と見る方が説得力が高いと思う。

コメント

  1. 山童 より:

    木霊様の解説に比べてアサヒはクソ以下です。牛の糞にも段々がある!
    (物事には順序があるの例え方です) 

    そもそも皇室典範を持ち出す前に、
    そもそも元首の継承の歴史を完無視して記事を組み立ててる!
    公爵がウインザー公とか、基本的に「君主」である=領地の元首として扱われる。つまり領地を君主に安堵された領主と違うのは、木霊様の記事で判ります。混同されとるのもね。

    んでリヒテンシュタインはじめ、ゲルマン系つかフランク王国の末裔たる国家群は、伝統的に女王いないのね!
    そこゲルマン系(アングロサクソン)でも英国とでんでん違う。
    フランク王国が西ローマ帝国崩壊後にあって、シャルルマーニュ(カール大帝)が皇帝なのるすね。
    んで帝国になって、分裂して、3つに分かれドイツ、フランス、イタリアになった。んで、フランク族は皇后や王妃を持っても女王や女帝は持たない。
    なんちゃら法って慣習法で女性の国家元首を持たない部族法があったから。
    これは国が分かれても伝統法として中世に引き継がれてるんすよ。

    んで女王がいるのは英国すね。
    これは乱暴にまとめるととバイキングの子孫たからず!
    え?て思うかもしれないけど。
     英国王室の始まりは厳密だとノルマン・コンクエストのノルマン朝からしょ。ノルマン朝はフランスのノルマンディー地方の領主だけど、彼らはフランク族じゃなくてバイキングす。
    海賊に敵わないので、海賊のバイキングを雇い、領地を与え、傭兵団とかロシアのコサックみたくノルマンディー地方に入植させた。
    数世代してフランス語を母語にするようになったバイキングが、英国侵攻して王国を建てたのがノルマン朝。
    んで、バイキングは基本的に女性に相続をさせない!
    因みに英王室の紋章(ごちゃごちゃしてる)を観ると、獅子が盾を支えてるパーツがあるけど、拡大すると獅子の盾に「我と我が祖国」と「古フランス語」で書いてある。それ現在の英王室の始まりがフランス語を公用語としたノルマン朝だからす。
    チョーサーのカンタベリー物語まで、英国の詩も散文も、もちろん公文書は
    ラテン語かフランス語しょ!
    Englishって下層民の言葉だもの😂

    サクソン人のアングロサクソン7王国は、ほぼバイキングの襲来と、彼らが 英国本土にデーン・ロウ(デーン人の法の地)を作った時点で滅んでます。
    なので、ケルトもサクソンも、王室に関しては滅びてるんすね。とっくに。
    シェイクスピアのハムレットはデンマークの王子の話しよ?
    なんで17世紀の英国芝居がデンマーク王室を舞台にするかってと、そっちが源流たからすよ。
    で、繰り返すけど、バイキングたち北欧系は長子相続だけど、割と女性の権利が高く、地位や家門を女性に相続させないけど、資産は分けたんす。 
    その辺が英国だけ女王伝統ある理由かと。

    ただし中世ヨーロッパに女性郡主はいません!
    エリザベス一世だって17世紀の人。

    んで、リヒテンシュタインに話を戻すと、西ヨーロッパでも、英国の女性君主は例外的な存在なのが解るすね?

    ロシアのエカチェリーナ皇后(マリー・アントワネットの母)のように国政を動かす人はいた。
    しかし彼女すら「君主=王」は夫のフョードルでした。
    これは中世ヨーロッパ(5世紀〜17世紀の1200年間)の伝統なんすよ。

    わかりやすい例だとテロリスト支持者の宮崎駿の作品に「カリオストロの城」あるすね。
    なんでカリオストロ伯爵は小娘のクラリス公女と結婚したがるか?
    公爵は国家元首で、しかし女性の場合
    元首にはつけない!
    たから夫が代理摂政となり、男児の産まれた時点で公爵位を継がせる。
    そういうスタイルたからすよ。

    ソ連崩壊の予測を的中させたエマニュエル・トッドが、人口動態と家族制度および相続制の専門家でありました。
    相続と家族制度は一体であり、
    そもそもアジアの日本と、ヨーロッパの家族制度も相続制度も、根本的に違うのに、無理やり日本の皇室に当てはめて強弁するあたり、アサヒはゴミとしか言いようが無い!

    はっきり言えるのは、連中はジャーナリスト、報道ではなく、プロパガンダに過ぎないという事の典型例でしたね、今回の放言は!!

    • 山童 より:

      書き忘れ!

      決定的に違うのは、リヒテンシュタインの場合、公家の人々が「会議室で決めている」事です!
      リヒテンシュタインの政府や行政府に
      決定権を握られてませんね??

      日本の場合、なんで皇族の事を土民にすぎないパンピーが決めるの?
      世襲政治家だろうが、代々の官僚だろうが「土民」しょ!
      土民が勝手に君主の家の事情を決めるって、それ本末転倒してね??

      これはさぁ、結局、「民主主義は偉いもんで、民主主義は男女平等だ」
      という幻想に囚われてるからす。

      別に「進歩的な方々」が愚蒙な土民を啓蒙して、男女平等にしたのではありません!!
      2度の世界大戦が女性の労働力を必要として、それでポリコレ好き推しの
      男女平等が実現したわけ!
      戦争っすよ、大量殺人が人を進歩させてのっす😁😁😁

      そういう近代以前からの取り決めに、
      女性差別がどうのこうの言うなら、
      納得のゆく程度に緻密なロジックを立てて欲しいものてすねパヨクは!

      • 山童 より:

        パヨクに言いたい。
        漸進的に日本を「進歩」させたいなら、もっかい世界大戦やろうぜ!!
        オメーらの言う平和より、戦争の方がぐっと社会を改革する!
        そこんとこアサヒに聞きたいもんすねぇ!

    • 木霊 木霊 より:

      頂いたコメントは「ヨーロッパの君主制を理解するには、単純な男女平等・男女差別ではなく、家族制度、相続制度、王朝法、封建的な財産継承を考えた方がいい」と、そういった整理になりましょうか。
      リヒテンシュタイン公爵家の生存戦略として、色々画策した結果が、今回のニュースに現れているという見方を紹介しましたが、ヨーロッパ各地でもそうでありましたし、実際のところ日本であってもそんな感じの整理で良い気がしています。