先日、ミャンマー大統領のミンアウンフライン氏が北京に行った話を書いたが、本日はそれの続きである。
中国とミャンマー、ギャンブルと詐欺対策を強化
2026年6月17日
中国の習近平国家主席は火曜日(6月16日)、北京でミャンマーのミン・アウン・フライン大統領と会談し、オンラインギャンブル、通信詐欺、その他の越境犯罪への対策を引き続き強化するようミャンマーに呼びかけた。
SiGMAより
コメント頂いた中にも、犯罪組織の話に言及いただいていたのだが、ミャンマーの内政が不調であることの象徴みたいな話が、この越境犯罪対策の話だ。
犯罪拠点と特殊詐欺
ミャンマーはなぜ犯罪組織の温床になったのか
関連記事はこちら。


前回の記事でも触れているが、ミャンマーで発生したクーデター(2021年)は、西側諸国からの批判が大きかった。
個人的にはミャンマーの民主化に関しても、その後の軍事政権に関してもどちらもあまり評価はしていない。しかしそこは外的な評価と国内評価との温度差というものもあり、また後の歴史家が勝手に決める話である。今は、ミャンマーの内政や治安維持が上手くいっていない状況だ。
その象徴のような話が、ミャンマーの詐欺拠点の話だ。この詐欺拠点は越境組織なので、近隣の国家にまで影響力は拡大しているようだが。
警察庁、タイにリエゾンを派遣 特殊詐欺の摘発、初動対応を強化
2026/6/18 14:35(最終更新 6/18 14:35)
特殊詐欺の被害額が過去最悪ペースで増える中、警察庁は18日、タイの首都バンコクに東南アジア担当のリエゾン(情報連絡員)を配置したと発表した。詐欺拠点はカンボジアやミャンマー、マレーシアなどタイ隣国を中心に東南アジアに集中しているとされる。各国との信頼関係を構築することで、最新の情報収集や拠点摘発時の初動対応を強化する。
毎日新聞より
日本国内でも問題になっている特殊詐欺だが、東南アジアに拠点があることは割と有名である。
もちろん、各国手を焼いているのは事実だが、ミャンマーにはこの一大拠点が存在する。
犯罪組織の死刑相次ぎ執行 ミャンマー拠点に特殊詐欺―中国
2026年02月08日15時33分配信
中国政府が、ミャンマーを拠点に国境をまたぐ特殊詐欺などを行う犯罪組織関係者に対し、今年に入り計15人の死刑を相次いで執行した。越境犯罪に厳罰で臨み、特殊詐欺を抑え込む狙いがあるとみられる。
~~略~~
中国では、ミャンマー発の特殊詐欺による被害が増えており、当局はミャンマー側と協力し、取り締まりを強化している。中国の最高人民検察院(最高検)によると、2024年にインターネット上で相手をだます「オンライン詐欺」で前年比53.9%増の7万8000人が起訴された。
時事通信より
治安維持のために犯罪摘発も行われているようだが、越境組織なので国際問題に発展しているようだね。
詐欺拠点は国境地帯に集中
有名になった犯罪組織拠点は、いくつかある。


大掛かりな拠点が確認されたのは、これ以外にも複数あるようだが、見た目のインパクトだけでシュエコッコとKKパークの写真を選んでみた。驚くことに、この一体が犯罪拠点なのである。

これらの地域は名目上はミャンマー領だが、実態としては中央政府の統治が及びにくい地域。ミャンマー国内の内戦が激化した影響で、少数民族の武力勢力が地域を実行支配しているのだ。
こんな拠点が複数あるというのだから、呆れるべきなのか。

