支那経済を観測する上では、実に興味深いニュースである。
中国当局、不動産大手の延滞融資巡り銀行に窓口指導か 不良債権分類防ぐ
2026年9月23日午後 7:37
中国の金融規制当局が、中国不動産大手の万科企業の延滞融資を不良債権に分類せず、返済期限を延長するよう一部銀行に求めたことが、事情に詳しい複数の関係者の話で分かった。
ロイターより
このニュース、支那の不動産開発業が不調というだけのニュースではなさそうである。冒頭の一文を引用しているが、ここ既にヤバイ要素が含まれている。
「延滞融資を不良債権に分類せず、返済期限を延長するよう一部銀行に求めた」とある。
これが何を意味するのか?
延命措置は続く
銀行に資本増強を指示
過去にこのブログで触れた支那関連のニュースのうちの1つで、こんなのがあったことをご記憶だろうか?

このブログでは幾つも支那経済のシグナルに触れているので、「またか」と思われてしまうかもしれないが、こちらに紹介した記事では、支那の金融8社に対して資本増強をするよというものだった。約3,600億元を予防的に注入している。
資本増強とは、すなわち企業の財政基盤を強化するために自己資本や資本金を増やすことを意味する。これによって景気の悪化や予期せぬ損失(赤字)が発生した場合には、自己資本などを切り崩して対応できるよう、「企業の体力(耐力)をつける」というような意味合いになる。
そうすると、銀行など金融機関の資本増強ということの意味は、返済義務のない安定した資金の割合を高めるということになる。自己資本比率を高めるような指示も出ているようだが、それでは足りずに公的資金も注入している。
逆に言えば、当局が銀行の資本増強を促し、公的資金まで注入しているということは、それだけ金融機関の損失吸収力を高める必要があると判断していることになる。
そして、万科の債務不履行回避を手伝えと無理難題を言い始めたということだ。
関係者によると、当局は、万科の債務不履行回避に向けた非公式の「窓口指導」で、金融機関に同社を支援し、資金繰り悪化につながる行動を控えるよう指導を行った。
注:ニュース記事の誤記だと思われるが、意味が通じないので補完している。
ロイター「中国当局、不動産大手の延滞融資巡り~」より
簡単に言えば、時間稼ぎをやっているということだね。
メッセージ性の強い政策
去年末にはこんなコラムを書いている。

今読むと、かなり分かりにくいコラムで大変申し訳なく思うのだが、要はこの記事では大きく分けて2つのことを言及している。
1つは、支那中央銀行が自国国債を買い入れたことで、流動性を確保するというメッセージを出したということ。小規模な国債買入れを繰り返して、市場をコントロールしようと試みたのだが、結果からいうと余り効果はなかった。
もう1つは、ドル建て債の発行である。巨額の外貨準備を保有しているはずの支那が、ドル建て債の発行によってつなぎ融資を確保。なかなか衝撃的な話ではある。
この2つのことから、支那は人民元の流動性を失っており、かつ手元資金のドルも失っているということを意味すると考えられる。
これまでは、貿易によって巨額のドルを稼いできた支那だったが、それを失いつつあるのである。保有する米国債の売却だけでは追いつかなくなり、ドル建て債を発行してサウジアラビアなど中東マネーから直接ドルを引っ張るという荒業に出たのだ。
だが、それもあまり長くは続かず、ついに「武漢衆邦銀行の経営権を接収」というニュースが。

ネット金融やシャドーバンキング(影の銀行)といった、複数の業界にまたがるグレーゾーンの金融活動に対して放置できなくなってとうとう手を付けたのである。
武漢衆邦銀行は2017年に設立され、主に中小企業向けのサプライチェーン金融(オンライン融資など)に特化して急成長したデジタル銀行。窓口業務がなくとも、もはや回らなくなってしまった。
では、支那の銀行はどうやって生き残っているのかと言えば、合併したり経営陣を挿げ替えたりして、健全性を示しているけれども、運転資金は債務として積み上げ、不良債権は企業や地方政府などに押し付けて、それでももうごまかせなくなっている。
話が前後するが、先に話した銀行への資本注入というのも、そういった状況の先送り政策に過ぎない。
生け贄を差し出せ
先送りと言えば、先に言及した恒大集団の創始者に対して無期懲役の判決を言い渡した話があった。


何というか、非常に象徴的な話ではあるが、「生け贄の羊」を差し出した格好といえば分かりやすいだろう。
「生け贄の羊」といえば、習近平氏が自分の側近を粛正しまくっている話は、このブログで幾つも振れてきた。特にこの記事に何故かアクセスが多いのだが、その理由はさておきタイトルに分かりやすさはある。

