スターマー辞めるってよ。
スターマー英首相が辞任、次期党首にバーナム氏有力 早ければ7月選出
2026年6月22日午後 5:46
スターマー英首相は22日、辞任すると表明した。労働党の新党首には、先週の下院補選で勝利したアンディ・バーナム氏(56)が有力視されており、早ければ来月にも、過去10年間で7人目の首相に選出される可能性がある。
ロイターより
これに関して言及すべきことはあまりないのだが、日本としてはGCAPはどうなるの?やきもきする展開になっているとはいえる。
結局は経済問題
なぜ彼は失敗したのか
イギリス首相のスターマー氏が、何をやって、何をやらなかったのか?という点はちょっと気になるところだが、それに言及する前に、イギリス国民は何を重視して、スターマー氏を選んだか?という点について触れておこう。
スターマー氏は、英政治の混乱に終止符を打つと公約して圧勝した24年7月の総選挙からわずか2年足らずで退陣となった。
ロイター「スターマー英首相が辞任~」より
記事では、「イギリス政治の混乱」などと書かれているが、これが何を指しているか、だね。
1つは、トラス・ショックの後遺症の払拭である。
前首相のリズ・トラス氏は、2022年9月に、規模な減税策を柱とする「ミニ・バジェット」と呼ばれる一連の財政政策を発表した。ところが、これが「財源なき減税」だと批判されて失職。
所得税の基本税率を引き下げる時期を前倒しし、高額所得者に適用される45%の最高税率を撤廃(のちに撤回)し、さらに法人税率の引き上げを凍結するなど、大胆な減税が含まれていたが、この財源は大量の国債発行によって賄うというものだった。
日本でも、「財源なき大規模減税」を主張する無責任な政党がいるけれど、流石にこれには無理があるとして、発表直後から英ポンド急落と英国債の利回り急騰という激しい動きが起きた。この結果、ポンド相場は対ドルで一時1ポンド=1.09ドル台まで下落。株式も債券も下落するという大惨事になった。
こうした「イギリス経済に対する不信感」を、払拭することをスターマー氏は義務づけられた形で登板したのである。
もう1つは、イギリス経済の復活である。
これは1番目と関連はするのだけれど、長らく景気低迷に対して不満を募らせているイギリス国民にとって、景気の浮揚こそがスターマー氏に対して求める最大の政策であった。
ところが、スターマー氏はこれに最悪の形で応えることになる。つまり、政権発足直後の2024年10月、財政再建を理由に400億ポンド(約8兆円)の大増税の発表である。
これで、彼が経済について何も分かっていないことを露呈してしまった。
首相が替わったら解決するか?
とはいえ、イギリスが抱える課題はそれほど簡単に解決するものではない。一番影響が大きかったのはブレグジットの対価である。
2016年6月23日に行われた国民投票の結果、イギリスの投票者の51.9%が離脱を選択。無事にEUからの離脱が行われた(2020年1月31日)のだが、これによって経済に深刻なダメージを負うことになる。
そもそも、このブレグジットの選択理由は、EUが抱える移民問題から逃げること、通貨統一から逃げることなど、様々なメリットもあったのだ。尤も、移民問題の方は解決出来ていないし、通貨統一はブレグジット以前も何とか避けてはいたんだけれど。
英国は、多額の債務と利払い、長年の低成長、歳出削減の難航、防衛費増額の必要性を背景に、主要7カ国(G7)の中で既に最も借入コストが高くなっている。
多額の債務問題は、イギリスにとっては極めて大きな問題だが、日本と比較すれば債務の額自体は大きくない。
| 比較項目 | イギリス (UK) | 日本 (Japan) | 比較のポイント |
|---|---|---|---|
| 債務総額(名目) | 約3.1兆ポンド (約620兆円※1) | 約1,342兆円 (約8.6兆米ドル) | 日本の債務総額は、イギリスの2倍以上に達する。 |
| 対GDP比(総債務) | 約102.3 % | 約206.5 % | 日本は経済規模の2倍以上の借金を抱え、G7で突出して高い水準。 |
| 対GDP比(純債務※2) | 約93.8 % | 約150 %前後 | 政府保有の金融資産を差し引いた「純債務」でも、日本の方が高水準。 |
※1:1ポンド=200円として換算。
※2:純債務は、総債務から政府が持つ現金や公的年金積立金などの金融資産を差し引いたネットの債務。
