BYDの批判をしても仕方がないかなーとは思ったんだけど、軽EVは微妙だと思うよ。
そして、BYDが巨額の負債を抱えているというのも事実ではあるんだ。
13兆円を超える多額の債務。世界販売好調でもBYDの「倒産寸前説」は本当なのか?
2026.05.15 08:30
BYDが日本進出を果たしてから3年あまりが経過しました。
ここまでの販売台数は、2023年が1446台、2024年が2228台、2025年が3742台と順調に推移しており、その成長率は輸入車ブランドのなかでも随一です。
また、直近3年のグローバル販売台数も302万台、427万台、460万台と大きく伸長しており、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いです。
car view!より
雑ぅ。
Car Viewの記事はBYDの擁護をする展開になっているんだけど、議論がかなり雑である。負債額はたくさんあるけど、それは売掛金だから問題ないという分析になっている。でも、擁護になってないよ。
「倒産」の噂
利益率の減少
一昨日触れたのは、軽EVが日本の市場に受け入れられるのか?という疑問をぶつける記事だった。

ここでもBYDの戦略は、ちょっと危うくって、日本のユーザーに刺さらない可能性が高いという話を書いたのだけれど、BYDの経営状況には殆ど触れていない。
一方、冒頭の記事の趣旨は、巨額の負債は本当だけど、それ以上に売れているから問題ないよというものだ。
であれば、利益率の情報は大切である。
中国BYDの25年決算、4年ぶり減益 国内で競争激化
2026年3月28日午後 12:03
中国の電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)が27日発表した2025年12月期決算は、純利益が前年比19%減の326億元(約7500億円)だった。減益は4年ぶり。減益幅はLSEGがまとめたアナリストの予想平均12.1%減よりも大きかった。
ロイターより
売り上げが伸びたニュースは出ていたんだけど、純利益は減っている。
| 指標 | 実績値(2025年12月期) | 前年比(成長率など) |
|---|---|---|
| 売上高 | 約8,040億元(約18.6兆円) | 3.5% 増(過去6年で最低の伸び) |
| 純利益 | 約326億元(約7,500億円) | 19% 減(4期ぶりの最終減益) |
| 売上高粗利益率 | 17.74% | 前年の19.44%から 1.7pt 低下 |
| 自動車事業粗利益率 | 20.5% | 前年から 1.8pt 低下 |
前年比で19%減というのは、結構衝撃的な数字。
このように純利益が減っている理由は、単純に支那国内での販売が不振だからということ。販売台数は伸びているけれども粗利率は減っている。これは、ロイターの記事にもあるように、国内競争が厳しくなって、思うように販売できていないのが実情なのである。
| 指標 | 2025年通期実績 | 全体に占める比率 |
|---|---|---|
| 世界総販売台数 | 4,602,436台 | 100% |
| 中国国内販売台数 | 約3,556,000台 | 約77%(約8割) |
| 海外販売(輸出)台数 | 1,046,083台 | 約23%(約2割) |
圧倒的に国内販売率が高く、そこで利益が出せない。
収益性が悪化しているのは、支那経済が悪化していること(デフレが進んでいること)も影響してはいるが、そもそも支那国内で安値競争が勃発していて、BYDは価格の面でも機能の面でも新興メーカーに押し込まれつつある。機能強化は後出しの方が有利だからね。
その結果、世界販売台数が増えても利益率が減るという状況を生み出している。
BYDの強みは
とはいえ、商売的にはブレードバッテリーなど独自のコンテンツを持っていて、それを安く製造できる工場も自前で持っている。
この垂直統合型の経営スタイルこそがBYDの強みではあるのだ。
BYD、4ナノの車載用半導体-自動運転向けで中国初、EV競争に攻勢
2026.05.29 10:47
中国の電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)は、4ナノメートルの車載用半導体を含む最新技術を発表した。同半導体は自動運転向けで中国初だとしている。
新型半導体の投入により、中国の華為技術(ファーウェイ)との競争は一段と激しくなりそうだ。ファーウェイは現在、7ナノメートル世代の半導体を製造しており、2031年までに1.4ナノメートル半導体を投入する方針を表明している。小鵬汽車や小米(シャオミ)など競合がひしめく中国EV市場で、BYDは新型半導体を武器に運転支援技術を強みにする考えだ。
Bloombergより
で、ついに4ナノメートルの車載用半導体の製造も手掛けるなんて話が出てきているんだけど、恐らくはこれはEV以外の別の展開も視野に入れているのだろう。
それが商業的に成功できれば、別の展開もあるかもしれないね。
BYDの強みは、こういったアイテムを持っていてEV関連の各社にもアイテムを売ることが出来る点ではあるんだけど、これが出来るのが補助金によるバックアップと、豊富なキャッシュフローによるものだった。支那政府が半導体分野の強化を打ち出し、補助金投入を進めてきたことも、その後押しになっていた。
うん、「だった」んだよね。
| キャッシュフロー(CF)指標 | 2024年実績 | 2025年実績 | 変動率など |
|---|---|---|---|
| 営業活動によるCF(本業で稼いだ現金) | 1,334億元 | 591億元 | 55.7% の大幅減少 |
| フリーキャッシュフロー(自由に使える現金) | -510億元 | -973億元 | 赤字(流出)がほぼ倍増 |
| 在庫回転日数(在庫が売れるまでの期間) | 61日 | 72日 | 11日間も長期化 |
この数字が意味する現実は、まさに「目詰まり」そのもので、ここのところかなり苦戦しているようだ。
「結論から言えば、BYDに巨額の『負債』があることは事実です。実際、2025年度末時点では、BYDの『負債』は約13.4兆円におよびます。
しかし、それが『経営不振』を意味するかというと、そうではありません。
ここでいう『負債』とは、あくまで『バランスシート(貸借対照表)』におけるものであり、一般的な意味合いとはやや異なります。
car view!「13兆円を超える多額の債務~」より
冒頭の記事では、多額の負債は「売掛金」だと説明している。自動車業界ではある話で、ローンで購入する人が結構な数いるので、売掛金が多額の負債として計上されることは不思議ではない。
が、キャッシュフローの状況を見ると、売掛金だけではとても説明できない状態になっているのは見ての通り。
新技術の貪欲な取り込みが、設備費として計上されていくことになるので、結果的にそれで利益が出ない構造だと、それこそ倒産危機に繋がりかねない。
ゼロ距離中古車の幻
そして、このキャッシュフローについて疑わしいはなしとして浮上してくるのが、ゼロ距離中古車の話。


