先日の墜落ニュースがあって、関連情報を少し集めてみた。
韓国軍 無人機戦力を強化へ 戦争の様相の変化に対応
Write: 2026-06-26 14:08:45/Update: 2026-06-26 14:25:39
韓国軍は、近年の戦争の様相の変化に対応するため、長距離自爆型無人機をはじめとする無人機の戦力を大幅に強化します。
~~略~~
また、戦略的な攻撃や敵の防空網の無力化を目的とした、韓国製の長距離自爆型無人機「K-LUCAS」の実戦配備を推進すると明らかにしました。
KBS WORLDより
これを見ると、K-LUCASは2024年から開発が進められ、今年6月になって実戦配備の推進が決定したばかりらしい。
まさにこれから、というところで今回の墜落ニュースが出てしまったわけで、ちょっと残念ではある。でも、開発に失敗は付きものだから!
性能的な話
モデルとなった機体
調べていて、ちょっと驚いたのだが、ルーカスはアメリカの無人機戦闘攻撃システムで、LUCAS(Low-cost Uncrewed Combat Attack System:低コスト無人戦闘攻撃システム)と名付けられていたことだ。
だが、K-LUCASは、「低コスト」を意味しないらしいね。

確かに、アメリカ軍が開発したルーカスは1機3万5000ドルと、巡航ミサイルよりは低コストで運用が可能である。
元々、シャヘド136をベースにリバースエンジニアリングして計画したようで、そこそこ違うスペックであることが確認できる。
| 項目 | シャヘド 136(Shahed 136) | LUCAS(アメリカ軍) |
|---|---|---|
| 全長 | 約 3.5 m | 約 3.0 m |
| 翼幅(全幅) | 約 2.5 m | 約 2.4 m |
| エンジン | MD-550(ピストンエンジン、50馬力) | 215cc 2気筒ガソリンエンジン |
| 最高速度 | 約 185 km/h | 約 137 〜 194 km/h |
| 航続距離 | 最大 約 1,000 〜 2,000 km | 最大 約 800 km |
| 滞空時間 | 約 10 〜 12 時間 | 約 6 〜 8 時間 |
| 爆薬搭載量(ペイロード) | 約 40 〜 50 kg | 約 18 kg |
| 誘導方式 | 民間GPS、慣性誘導(INS) | 暗号化軍用GPS(Mコード)、AI光学式地形照合(DSMAC) |
| 妨害(ジャミング)耐性 | 非常に弱い(電子戦で墜落しやすい) | 非常に強い(GPS遮断下でも自律飛行可能) |
| 連携機能(群制御) | なし(あらかじめ設定された座標へ直線飛行) | あり(数十機がAIとメッシュネットワークで連携) |
| 推定価格(1機あたり) | 約 20,000 〜 40,000 ドル(ロシア調達価格等による) | 約 35,000 ドル(将来目標は 5,000 ドル) |
あくまで参考スペックだが、随分と工夫をしていることが分かる。
比較してみると、LUCASは航続距離や爆薬の量を減らす代わりに、「電子戦への強さ」と「AIによる群制御」という頭脳面にコストと重量を大きく割いている。
単純に「シャヘド136を小さくしたもの」というわけではなく、トレードオフにした部分があったということだね。
本家との違い
では、Kルーカスはどうなのか?というと、以下の通りである。
| 項目 | LUCAS(アメリカ軍) | K-LUCAS(韓国軍) |
|---|---|---|
| 開発の基本概念 | シャヘドを解析し、米軍の高度な脳脳(AI・電子戦)を移植。 | LUCASの概念(低コスト・長距離自爆)を韓国の安保環境に適用。 |
| 航続距離 | 最大 約800 km (中東など広域での運用を想定) | 最大 約100 km (対北朝鮮の近・中距離に最適化) |
| 爆薬搭載量 | 約 18 kg (電子機器スペースを優先し、やや控えめ) | 約 20 kg (北朝鮮の強固な陣地や防空網を叩くため同等以上) |
| 誘導・電子戦能力 | 米軍暗号化GPS(Mコード)、光学地形照合(DSMAC)による強力な抗ジャミング。 | 人工知能(AI)による自律飛行、電波妨害(ジャミング)回避能力の搭載。 |
| 群(スウォーム)制御 | 実装済み。メッシュネットワークで相互連携。 | 段階的導入。AIによる複数機の連携システムを開発中。 |
| 主な発射方法 | 車両(トラック)、カタパルト、艦船(沿岸戦闘艦など)。 | 地上移動式発射機、大型輸送艦(「馬羅島」など艦載も実証中)。 |
| 実戦配備時期 | 2026年初頭(すでに中東で実戦投入済み)。 | 2030年以前(当初計画から大幅前倒し)。 |
| 1機あたりの価格 | 約 35,000 ドル (米軍の予算規模からすれば「圧倒的破格」) | 約 35,000 ドルを目指す (現状10億ウォンだとの情報あり) |
韓国国防科学研究所(ADD)が開発中のK-LUCASだが、何故こんなに高価になってしまったのだろうか?
