前回のスターマー氏のネタは、あまりウケなかったようなのだけれど、本日も少しだけ整理しのこした部分があるので。
マジメすぎた実務重視の首相が、実績を積み上げながらも首相を辞任することになった理由とは
2026年06月30日(火)16時30分
まばゆいほどに晴れた2024年7月5日の朝、英労働党のキア・スターマー党首は前日の総選挙での圧勝を受けて、首相官邸の扉をくぐった。それから2年もたたない今年6月22日、同じく晴れた朝に彼は官邸前で首相辞任を表明した。なぜこうなったのか。
Newsweekより
ああ、なるほど菅義偉政権と同じか、というのが、今回のスターマー政権の退陣に感じた印象である。
実績は残したが
ビジョンなき政治家
先ずは、前回の記事を。

前回の記事では、イギリスの病理を語り、それが解決出来なかった故の退陣であるという説明をしている。
この説明、大筋では間違っていないと思うが、細部にはやや粗さがあったかもしれない。
悲哀をにじませながらも堂々とした辞任演説が驚きを誘ったのは、スターマー自身が語ったように、彼の率いる労働党政権が着実に実績を積み上げていたからだ。
最低賃金は引き上げられ、労働者の権利は拡大した。国民保健サービス(NHS)の待機日数は短くなり、50万人の子供が貧困から脱け出しつつある。困難な時期ながら経済は成長を遂げ、論争の的だった移民の数も減った。
支持者にとってスターマーは、派手さはないが実直で、国益を重んじる真摯な政治家だった。だが選挙区を回る労働党議員は、スターマーに対する一部有権者の反感が理屈を超えた強さを帯びていることに気付いた。変革を唱えた就任時の公約を実現していないという不満も噴出し、支持率は急落した。
Newsweek「マジメすぎた実務重視の首相が~」より
菅義偉政権を思い出す構図だ。実務能力は高いが、政治的な“物語”を欠いた政権は、評価が追いつかない。
菅氏の場合は、安倍政権の路線を継承することで一定の方向性は確保されていたが、それでも本人発のビジョンは見えにくかった。問題のある法案を通してしまったりもしたしね。その結果、実務評価と政治的支持が乖離していった。
スターマー政権も同様の構図に見える。
スターマー政権は国の未来について説得力あるビジョンを打ち出せず、迷走しているように映った。サッチャーやトニー・ブレアのように、政治哲学を国民に印象付けることもできなかった。スターマー自身も「スターマー主義などというものはない。今後もあり得ない」と語っていた。
真面目な政治手法を取っていたが、その姿勢は実務派のテクノクラートを思わせた。理念や信念を語ることには、ほとんど関心を示さなかった。
Newsweek「マジメすぎた実務重視の首相が~」より
どうやら、スターマー氏も似たタイプだったらしい。
防衛費増額という置き土産
なお、不安視されている日本と共同開発中のGCAPに関わる話で、イギリスの防衛費の話がある。
日伊との戦闘機開発に1.8兆円 GDP比3%届かず―英防衛計画
2026年06月30日22時25分
スターマー英首相は30日、長期的な国防支出額を示す防衛投資計画を発表した。日英伊が共同で進める次期戦闘機開発に86億ポンド(約1兆8500億円)を充てる方針が盛り込まれた一方、国防支出の国内総生産(GDP)比率は2.3%から2029年までに2.7%と小幅上昇にとどまる見通しで、3%超の欧州主要国と比べ見劣りする形となった。
時事通信より
財源の乏しいイギリスにとって、この防衛費の増額はけっして悪いものではない。ただ、欧州主要国が軒並み3%超の防衛費規模を定めているのに対して、見劣りするのは事実。
そして、全体計画の為にはちょっと足りないのも事実。
計画によると、全体の国防予算として今後4年間で150億ポンド(約3兆2200億円)を追加支出。道路やエネルギー施設整備などの公共事業予算を国防に回し、総額では約3000億ポンド(約64兆4000億円)に膨らむ。無人兵器の開発加速に50億ポンド(約1兆700億円)を充てることも含まれた。
時事通信「日伊との戦闘機開発に1.8兆円~」より
