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皇室典範改正はどこへ向かうのか

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政治
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最近、皇室典範の改正について色々騒いでいるのだけれど、「何だこの程度の議論か」とがっかりすることが多い。

ベースにすると分かりやすいのはこんなニュースが分かりやすいだろうか。

素朴な疑問。女性が天皇になれないのはなぜ?

2026/03/26 06:00

皇位継承をめぐって国会が議論を重ねています。高市早苗総理大臣は16日、参議院予算委員会で「皇室典範に基づき女性天皇は認められない」という趣旨の発言をしています。どうして女性天皇は認められないのでしょうか?『CBCラジオ #プラス!』では、光山雄一朗アナウンサーが「皇室典範」について、アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美先生に尋ねます。

CBC Magazineより

皇室典範の解説に弁護士という、ちょっとミスマッチな印象を受けるもの。先ずはこれをベースにCBCラジオの論点整理が妥当なのかを検証していきたい。

前提はどこにある

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前提が間違っている

現在の議論は、皇室典範改正に向かっているという風に報じられている。

皇室典範改正、政府が要綱を正副議長に提示 25日に各党派と協議へ:朝日新聞
衆参両院の正副議長は22日、皇族数の確保策として政府が示した皇室典範改正案などの骨子を了承した。さらに具体化した要綱も提示されたが、一部修正を求めて了承を見送った。25日に各党派の代表者を集めた全体…

だが、そもそも冒頭に紹介したように、専門家を名乗る方々の議論が少々怪しく、メディアの報じ方にかなり疑問を感じている。そういった分かりやすい事例として冒頭のニュースを紹介したわけだが、先ずは、おかしな部分から指摘していこう。

現在いらっしゃるという状況は守ろう。その次の世代に関してどうするかを今後議論しましょう。今の時点では皇位継承者の拡大をしましょうではなくて、まずは皇族を確保しましょうというレベルの議論が進んでいます。

どなたかと結婚しても皇族に残れるようにしましょう。そういう形で皇族が減らないようにしましょう。そこからについてはもうちょっと議論しましょうとなっています。

専門家は女性、女系皇族に拡大すること自体は反対しているものではないので、国民がどれだけ賛成できるかが非常に大きいと思います」

CBC Magazine「素朴な疑問~」より

これは3月末の記事なので、今の報道の方向性よりもやや控えめの論点のまとめ方をしている。

ただ、意図としては「女性天皇を認めよ」という誘導をしているように感じる。

どなたかと結婚しても皇族に残れるようにしましょう」「今の時点では皇位継承者の拡大をしましょうではなくて、まずは皇族を確保しましょうというレベルの議論が進んでいます」などと書いているが、ここがそもそもの間違いなのである。

少なくとも、自民党は「安定的な皇位継承」を掲げて議論をしている。

これは、参議院常務委員会での議論も同じ。野党もこのレイヤーで議論に乗ってきてはいるのだ。

つまりこの議論は、安定的な皇位継承が大前提でなければならない。そうすると、CBCのこのまとめにはやや違和感を禁じ得ない。安定的な皇位継承を目指すのであれば、皇位継承者は増やさねばならないからだ。

そうすると、もう全ての議論が変わってしまう。スタート時点を間違えれば、ゴールには辿り着くはずもないからだ。

先例・男系・直系

この議論を始める前に、キーワードを1つ書いておきたい。それが安定的な皇位継承を語るには「先例・男系・直系」が大原則ということである。

先例・男系・直系の順番というのが、どういう意味なのか?なのだが、これを説明するには日本国憲法の話をしたほうが良いかもしれない。

元々、大日本帝国憲法も、日本国憲法も、国体ありきで書かれている。国体があって、そして日本というの国家が形成されているということだ。では国体とはなにか?というと、天皇陛下を中心とする日本国の在り方である。

日本の歴史があって、そしてその後に憲法が作られたので、憲法も「先例」を踏襲したと言える。先例は即ち歴史であり、歴史こそが我が国を形作るものだという点には、異論のある人はいないだろう。

