日本は無人偵察機RQ-4「グローバルホーク」を失い、大型無人機MQ-9B「シーガーディアン」の大型発注を決定したが、アメリカはMQ-9Aの更新を考えているようだ。
MQ-9AとMQ-9Bはコンセプトが違うので、MQ-9Aの運用が停止したからといって直ちにMQ-9Bが使われなくなるという話ではないのだが。
空軍、新型MMAドローン計画の候補者7名を発表
2026年9月30日
複数の情報筋がAir & Space Forces Magazineに確認したところによると、空軍と国防総省の国防イノベーションユニットは、 MQ-9Aリーパーの後継となる低コストの半自律型ドローンの開発競争に参加する企業を7社に絞り込んだ。
Air&Space Forcesより
アメリカ軍の選択が常に正しいとは限らないが、MQ-9B系の無人機が自衛隊の発注直後にアメリカ軍の採用から外れていくという、RQ-4と同じ運命を辿りそうである。
哨戒機能は必須だが
アメリカ軍はMQ-9Aの損耗を許容できない
この件は、航空万能論さんのところで扱っている記事で、2032年までにMMA(MQ-9Aの後継機)を500機配備したいというアメリカ軍の希望も併せて紹介されていた。

こういった事例は度々確認されているので、それを嘆いても詮無きことではある。
空軍長官のトロイ・メインク氏は9月14日、AFA(空軍協会)の航空宇宙・サイバー会議で、空軍は2032年までに500機のMMA(多目的戦闘機)を配備したいと述べた。
商業サプライヤーや非伝統的なサプライヤーを活用するために設立された調達機関であるDIUは、7月7日、MQ-9の特徴である継続的な情報収集、監視、偵察、攻撃といった任務を担える、安価で消耗型のドローンに関する提案を募集した。空軍は間もなく、この構想に関してDIUと協力していることを明らかにした。
今回の調達要請は、今年初めにイランに対する作戦で数十機のMQ-9が失われたことを受けて行われた。DIUは当時、1機あたり3000万ドル以上もする「精巧な」航空機への軍の依存は、「ますます低コスト化する対空能力によって可能になった多層防御を用いる敵に対して持続不可能になっている」と述べていた。
Air&Space Forcesより
アメリカ軍が運用する無人偵察機は高コストに過ぎる。ランニングコストも含めて低コスト化を求める流れというのは、ある意味妥当なのかもしれない。
実際に、価格の高いRQ-4も早々にアメリカで生産停止になってしまったお陰で、自衛隊は損耗したRQ-4の補充すら難しい事態に陥ってしまった。
コストと性能
実際にどういう機体なのかの簡単な比較表を作ってみた。
<スペックと価格の直接比較表>
| 項目 | RQ-4A Global Hawk(初期生産型) | MQ-9A Reaper(現行主力型) |
|---|---|---|
| 機体単価(搭載センサー含む) | 約1億3,140万ドル (日本円:約197億円) | 約3,000万〜5,000万ドル (日本円:約45億〜75億円) |
| システム一式価格 (地上管制・通信機器等含む) | 約2億2,270万ドル (日本円:約334億円) | 約5,650万ドル(※4機+GCS等の価格) (日本円:約85億円) |
| 全長 / 翼幅(全幅) | 13.5 m / 35.4 m | 11.0 m / 20.1 m |
| 最大離陸重量 | 12,133 kg | 4,760 kg |
| ペイロード(積載量) | 907 kg(すべて機内用センサー) | 1,746 kg(機内 386kg / 機外 1,360kg) |
| 武装能力 | なし(非武装) | あり(ヘルファイア、GBU誘導爆弾等) |
| 最大巡航速度 | 約340ノット(約630 km/h) | 約240ノット(約444 km/h) |
| 航続時間 / 航続距離 | 約32時間以上 / 約22,000 km | 約27時間 / 約1,850 km |