過去にも、ゼロ距離中古車の販売話について触れているが、国内でディーラーに売りつけた新車を、ゼロ距離中古車にジョブチェンジさせて安く販売するという商売をしていた支那メーカー(BYDだけではなく、各社やっている可能性がある)は、それでも捌けなくなって、海外に輸出するようになったというのが、この話。
何故、新車を中古車にするのかといえば、補助金の獲得のためであるという説明をさせてもらった。
帳簿上で売り上げが立つので、それに対する補助金が出て、それを販売補助に使っているという歪なな構造である。
BYDは、銀行借入ではなく、部品メーカーへの支払いを長期間繰り延べる形で手元現金を維持してきたとされる。 こうした構造が何故成立していたのか。ここで気になってくるのが、中国EV市場で指摘されてきた補助金依存的販売構造である。
ゼロ距離中古車問題とも合わせて考えると、帳簿上の売上形成と補助金流入によって、従来の資金循環が成立していた可能性は否定できない。
もしこの見立てが概ね正しいなら、補助金環境の変化によってキャッシュフローが急速に悪化したことが、きれいに符合してしまう。
これは、確実な話とは言えないが、時期や販売状況を合わせて考えると概ね妥当だと思われる推論である。
そして、コレが本当だとすると、かなり危ない状況であるということになる。
まとめ
というわけで、BYDの経営状態の話を少し説明させてもらったが、この状況で軽EVにぶっこんでくる辺りが「凄い」というべきか「なりふり構わない」というべきか。
前回も触れた通り、日本市場における軽EVは、そもそも収益化の難しい分野である。
これがBYDの起死回生の一手になれば良いのだけれど、目新しさはあれど、利益につながるかはかなり微妙。認知度を高めるための戦略とも言えるかもしれないが……。そんなにいい話ではないと思うよ。



コメント
こんにちは。
>その成長率は輸入車ブランドのなかでも随一
……そりゃまあ、既に成長段階を越えて、がっちり定着している独仏メーカーに比べれば。
「割合を言われたら数字を見ろ」でしたっけ?
ゼロ始まりの数字、なにやっても「急成長」にしかならないのに……
BYD自体は色々頑張ってるとは思うのですが、そもそも支那における「車」という存在の意味自体が我が国とは少しズレてる印象があります。
※個人の居室がそのまま移動する、快適空間のイメージ。日本は移動手段がだんだん高級化したイメージですが、あっちは快適な空間が先にある感じ、エンタメとかに振るあたりが特に。
その上で、本国支那において、BYDのみならずEV産業が、言えば産業全体が縮小傾向ですから、起死回生で日本市場を狙わざるを得ないのでしょうけれど……
日本、多分、世界一難しい市場ですよね、自動車業界としては。
こんばんは。
支那の一番の成長株ですから、沈没してもらっては困るんでしょう。
でも、実態はかなりヤバい感じだと、数字を見るとその様に見えますね。
なるほど独自の売りコンテンツあり、
それを反映させる垂直統合型の経営てである事が強みの一つと。
ん〜。
それ仮にコケると、全部がバーンアウトして、メンテも何もできなくなるような気が……。
BYDは完全にEV周りの技術開発しかやっていないので、EVがコケると大変なことに。
強味と弱味は表裏一体ですね。