おめでとう!と言うべきか、ご愁傷様と言うべきか。
カナダ、新型潜水艦の最大12隻建造で独TKMSを発注先に選定
2026年7月7日午前 8:09
カナダ政府は6日、海軍による最大12隻の潜水艦建造計画について、ドイツ企業TKMSを発注先に選んだと発表した。
ドイツの複合企業ティッセンクルップが過半数を所有するTKMSは、韓国のハンファオーシャンとの競争を制して受注を獲得した形だ。
ロイターより
カナダの次期潜水艦建造計画について、ドイツと韓国が受注を争っていたが、ドイツに軍配が上がったようだ。カナダは単純に性能比較をしたわけではなかったようだね。
コメントでもリクエストされていたことだし、サクッとどんなものかを紹介していきたい。
カナダの選択
競り負けた韓国勢
この話、随分と接戦であったと言われている。このブログでは、韓国の兵器を追いかけてきたので、当然、韓国側の視点から潜水艦受注についても触れている。

最新の記事はこれだね。
この記事は、韓国側が製品アピールのために虎の子の潜水艦、島山安昌浩級1番艦「島山安昌浩」をカナダまで持ち込んだというニュースで、単独航行したらしい。
片道約1万4,000kmを単独航行!なかなか素晴らしいのだけれど、それが潜水艦のアピールになったのかは不明だ。
同乗したカナダ海軍のブリトニー・ブルジョワ少佐は、性能を絶賛していたから、かなり感触が良かったのか?という印象はあったが、カナダの答えはドイツだった。
TKMSは共同開発プログラムの下でノルウェー海軍にも供給している「212CD型」潜水艦モデルを提案していた。
ロイター「カナダ、新型潜水艦の最大12隻建造で~」より
212CD型潜水艦を選択したとのこと。
決め手は何だったのか
さて、カタログスペックなどを軽く比較してみよう。
| 項目 | 選定:212CD型(独 TKMS) | 競合:KSS-III Batch-II(韓 ハンファ) | 現行:ビクトリア級(英製・中古) |
|---|---|---|---|
| 全長 | 約 73 〜 74 m | 約 89.4 m | 約 70.3 m |
| 全幅 | 約 10 m | 約 9.7 m | 約 7.6 m |
| 排水量(水上) | 約 2,500 トン | 約 3,600 トン | 約 2,200 トン(水中) |
| 動力(AIP形式) | 燃料電池(PEM式) | 燃料電池 + リチウムイオン電池 | ディーゼル・エレクトリック(AIPなし) |
| 水中航続期間 | シュノーケルなしで約3週間(212Aベース) | 約 20 日以上 | 数日(バッテリー依存) |
| 垂直発射管 (VLS) | なし(魚雷発射管のみ) | 10 セル搭載(弾道・巡航ミサイル用) | なし |
| 主なアドバンテージ | ステルス形状、北極圏適応、NATO相互運用 | 圧倒的な大火力(VLS)、長大な航続距離 | (退役予定・現役は実質1隻のみ稼働) |
軽く並べてみたが、特徴的な部分をピックアップして並べているので、過不足がある分はご容赦いただきたい。


スペックを並べた上で、ポイントは何だったか?について言及があったので紹介したい。
カーニー氏によると、TKMSはドイツとノルウェーからの発注分を再割り当てすること案を提示しており、これによって最初の4隻の納入を当初予定されていた2036年から34年に前倒しすることが可能になった。カナダはTKMSから数百億ドルの投資を受けることにもなるという。
同氏は「TKMSのプラットフォームは北極圏の海域に最適化されており、NATOとの完全な相互運用性を備えている。これによりシームレスな通信、情報の共有、共同任務の遂行が可能になる」と強調した。
ロイター「カナダ、新型潜水艦の最大12隻建造で~」より
簡単に言うと、「俺たちはNATOとの関係を重視したぜ!」ということなんだけど、実際はちょっと違うのだろう。
良くも悪くもドイツは212型潜水艦の改良版を色々な国に販売している。韓国に対しては214型潜水艦を供給し、島山安昌浩級潜水艦は、214型潜水艦をベースに拡大設計した仕様になっている。
なお、この島山安昌浩級潜水艦の基本設計をしたのは英バブコック社だと言われているので、実は韓国製というのはやや怪しい部分はある。正確には「韓国産」と言うべきではないだろうか?この辺りの事情はこちらの記事で。