結局、人民に対して差し出すことの出来る、分かりやすい犯人を捜してはいるのだ。

ただし、構造的に見ると犯人は習近平氏自身なので、どうあってもこの犯人捜しの旅は終わりはないのである。そうであれば、毛沢東がやったように自身が失敗を認めるべきだろう。
毛沢東の失敗と言えば、合計1億人もの犠牲者を出したといわれている2大失敗がある。
- 大躍進政策(1958年〜1961年): 工業化と農業の集団化を急いだ結果、大飢饉が発生し、数千万人とされる極めて多くの犠牲者を出した。
- 文化大革命(1966年〜1976年): 権力基盤を立て直すために発動され、紅衛兵(学生ら)を扇動。伝統文化の破壊、知識人や政治家への迫害によって中国社会全体に甚大な混乱と分裂をもたらした。
個人的には、マルクス・レーニン主義の導入こそが失敗だと思うけれどもね。
それはさておき、失敗を認めて再スタートを切らない限りは、今の構造的な問題は解消しないだろう。
活かすべき企業なのか
そして、今の方針としては、巨大企業は幾つか生き残りを模索させるようだが、これも余り良い手法とは言えないと感じている。
恒大集団を切り、碧桂園を切り、なんとか万科企業を生き残らせようと画策しているようなのだが、おそらくは万科企業もどうにもなるまい。

前にも言及したが、不動産開発業を全て駆逐してしまうと、支那の不動産開発のノウハウが消えてしまう。どこかは延命せざるを得ないのだが、どうかなぁ。「優良企業」「不良企業」の整理で、万科は果たして合格なのだろうか。
万科、巨額赤字後初の株主総会 赤字削減と100億元超の債務延長が同時進行
2026-05-30 23:45
中国A株市場で過去に例を見ない900億人民元近い巨額赤字に直面する万科企業股份有限公司は、年次株主総会で「赤字削減」を中核目標に掲げるとともに、100億人民元を超える公募債務の延長を並行して進めている。かつて業界の指標とされたこの大手不動産デベロッパーは、低迷する市場で「下げ止まりライン」の構築を模索している。
Financeより
既に今年の前半に900億人民元近い巨額赤字が指摘されていた万科だが、9月にちょっと不可解なニュースが。
中国の万科と郁亮氏に初の消費制限令 約500万元の債務不履行が引き金
2026-09-17
中国の不動産大手、万科企業と前董事会主席の郁亮氏に対し、法院が消費制限令を下した。万科と、同社に30年以上在籍した郁亮氏にとって初の「限高」措置となる。執行法院は湖南省長沙市中級人民法院で、消費制限令の交付日は2026年9月13日。
Financeより
既にかなりの負債が明らかになっているのに、前董事会主席に対する罰金的なものが言い渡された。「生活や仕事に必須ではない贅沢な消費行為」が法律で一律禁止される消費制限令という不思議な法律だが、見せしめ的な意味合いが強いと言える。
これは、万科が純粋な民間企業ではなく、「半分国策企業(国有企業が後ろ盾)」という特殊な立ち位置にあるから、苦肉の策と言えよう。
まとめ
資本注入と不良債権の先送りは、厳密には別の措置なのだが、銀行に少額を資本注入したところで根本的な解決にならないのは明白である。
もちろん、銀行への資本注入そのものが無意味だというわけではない。金融機関の損失吸収力を高め、金融システムの急激な動揺を防ぐという意味では、一定の効果があるだろう。だが、問題は不良債権の存在なのだ。
結局のところ、損失を処理するのではなく、損失が表面化する時期を遅らせているのである。
結局この問題は、腐ったミカン理論なのだ。腐った部分を捨てないことには、食べられる部分は残らない。では、万科は腐っていたのか?或いは、健全な企業なのか。その見極めなしに存続させることは、経済にとってプラスにはなるまい。



コメント
目に見える生贄を差し出した所で地方政府の隠れ債務(融資平台)を何とかしない限り焼け石に水じゃないかと…
また人民服と自転車の生活どころかそれ以下の生活になりますけどね。
まぁ共産主義の数字を誇張しまくって中央に上げるシステムがこうなった原因ですけどねぇ…
ぶっちゃけ農業と鉄鋼から不動産とかにスライドしただけの大躍進政策と変わらないところが支那らしいですな。
不良債権処理をする為には邪魔な人が居ますね
だから粛清しているのか
支那には会社清算法が存在しないので、法的に再建もできない
どこまでもズブズブなので、底無しに損失が拡大するだけ
羊を用意して処断しても、債権者のカネは戻ってこない