最近、スパイ事件が目につくようになったが、これはまたデカいニュースだね。
Former German spy chief arrested for espionage and treason
2026/10/6
ドイツ連邦検察庁は、元ドイツ諜報機関長官のアウグスト・ハニング氏が、スパイ行為、反逆罪、外国勢力への機密情報提供の容疑で逮捕されたと発表した。
BBCより
元諜報機関長官のハニング氏が、スパイ行為、反逆罪などで逮捕されたようなのだけれど、具体的な内容は不明。時期的にロシアか支那に情報を流していた可能性は高そうだが、この記事では触れられていない。
ドイツ政界を揺るがす事件
連邦情報局の腐敗具合
一体、何の情報を流したのか。
検察側は、彼が機密情報を用いてある外国の情報機関のために「分析報告書を作成」し、別の外国の諜報機関とも連絡を取り合っていたと主張している。捜査当局は、どの外国が関与していたかは明らかにしていない。
警察はまた、元BND職員のマンフレッド・Dを逮捕し、ハニングに約2000件の機密文書を金銭と引き換えに渡した容疑で告発した。
BBCより
連邦情報局(BND)はドイツの対外情報機関で、旧西ドイツ時代のゲーレン機関(対ソ諜報機関)を前身とする組織である。
そして、今回一緒に逮捕されたのが、元BND職員のマンフレッド・D容疑者だ。
なお、アウグスト・ハニング容疑者が長官であった時期は、1998~2005年であり、現職が第13代の長官で、ハニング容疑者は第9代の長官のようだ。
そして、厄介なことに、告発をしたマンフレッド・D容疑者、2012~2026年にかけて首席補佐官を努めていた人物らしい。
検察側によると、2012年から2026年にかけてハニングの後任者の首席補佐官も務めたマンフレッド・Dは、その立場を利用して極秘情報にアクセスし、それを「報酬と引き換えに」ハニングに渡していたという。
BBCより
つまり、マンフレッド・D容疑者は、前長官のコネを使って外国に情報を流していたという構図になっている。うはぁ。
ロシアは含まれない
そして、ここが少し意外なのだが、現時点の報道ではロシアはこの事件に関与していないとされている。
検察側によると、D.は長年にわたり、BND内部でのみ使用される機密資料や首相官邸での上級レベルの諜報ブリーフィング資料など、約2000点の文書を提供した疑いがあるという。
検察側によると、ハニングはDから提供された機密情報を使って外国情報機関の職員のための分析を作成し、長年にわたり諜報機関の代表者と政治情報を共有していた。
SZ紙が入手した情報によると、この事件にはロシアは関与していない。
ロイターより
そうすると、次に上がってくる候補は支那ということになる。尤も、事件の性格から考えると相手国を区別せずに情報を売り捌いていた可能性が高く、出資比率が高そうなのが支那ということになりそうだが。
また、ハニング容疑者が支那やロシアの政府機関などとかなり深い繋がりがあったことは知られているので、動機としては自然だろう。
諜報活動に大金を投入できる国家となれば、アメリカやイギリスなども候補には入ってくる。しかし、今回のような形でドイツの情報を「買う」必要があるのかと考えると、少々疑問が残る。米英はドイツと情報をやり取りする側でもあり、わざわざ元BND長官を使って違法に情報を買い集める合理性がどこまであるのか、という問題がある。なので、第一候補からは外して良いだろう。あとは中東諸国が候補には上がってくるが、精々、イランやイスラエルくらいだろうか?
おそらくだが、売り先は特定せずに、買いたい国家に区別なく売っていた可能性の方が高そうではある。だとすると、何故、ロシアは外れたかということは気になるところ。これは後に判明するだろう。
80歳のハニング氏は、私的なコンサルタント業務で当該資料を使用したとして告発されている。報道によると、これらの文書には首相府向けの諜報報告書が含まれていたという。この事件は、実業家クリスティーナ・ブロック氏と首相府文書の漏洩疑惑に関連した訴訟手続きから発覚したと報じられている。
i24より
盗まれた資料に何が含まれていたかは報じれていないが、首相府向けの諜報報告書が含まれていたとされているので、かなりの重要機密が漏れていたと見て良さそうだ。
なおハニング容疑者、過去にラトビアの銀行破綻などの影響で多額の年金を失い、近年は深刻な財政難に陥っていたと報じられていて、犯行動機は金銭目的であった疑いが高いとは言われている。後に触れるが、ソレはちょっと時系列的に疑わしいのだが。
何を欲しがったのか
現時点で、何処向けに情報が漏れたかはハッキリしないが、どんな情報だったかはある程度報じられている。
- 首相府向けの最高機密ブリーフィング: 独連邦情報局(BND)が国家指導部や首相府での機密協議のために作成した、国際情勢や重大な脅威に関する詳細な分析レポート。
- 主要な国際的焦点(イランやロシアなど)の動向: イランの核計画やロシア軍の動向・戦略に関する非常にセンシティブな評価や生データ。
- 外国パートナー機関からの提供情報: イギリス(MI6)をはじめとする同盟国の外国情報機関から共有された、極めて機密性の高い協力関係の証拠や独自入手した諜報・暗号情報。
かなりドイツの信用に関わる情報が漏れていたようだね。
保守派の安全保障専門家であるロデリヒ・キーゼヴェッター氏は火曜日、ハンデルスブラット紙に対し、この事件はドイツの情報同盟国との関係を緊張させる可能性があると述べ、このようなスパイ事件は「信頼関係にとって特に重荷であり、ドイツにとって特に有害である」と語った。