ミャンマーで軍事政権が国民に一定程度受け入れられた理由も、こうした少数民族の武力勢力の台頭がある。皮肉にも、軍事政権下でより一層勢力を増したとされているが。
支那人犯罪組織が流入
さて、冒頭で取り上げた北京での会談だが、当然こうした話をベースに考える必要があるが、もう1つ背景がある。それがこちら。
中国の犯罪組織の一族11人に死刑判決 ミャンマーで詐欺施設を運営
2025年9月30日
中国の裁判所は29日、ミャンマーで詐欺施設を運営していた悪名高い一族の11人対し、死刑判決を下した。中国国営メディアが報じた。
ミン一族をめぐっては、犯罪行為に関与したとして親族数十人が有罪判決を受けていた。その多くは長期刑を言い渡されている。
ミン一族は、中国国境に近いミャンマーの田舎町ラウカイを支配する四つの氏族の一つに仕え、ラウカイを賭博や麻薬、詐欺の拠点へと変貌させたとされる。
BBCより
実はミャンマー周辺に集まっている犯罪組織は、支那人に大きく関係している。支那経済に関係していると言っても良かろう。
このブログにコメントしていただける方の中には、複数これに関して詳しい方がいるので、ここで言及するのも少し憚られるのだが……、簡単に整理しておくと、東南アジアを拠点とする犯罪組織は昨日今日出来上がったものではない。ただ、近年はネットワーク化の傾向を強めており、越境犯罪の性格が強まっている。
しかも、これらの犯罪組織は単なる詐欺集団ではなく、
- 人身売買
- 強制労働
- マネーロンダリング
- 暗号資産を利用した資金洗浄
まで行っている。
近年では日本人が監禁されて詐欺に加担させられる事例まで報じられていることでも有名になったね。
支那とミャンマーが協力を確認した理由
冒頭の記事では、ギャンブルや詐欺に関して協力して取り締まりを行うことを確認している。
ミャンマー、国際詐欺拠点を爆破 「掃討」アピールに隠れた思惑とは
2025/11/8 19:45
国際的な特殊詐欺の拠点があるミャンマー東部ミャワディで10月中旬以降、国軍が掃討作戦を実施し、詐欺などに関与していたとみられる外国人約1600人が国境を越えてタイ側に逃れた。
毎日新聞より
ミャンマー国軍が動いて拠点掃討をしたニュースは去年の年末に伝えられたが、この記事も「アピールだ」と非難している。
この記事が何処まで信用できるかは不明だが、ミャンマー国軍の奮戦虚しく、今なおミャンマー内の犯罪組織は健在である。だからこその北京での会談なのだから。
ミャンマーが支那を頼った理由は、実は他にもある。前の記事で書いたように西側諸国を容易に頼れない事情もあるのだが、別の事情もある。
中国とミャンマー、特殊詐欺問題で「外国の干渉拒否」 米の介入念頭
2025年12月19日 15:52
中国とミャンマー軍事政権が両国にまたがる特殊詐欺問題への米国の介入に対抗している。高官会合で米国を念頭に「外国の干渉」を拒否する方針を確認し、軍政が新設した対策委員会でも連携する。地政学的要衝であるミャンマーで米国の影響が強まることを警戒している。
日本経済新聞より
アメリカなどに「首を突っ込んで欲しくない」のである。
理由は色々あるが、ミャンマーとしては現在の支配構造が崩れることを懸念している。ミャンマー国内はクーデターの際に国軍の一部が今の軍事政権の組織から離脱し、それ故にミャンマー国軍が随分と弱体化してしまった。逆に言えば、国内の勢力図はかなり不安定だという意味だ。
支那を頼ったというのは「そういう側面」もあるのだと推測できる。
支那経済の低迷も背景に
もっとも、近年になって支那系犯罪組織が東南アジアで存在感を増した背景には、支那国内の経済事情も無関係ではない。
不動産バブルの崩壊以降、支那では景気低迷が続いている。特に若年層の雇用環境は悪化しており、一時は青年失業率の公表そのものを中止したほどだ。
もちろん、失業者がそのまま犯罪組織に流れ込むわけではない。しかし、経済が停滞し、国内で十分な雇用機会が得られなくなると、海外へ流出する人材や資金が増えるのもまた事実である。
支那の国内事情として、大学院、或いは博士課程まで進んでなお、まともな就職口がないという悲惨な実態が伝えられている。
高度な教育を受けた人材が国内で活躍の場を失っていること自体、支那にとっては大きな損失である。そして、その一部がどのような形で海外へ流出しているのかは、あまり想像したくない話でもある
東南アジアには元々華人ネットワークを通じた地下経済圏が存在していて、そこへオンラインカジノや特殊詐欺、暗号資産を利用した資金洗浄といった新しいビジネスモデルが結び付き、現在の巨大な越境犯罪ネットワークへと発展したと考えられている。
つまり、習近平氏としてもミャンマーに対して「積極的な協力」をしたい事情があるのだ。
まとめ
ミャンマーの特殊詐欺拠点の問題は、単なる犯罪組織の暗躍ではない。国家が辺境を統治できなくなった結果として生じた「統治の空白」の問題である。
そもそもミャンマーは少数民族が多数住まう国家で、国内をまとめるのは非常に難しい地域である。アウンサンスーチー氏がトップにいた時代も、ロヒンギャ問題でかなり国際的な非難を受けた。移民を迫害し攻撃したという切り口で批判されたのだが、しかしミャンマー国内では「そういう理解」はされていなかった。アレは不法移民が武装して、国内にテロを持ち込む一因になったというのである。
真実はどこにあるかはわからないが、今なおその問題は燻っている。
そして、その空白を埋めているのが武装勢力や支那系犯罪組織である。北京での会談は、そういう背景に基づいて行われたもので、ミャンマーの混乱は当分終わりそうにない。