| 最高高度 / 運用高度 | 18,288 m / 15,000〜18,000 m | 15,240 m / 7,500〜9,000 m |
| エンジン | ターボファン・ジェット × 1 | ターボプロップ・プロペラ × 1 |
更に、運用コストも別途必要となる。
< 1飛行時間あたりの運用コスト比較>
| 項目 | RQ-4A Global Hawk(グローバルホーク) | MQ-9A Reaper(リーパー) |
|---|---|---|
| 直接運用コスト (燃料・消耗品・直接整備) | 約15,000 〜 18,500 ドル (日本円:約225万〜277万円) | 約3,500 〜 4,700 ドル (日本円:約52万〜70万円) |
| 完全コスト(ライフサイクル換算) (大規模改修、契約者サポート等含む) | 約35,200 ドル (日本円:約528万円) | 約6,000 〜 8,000 ドル (日本円:約90万〜120万円) |
あくまで、参考値なので正確な数字は各々調べて欲しい。
そして、自衛隊が増やそうとしているMQ-9Bの方はMQ-9Aより高額になる。実際、自衛隊の取得金額は地上装置やサポート込みのパッケージ価格で1機あたり約170億円(2027年度概算要求ベース)だと言われている。
それでも調達にあたって1機200億円以上のP1哨戒機を増やすよりは低コストなので、自衛隊の選択肢が誤っているとは思わない。最も高価なパーツとなるパイロットが不要になるのは、大きな意味があるからね。
MQ-9Aの後継機模索の理由
何故、アメリカはMQ-9Aの更新を考えているのか?ということだが、これは昨今日本経済を脅かしているホルムズ海峡事態、つまりアメリカ軍のイラン攻撃との関連が深い。
米軍、パトリオットに続き「空の暗殺者」リーパーの在庫25%損失…イラン戦長期化で
2026-08-14 23:35
米軍はイランとの戦争の過程で、主力無人機「MQ-9リーパー」を少なくとも45機失ったという。戦前の米軍全体の保有量のおよそ4分の1に相当する数だ。イラン戦争とウクライナへの軍事支援が長期化する中、米軍の主要な兵器や弾薬の在庫が急速に減少しているが、生産能力の限界から、補充には数年かかるだろうという懸念が高まっている。
ハンギョレより
実際の作戦投入して分かったことは、無人偵察機RQ-4より安価な攻撃ユニットとして開発されたMQ-9「リーパー」の脆弱性だ。
しかしスピードが遅く、比較的低高度を飛行するため、イラン軍、イエメンやイラク国内の親イラン勢力の防空網に対して相対的にぜい弱だと評されてきた。失われたリーパーのすべてが敵の攻撃で撃墜されたわけではない。米国のある当局者は、一部の機体は地上の操縦士との通信が途絶えた後に墜落したとワシントン・ポストに明かした。
ハンギョレ「米軍、パトリオットに続き~」より
戦場で、ある程度の損耗を覚悟しなければならないのは当然ではあるが、作戦継続に支障を来すほどだと流石に不味い。
MQ-9Aを大量投入する作戦は、妥当性に欠けるという判断になったらしく、より安価な機体の模索が始まったという意味になる。
ではMQ-9Bとの関係は?といと、MQ-9Aの派生機であるMQ-9Bは、一部パーツの共用によって低コスト化を図っているのだ。
MQ-9Aの廃止が決定すれば、当然、MQ-9Bの方も存続が怪しくなる。少なくともパーツの高騰は避けられまい。
ユーロドローンの共同開発
そうすると、自衛隊は再び入手困難な事態を迎えてしまう。
流石に日本としてもその事態は看過できないとして、別の方法も模索はしているようだ。
海自は米国製MQ-9Bに決めたのにナゼ!? 川崎重工とエアバスが「ユーロドローン」対潜型でタッグ組む理由
2026.07.02 08:12