ドイツ連邦情報局(BND)のマルティン・イェーガー長官は、疑惑が浮上した直後から広範な内部調査を開始したと述べ、「内部安全保障に関しては一切妥協は許されない」と付け加えた。
ロイターより
流石にBNDの面目丸潰れで、ドイツの面目も丸潰れである。国家を揺るがす大事件といって良いだろう。容疑が事実なら、ハニング容疑者も流石に極刑を免れることは難しかろう。
そして、問題なのは、ハニング容疑者が関わっていた「民間での別の犯罪(富豪の子供の誘拐未遂・恐喝事件)」の家宅捜索で、警察が偶然トップシークレットのデータが残った電子媒体を見つけたことで発覚した事件だったということである。
発覚に至る経緯
この事件発覚に至る流れも、言い方が悪いがかなりドラマティックだ。
ハニング容疑者が退官後に請け負っていた民間セキュリティビジネスに関わる家宅捜索(ステーキハウスチェーン「ブロック・ハウス」の令嬢による子供の誘拐未遂事件)に、関わっているからである。
2022年
→ ブロック氏の子供をデンマークから連れ戻す計画にハニング氏が関与した疑い
→ 誘拐未遂に終わる
2023年末~2024年元日
→ 実際の子供2人の連れ去り事件が発生
→ これは現在の「ブロック事件」の本体
→ ハニング氏はこの事件の被告ではない
2025年9月
→ 2022年の誘拐未遂などの捜査でハニング氏の自宅を捜索
→ そこでBNDの極秘資料を発見
2026年
→ その資料から国家機密漏洩事件の捜査へ発展
→ 10月6日、ハニング氏とマンフレッド・D容疑者を逮捕
なんというか、手広く犯罪に関わっていた可能性が高いのがハニング容疑者だという構図になっている。
ステーキハウスチェーン「ブロック・ハウス」の令嬢による子供の誘拐未遂事件というのが、これまたややこしい事件である。
ドイツの有名チェーン「ブロックハウス」の令嬢であるクリスティーナ・ブロック氏は、離婚した元夫(デンマーク在住)と長年にわたり子供の親権を争っていた。この元夫とのトラブルにより、2022年にブロック氏から「10万ユーロ(約1600万円)以上の報酬」で、元夫から子供を実力で奪い返す(誘拐・連れ戻す)任務を請け負ったのがハニング容疑者がトップになっている民間の安全保障会社だったとのこと。
元夫の社会的信用を完全に失墜させるため、元夫のパソコンやハードディスクに「児童ポルノの偽データ」を密かに仕込んで警察に偽装通報しようとしたという疑いもあって、なかなかやっていることはあくどい。
元BND長官が退官後に民間の安全保障会社を通じて、富豪一家の親権・子供の奪還をめぐるかなり際どい案件に関与していた。これだけでも、とんでもないスキャンダルだね。
いつからいつまでなのか
今のところ、共犯のマンフレッド・D容疑者の供述から、2010年からの長きにわたって情報漏洩が続いていたとされているが、これもちょっと怪しい。
ハニング容疑者が、第9代長官の任期を終えたのが2005年。それから、2005〜2009年は政府に用意された連邦内務省の事務次官の職に就いている。この通りだとすると、2009年に退任した後、2010年から犯罪に手を染めたという時系列の整理になるようだ。
では、マンフレッド・D容疑者は?というと、2012年3月にBNDの首席補佐官に就任して2026年まで勤めている。
また、ハニング容疑者の経歴的に、取締役を務めていたラトビアの銀行が破綻し、財産を失ったのは2019年のことになる。
そうすると、情報漏洩の始期が2010年で終期は2022年というのは色々辻褄が合わない。
この事件の発覚に繋がった、ハニング容疑者が関わった別件(実業家クリスティーナ・ブロック氏の子供誘拐未遂事件)の家宅捜索で見つかった電子データが示す直近のデータが2022年6月だったから、2022年までだということになったとすると、終期はかなり怪しい。
そして、始期はハニング容疑者とマンフレッド・D容疑者が共に内務省に勤務していた2009年末までという情報とリンクしている可能性があるので、こちらも真正な始期であると見るのは難しそうだ。
ハニング容疑者が、旧東ドイツの東ベルリンにあった西ドイツ常駐代表部に勤務していた1986~1990年時期などを含め、「いつからなのか」に関しては、今後徹底的に調査されることになると思う。
まとめ
スパイ事件の全容は、報じられたばかりというタイミングであるので明らかではないが、今後の機密情報の扱いに関してはドイツ抜きでという事態を迎えそうである。
そして、いつからこの情報が漏れていたか?によっては、ドイツの諜報機関BNDの信頼どころか、それ以上の規模で世界を揺るがす事件に発展する可能性がある。
1989年のベルリンの壁崩壊、そして1991年のソ連崩壊の混沌とした時期、シュタージやKGBの崩壊に伴い、膨大なスパイリストや機密情報が流出・売買されていたことが知られているので、ハニング容疑者が国家機密が金になり、売買ルートにもある程度通じていた可能性はあるのだ。
2022年12月、BND(連邦情報局)の現役幹部だったカルステン・L被告が「ロシアの二重スパイ」として逮捕される大スキャンダルが起きていたが、この事件とも何らかの関連はありそうだね。
なんとも、「現実は小説よりも奇なり」という言葉すら陳腐に関する事態になってきた。



コメント
こんにちは。
盗人が倉の番、ですか……
そりゃ、ドイツも衰退するわけだ。
本邦も気を付けてもらわないと……国交省とか外務省とか……
こんにちは。
日本でも警察の不祥事って少なくないんですが、このケースは長官とその部下が組織ぐるみでという恐ろしい話。
なんというか、ドイツのヤバさを物語っている部分もありますね。
こうした事件が表面化するだけでもまだ正常だと思いますよ。
それに比べて本邦ときたら、、、
まあまあ。
これからですから。