それでもイギリス経済が苦境に喘ぎ、債務問題に苦しんでいる理由は、経済基盤となる産業が行き詰まっているからに他ならない。
そして、もう1つ困っているのがインフレ率の高騰である。

流石に、現在はやや低くなっているものの、3%を超えるインフレ率になると、国民生活的には結構厳しくなる。これで賃金が上がっていれば未だマシなのだが、このインフレの原因は、主に燃料費などの影響なので不満は高まる一方である。
定番の経済的失敗
要は、スターマー氏はイギリス経済を立て直せなかったから、退陣せざるを得なくなったということだ。
ある意味、定番の退陣理由である。
この他、人事スキャンダルとか色々あるようなのだけれど、正直、些事と言って良い。
【解説】 スターマー氏はなぜ辞任したのか、新指導者はどうやって決まるのか
2026年6月23日
イギリスのキア・スターマー首相が、与党・労働党の党首を辞任する意向を表明した。後任の党首が決まり次第、首相も代わる見通しだ。スターマー氏はなぜ辞めるのか。このあと、どのように新指導者が決まるのか。
BBCより
BBCは、「選挙で負けたから」という理由を挙げているが、それは間接的な理由であって、結局は経済問題に起因しているといって差し支えないだろう。
ただ、彼個人の資質というよりは、労働党の党首であったということのほうが、影響としては大きいかもしれない。
労働党が得意とするのは、既に存在する富をどう分配するかという議論であって、失われた産業をどう再建し、新たな富をどう生み出すかという議論ではない。
しかし、今のイギリスに必要なのは、まさに後者なのである。
イギリス経済は何を失ったのか
さて、ここから先は憶測交じりとなるのだが、軽くイギリス経済の回復の道筋に関して触れておく。
正直、経済の素人でもあるし、イギリスの首相が実現できないのに、どんな意見が出来るのか?という話ではあるが、第三者だから好き勝手言えるというポジションからの視点だとご理解願いたい。
現状、イギリス産業界の抱える問題は以下の点に集約されると思う。
- 製造業の衰退
- 金融業への過度な依存
- 高いエネルギーコスト
- ブレグジット後の貿易障壁
- 生産性の低迷
このうち、1番と4番、5番は相互に関係している問題で、要は目玉になる製造業を失ったということだ。
イギリスは1980年代以降、製造業を縮小し、金融とサービス業を中心とした経済へと転換した。ブルーカラー的な職業が忌避されて、ホワイトカラー的な仕事が歓迎されたからだ。
この辺りは先進国であればどこも経験している悩みで、日本も例外なく苦しんでいるが、イギリスは日本よりもさらに先を行っているのだ。
安いアジア製の製品を買えば良い。我々は金融工学を駆使して金を稼ぎ、その金で製品を買えば良いのだという、ある種傲慢な発想である。
その結果、ロンドンの金融街(シティ)は世界有数の金融センターとして成功したものの、その反面、地方の工業地帯は衰退し、国全体としては「物を作って輸出する力」が弱くなっていった。
経済構造の弱体化
これが何を意味するかというと、日常品など消耗品の多くを輸入に頼るが故に、結果的に「弱みに付け込まれる」構造になったのだ。
そもそもEUとは、巨大な経済圏を作って、関税を無くしてモノの移動を活発化させる経済の活性化を図る構想だった。だが、これに関わるヒトの移動に関しても規制をしなくなった。
EUは、「ヒト・モノ・サービス・資本の自由移動」という『四つの自由』を経済統合の原則として掲げていた。
なお、厳密にはイギリスは人の自由移動に忌避感を感じたこともあって、この原則には賛同していない。
ところが、皮肉にもこれが経済の足を引っ張ることになる。
つまり、安いところで物を作れば良いという発想は、付加価値を生みにくいものを作らないという思考に繋がる。そして、製造業を失った結果、日用品から産業部材まで輸入に依存する構造となり、そこを支那に付け込まれるのである。
支那は、人権を軽視して圧倒的な安さで製品を供給し、手広く販売することで利益を得るとともに、影響力を強めるという政策を実施した。当然、価格競争力のないところから脱落して、ついにはEU全域に影響力を及ぼすに至る。
シェンゲン協定に加わっていなかったイギリスにも、関税の関係で安い商品が流入することになるので、無関係ではいられなかった。
一方、ヒトの移動の自由化が移民問題をより複雑化したのだが、こちらも海峡を無断で超えてくる移民たちの対処に苦慮することとなり、苦しめられる。
エネルギーコストという問題