そして、日本国憲法1条はこの様な定めになっている。

第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

e-Gov「日本国憲法」より

「日本国民の総意に基づく」などと書かれているが、別に選挙で決めろという定めにはなっていない。

ただ、「日本国の象徴」の意味はそれほど軽くはない。仮に人気投票などを行ったとして、意見が割れてしまったら「総意に基づく」と言えるのか疑義が生じる。つまり、この「総意」とは歴史的正当性を示すものだという理解をする必要がある。

なお、1条を持ち出した理由は、多くの法律がここが法律の根幹に係る内容となるからである。憲法も同然そういう設計になる。外国の憲法も概ねそうなっていて、別途参考にされたい。

さておき、日本の憲法である。

第1条 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス

第2条 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス

第3条 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス

第4条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ

第5条 天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ

第6条 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス

国立国会図書館「大日本帝国憲法」より

こちらは大日本帝国憲法で、こちらは万世一系を明確に謳っているところが日本国憲法との違いになっている。

ただし、日本国憲法でも第2条で「皇室典範に定める」あり、皇室典範はこの様な定めとなっている。

第一章 皇位継承
第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第二条 皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。
一 皇長子
二 皇長孫
三 その他の皇長子の子孫
四 皇次子及びその子孫
五 その他の皇子孫
六 皇兄弟及びその子孫
七 皇伯叔父及びその子孫
② 前項各号の皇族がないときは、皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族に、これを伝える。
③ 前二項の場合においては、長系を先にし、同等内では、長を先にする。

e-Gov「皇室典範」より

先程書いたように、法律に定められている順番というのは、基本的には意味がある。原則的には必要なことは一条に書かれる。多くの法律は一条に法目的を定めているし、真っ先に定義しなければならないことを定める。

そういう意味で、皇室典範にとって、「男系継承」というのは最優先に定めるべき内容だったと、そのように理解する必要がある。

ともあれ、憲法と皇室典範とセットで万世一系を示していると言えるだろう。そうすると、「安定的な皇位継承」の議論の方向性は、自ずと分かろうというものだろう。即ち、「安定的な皇位継承」は憲法を守る上でも必須の議論ということになる。

歴史的経緯を踏まえても、日本国憲法は天皇の存在を否定して新しい国家をゼロから創設したものではなく、既存の国体を前提として再設計されたものである。そのことは憲法の条文を読んでも理解できるね。

女性天皇待望論はどういう意味か

だが、野党はメディアと連携して、かなり強硬に女性天皇を求め、何なら「愛子天皇を!」という大変不敬な主張をしている。

しかし、それが必ずしも女性天皇を認めるというところまではいっていなくて、少なくとも今の時点で悠仁様、現在候補者はいらっしゃいます。

CBC Magazine「素朴な疑問~」より

CBCのここ解説も間違っているね。現在、皇位継承権第一位は皇嗣殿下である。第二位が悠仁親王殿下だ。

ともあれ、この2名しかおらず、かつ皇嗣殿下は天皇陛下の弟であるため、年齢が近い。だから「安定性に欠ける」という議論になっている。

だからこそ、旧宮家復活というのが検討されているし、養子案というのが検討されていて、何れも皇室典範の改正が必要である。旧宮家の復活はその手続について規定がないし、養子は第9条で禁じられている。

しかし、何故かここで「女性天皇を」という声が挙がっていて、非常に不可解である。

「女性天皇賛成」は93%…“皇室典範改正案”緊急読者アンケートの結果が示す、国会への“強烈な違和感”「国民の声に耳を傾けて」「一部の政治家の都合だけ…」(文春オンライン) – Yahoo!ニュース
「週刊文春」が報じた皇室典範改正を巡る緊急アンケートの結果が、反響を呼んでいる。 衆参与野党による皇族数確保に関する全体会議では、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ、旧宮家の男系男子を養子として

これの意味することは、すなわち「安定的な皇位継承」とは逆行する話に繋がるからだ。

もう1つ、皇位継承権第一位は皇嗣殿下で第二位が悠仁親王殿下というのは、現行の皇室典範で定められたもの。ここを法改正して順番を変える必要があるのか?という点も疑問である。

