タイトルでは「原因」としたが、現時点で公式に原因が確定したわけではない。もっとも、今回報じられた内容を見る限り、亀裂発生の有力な要因の一つである可能性は高そうだ。
次世代韓国製攻撃ヘリ、完成エンジンの8割に腐食…一部は亀裂まで発生
2026/06/18 10:45
韓国陸軍の次世代韓国製攻撃ヘリ「LAH1ミルオン」のエンジンに欠陥が見つかり、今年4月から飛行が全面停止されていることが分かった。韓国陸軍は1990年前後に配備して老朽化した「コブラ」ヘリおよそ60機を早期退役させ、これをミルオンで代替する予定だった。ミルオンの納品が遅延した場合、戦力の空白が長期化しかねない―という懸念が出ている。
朝鮮日報より
韓国軍が導入しようとしている攻撃ヘリLAH-1「ミルオン」だが、先日、お伝えしたようにトラブルが発覚した。
起こりがちなあり得ないトラブル
早く替えたい
新規導入を予定している機体にトラブルが見つかること、は、ソレほど珍しい話ではないし、戦力化前に判明したのであれば、その方が良い。

ただ、エンジンがほぼ全滅の状況だったので、結構なコストを掛けて修正しなければならないだろう。
前回の記事では言及しなかったが、韓国陸軍は攻撃ヘリAH-1「コブラ」の代替を予定している。
韓国陸軍では、8機のAH-1Jと60機のAH-1Fを導入している。導入時期は1988年~1991年で、そろそろ35年を経過しようとしている。
老朽化した航空機の管理体制の不備により、韓国軍は致命的な危険にさらされている。
2026年2月21日 06:01
最近、陸軍のコブラヘリコプターが飛行訓練中に墜落し、パイロット2名が死亡したことを受け、軍による老朽化した航空機の管理体制のずさんさが批判の的となっている。旅客機は製造から20年以上経過すると「老朽機」とみなされ、国土交通省が管理する。しかし、韓国軍が使用するヘリコプターや戦闘機は、別途管理されることなく30年から40年も運用され続けている。
航空業界と陸軍は21日、京畿道加平市で9日に発生したコブラヘリコプター(AH-1S)の飛行訓練中の事故でパイロット2人が死亡した件について、ヘリコプターの「老朽化」が原因だと指摘する声が高まっていると発表した。
Chosun Bizより
墜落したAH-1SはAH-1Fよりも古い機体なので、「老朽化」の問題をモロに受けた機体だったと言えよう。

改めて、被害にあわれた方にはお悔やみを申し上げたい。
エンジントラブル
実際、この墜落原因になったと見られるのが、エンジンだ。
業界関係者によると、エンジンが長期間交換されていなかったため、推力が大幅に低下していたという。
Chosun Biz「老朽化した航空機の~」より
ダメじゃん。
とはいえ、老朽化したヘリコプターを管理するための陸軍レベルのシステムは存在しないようだ。老朽化したヘリコプターも他のヘリコプターと同様に定期的なメンテナンスは受けているが、老朽化した機種に特化した詳細な管理方法はない。
Chosun Biz「老朽化した航空機の~」より
ダメなことは分かっていて、そのまま使い続けたのだということみたいだね。何というか、ご愁傷様としか言いようがない。
過去にそういえば言及したっけ。

そして、新しいヘリコプターのLAH-1「ミルオン」の導入を急いだのだが、裏目に出たらしい。
防衛事業庁(防事庁)と韓国国会国防委員会などによると、ハンファ・エアロスペースが組み立てたミルオン用エンジン57基のうち47基で腐食が発見され、このうち38基ではエンジンに亀裂が発生していることも確認された。
朝鮮日報「次世代韓国製攻撃ヘリ~」より
昨日の情報よりも更に深刻なのね。38/57基でエンジンに亀裂というのは、なかなかの率だ。47/57基で腐食が発見されたのも無視できない話。
ただこれもエンジントラブルといえるわけで、何の反省もないのでは?と、疑わざるを得ない。
もちろん、老朽化したAH-1の整備不良と、LAH-1の製造不良は直接同じ問題ではない。
しかし、後述するように今回のトラブルは組立工程を勝手に変更したことが原因とみられている。そうなると、「エンジンを丁寧に扱う」という意識そのものに問題があるのではないかという疑念は残る。
防事庁は今年4月に不良を確認した後、安全のため、陸軍に納品されたミルオン15機全てについて飛行停止措置を下した。
朝鮮日報「次世代韓国製攻撃ヘリ~」より
また、不自然なのは4月に判明していたトラブルが今頃明らかにされたという点。判明した理由は、国会で質問されたかららしい。
ゴムハンマーで叩き込む
そして、今回この記事を書くことを決めた理由は、ここだ。
韓国政府の関係者は「エンジン内部の空気の流れを維持する『ディフューザー』という部品に異常が生じ、腐食や亀裂が発生したものとみられる」「エンジン組み立ての方法を任意に変更したことで問題が生じたとみられる」と語った。ミルオンのエンジンは、フランスのサフラン(Safran)社のエンジンをハンファ・エアロスペースが韓国国内で組み立てて納品してきた。この過程で、熱処理を行って組み立てるべき部分をゴムハンマーでたたいて無理に部品をはめ込み、不良が生じたと伝えられている。
朝鮮日報「次世代韓国製攻撃ヘリ~」より
これは何というか、酷いな。
組み立て工程において、処理手順が定められていたハズなのだが、それを無視して「熱処理を行って組み立てるべき部分をゴムハンマーでたたいて無理に部品をはめ込み、不良が生じた」って、雑すぎるだろう。
前回の記事を読んだ時点では、「腐食や亀裂」という症状から、鋳造工程や材料品質に起因する問題かと思っていた。
ところが今回の報道を見る限り、原因は材料そのものではなく、組立工程側にあった可能性が高そうだ。
損傷に関連する微細な亀裂は、回転翼機38機にも見られた。
国防調達機関は、ミロンエンジンを開発したフランスのメーカー、サフラン社が品質保証の過程でこの問題を発見できなかったと指摘した。
DAPAは、ハンファが推進装置の製造工程を変更した後に発生した「ディフューザーの異常」が故障の原因であると明言した。
The Defense Postより
亀裂はヘアライン・クラックと呼ばれる類いのもので、鋳造部品でこの手の欠陥が発生することは珍しくはないのだが、不良率が高すぎる。
製作図面の要求事項にあわせた
15日付けのAFPの記事では、こんな表現になっていた。
問題となった工程は、原製作者の製作図面の要求事項に合わせ、詳細な作業工程を具体化したものだ。今回確認されたエンジン内部の腐食と亀裂は、安全のため従来なかった新たな検査方式を導入し、微細内視鏡で先制的に確認されたという。
AFPより
原製作者の製作図面の要求事項に合わせたって話だった。ところが、蓋を開けてみたらゴムハンマー組み立てである。
いやいや図面では熱処理指定ですよね?
恐らくはベアリングかなにかの摺動部品を冷やし嵌めするような指定だったのだろう。
そうすると、今回のヘアラインクラックの発生要因は、打撃による直接ダメージよりも、摺動部品の真円度が狂ったことによる回転部品の振動による影響が出たという可能性の方が高い。
つまり、「図面どおりに作った結果の不具合」ではなく、「図面どおりに作らなかった結果の不具合」という話になってしまう。
スリオンのトラブルにも疑惑の目が
そういえば、韓国型機動ヘリコプターKUH-1「スリオン」のトラブルも過去に言及していたんだけど、思い出してみると気になる点がある。

