大々的に取り上げられているGMOの要請だが、要請をするような話じゃねーんだよ。
能動的サイバー防御をGMO要請 適用は政府判断、重大・緊急性考慮
2026年10月24日 19:30
政府は10月1日に能動的サイバー防御法を施行し、警察や自衛隊が敵のサーバーにアクセスして攻撃を無害化できるようにした。
日本経済新聞より
そして、軽々に動ける話でもないんだな。
そもそも、「能動的サイバー防御」が行われた結果、どうなるのか?ということを、少しは考えたのだろうか?考えて物を言っているのであれば、なかなか無責任な話である。
民間の思惑と行政の思惑
能動的サイバー防御の体制は整っていない
先ずは、「能動的サイバー防御」の話を少し整理しておこう。
「能動的サイバー防御」始動、警察・自衛隊による「攻撃元の無害化」可能に…高市首相「脅威は常に変化」
2026/10/01 15:00
重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」関連法が1日、本格的に施行された。最新の攻撃手法などの機微情報を官民で共有するほか、警察・自衛隊が必要に応じて攻撃元サーバーに侵入し、相手を無害化する措置が可能になる。サイバー攻撃への対処能力の抜本的強化を目指す。
讀賣新聞より
実は、このブログでも過去に何度か触れた件であり、こちらの記事などが関連している。

今年の10月1日に施行した法律は、去年5月に可決・成立した法律に関係していて、柱とされている〈1〉官民連携の強化〈2〉通信情報の監視〈3〉侵入・無害化――のうち〈1〉と〈3〉の規定が施行された。
システム整備に時間を要している〈2〉が来年秋に施行される予定である、と讀賣新聞で説明されている。
つまり現時点では体制が整っていない。
なお、「通信情報の監視」と表現されているが、政府側は「通信情報の利用」と説明していることには留意頂きたい。