というわけで、実は島山安昌浩級潜水艦の権利関係は結構複雑である可能性が高い。少なくとも韓国がフリーハンドで商売できる商品だとは言い難い。
そういう評価をすれば、自ずと「ドイツ製の方が実績あるし安心」という判断があっても不思議はなかろう。実際に、212CD型はドイツとノルウェーが共同開発した仕様である。
そして、ノルウェーが1枚噛んだことで、低温の海域での運用ノウハウが詰め込まれることとなり、カナダ海軍が運用するにも都合が良かったと思われる。
カナダが重んじたNATOとの関係性
なお、公式にはNATOとの関係性を重視したということになっているが、これも偽らざる本音ではあると思う。
TKMSは、ダイヤモンド型の形状で全長74メートル、非磁性鋼を採用した212CD型が、NATOの新たな標準となることを期待していると述べた。
ドイツのメルツ首相は「これはカナダ、ドイツ、ノルウェーを今後数十年にわたって結び付ける重要な戦略的イニシアチブだ」と評価した。
TKMSのオリバー・ブルクハルト最高経営責任者(CEO)は記者団に、今回の入札ではドイツとノルウェーの政府から強力な支援を受けたと語り、同社史上最大となるこの受注を通じて正式な契約が締結されれば、受注残高は50%超増加するだろうと付け加えた。
ロイター「カナダ、新型潜水艦の最大12隻建造で~」より
つまり、継続的にノルウェー海軍からの潜水艦運用レポートが還元されるようにして欲しいという期待があったのだろう。TKMSにしても、ノルウェー海軍とカナダ海軍からフィードバックされる技術の更新はメリットが大きい。
どのような調整がなされたかは不明ではあるが、全く「そうした措置」がなかったとは考えにくい。
要は、NATOとの関わりを強めたことで、カナダは軸足をアメリカ依存から緩和する狙いもあるのだよね。近年は米国との関係にも距離感の変化が見られるから、おそらくそうだろうという認識ではあるが。
コメントで紹介された記事には、正にそのような指摘がなされているので、確度は高そうだ。
一方、カナダ海軍は韓国軍とはそういう連携は難しいし、設計変更などは基本的に出来ないと考えるべきだろう。
そして、韓国製の島山安昌浩級潜水艦だが、特に手直しなしに導入するのであれば、広くて性能の良い潜水艦という位置づけで良いと思う。ただ、低温海域での運用は想定していないし、そのノウハウもない。
更に、カナダ海軍にとってVLSは特に必要としていないし、韓国から弾道ミサイルを購入するメリットもない。
ともあれ、カナダ海軍はそれを選びはしなかった。
まとめ
このブログでは日本がアジア中心に海軍連携を模索し、オーストラリアにもがみ型護衛艦を輸出し、フィリピンにあぶくま型護衛艦(中古)を輸出し、インドネシアにはあさぎり型護衛艦(中古)の輸出検討をしていることを紹介した。
カナダも、NATOとの連携を図ることで、似たような連携防衛を模索していると考えれば、今回のこの決定は実に分かりやすい。
個人的には韓国兵器にもエールは送っているが、「今回は残念だったね」というしかないな。



コメント
カナダくん、良い選択肢を教えてあげよう。迷ったら日本にしたまえ!
日本のディーゼル潜水艦は良いぞ!
今回のコンペでは、潜水艦のスペック以上に、政治判断の要素が大きかったようです。
もっとも、カナダはパトロール(警戒・監視・偵察)用途の潜水艦を求めていて、その意味では、
非力でもステルス要素を備えた212CD型は好ましいでしょう。KSS-Ⅲ型は、212CD型よりパワフルかもしれないが、カナダは巡航ミサイルまで求めていない。明らかに過剰スペックです。
『韓国型』潜水艦が過去に沈没事件・火災事故を起こしたことも評価に響いたハズです。
こんにちは。
212型ねぇ……沿海型潜水艦ですね。
以下、下品で失礼。
これ、「カレー味のウンコ」じゃなくて「ウンコ味のカレー」を選んだだけ、って思ってます。
212型は、レオパルド2と同じ、基本設計が古いのを無理くり延命しているだけのもの、という認識ですので。