これで最低限のラインは守れる公算となってきたが、それでも不安な部分は否めない。次の政権がこのライン通りでやってくれるとも限らないしね。
ギリギリ望みは繋げたという印象だろうか。
多分、一事が万事この調子なのだ。
結局は生活実感
そして、前回の雑な話に戻るのだが、結局のところ政治家としての評価はイギリス経済が好調か不調かということに尽きる。
最終的に有権者の判断基準は単純である。
経済が良いか悪いか、生活が楽になったかどうか。
だが有権者にとって最大の関心事は、生活費だった。政府は最低賃金の引き上げや労働者の権利拡充を通じて、働く貧困層の支援に取り組んできたが、多くの有権者は変化を実感できずにいた。
Newsweek「マジメすぎた実務重視の首相が~」より
手元のお金があって、余裕が出来て初めて前が向けるのは、何処の国の住民でも同じなのだ。
そして、この「前が向ける」というのはお金の他にもう1つ要素があると思っている。それが、政治家の語るビジョンだ。ビジョンがあって共感が持てれば、手元の資金が乏しくとも頑張れるといった具合である。
スターマー氏には、それを用意出来なかったということなんだよね。
多くの国民は、雇用や医療分野でのスターマー政権の取り組みを知らないようだ。犯罪や移民は実際には減っているのに、増えていると思っている人もいる。このポピュリズムの時代に、スターマーの実務重視のアプローチは苦戦する運命にあった。
Newsweek「マジメすぎた実務重視の首相が~」より
実績は残したが実感を残してはくれなかったんだよ。
そして、先代のリシ・スナク氏に続いてキア・スターマー氏もまた、実務家タイプで人の記憶に残らないタイプの敗戦処理係として登板し、降板する形になった。
まとめ
色々書いたが、何処の国もビジョンのあるトップを求めていることには違いない。着実な政策の実現ももちろん重要で、スターマー氏にはそれもやや怪しい面があった。社会保障費に関して増税しようとして失敗したり、改革を訴えても実現できなかったりした。
ただ、スターマー氏にとっては、現実的な妥協案に着地した積もりだったはずだ。
それ故に、無念を残しての退陣となってしまった。彼の功績は後世の歴史家に任せるとして、次の首相はどんな人物なのだろう?イギリスには是非とも復活して欲しいものだが。



コメント
菅さんは良くやったと想うすよ。
もともと官房長官の時に総理になる気も、なりたくも無いと言ってた。
彼の党内地盤を考えると本音でしょう。
だがコロナ禍が起きた。
あの時、あれは戦争なみの事件だった。
戦後、初めてじゃなかろうか、国民が生活を圧迫され、身に迫る恐怖と暮らしをともにしたのは。
その中で、敢然とワクチンを入手し、反対する勢力を「うるせえ!」と押さえつけ、
政治生命をかけて接種を断行した。
飲食店や自営業者への支援金、貸し付け。
各界から強固な反対があったろうけど、
彼は断行しました。
やりたくもない総理で、てもリーダーとしての責任を背負って。
彼は「つなぎの指揮官」であり、ワンシーズンのリリーフ・ピッチャーだった。
そう考えれば、「一夏」を立派に完投したと思ってます。
歴代首相は、民主党政権時代と石破氏以外はそれなりに評価をしています。
石破?なにした人でしたっけ?
中でも菅義偉氏は評価しています。ちょっと理解しがたい政策もありましたが、まあ、仕方がないところもあるので、全体としては良かったのだと。
敗戦処理的な立ち回りで完璧に仕事をこなしたという意味でも、稀有な存在だったと思いますよ。
スターマー氏は、英国の逼迫した財政と労働党の両方から足を引っ張られたようにみえます。
他方、今月下旬にも次期首相が確実視されているバーナム氏ですが、彼は過激な「地方分権」者と聞いています。前職の市長時代に辣腕を振るい、政府の手を借りず、直接外資を誘致して、数々の行政課題を解決したのだとか。彼の党内人気は大変高いようですけど、労働党は先の統一地方選で大惨敗してます。
次の政権が、迷走して短命で終わるのか、英国を救う改革政権になるのか、に注目しています。