もう1つ、EU全般的な失敗となりつつあるが、ロシアからの安い天然ガスの輸入を実現するために、長大なガスパイプラインの受け入れを決定したことである。
この結果、EUのエネルギーコストは劇的に下がったのだが、一方で、ロシアに完全にエネルギー利権を握られてしまった。そうこうするうちにウクライナ戦争勃発によって、結果的にロシアからの天然ガスも原油も供給が途絶することになる。
ロシア産天然ガスへの依存と、再エネへの過度な期待によって、ヨーロッパのエネルギー政策は大きく揺らいだ。その結果、高いエネルギーコストが製造業の競争力を奪い、イギリス経済にも深刻な影響を与えている。
こういった、エネルギー政策の失敗が経済政策に大きく足を引っ張っているのだ。
復活の狼煙
結局のところ、イギリスの製造業の復活を果たすというのが、次の首相に課された責務であり、そのためには、エネルギー問題の解決は不可欠である。
もちろんそんなことは10年も前から分かりきっていた話で、それゆえに、ヒンリーポイント発電所に巨大な原発を建てようとしていた。
中国と英国、原発建設プロジェクトで「歴史的」合意
2015年10月22日 11:40
英国を訪問中の中国の習近平国家主席は21日、英国で数十年ぶりとなる原子力発電所の建設プロジェクトへの出資額の3分の1を中国企業が担うことで、デービッド・キャメロン英首相と合意した。
AFPより
そのために手を握ったのは支那だったというのが、問題なんだよねぇ。流石に早々にその事に気がついて、2020年以降には西側諸国の手を借りて、原子力発電所を建てる方針に転換した。
が、随分とスケジュールが後ろ倒しになってしまっている。
今は、日本と手を組んでSMRの開発を急いでいるが、それの成否によってはイギリスの今後の命運も変わってくるかもしれない。
何しろ、結局必要なのは、製造業を支え得る安定的な電力供給ということなのだから。
まとめ
イギリス首相のスターマー氏は辞任するに至ったが、結局求められているのはイギリス経済の復活である。
日本としてもGCAPの共同開発相手としても、準同盟相手としても、強いイギリスの復活が望ましいのは間違いない。
願わくば、次の首相がイギリスの問題を解決出来れば良いのだけれど、イギリス経済を立て直すには、増税や財政再建ではなく、成長産業への投資と製造業の再建が不可欠である。そのことを、新たな政権がどこまで理解しているのかが問われることになるだろう。



コメント
資本主義が発達してくるとサービス業が拡大し、金融で儲けるようなる。
しかし実態経済はモノが無いと動かないので、安く作る国、安い燃料を供給する国に依存する。結果としてシナとロシアに……
いや〜実に判り易い説明でした。
んで、処方箋なのですが、無理じゃないかなぁ。
筑摩学芸文庫に、
「ハマータウンの野郎ども」って本ある。
かつての英国労働者階級の、職人などの
職場教育と、ワーカーが持っていた誇りについて調査研究した本なのすが。
そこで描かれたワーカーの誇りがズタズタにされて、パンク・ロックが出てくる。
「白い暴動」のクラッシュとかパンクロッカーはワークブーツ履いてましたよね?
サッチャーが完全に新自由主義とシティに振り切って、彼らは労働現場に戻るのでなく、フーリガンやネオナチになった🤣
いまの規模デカくても弾やミサイルが払底した米国みても、ある程度は実態経済を温存しないと、いざ鎌倉でどうにもならなくなるすね。
ても1970年代と比してみれば解るすが、
もうフローキャッシュは実態の何十倍もおる。これ麻薬王の取引額を観ていくと解るんですよ。パブロ・エスコバルは一時、
米国の100ドル札の10%を所有したと言われ、埋蔵金は1000兆円とか言われる。
でも、彼のコカインビジネスが行われた80年代の米国経済は、通貨発行量が1/20くらいで、エスコバルの埋蔵金は存在しても総額で数百億円ていど。
ぜんぜん足りない!
なぜ、都市伝説化したかと言うと、それだけ実態なき取引が拡大したことを、政府も報道もあまり伝えてこなかったから!
で、いまじゃWiseアプリを使えば、
1億5000万までスマホ送金てきる時代しよ。いまさら「勤勉で労働に誇りを持ったワーカーに戻れ!」言われても無理!
実態経済の回復は、世界大戦でも起きて、
文明レベルで追い詰められないと無理なのでないすか??
分配に特化してる政党じゃ、新しい産業を作るなどできない!はお見事に言い当ててますねぇ。
基本的に左派がダメなのそこかと。