コメント
大事な事は木霊様が書いて下さってるので、簡略に。
要は御指摘の「政治行政の空白地帯」なんすよね。
その真空地帯がかつては「黄金の三角地帯」としてヘロインを出荷してた。
いまはフィッシング詐欺とあらゆる闇商売の闇鍋。
で、それは原因が二つあると想うす。
一つはシナのアウトローの逃場になってる。西部劇でアメリカのお尋ね者はメキシコに逃げるでないすか。
シナの逃亡犯は、それこそ麻薬密売人から民主化運動家まで、この西南ルートで逃げますね。
もう一つは少数民族問題すね。
アウンサン・スーチーすら少数民族には冷酷な態度だったのは有名で、ビルマ族は少数民族を、ウエスタンで駅馬車を襲うインディアン程度にしか思ってないんですね。
すると少数民族は外からくる反社と手を組み易いすよ。
かつてのゴールデン・トライアングル時代の、クン・サとかロー・シンハンは、実は国民党ゲリラと少数民族のハーフでした。彼らが麻薬取引からフェードアウトして出てきたのが、彼らの手先だったワ族の兵士たちで、これが中越戦争派遣から本国に帰還できなくなった紅衛兵とつるんだ。
軍部だろうが民主化運動家だろうが、
そもそもビルマ族の少数民族対策を変えないと、この手の話は永遠に続く。
軍部が悪いというより、ビルマ族が悪いんですよ。
ノーベル平和賞だかのスーチーは、
現実にミャンマー陸軍がロヒンギャや少数民族の村を焼き払った時に、
軍部を庇って、何もしてないロヒンギャの農民をテロリストだと言ってた。
まぁ、さんざん独立のために日本軍の世話になってて、平気で日本兵を捕らえたアウンサン将軍の娘すから。
「アーロン収容所」なんか読むと!
日本軍と別れ際に、ふつうのビルマ族の青年が日本兵にかける言葉とか、
仏教文化の深さを感じさせるエピソードとかありますけどね。
すくなくとも
「シナ人無法者のメキシコ」状態にしたのは、ビルマ族の少数民族に対する思い上がりだと想うすけどね。
訂正)
彼らの手先
→勘違い!
ワ族はクン・サらの麻薬軍隊と対立していたのてした。
ワ族らが優勢になってきて、クン・サは「逮捕や資産没収はしない」を条件に降るのすね。
彼は麻薬王から資産家へ第二の人生すが、兵士たちはそうはいかず、ワ族やその競合組織、あるいはシナ人犯罪組織に吸収されてったみたいですね。