最終的には35,000ドルを目指し、量産効果が出れば5,000万ウォンまで下がるなどと説明がされている。が、当面は難しそうだ。
その理由は、幾つかあるようだ。
- 物理AIコンピューター: NVIDIAの「Jetson Orin NX」を搭載し、高度な自律飛行を行う
- 衛星通信システム: 英OneWebの超高速衛星データリンク受信機を搭載。
- 高性能カメラ: 単なる自爆ではなく、敵を精密に探知する電気光学・赤外線(EO/IR)カメラを搭載
- 海外製主要部品: エンジンはイギリスの高級ロータリーエンジン(UEL社製)を採用
コンピューター関連の製品コストは、今かなり高騰していて下げられる見込みが立っておらず、通信機器やエンジンの国産化もかなりハードルが高い。
いつものように非常に楽観的なコスト予測をしている。
高コストになった理由
結局のところ、割り切った性能にすれば良いのに、それが思い切れなかったということなのではないだろうか。
10億の自爆ドローン「K-ルーカス」が解放すべき本当の宿題
2026年08月07日 16:25
去る6月28日、アン・ギュベク国防部長官は、国防用ドローン・対ドローン発展政策を発表し、いわゆる「韓国型ルーカス(K-LUCAS)」の開発を表明した。
~~略~~
ところが、去る7月30日に防衛事業庁が主催した「国防科学技術大祭典」で、国防科学研究所(ADD)主導で開発された中型自爆無人機の試作機M-1の価格は、約10億ウォンに達した。米ドルに換算すると70万4000ドル程度となるため、このままでは韓国版ルーカスはオリジナル版ルーカスよりも20倍以上高価ということになり、コストパフォーマンスの確保は絶望的であるように見える。
biz-hankookより
流石に、試作機が高いのは仕方が無いのだが、それにしてもコストを下げる道筋が見えていないのは問題だろう。
なお、アメリカ製のルーカスが安いのは支那製の部品を使っていると言う点が指摘されている。
実際、米国のスタートアップ照会サービスロケットリーチ(RocketReach)は、スペクターワークスの役職員を2024年基準で16人と推定する。この程度の規模のスタートアップが米軍にドローンを供給するということは、結局中国産部品をあちこちで買い集めた後、下請けに再下請を与えなければ不可能なことを示唆する。
biz-hankookより
あくまで推測に基づく話ではあるが、アメリカ軍の兵器の多くに支那製部品が利用されている実態を考えると、不思議ではないだろう。使い捨ての兵器を高価なパーツで作り上げるのは、不経済だからね。
この辺りのバランスの取り方は、アメリカが正しいのか韓国が正しいのかは、正直良く分からない。
だが、韓国軍が自爆ドローンに求める高性能化の方向性は、余り正しくないように思う。世界の趨勢は低価格ドローンの運用の方に傾いているのだから。
まとめ
無人機戦闘攻撃システムで国産化を目指すことそのものは、悪いことでは無いと思う。だが、自爆型ドローンにまでその話を推し進めるメリットは余り多くはないと思う。
低性能でも低コストで多数揃えられるからこそ、使い勝手の良い兵器となりうるのであって、高性能なドローンを目指すと使い捨てで運用するのと相反する話になってしまう。それでもミサイルよりはまだ安価なんだと割り切っても良いのだが、もっと割り切って低価格化を進めた方が運用の幅は広がるのではないだろうか?
韓国軍の運用ドクトリンが良く分からないので、確定的なことを言うのは難しいところだが。


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