川崎重工業は2026年6月26日、エアバスの子会社であるエアバス・ディフェンス・アンド・スペース(エアバスD&S)と、滞空型無人機に関する協業に向けた覚書を締結したと発表しました。また同日、エアバスも、川崎重工と中高度長時間滞空型無人機U950「ユーロドローン」の対潜哨戒型を共同で検討する覚書の締結について発表しています。
Car Viewより
もちろん、実際の運用には機体価格だけではなく、燃料、整備、部品、地上設備、人員などのコストも発生する。
<サイズと重量の比較>
| 項目 | MQ-9B シーガーディアン | ユーロドローン(計画値) |
|---|---|---|
| 全長 | 11.7 m | 約 16.0 m(有人戦闘機 F-16並み) |
| 翼幅(全幅) | 24.0 m | 約 26.0 m(ほぼ旅客機サイズ) |
| 最大離陸重量 | 5,670 kg | 約 11,000 kg(MQ-9Bの約2倍) |
| エンジン | 単発(プロペラ ×1) | 双発(プロペラ ×2) |
| ペイロード(積載量) | 2,155 kg | 約 2,300 kg 以上 |
ユーロドローンが高価になった理由は、開発に参加しているドイツが、双発は譲れないと強く主張していることも関係しているようだ。
実際、この手の哨戒機は、グライダー方式で飛行時間を延ばすことになるので、双発で生存性を高める選択肢が本当に正しいかは疑問だし、重量増や大型化は避けられない。
結果、高額になってしまう。
ただし、自衛隊にとっては価格そのものよりも、性能に見合うかどうか、作戦投入に支障がないかどうかが問題なんだけれども。
バイラクタル TB2Sの導入検討
尤も、高価な哨戒機とは別に、自衛隊は安価なトルコ製の無人機の導入にも、具体的に動き出している。
トルコ製無人機の導入検討、中谷防衛相が表明…ウクライナ軍が実戦で使う攻撃型ドローンなど
2025/08/20 20:36
中谷防衛相は20日、訪問先のトルコ・イスタンブールで記者会見し、トルコ製の無人機導入を検討する考えを表明した。攻撃型ドローン「TB2バイラクタル」などが念頭にある。
讀賣新聞より
《解説》陸自の空中火力を変える「多用途UAV」──令和8年度防衛予算で調達か?
2026-4-9 21:45
~~略~~
陸上自衛隊中央会計隊は令和5(2023)年8月にTB2Sの調査を行う企業の入札を実施し、防衛省は英軍事専門誌ジェーンズの取材に対して「TB2のテストを実施しており、令和7年度に完了する見込みだ」と認めています。また、令和7(2025)年8月には中谷防衛大臣がトルコを訪問し、バイカル社の施設を視察しました。推定価格は1機あたり約7億円(約500万ドル)と比較的安価です。
J-Defenceより
一昨年動き出して、今年あたりには調達するかも?という記事になっているが、この他にもイスラエル製のヘロンMk IIを物色しているので、何が選ばれるのかは不明。
ただ、ハイローミックスの思想で開発を進めるようなので、安価なバイラクタルのような機体を選んだ場合にも、高価なMQ-9Bやその後継機を選ばないことにはならないだろう。
まとめ
アメリカと日本では運用ドクトリンが異なるので、アメリカが次期MQ-9となるMMA計画をスタートさせているからといって、それに追従する必要はない。
そういう意味で、共同開発路線で自国で作れる無人機を入手していくことは必要なことのように感じる。
今後、日本が完全な国産機を目指すのか、それともユーロドローンのような海外共同開発機をベースにしていくのかは、まだ分からない。
しかし、単に完成品を輸入するだけではなく、設計・製造・改修まで含めた技術と運用のノウハウを国内に残すことは重要だろう。
防衛費の増額が続く一方で、限られた予算でどのような無人機を獲得するのかを今後も注目していきたい。


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