こちらも関連はしているのだが、枠組みという意味では「通信情報の利用」の部分は足りていない状態である。
結局のところ、この制度の核心部分は2つに整理される。
- 攻撃元の無害化: 警察や自衛隊などが、重大なサイバー攻撃の兆候や発信元を検知した場合、相手のサーバーに立ち入ってシステムを無力化(無害化)することが可能になる。
- 常時監視(未然防止): 重要インフラや政府機関を保護するため、国内の通信ネットワークを一定の範囲で常時監視し、不審な通信(マルウェアの動きなど)を早期に探知する。
ところが、この常時監視の方は憲法21条との関係があって、慎重に整理する必要がある。
武力行使にあたるか
もう2つほど重大な問題がある。
権利行使主体をどこに定めるのか?という話と、攻撃元の無害化は、武力の行使にあたるのではないか?という話だ。
権利行使は警察が行うのか、自衛隊が行うのか、或いは専門の組織を立ち上げるのか?ということになるのだが、現時点では自衛隊と警察の双方がそれぞれの役割に応じて担う方針が示されており、さらに司令塔となる専門の新組織を立ち上げる計画が進められているようだ。ただ、迅速な対応のためには、司令塔の機能を強化すべきだろう。
では、武力行使かどうか?という話ですが。
例えば、こちらのニュース。
中国政府系ハッカー「Storm―0940」AI悪用し侵入 3時間で接続権限を奪取
2026/10/23 08:49
米IT大手マイクロソフト(MS)は21日、中国政府と関係があるハッカー集団「Storm―0940」が人工知能(AI)を悪用し、大規模なサイバー攻撃を展開していたと公表した。標的とした世界の数百の組織に自動化された攻撃を実施。標的選定から高度な接続権限を奪うまで3時間も要しなかった事例が確認されたという。
~~略~~
MSは攻撃の大半が失敗したとしている。このハッカー集団が、ソフトウエア企業「コネクトワイズ」のクラウドバックアップ製品に関連した攻撃にも関与したとの分析を示した。同社に絡む攻撃では、パスワード窃取を試みる攻撃を1分間に約2900回も行ったとしている。
産経新聞より
この他、ロシア系や北朝鮮系のハッカー集団も多数確認されているが、政府の息のかかった組織も少なくはない。通常は、その組織の属する国家が対処を行うべきなのだが、実のところ政府側からの司令で動いている可能性が高いので、それは期待できない。
もちろん、共産圏の国家だけが問題ではなく、アメリカや西側諸国からの攻撃、或いはインドやアジア方面からの攻撃も少なからず確認されている。
そうすると、日本からそれらの国に対して能動的サイバー防御を試みた場合に、戦争を仕掛けたのと同義であると取られるリスクはあるのだ。
攻撃元への侵入・無害化措置は、放置すれば人命に関わる重大な危害が懸念される場合に、主に警察が実施する。攻撃元サーバーに侵入し、プログラムを停止・削除するなどして脅威を取り除く。「特に高度に組織的かつ計画的」な海外からの攻撃に対しては、自衛隊が警察と共同で対処する。
讀賣新聞より
攻撃元サーバーに侵入する行為や、侵入後にプログラムを停止・削除する行為などが「攻撃」にあたるおそれがある、というわけだ。
GMOは何を要請したか
さて、そういう点を踏まえて、GMOが一体何を要請したか?なのだが。
4.攻撃者からの悪質な脅迫行為に対する方針と防御措置について
当社は、本件の攻撃者とみられる者から金銭の要求を受けております。あわせて、要求に応じない場合には、当社およびお客様に関する情報を公開する等の行為に及ぶ旨の連絡を受けております。
① 国内外の70を超える証券会社・FX会社等に開設されたお客様の取引口座に対する不正操作(不正な注文による口座残高の毀損)の継続 ② 本サービスおよび本サービスに接続したお客様のPCに関する情報の不正公開と、ランサムウェア攻撃の実行 ③ 当社のシステムや運用体制等に関する情報の不正公開
本件脅迫行為につきましては、通信記録等の全証拠を警察当局(サイバー犯罪対策部門)へ提出し、刑事事件として厳正な捜査を要請しております。 なお、今後、攻撃者が当社やお客様に関する情報と称するものを公開する可能性があります。その中には事実と異なる内容が含まれるおそれがあります。当社からの正式なお知らせは本ページ等を通じて行いますので、不確かな情報にはご注意ください。
~~略~~
本件については、警察および所管官庁への初報を行っております。引き続き、関係機関への情報提供および捜査への協力を進めてまいります。 また、本件の重大性を踏まえ、被害の拡大防止および同種の攻撃の防止に向け、能動的サイバー防御に関する措置の実施を含め、政府の関係機関への要請を進めてまいります。
GMOのサイトより
そのまま引用したが、読んでも分かりにくい構造になっているね。
要は、不正アクセスを極めて悪質な攻撃と位置づけ、政府に能動的サイバー防御の「発動第1号」としての無害化を強く求めた、ということだね。
ナニカ勘違いしたGMOの行為だが、「j攻撃するぞ」と宣言されて身構えないところはないわけで、既に事後対応の難しさ、公表によって実効性が失われる懸念などが指摘されている。
ただ、GMO側の狙いもなんとなくわかる。企業として出来ることは最大限やってますよアピールをしているのだろう。
まとめ
まだまだ能動的サイバー防御の体制も整っていないし、理解も進んでいないのが現状である。
ところが、攻撃側は待ってはくれないのだから、結構厄介ではある。政府側が無害化措置というカードを持っていることが攻撃相手への牽制に繋がるので、カードをオープンにして実行したら相手に耐えられました、などと大々的にやったら、それこそ目も当てられない。
誰が攻撃をしているのか明らかでない状態であればともかく、政府側からのアタックが明らかになった支那のような状況では、「戦争を仕掛けている」と言われても言い逃れが出来ないという事情もある。
まだまだ、手探り状態の分野だというのが実情みたいだね。


コメント
GMOは問題をすり替えていないで被害補償とセキュリティ対策と
一度侵入されたシステムを使い続けないハード毎のシステム更新