ソレがこの部分。
- ウインドシールド(風防): 2016年頃、飛行中に亀裂が入る事案が相次ぐ
- 機体内部フレーム: エンジン振動などが原因で、胴体外壁や内部構造に亀裂が見つかり、監査院からも「欠陥」として指摘される
- メインローター接続部: メインローターを動かすアクチュエータなどの接続部品に亀裂が入るトラブルも
良くありがちな亀裂問題なのだが、「エンジンの振動」ってやつだ。
「スリオン」のエンジンもフランス製。エンジントラブルはフランスに持ち込んで修正したって話だったが、今回の「ミルオン」もフランス製エンジンなんだよね。
防衛産業界の関係者は「元のメーカーの承認なしに作業手順を任意に変えるのは、安全意識が足りないことを示す事例」と指摘した。
朝鮮日報「次世代韓国製攻撃ヘリ~」より
組み立てにあたって、勝手に製造手順を変更。それでトラブルに至った訳なんだけど、これは、「韓国軍あるある」ネタのような雰囲気だな。
まとめ
というわけで、軽い追加事項になるだろうくらいの積もりで読んだニュース記事だったのだけれど、割と深刻な問題を孕んでいることに気が付いた。
現状では、憶測の混じった分析ではあるが、少なくとも「勝手に組み立て手順を変えてトラブルの原因となった」ことは間違いなさそう。
そうすると、メーカー側は「ハウジングを交換すれば対応可能」としているけれど、これはちょっと怪しい話。
何故なら、仮に熱処理を行うべき工程を省略し、無理に部品を組み付けていたのであれば、損傷はハウジングだけに留まらない可能性があるからだ。摺動部品や回転軸、ベアリングなどに余計な応力が加わっていた場合、目視では確認できないダメージが蓄積していることも考えられる。
早期交替が望まれる兵器なんだけど、結構長引きそうだよ。



コメント
図面通りに作らなかったが原因……
なんで連中はいつもそうなのだろう?
きちんとやる日本が変なのか?
いや、そうとは……
費用と手間と時間をかけているのですから、定められた通りに作れば良いじゃないすか?
それで予算が足りないとか、納期に間に合わないとか言うのならば、
数を減らすとか、配備を長期化するとか、新たな予算編成するとか。
なんか「他にやる事」あるのでは?
これ「人災」ですよね?
ライセンス生産という事に成っていますがノックダウン生産ですよね
何時もの様に今回も組み立てに下請けを使っているんじゃないかと疑っています
韓国の場合はちょっと「ライセンス生産」の言葉の使い方が特殊なんですよ。
あと、特殊な用語として「通貨スワップ」とか、「マニュアル」とか。
そういえば、ハンファエアロスペース社の工場爆発事件も運用マニュアルはありましたが、引火性の高い12-ジクロロエチレンを「危険物扱い」していなかったとか。
これも記事にした方が良さそうなんですが、油断すると韓国の記事ばっかりになるので、最近は敬遠しているんですよ。
こんにちは。
スリオンのエンジンはGE製ですが、「サムスンテックウィン」が供給してるんですよね。
……怪しい……
ミル音のエンジンの旧チュルボメカ、現サフラン・ヘリコプター・エンジンズだって実績ある大会社ですから、そうそうおかしな製品をリリースするとは思えない。
「この方が早くて安いニダ!」で浮いた金ポッケナイナイ、でしょうね……