原則、法的安定性に欠けるために、遡及法は禁じられている。

皇室典範第1条の改正をした時に、「男系の男子又は女子」とした場合は、愛子内親王殿下が皇嗣殿下になるのだが……、これは現行法では予定されていない事態となり、法律状態を覆すことに繋がり、極めて慎重な議論を要することになる。既に確定している皇嗣の地位を変更することについて、どの程度の正当化が必要かという議論である。

何が必要なのか

更に、女性天皇を容認する場合には、「何が必要なのか」を考えておく必要がある。

前述した通り、皇室典範は男系継承を前提とした設計になっている。したがって、女性天皇が誕生した場合にその配偶者の扱いをどうするかも、退位する時にどうすべきなのかなど、一切定めがない。

他にも、職務をどうするのかなどの取り決めがなく、運用実績もない。その他にも色々決めねばならないことがある。

  • 女性天皇の配偶者の地位
  • 女性天皇の子の扱い
  • 皇位継承順位

この辺りは、見切り発車で済ませていい話ではなく、「女性天皇の先例がある!」と騒いでも、解決しない問題である。様々な制度上の取り決め、祭祀の手続き・運用の変更など、かなりの時間を要する可能性が高い。

何故なら、女性天皇の先例は8名(10代)あるのだが、何れも配偶者の地位の問題や、子供の扱いなどの問題が生じず、皇位継承順位の問題も発生しなかった。そして、最も最近の事例が、後桜町天皇(第117代)という江戸時代の女性天皇である。

「愛子内親王殿下を天皇に」という場合には、どの様な変更が必要なのか洗い出す必要があり、皇室典範の改正から、運用の変更を個別具体的に議論する必要がある。何も決まっていないのに、「とにかくやってくれ」というのは、余りに不敬で無責任な話ではないだろうか。

少なくとも、時間をかけて様々な制度調整が必要である以上、直ちに「安定的な皇位継承」には繋がらながらないことは明らかである。

憲法の規定

そして日本国憲法は、象徴たる天皇の不在を予定していない。もちろん、皇室典範も同じである。よく挙げられる摂政に関する条文だが、読んでいただければ理解できると思うけれども、基本的には摂政の立ち位置は職務に故障がある場合の補佐である。

第十六条 天皇が成年に達しないときは、摂政を置く。
② 天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、摂政を置く。

~~略~~

第十九条 摂政となる順位にあたる者が、成年に達しないため、又は前条の故障があるために、他の皇族が、摂政となつたときは、先順位にあたつていた皇族が、成年に達し、又は故障がなくなつたときでも、皇太子又は皇太孫に対する場合を除いては、摂政の任を譲ることがない。

第二十条 第十六条第二項の故障がなくなつたときは、皇室会議の議により、摂政を廃する。

e-Gov「皇室典範」より

摂政を置くことができるが、摂政を廃止する規定はあっても、「摂政の任を譲ることがない」と規定される通り、摂政から摂政に職務を譲ることは禁止されている。つまり、天皇が欠けた時にどうするかという規定がないのである。

そうすると、「安定的な皇位継承」の議題を議論するうえで、より時間がかかる方法を優先することは合理的ではないということが言える。

スタート時点の議論から想定される着地点

脱線した議論として「女性天皇」や「女性宮家」の話をしているけれど、これは直ちに安定的な皇位継承に繋がらないことは説明した通りだ。

検証:皇族数確保策 毎日新聞世論調査 「旧宮家養子」支持広がらず | 毎日新聞
安定的な皇位継承に向けた皇族数確保策を巡り、衆参両院の「立法府の総意」がまとまった。皇族数を確保しつつ国民が親しみを持つ皇室を作ることができるか。国民の考えを世論調査から分析した。【野原大輔】
女性天皇に「反対」わずか6% 女系天皇についての賛否は拮抗(毎日新聞) – Yahoo!ニュース
毎日新聞が20、21の両日に実施した全国世論調査で、女性天皇への賛成が73%を占めた。内訳は「女性天皇に賛成で、父方が天皇の血筋につながらない女系天皇も賛成」が40%、「女性天皇は賛成だが、女系天

毎日新聞などは連日のように世論誘導キャンペーンをはっているが、本質を外した議論であると断定して差し支えない。アンケートをとる根拠は「主権の存する日本国民の総意に基く」なのだろう。だが、それは既に説明した通り誤解だ。

だいたい、総意に基づく根拠としてアンケートを取り、賛否が分かれているのだから世話はない。自分で矛盾していることに気が付かないのだろうか?

これは冒頭に説明したように課題の立て方が間違っているので、ゴールできないという典型である。

旧宮家復活の議論

では、メディアが避けている旧宮家復活の議論は本当に荒唐無稽な話なのだろうか?

「旧宮家から養子容認、皇位継承資格は持たず」 正副議長の皇族数確保案 – 日本経済新聞
衆参両院の正副議長が皇族数確保を巡り「立法府の総意」として提示する案の全容が5日、判明した。旧宮家の男系男子を養子として皇族に復帰させる案を容認した。養子は皇位継承資格を持たないといった条件をつけて政府に法整備を求める。与野党は2021年に…

一旦は野党も合意した議論だったが、旧宮家の復活後にその子が皇位継承資格を持たないという理解だったらしい。旧宮家復帰の議論をどう読めば「復帰後の子に皇位継承資格がない」という結論になるのか良く分からないのだが、この後に「騙された」と激怒する展開になる。

皇籍復帰の男系男子の子供に皇位継承権? 議事録公開
衆参両院は20日、政府が安定的な皇位継承策について検討した結果を各党の代表者らに報告した18日の全体会議の議事録を公表した。会議では、養子縁組で皇籍復帰した旧…

当然、旧宮家に復帰しても当事者は皇位継承権は設定されない。が、その子には皇位継承権がある。今やっているのはそういう議論なのだ。

彼らは何のための議論なのか、本当に理解していたのだろうか?

他にもGHQの話を持ち出すメディアもある。

旧宮家の男系男子の養子案 背景にGHQの圧力論、戦後改革の否定:朝日新聞
「立法府の総意」として示された皇族数の確保策のうち、旧11宮家の男系男子を養子として迎える案の議論では、「GHQ(連合国軍総司令部)の圧力」が繰り返し語られてきた。終戦後、日本を占領したGHQの圧力…

だが、これも感情的な議論で、現実にはGHQの手法が「安定的な皇位継承」という課題に対しては間違っていたのだから、それを改める、それだけの話である。「戦後改革の否定」とは、何とも感傷的な話ではないか。

同様に、「国民が賛成とか反対」とかアンケートをやっているけれど、このことにはあまり意味はない。

その理由は、そもそも皇籍離脱は現行憲法下で行われ、この地位を回復するという過去の誤った方針を正すだけの方法論で、復帰を望まない旧宮家を強引に復帰させる話などではないからだ。

まとめ

改めて書いておくが、スタート地点は「安定的な皇位継承」である。そして、スタートを間違えるとゴールには向かえないのだ。

旧宮家復帰案も決して簡単な話ではない。戦後80年近くが経過し、制度的にも国民感情の面でも様々な課題がある。だからこそ、復帰した当事者に直ちに皇位継承権を認めるのか、それとも次世代から認めるのかという細かな制度設計が議論されているのである。

ここに女性天皇や女系天皇、或いは女性宮家の議論を持ち込むことが果たして適切なのか?というのは、別にそれらを直ちに否定する積もりはないが、安定的な皇位継承のルールを定めた後でゆっくり議論すれば良いというのが僕の立場である。先例の存在しない女系天皇や女性宮家の話は論外だし、先例のある女性天皇に関しても、現代においては上に指摘したように様々な制度的課題がある。国体を揺るがす大議論になることを覚悟して、議論に臨むべきだろう。

旧宮家復帰案や養子案なら、それよりは議論は単純化できる。少なくともその先例はあるのだし、今までの設計も男系男子の承継を予定していたからだ。優先課題を解決できる手法があるのに、わざわざ難しい課題に手を付けて議論すべきではない。

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